ハリー・ポッターと金銀の少女   作:Riena

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24.ハロウィーン

 南瓜、かぼちゃ、カボチャ、パンプキン。

 かぼちゃジュース、かぼちゃパイ、かぼちゃスープ。

 

 私は日本がハロウィーンの文化は薄いためか、ホグワーツのハロウィーンに少し驚いていた。というか、朝食からかぼちゃは辛い。後でキッチンでリーサに何か他の食べ物を貰おうかなどと考えていると、右隣から爆弾発言が聞こえた。

 

「そういえば、この間、立ち入り禁止の場所に行って見たんだけどさ……」

「た、立ち入り禁止の場所……!」

「ん? シエルどした?」

 

 忘れていた。ケルベロスの存在をすっかり忘れていた。飛行訓練での対立がなかったということは、マルフォイはハリーに決闘の申し込みをしていないかもしれないのだ。

 ということは、四階の立ち入り禁止の部屋にも入っていなければ、ハーマイオニーが隠し扉の存在にも気づいていない。

 まずい。どうすれば。

 

「また考え事? なんかあるなら両隣の先輩にでも相談したら?」

「はっ、それです!」

「「「?」」」

 

 三人が同時に頭を傾げた。

 私は気にせず彼らに向けてこう話した。

 

「お2人に少しお願い……というか、強制なんですけれど。今の話、ハリーに教えてあげてもらってもいいですか?ケルベロスがいた事と、その下に隠し扉があった事を」

 

「な、何でシエルは知ってるの?」

「ま、まさか、僕らと同じように侵入した、とか?」

「あ、遠回しに行ってくださいね。いつもの自慢話的な感じで、お願いしますね。それじゃあ、今から行って来てください。行ってらっしゃーい」

「ちょっ、シエル?」

「今日のシエル、おかしくない?」

 

 二人の言葉を無視して、私は背中を押した。そのまま彼らはハリーの方へ歩いて行く。その後ろ姿はなんだかんだ言って乗り気にも見える。

 

「え、えっと……ルーシェ、この後予定は?」

「キッチンにまともな(かぼちゃ以外の)料理を取りにいきますが、それ以外はありませんよ」

「じゃあ、私も一緒に行こうかな」

 

 少しげっそりとしているソードと共に私はキッチンへと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハリー」

「ロニー坊や」

「兄さん、どうかしたの?」

 

 僕らが呼ぶと、ロンが返事をした。

 

「ちょっとした、自慢話なんだけどさ」

「四階の立ち入り禁止の場所の話なんだけどさ」

 

 そう言うと、二人は目を輝かせて僕らを見た。どうやら興味があるらしい。

 僕らはシエルに言われたとおりの話をした。

 

「えっ! じゃあ、そこには、何かが隠されてるかもしれないの?」

「僕、心当たりがあるよ」

 

 二人はそう言って話し始めた。何とかの石とかいうワードが聞こえたが、僕らはもう用は済んだので大広間を出て次の授業へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の妖精の呪文の授業では物を浮かばせる呪文に挑戦してもらいますよ」

 

 出席をとったフリットウィック先生はそう言うと、ネビルのカエルを実験台にして見本を見せた。皆の瞳がキラキラと輝く。そんな中、私は教科書とノートを開いて飛行術の新しい魔法を作っていた。

 浮遊呪文を使うか、それとも、全く別の呪文か……。

 

「それでは、ミス・エバンズは浮遊呪文について何か知っている事は?」

 

 フィナに肘でつつかれ、当てられた事に気がついた私は、立ち上がる前にフィナに耳打ちした。

 

「浮遊呪文の質問だよね?」

 

 フィナが飽きれながらも小さく頷くのを確認すると、私は立ち上がった。

 

ウィンガーディアム・レビオーサ(浮け)

 

 私が呪文を唱えると、机の上にあった教科書やノートなどが、一気に浮かび上がった。

 

「「「「おお……」」」」

「浮遊呪文は自分の中のイメージが大切です。例えば浮かばせる対象が本ならば、その本をどの様にどれだけ浮かばせるか、そういった点が大切になりますね。そして何より、この呪文は他の呪文よりも少し呪文が複雑です。そのため、ウィンガー、ディアム、レビオーサと分け、それぞれの単語の意味をイメージしながら唱えるといいと思います」

 

 私はぺこりと一礼すると、席についた。隣のフィナを見るとなぜか口をぽかんと開けている。周りを見るとほとんどの生徒が同じような顔をしていた。

 

「あの……何かおかしいでしょうか?」

 

 私が戸惑いながらもそう聞くと、フリーズしていた先生が戻ってきた。

 

「い、いえいえ。とっても素晴らしい答えですよ。ミス・エバンズに十点を差し上げましょう」

「ありがとうございます」

 

 私はもう一度頭を下げると、ノートに視線を落とした。

 

「それでは、皆さんもやって見ましょう。羽根を浮かばせてみて。びゅーんひょいですよ」

 

 先生の合図で皆が一斉に杖を持った。

 

「「「「ウィンガーディアム・レビオーサ」」」」

 

 結局、成功したのは私とハーマイオニーだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきの聞いてたか? 俺がちょっと出来損ないだからって、あれやれこれやれって、お前がやれっての」

「そ、そうだね……」

 

 授業が終わった私はセブルスに飛行術についての質問をするためにフィナと別れていた。

 そんな時、ロンとハリーが話している声が耳に入ってきた。

 そういえば、これが原因でハーマイオニーはトイレにこもるんだったっけ……。

 私がそう思った時、ハーマイオニーがロンとハリーの横を逃げるように通って行った。目元には涙が浮かんでいる。

 

「待って、ハーマイオニー、待ってよ!」

 

 その後ろを先ほど別れたばかりのフィナが追いかけて行った。

 クィレル、か。

 私は地下室とは反対方向に足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待って、ハーマイオニー、待ってよ!」

 

 何度呼んでも足を止めないハーマイオニー。

 

「来ないで! あなたには関係の無いことよ!」

 

 ついにはそう言うと、もっと速度を上げて走って行ってしまった。すかさず追いかけようとするが、ちょうど目の前に現れたスリザリン寮生に道を阻まれる。

 

「ハーマイオニー! どこに行くの!」

 

 結局、私は彼女を止めることは出来なかった。しかも厄介なのに捕まった。

 

「また、あなたじゃないの! よくも私たちの道を塞いでくれたわね! 今日という今日は許さないわよ!」

「そうよ! しかも、今日はラッキーなことにあいつがいないじゃない。獅子寮のプリンセスは小鳥ちゃんを置いてどこに行ったのかしら? あっ、もしかして、捨てられたの? かわいそうに……ふふっ」

 

 パグとその護衛に捕まってしまったのである。

 なんで今日はこんなについてないのだろう。

 自分の不運を呪いながらも、私は彼女たちに背を向けて走り出した。その名も必殺技『逃走』。

 

「ちょっと! 待ちなさいよ!」

「あんた、逃げるなんて臆病者!」

 

 二人の言葉には耳を貸さず、私はひたすらグリフィンドール寮まで走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『クィレル』と書かれたドアの前。

 私はドアを叩くか叩かないかの位置で手を止めていた。

 もし、このままクィレル、いや、ヴォルデモートを止めたら、原作が変わってしまう。けれど、原作を変える事によってハーマイオニーがトロールに出くわす危険は無くなる。でも、ハーマイオニーは原作通りなら助かるんだし、私が変えたところで――

 

 随分長くそこにいたような気がした。

 私はドアから一歩後ずさり、そのまま背を向けた。

 これで、いいんだり

 このままなら皆がハッピーエンド。だから、私が無理に変える必要はない。

 力強く踏み出した一歩。シエルの瞳には迷いはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トントン――

 

「ルーシェ・エバンズです。スネイプ先生、少しよろしいですか?」

「入りたまえ」

「失礼します」

 

 私は一礼しながらドアを開けた。中に入り扉を閉めると、セブルスの横にあった椅子に腰掛ける。

 

「今日は何の様だ?」

 

 どこか不機嫌そうなセブルス。顔を上げ私を見ると、セブルスは目を見開いた。

 

「何か、あったのか?」

「え?」

 

 そう言いながら、自分の頬に触れる。すると、

 

「なぜ……なぜ私は、泣いてるのでしょうか?」

 

 私の頬には何筋涙が流れていた。ハンカチを取り出し、何度も何度も拭く。しかし、一向に涙が止まる気配はなかった。

 

「泣きなさい」

 

 ふと、頭上からそんな声が聞こえた。いつもの冷たく刺すような声とは全く違う優しい声。

 

「セブルス、私は……どうして、てんせ」

 

ザザザガガガザザザズズズサササバババダダダア"ダダガガガジヂヂヂジジジジザジザザザジジジズゼゼダダダッ――

 

 その言葉を口にする直前。謎のノイズ音と共に私の意識は電源が切れるように落ちた。

 

 意識が途切れる前、一瞬だけ私の前で"ナニカ"が笑いかけたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日最後の授業は防衛術だった。

 隣には誰もいない。

 ルーシェはこの授業を受けないため、いつもはハーマイオニーが座っているのだが、彼女は何処かに行ってしまった。あのハーマイオニーが授業をサボったのだ。

 一体、どこに行ったのだろう。

 考えていたら全然集中できなかった。

 授業が終わり、グリフィンドール生はそろって大広間に向かった。

 しかし、私は彼らとは反対方向へと足を向け歩き出す。

 この時の私には、トロールが放たれるなんていう事を知る由も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐすっ、ぐすんっ、ひっく…」

 

 私は1人トイレで泣いていた。

 

 性格がきつい事は自分でもよく分かっている。ああ言われても仕方ない事だって。

 分かっていたのに直さなかった。嫌われるのを選んだ。ただそれだけなのに、溢れてくる涙を抑える事はできなかった。

 どれだけ泣いていたのだろう。

 私はノックの音で飛び上がった。

 

「な、何か?」

 

 なるべく泣いている事を悟られないように言ってみたが、あまり効果は無いようだった。

 

「ハーマイオニー? 泣いてるの?」

「な、泣いてなんかいないわよ。それで、何か用があるの?」

 

 フィナーラルの言葉に私は強い口調で答えた。しかし、彼女はそんな私にも優しく声をかけてくれた。

 

「うん。じゃあ取り敢えず、ドアを開けて。そしたら、話すから」

「いやよ。何で開けないとダメなの?」

「うーん……ハーマイオニーの顔が見たいからかな」

「なっ、フィナーラル」

「フィナでいいよ」

「……」

「ゆっくりでいいよ。ここで待ってるから。自分に整理がついたらでいいから」

「わ、分かったわ」

 

 私は涙を拭くと、ドアを開いた。目が合わない様に下を向く。

 

「私、ハーマイオニーの友達になりたいの。だから、顔を上げて?」

「わ、私は友達になんか……」

「ハーマイオニーは、頭がよくて、可愛くて、ちょっと意地っ張りなところもあるけど本当は優しくて、そんなハーマイオニーが私は大好きだよ。だから、何かあったら私に話して。それが友達だから」

「うっ……」

「ほら笑って、ハーマイオニー」

「う、うん」

 

 私は涙を流しながらニコリと笑った。フィナもにこりと笑う。

 

「じゃあ、そろそろ戻ろうか。デザートに間に合わなくなっちゃうよ」

「私的にはかぼちゃ以外の食べものが食べたいわね」

「ふふ。ハーマイオニーったら」

 

 私たちはそう言って歩き出した。いや、正確には歩き出そうとした。

 

「ブォロフー!」

「「え?」」

 

 目の前には大きな影が立ちはだかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 消毒の匂いと背中に感じるシーツの感覚からどこにいるのか大体は予想がついた。

 

「……」

 

 起き上がろうと力を入れた私は、強い頭痛に襲われ顔をしかめる。

 少しして痛みが引き、視線だけで周りを見渡すと、予想通り医務室だった。マダム・ポンフリーが入り口付近でセブルスと話し込んでいる。そこにはなんと、ダンブルドアもいた。

 

「セブルスよ。なぜ、シエルは倒れたのじゃ?」

「吾輩の部屋に来たかと思えばなぜか泣いていて、理由を聞いたら、いきなり倒れたのです。何か言いかけていたような気もします」

「そうか……何か体に異変はあったかね、ポピー?」

「いいえ。これと言った異常はありませんでしたよ。ただ、精神面からくる疲労によるストレスが原因のようです」

「ストレスか……ポピー邪魔したのう。セブルス、何かあればまた教えるのじゃぞ」

「分かりました」

 

 ダンブルドアとセブルスが医務室を出ていくと、マダム・ポンフリーが私に近づいて来た。

 

「あら、目が覚めたのですね。何処か痛いところはありますか?」

「いえ、大丈夫です」

「そうですか。でも明日までは入院してもらいますよ。折角のパーティーだというのに残念ですね」

 

 マダム・ポンフリーは私に気づかう様にそう言うと、かぼちゃジュースを取り出した。

 

「ちょっとした、見舞い品ですよ」

「あ、ありがとうございます」

 

 朝に飲んだばかりという事もあり、あまり飲みたいとは思わなかったが、礼儀として一口だけ飲んだ。

 甘い液体が喉を通る。

 

「私はなぜ倒れたのでしょうか?」

 

 ふと、思いついた疑問をつい口に出してしまった。マダム・ポンフリーはふわりと笑う。

 

「それは貴方にしか分からないと思いますよ?」

「うーん……」

 

 思い出そうとしても、出てくるのは白い光の様なものだけだった。結局諦めた私は仮眠をとるため、目を閉じる。

 瞼の裏には見覚えのある"ナニカ"が白く光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブォロフー!」

「「え?」」

 

 巨大な壁に行き先を阻まれた私たちは思わず素っ頓狂な声を出してしまった。しかしそれも、すぐに悲鳴に変わる。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」

「と、トロールぅぅぅ!!!!」

 

 空いている隙間から逃げようとすると、なぜか扉が勝手にしまった。

 

「えぇぇぇ!?」

「きゃぁぁ!!」

 

 私たちはもう一度叫ぶと、取り敢えずトイレの個室に駆け込んだ。

 

「ブルワァ!」

 

 バンッ――

 

 すごい衝撃音と共にトイレのドアが破壊された。

 

 死ぬ――

 

 私たちは本当に死期を悟った。

 降り上がる棍棒。声にならない二人の叫び声。私たちは目をつむり、耳を塞いだ。

 ふと二人は同じ人物を思い浮かべた。

 

「プロテゴ」

 

 トロールの咆哮の中、響き渡る呪文。同時に棍棒と私たちの前の間に見えない障壁がつくられた。

 

 パリンッ――

 

 まるでガラスが割れたかの様な音。しかし、棍棒は私たちに当たる事無く、跳ね返された。

 

「ボォロォウフゥ……」

 

 ドサッ――

 

 その反動でトロールは体制を崩し倒れた。すかさず、

 

「ウィーズリー、ポッター!」

 

「「ウィンガーディアム・レビオーサ!!!」」

 

 完璧とも言えるその呪文は棍棒に直撃し、棍棒は宙に浮いた。しかし、それだけではまだ終わらない。

 

「「行っけぇ!!」」

 

 二人は差し出した杖を下に降ろした。

 

 ボクッ――

 

 鈍い音が響いた。

 トロールの頭蓋骨が……いや、それは言わないでおこう。

 ただ、勝利の音だった。

 

「ルーシェ! 怖かったぁぁ」

 

「ハリー、ロン! 私、生きてるわ!!」

 

 トイレの個室……だったものから飛び出した二人はそれぞれの人物に飛びつくように抱きついた。

 ルーシェはフィナの頭を、ハリーとロンはハーマイオニーの背中を優しく撫でる。

 思わず安堵の涙が零れた。

 

「これは、一体どういう事ですか?」

 

 しかし、喜びを噛み締めたのもつかの間。入り口の方からマクゴナガル先生の鋭い声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず、なぜミス・エバンズは医務室にいないのですか?」

「友達の危険を察知し、マダム・ポンフリーの監視の目を掻い潜り、ここ来ました」

 

 しれっと問題発言をするルーシェに教師陣は唖然とした。

 

「では次にミス・グレンジャー。貴女は?」

「私……倒せると思ったんです。本で何度も読みましたから。でも、私は何もできないばかりかフィナも巻き沿いにしました。ハリーとロンとシエルさんが来てくれなかったら私たちは死んでいるところでした」

「ちょっと、待てよ!」

「それは……」

 

 ロンとハリーが否定しようとするが、ルーシェがそれを手で制した。ハーマイオニーはまだ言葉を続ける。

 

「今回の事件は全て私の責任です。すみませんでした」

 

 ハーマイオニーはそう言うと、頭を下げた。

 

「事情はよく分かりました。ミス・グレンジャー、貴女には失望しましたよ。グリフィンドールは五点減点です。四人とももう寮に戻りなさい。パーティーの続きをやっているはずですよ。ミス・エバンズは行ってはなりません。貴女には個別に話がありますからね」

「……分かりました」

 

 ルーシェの肩を落とした様子に、他の四人はクスリと笑った。そのままトイレを出て行く。その背中を見届けた私はマクゴナガル先生の方へと体を向けた。

 

「ミス・エバンズ……」

 

 先生は私の名前を呼んだ。思わず目を逸らしたくなるほどマクゴナガル先生は怒りに震えている。

 

「フッ」

 

 先生の後ろで誰かが鼻で笑った。トロールを観察していたセブルスだ。

 

「コホン、貴女が彼女たちを助けた事はとても良い事です。ミスター・ポッターも、ミスター・ウィーズリーも同じくです。グリフィンドールにそれぞれ五点あげましょう。しかしですね、貴女は入院の身。あのマダム・ポンフリーを出し抜いて、ここまで来たとなれば話は別ですよ? わたくしの言っている意味は分かりますか?」

「……はい」

「セブルス。ミス・シエルを医務室まで連れて行きなさい。後はそこにいるクィレルにでも任せましょう。わたくしは校長へ報告して来ます。分かりましたね、ミス・エバンズ」

「は、はい……」

 

 今の会話を簡単に訳せば、『校長には()()()をきちんとお話しします。クィレルは()()()片付けくらいは自分でしてくださいね。それと、セブルス()医務室に行く様に』だそうだ。

 マクゴナガル先生、恐るべし。

 クィレルはすっかり縮こまってしまったし、私とセブルス冷や汗をかいている。

 マクゴナガル先生がトイレを出て行った瞬間、私たちは思わずため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

「スネイプ! 貴方はいつになったらその性格を治すのですか? もうあれから随分経ちましたよ? どれだけ犬と相性が悪いんですか、全く……」

「すまない、マダム・ポンフリー。吾輩も本望では無いのだ」

「当たり前です! それと、エバンズ! 貴女はよくも逃げ出しましたね? 騙された私も悪かったですが、体調を悪化せてどうするんですか? 入院の意味、分かっていますか? しかも、双子呪文を使って自分の分身を作って、加速魔法を使って猛ダッシュして、挙げ句の果てには障壁魔法? ふざけているんですか? 体力も魔力も空っぽですよ!」

「す、すみません」

「分かったならいいのです。二人とも今後この様な事がないように!」

「「はい……」」

 

 こんな感じでマダム・ポンフリーから説教を受けた私たちは、その夜二人で仲良く入院した。

 もちろん、マダム・ポンフリーの厳しい監視付きでだが。

 


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