ハリー・ポッターと金銀の少女   作:Riena

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15. 9と4/3番線

 

 この列車に乗車してから、もう20分が経つ。

 

 ぼーっと窓の外を眺めながら、過去の記憶を思い出しているうちに、発車まであと10分となっていた。

 コンパートメントに誰か来る前に、さっさと着替えを済ませる。着替え終わった私は、ローブのポケットから本を出した。

 しかし、読み始めようとしたところで、ノックの音ですぐに現実へ引き戻される事となった。

 

「はい、どうぞ」

 

 声をかけると、控えめに扉が開いた。

 

 ガラガラ――

 

 そこに居たのは、先程窓から見えた黒髪碧眼の少年――ハリー・ポッターだった。

 一瞬にして、頭が冷める。

 

「あの……ここ空いてるかな? もう2人来るんだけど」

「えっ、と……」

 

 私は混乱していた。原作と、違う?

 

「あ、いや! 先客が居るなら全然いいんだ。その、迷惑じゃないならで……」

「ええ……もちろんいいですよ」

「ありがとう。それじゃあ、呼んで来るね」

 

 歩いて行く彼の背中を見届けながら、私は焦りを感じていた。

 

 もしかしてここは――

 

 私は恐怖と焦りを振り払うべく、大きく深呼吸をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にありがとう。君がいなかったら、僕たち座れないところだったよ」

「いえ、お役に立てて光栄です」

 

 黒髪の少年、ハリーに軽い会釈をする。驚いたような顔を見せたが、それ以上は触れられなかった。

 きっと、話しかけづらさを感じているのだろう。だが、下手に話しかけて未来を変えてしまうのはよくない。そう思った私は先ほどの本を開き、読み始めようとした。すると、ハリーの隣に座る赤毛の少年が話し始めた。

 

「ねえ、せっかくだから、自己紹介しないかい? 

僕はロナウド・ウィーズリー。ロンって呼んで」

「えっと、僕はハリー・ポッター。ハリーでいいよ」

「えっ! 君、本物?じゃあ、あれはあるの? その……ここにある、あれ」

 

 ロンが右の額を指差し、驚いた様子でそう言った。ハリーが前髪を手で上げる。

 そこには稲妻型の傷が、確かにあった。

 

「ロンとハリー? 自己紹介がまだ済んでいないのだけれど」

 

 ロンとは反対側のハリーの隣に座る、栗毛の少女がそう言った。原作と同じく、随分とキツイキャラである。

 

「コホン。私はハーマイオニー・グレンジャーよ。ハーマイオニーと呼んで頂戴」

「「……」」

 

 ロンとハリーは、どうやら敵対意識を持ったようだ。

 まあ、私には関係ないので、もう一度本を――

 

「ねえ、君は?」

 

 そう聞いたのはハリーだった。

 

「私ですか?」

「そうよ。私達だけして、あなただけしないのは不自然だわ」

 

 ハーマイオニーがハリーの言葉を押した。

 

「……ルーシェ・エバンズ」

 

 私は小声でボソッとそれだけ言うと、目線を本に落とした。

 

「じゃあ、ルーシェだ。よろしくね」

 

 ハリーがそう言ったのが聞こえた。

 こうして、私は主人公達と面識を持ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「車内販売はいかが?」

 

 お昼時になると、車内販売のおばさんが、カートを引いてやって来た。

 ルーシェとロンとハーマイオニーはお弁当を持って来ていたため、何も買わなかった。だが、ハリーはというと、爆買いというものをしていた。

 それぞれ昼食をとっていると、コンパートメントの扉が勢い良く開いた。同時に誰にも気づかないれないように、ルーシェがフードを被る。嫌な予感は的中した。

 

「ここに、ロニー坊やはいるかい?」

「それと、金髪碧眼の美人」

「あと、ハリー・ポッターと」

「ペットのカエルと」

「「金髪碧眼の美人」」

 

 入って来たのは赤毛の双子だった。ハリーとハーマイオニーが『金髪碧眼の美人』の言葉に先程までルーシェが居た場所を見つめた。だが、いない。二人は顔を見合わせた。

 その間に、ロンと双子が話していた。

 

「僕は、坊やじゃない! それで、兄さん達何かよう?」

 

「かわいい、かわいい弟の入学なんだぜ?」

「どんな感じか偵察に来たってわけさ!」

 

 ジョージ、フレッドの順にそう言った。

 

「ああ、それなら心配ないよ。だって、あのハリー・ポッターと友達になれたもん」

「なんだって?!」

「そんなバカな!?」

 

 ロンの得意げな表情に、彼らはわざとらしく頭を抱えた。

 

「それより、カエルならここにいるわ」

 

 双子が驚いていることを傍目に、ハーマイオニーがカエルを差し出した。

 

「おお、サンキュー」

「良かったな、トレバー」

「他に何かあるかい?」

 

 ロンが聞くと、

 

「ああ、もうないぜ」

「そんじゃ、僕たちはこれで」

 

 そう言って先程と同じようにして出ていった。

 

「ねえ、ハリー彼女はどこに行ったの?」

 

「彼女とは私のことですか?」

 

 そこには、『金髪碧眼の美人』がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後。

 

 ガラガラ――

 

「ここにハリー・ポッターがいるって聞いたんだが。誰の事だい?」

 

 入って来たのは青白い少年、マルフォイだった。後ろにずんぐりむっくりの弱そうなボディーガードが二人いる。力士でもいけそうだ。

 

「僕だよ」

 

 ハリーが答えた。ただし、顔に『嫌だ』と書いてあったが。

 

「そうか、君が。僕はマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ。よろしく。それと、友達の選び方には気をつけた方がいいぞ。少なくとも、赤毛のウィーズリーと付き合うのは止めといた方が君のためだ。それに……」

「友達ぐらい、自分で決められる」

 

 ハリーがそう言った。

 どうやら、本当に二人は相性が悪いらしい。

 ロンとハーマイオニーが、止めなきゃ、と思ったその瞬間、パタンという音がした。どうやら誰かが本を閉じたらしい。そして、本を読んでいたのはこのコンパートメントでただ一人。

 

「あら、ドラコ。私には挨拶してくれないのですか?」

 

 その声に過剰反応したドラコは、背筋をピンと伸ばた。

 

「こ、これは、これは! すた……ではなくて、シエル嬢ではありませんか。お元気でしたか?」

「ええ。それより、ルシウスの調子はどうですか?」

「お陰様で、とても元気になりました」

「それは、よかった」

「では、僕はこの辺で。同じ寮になれる事を祈っています」

 

 扉を閉め、足早に出ていこうとする彼の背中に、

 

「ルシウスに、今度の休暇に会いに行く、と伝えておいてください。また手紙も送りますね」

 

 爆弾を投げ込んでおいた。

 

 扉が閉まると一気に空気が悪くなった。

 ルーシェ以外の三人は、口を閉ざし、キョロキョロと辺りを見渡していた。

 少しして沈黙に耐え兼ねたのか、ハリーが口を開いた。

 

「ルーシェは彼と仲がいいの?」

「いいえ。色々とありまして……彼が私にああしなければならないだけです」

 

 また沈黙が始まった。

 ルーシェは何事もなかった様に、読書をしている。ハーマイオニーも諦めたのか、教科書を読み始めた。

 

 だが、その沈黙はまたすぐに破られる。

 

 ガラガラ――

 

「ルーシェ!!」

「やっと見つけた!」

 

 バフッ――

 

「「「え?」」」

 

 ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人の声がシンクロした。

 驚くのも無理はない。なんと、先程来たロンの兄達が、ルーシェに抱きついた、いや、飛びついたのである。

 

「なんで隠れていたのさ!」

「僕らの事嫌いになったの?」

「……そういうところが嫌いです」

 

 ガーンという効果音が付きそうなくらい、落ち込む二人。本人は気にせず読書を続けていた。

 またまた沈黙。他の三人は状況を飲み込めず、ルーシェを見つめていた。

 耐え兼ねたのは、ルーシェだった。

 

「あの、私の顔に何かついていますか?」

 

「いや、その、何と言うか……」

「おい、兄さん達、何時の間にそんな綺麗な人を!」

「も、もしかして、先輩?!」

 

 ハリー、ロン、ハーマイオニーの順で、問いかけた。返って来た答えは。

 

「フッ、どうだ!」

「羨ましいか? ロニー坊や」

 

 これには唖然としてしまった。どうやら彼らと彼女は()()()()()()らしい。 

 と、ここまで想像を膨らませてしまった三人。

 すると、バンッという音とともに、双子が頭を抑えた。

 

「「イタっ!!」」

 

 どうやら、ルーシェに本で頭を叩かれた様だった。

 

「二人とも、調子に乗らないでください。口を縫いますよ? それとも声帯を切って差し上げましょうか?」

「「怖っ」」

「三人とも勘違いしないでください。彼らとはただの知り合いです。それに私は新入生です」

「そ、そうなんだ」

「びっくりしたよ……」

「よかったわ」

 

 三人が胸をなでおろした。

 

「「ちっ」」

 

 すかさず、フレッドとジョージが揃って舌打ちをした。

 その瞬間。

 

 バンッ――

 

「「ルーシェ、酷い」」

 

 次は、本が自分で叩いた様に見えた。加害者のルーシェは無表情である。

 

「でも、待てよ。もしかして、これは『寂しかったからちょっと意地悪したくなっちゃった』的な感じなんじゃ」

「そうか! よしよし、僕らも同じだよ」

 

 バンッ――

 

 どこからともなく現れた大量の本。そのまま重力に任せ、彼らの頭に直撃した。

 

「「ぐはっ……す、すみませんでした!!」」

 

 ルーシェは無言で杖を構えていた。それも、とびっきりの悪魔の笑顔で。どうやら、『次に、何かしでかしたら、窓から放り出す』らしい。全く、恐ろしいものだ。

 

 そんなこんなで、騒がしい時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に届けますので、車内に置いていってください」

 

 車内に放送が響き渡った。

 

 ちなみにだが、フレッドとジョージは運転手にクソ爆弾を仕掛けてくると言って、どこかに行ってしまった。ルーシェによって窓から放り出されたのは、まあご愛嬌ということで。今頃、車内販売のおばさんに説教でもされているのだろう。

 

 身支度をしながら、三人の顔が青白く見えることに気が付いた。

 私はというと、組み分けの方法を知っているため、テストがある勘違いをしているハーマイオニーの様に呪文を唱える必要もないし、ロンの様にプレッシャーもない。はっきり言って、緊張など一ミリもしていなかった。

 しばらくすると列車の速度が落ち、停車したのが分かった。

 

「ハリー、行こう」

「うん……」

「私も行くわ」

 

 そう言ってコンパートメントから、彼らが出て行くのを見届ける。ほとんどの生徒が列車から降りたことを確認してから、私は下車した。

 

「イッチ年生、イッチ年生はこっちだぞ。ついて来い!」

 

 外に出ると、ハグリッドが引き連れる一年生達の後ろについて、私も進み始めることにした。

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