ハリー・ポッターと金銀の少女 作:Riena
翌日。目が覚めると、まだ外は暗く、時計を見るとまだ4時だった。
私はのろのろとベッドを降りて、眠気を冷ますためにシャワールームへ向かった。
昨日は疲れてすぐに眠ってしまったため部屋を見る事は出来なかったが、改めて見るとこの部屋はすごくいい部屋だ。シャワールームとトイレに、寝室とリビング。ホテルのスイートルームを思わせる内装。誕生日プレゼントには少しもったいない。
準備を済ませた私は、カードを手に持ちこう言った。
「転移、グリフィンドール寮談話室」
目を開けると、言った通りの場所に出た。どうやらこの使い方であっているらしい。
ダンブルドアさまも使い方くらい教えてくれてもいいのにな。
そんなことを考えながら、寮を出る穴へ向かった。
寮を出ると太った婦人に少し怒られたが、その他は問題なく抜け出すことができた。フィルチにも、ミセス・ノリスにも会わなかった。
しかし、大広間の手前の階段を降りていると、誰かに後をつけられているのに気がついた。目くらまし呪文をかけ、五メートルくらい後ろにいる。
足幅的に、男子生徒か、教師か。
せっかく早起きしたので、森へ動物たちに会いに行こうと思っていたのに残念だ。
諦めた私は後ろを振り返り挨拶をした。
「スネイプ先生、おはようございます」
「バレていたか」
そう言いながら、セブルスが呪文を解いた。ちなみにだが、私は呪文をかけず堂々と歩いていたので誰かに見つかるのも時間の問題だった。
「それより、朝から元気が良さそうだな。一体どこへ行くのかね」
「もちろん、大広間です」
「大広間か。言っておくが、まだ5時なのだぞ?」
「私は早起きですので。本でも読もうかと」
「本は部屋でも読めるのではないかね」
セブルスの指摘に私はもっともだと思った。
「……」
「……」
「分かりました、部屋に戻ります」
無表情の睨み合いの結果、私は負けを認めることにした。正直あの無表情には勝ち目は無いと思う。
「いや、その必要はない」
「と言いますと?」
「禁じられた森に行きたいのであろう。吾輩についてきたまえ」
まさか、そこまでバレているとは。
だがここで意地を張っても仕方がないので、私は大人しくセブルスの背中を追いかけた。
「皆さん、お久しぶりですね。元気にしていましたか?」
禁じられた森に着くと、早速集まってきた動物たちに私は声をかけた。
「ニフラーは子供が? すっかりパパになりましたね。ボウトラックル新しい木を見つけたんですね? ニーズルは? あー、そうですか……野良猫と仲良くしてますかね……」
私は久しぶりということもあって、まず近況報告をした。他にも、ケンタウルスの群れに出会ったり、年老いたセストラルが亡くなっていたり、ケルピーが水魔と喧嘩をしていたり……。
その横で、セブルスが複雑な顔をして私を見ていた。
「スネイプ先生は動物が苦手でしたか?」
私が首をかしげながらそう聞いた。
「二人の時は、セブルスでいい」
「セブルスにしては素直ですね」
「……吾輩は別に動物が嫌いなわけでは無い。だが、ルーシェが好かれていることに対して、少々驚いているだけだ」
ぼそっと小声で言ったことは聞こえないことにしたらしい。
「そんなに私、嫌われそうですか?こう見えて、懐かれてるんですよ」
「というよりかは、お前の兄が動物に嫌われる体質だったからだな」
「お兄さまが……セブルスは兄を知っているのですね」
「まあ、魔法薬学が得意だったからな」
「依怙贔屓?」
「優秀な生徒に手をかけるのは当たり前だろう」
「あら、そうですか。そんなことより、セブルス。私、
明るい声でそう言うルーシェ。
「いや、ユニコーンは無理だろう」
ユニコーンなど触ることはおろか、見ることも出来ないだろう。
だが、数分後。ルーシェは自慢げに何かを持って戻ってきた。
「ね? セブルス、嘘は言っていないでしょう?」
シエルはユニコーンを触っていた。
「それはズルだろう……」
というのも、ルーシェはユニコーンの鬣を触っていた。
「ズルではありません。これは正当です!」
「どこがだ……」
「全てがです!」
断言するルーシェ。
「フッ」
「今、鼻で笑いましたよね? 絶対笑いましたよね?」
「何を言う。ただの被害妄想だ」
行き場を無くしたルーシェは、動物達に助けを求めた。
「皆さん、今の扱いどう思いますか? ひどいですよね? そんなぁ、私が悪いなんて言わないで下さいよ私、めげますよ。本当に……」
はたから見れば、ヒステリックな女の子だろうが安心して欲しい。彼女は開心術を使って動物たちの思考を読み、会話しているのだろう。
多分。絶対。おそらく。
「ルーシェ。お前はなぜこの森が動物達が好きなのだ?」
そんなルーシェを見て、ふと思いついた質問。返ってきた答えは予想外のものだった。
「分かりません。でも、なんとなく……なんとなくですけど、最初はこの子達の生き方に惹かれるものがあったのかもしれません。自由で生き生きとしている、この生き方に」
ルーシェはこれまで、いろいろな縛られて生きてきた。もしかしたら、普通の少女として過ごせた時間はごく僅かだったかもしれない。
『死にたくないな……』
ふと、あの時の彼女の言葉が耳をよぎった。
この森に足を踏み入れた時も、そんなことを思っていたのかもしれない。
セブルスは何かかける言葉を探してみたが、何も思いつかなかった。
少し間をおいて、彼女が口を開いた。
「でも、今は自由が必要だと感じていません。だって……」
遠い目で空を見つめるルーシェ。
いくら待っても、その先を口にする事はなかった。
――あの時と同じ――
しばらくすると、日が登ってきた。
「6時か……ルーシェ、そろそろ戻るぞ」
声をかけても返事が無い。もう一度呼ぼうとすると、手で制された。
「静かに」
小声で言われた言葉に吾輩は口を閉じた。
ルーシェはそれを確認すると、音を立てないように動き出した。
「何をしているのだ?」
「しー」
小声で聞けば、怒った顔で人差し指を口に当てた。
いつの間にか反対の手には杖がある。
「
ルーシェの杖から紐が飛び出し、四角い檻のような物に変わった。
「
「ルーシェ、これは…?」
「
「ああ、ぼんやりとだがな」
「多分、その子についていた妖精だと思います」
檻の外へ出ようと動き回る妖精。セブルスを後ろに下げ、私は優しく話しかけた。
「貴方はもしかして、フィナの妖精ですか?」
「(フンッ。アンタなんかに、教えない)」
妖精は腕を組んで、座り込んでしまった。
これは困った。私はもう少し低姿勢で話してみることにした。
「そうですか……私はルーシェ・シエルと言います。昨日、フィナとはお友達になったんです」
「(本当に?)」
「嘘はつきませんよ」
どうやら効果的だったらしい。
その妖精は迷ったような仕草を見せ、答えた。
「(……ワタシは、フィナさまの使いよ)」
「使い? では、なぜここにいるのですか?」
「(フィナさまが、森に何がいるか知りたいって言ったから、少し見にきたの。それより、早くここから、出してもらえる?)」
妖精が喧嘩っ早いというのは本当のようだ。
ここで騒ぎを起こすのはよくないので、私は要望を受け入れた。
「もちろんです。
「(どうも。ワタシはルクス。見ての通り、妖精よ。よろしく)」
そう言ったルクスはその小さな手を差し出してきた。その手に人差し指を当てながら同じように挨拶をした。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「(じゃあ、また会いましょう)」
そう言って城の方へ飛んでいく。
その小さな背中が見えなくなるまで私は見届けた。
「珍しいな。妖精を使い魔にするとは」
少しして、セブルスが私に声をかけた。
「そうですね。でも、何かしら意味がありそうですよ?」
「ふむ」
そんな話をしているうちに、先程より高く日が昇ってきているのに気がついた。
「そろそろ行くか、ルーシェ」
「はい」
私達は一緒に城へと戻った。