ハリー・ポッターと金銀の少女 作:Riena
十一月はあっという間に過ぎ、もうすぐクリスマスが訪れようとしていた。
「あっ、雪」
朝のグリフィンドール寮。窓辺にいた生徒がそう言った事で、寒さの理由がわかった。
「おはよ、ルーシェ。今日はすごく寒いね」
「おはよう、フィナ。そうですね」
フィナの挨拶に応えると、後ろから双子の声が聞こえた。
「「おはよう、シエル」」
「あとフィナも」
「私はおまけですか? 先輩。ひどいですね」
「おはよう、フィナ。朝から災難だな」
「あっ、リー先輩もおはようございます!」
リーの姿が見えるなりにこやかに応えるフィナ。
何だかその瞳が乙女の色をしているような気がした。
談話室を出ると、寒さが倍に感じる。大広間に向かいながら、私は作ってあった人数分の魔法カイロをみんなにプレゼントした。
大広間に着くと、すぐにフクロウ郵便の時間になる。
バサバサ――
羽音と共に私の前にルーが来たかと思うと、三枚の手紙が届いた。一枚はルシウスからの招待状、一枚は魔法大臣からの手紙、一枚はダンブルドアからの手紙だった。どれもここで読めるような手紙ではない。ばれないようにポケットにしまった私は、そのまま朝食を続けた。
部屋に戻ると、私は先ほどの手紙を開き、読み始めた。
まずルシウスからの招待状は、クリスマスパーティーに来ないかという内容だった。これについてはダンブルドアと相談しなければならない。
次の魔法大臣からの手紙には、スタージェント本家にお邪魔したいという内容だった。返事は書くまでもない。くるくるポイッとしてやった。
最後のダンブルドアからの手紙はクリスマスの予定はどうするかというものだった。返事はパーティーへの出席の話も含めて後で直にしに行こう。
「クリスマス……プレゼントどうしようかな」
私は羊皮紙を一枚取り出し、プレゼントリストを作り始めた。
待ちに待ったクリスマス休暇。ほとんどの生徒が家に帰るためホグワーツ特急に乗った。もちろん、私もその中の一人だ。フィナもクリスマスは帰ってくるようにと言われていたらしく、今は一緒のコンパートメントに座っていた。
「ねえ、ルーシェは家でパーティーとかするの?」
「いえ。私は実質一人ですので。その代わり、ドラコのお家のパーティーに呼ばれたので行きますよ」
「へ、へぇ、そうなんだ……」
なぜか、動揺したように言うフィナ。私は不審に思いながらも、問いただすことはしなかった。
コンコン――
少しすると、コパートメントの扉がノックされた。
「はい、どうぞ」
フィナが応えると、扉が開く。
「シエル嬢、少しいいですか? 父上からの伝言がありまして」
「いいですよ」
「私は抜けた方がいいですか?」
「いや、お前にも伝言がある」
「?」
私への伝言ならわかるが、フィナにもあるとはどういうことだろう?
そんな疑問を持ちながらも、私はドラコの言葉を待った。
クリスマスの一週間前。
ルシウスさんからの手紙の内容に驚くべき事実が書かれていた。
フィナーラルへ
今日は少し大事な話があり、手紙を送った。驚くとは思うが、最後まで読んで欲しい。
まず、フィナーラルをマルフォイ家の養子に迎えることとなった。
妻は君と会えるのを楽しみにしている。
息子のドラコはグリフィンドールのお前にあまりいい顔はしないと思うが、根は優しいためきっと仲良くできるだろう。
これからマルフォイ家の一人として恥をかくことがないよう、私もナルシッサもドラコもお前を支えて行くつもりだ。
最後に、今年のクリスマスパーティーにお前も出てもらうことになった。衣装などは気にしないでいいが、休暇には帰ってくるように。
ルシウス・マルフォイより
養子? パーティー?
その時はいきなり過ぎて内容がよく分からなかった。しかし、クリスマスが近づくつれその実感が湧いてくる。
養子になるということは、ドラコの義理の兄弟になることだ。しかも、自分の母親でない人を母親に迎える。
本当にこれでいいのだろうか。心配になりながらも、私はクリスマスを待った。
静かになったコンパートメント。二人の間に流れた空気を読み取ったのか、ドラコは少し顔をしかめた。しかしそこで話を止めるわけにもいかず続ける。
「まず、シエル嬢。父上がマルフォイ家でクリスマスを過ごされないか、だそうです」
「そうですね……そちらがよければそのまま行きましょう。荷物は側付きに持って来てもらうことにします」
「では、父上には僕から報告を。それとフィナーラルも一緒に来るように、だそうだ」
「分かりました。ドラコ」
フィナがそう応えると、二人の様子を見ていたルーシェが首をかしげた。
「えっと……フィナとドラコは知り合いだったのですか?」
ルーシェの質問に、フィナは目を見開き、対照にドラコは目を閉じる。答えたのはドラコだった。
「実は……フィナーラルはマルフォイ家の養子になったのです」
「……それは、どういうことです?」
ルーシェが混乱したように聞くと、ドラコはそのまんまの意味だ、と言った。
「フィナ、本当なのですか?」
私がそう聞くと、力なくフィナはうなずく。
気まずい沈黙はキングス・クロス駅に着くまで続いた。
駅に着くと、ルシウスが私たちを迎えてくれた。
「シエル殿、お久しぶりです。ドラコ、フィナーラル、おかえり」
「久しぶりですね」
「ただいま、父上」
「ルシウスさん、ただいま」
「それでは、姿くらましを使うとしよう。シエル殿はご自分でお願いできますか?」
「フィナは私が連れて行きましょう」
「分かりました……では、屋敷で」
そう言うと、ルシウスはドラコを連れて付き添い姿くらましで姿を消した。
「フィナ。事情はついてからでもいいですか?」
「う、うん……」
「しっかり掴まっていてくださいね」
私はフィナが腕に掴まったのを確認すると、姿くらましを使った。不思議な効果音と共に、体がクネクネとパイプのようなもので運ばれていった。
着くと久しぶりに姿くらましをしたせいか、胃がムカムカして気持ち悪くなった。でも、ルーシェの姿くらましはルシウスさんよりもまだいい方だ。というかそれ以前の問題で、まだ11のルーシェが姿くらましを使えるのはどういう事だろう?
そんな事を考えていると、何時の間にか玄関にいた。ルーシェが扉を叩くと、女性が出てきた。
「
「ありがとう、フェッタ」
「え、ご当主?」
衝撃的過ぎて、気持ち悪さなんて吹っ飛んでしまった。
私の驚いた顔に、フェッタと呼ばれた女性は首をかしげている。
「失礼ですが、この方にはご当主様の事をお話しになっていないのですか?」
「ええ。今から二人で話そうと思っていたところですよ」
「そうですか。ではわたくしがご案内いたします」
案内された先は随分豪華な客間だった。平凡庶民派の私は少し目が眩む。ルーシェはあたかもそれが普通かのような顔をしているように見えた。何となくだが。
「ルシウス殿はパーティーの始まる少し前にまたお会いになるようです。ドラコ様は少ししたらこちらに来るそうなので、それまではお二人でごゆっくりどうぞ」
「ありがとう、フェッタ」
フェッタが客間から出ていくと、二人の間で今日何度目かの気まずい沈黙が流れた。
しかし先ほどとは違い、その沈黙はすぐに破られた。
「……フィナ。私は貴女にまだ話していない事があります。今まで隠してきたのですがダンブルドアさまと話した結果、休暇明けにはもう、ほとんどの人が知る事になります」
休暇前に来たダンブルドアからの手紙の返事をするために校長室へ向かったシエルは、ルーシェがスタージェント家当主である事実を話すべきかと話をしていたのだ。
予定では4、5年生までは粘りたかった。
しかしホグワーツにいる以上、マスコミの目はある程度妨げられるし、用事の場合に簡単に抜け出せるなどと利点も多いのだ。
そんな事はもちろん知らないフィナは深刻そうな顔をしてシエルの言葉を待った。
「私は……」
コンコン――
ルーシェが言い出そうとした瞬間、ドアがノックされた。開かれたドアの先にはドラコがいる。
「シエル嬢、そろそろ準備を……まだお話中でしたか。失礼しました」
気まずそうに扉を閉めるドラコ。その様子に二人は吹き出した。
「ごめんなさい、フィナ。少し緊張して堅くなっていました」
「ううん。こっちこそごめん」
ドラコのおかげでいつもの雰囲気を取り戻した私たちは笑顔のまま話を続けた。
「それで、ですね。私は本名をシエル・スタージェントと言います。ルーシェ・エバンズは簡単に言えば偽名ですね」
「シエル・スタージェント……じゃあ、今日からはシエルって呼ばなきゃダメだね」
「そうですね。私としてもそちらの方が嬉しいです」
「じゃあ、シエル。フェッタさんがシエルのことご当主様って呼んでたのは何か意味があるの?」
「そのままの意味ですね。私はスタージェント家当主なんですよ」
「……へ?」
「ですから、スタージェント家の……」
「いや、何度も言えばいいって問題じゃなくて、スタージェントって
「はい」
スタージェント家。純血でありながら、聖28家からは除外され、それでいて他の純血名家に劣らぬ権力を持つ。そんなスタージェント家当主が今、私の前にいる。
「私なんかが、いいの?」
ふと浮かんだ疑問。
そこまで考えた時、シエルが私を抱きしめた。ふわっとシエルの香りが一面に広がる。
「フィナの考えている事は大体分かります。でも、私は好きでフィナと友達になりました。スタージェント家当主という位は幾ら足掻いても外せない。でも、フィナは、他の人たちも、私を自由にしてくれているんです。これまでもこれからも、貴女と私は友達です」
「ふふっ。なんかくさいよシエル。でもありがと」
「どういたしまして」
「それじゃあ、そろそろドラコを呼んであげなきゃ」
「そうですね」
扉を開けると、壁に寄りかかって腕を組んでいるドラコが目の前にいた。横にはフェッタがいる。
「ドラコ、待たせましたね」
「いえ、その様な事は。そろそろ準備をした方がいいと」
「分かったわ」
ドラコが失礼しますと言って去ると、残された三人は部屋に入り、支度を始めた。
コンコン――
準備が終わり、二人で雑談をしていると、ドアのノック音が聞こえた。
「失礼します、ルシウスです」
「どうぞ」
シエルが返事をすると、同じく支度を終えているルシウスとドラコが部屋に入った。
「今日の段取りをしましょう」
「頼みます」
「まずですね。フィナーラルの養子の発表とお披露目を行い、中盤にスタージェント家当主様のお披露目にいたします」
「それまで私は隅で食事を楽しむことにします」
「いえ、今日はドラコにエスコートを頼みましたので」
「あら、そうでしたか。それならよろしくお願いします、ドラコ」
「お任せを」
「では、スタージェント殿。また会場でお会いしましょう。フィナーラル、行くぞ」
二人が部屋を出ると、ドラコとシエルも部屋を出た。
会場を見渡せば大きなクリスマスツリーにキラキラと輝く飾り。シャンデリアにまで飾りが付いていて、綺麗だった。
「スタージェント殿、どうかしましたか?」
いきなりの足を止めた私にドラコが心配そうな顔をした。
「いや、会場の飾りが綺麗でつい見惚れてただけです」
「スタージェント殿の方がお綺麗ですよ」
この家族は親子揃って口が上手いらしい。
今日のドレスは桜色を基調としており、シエルの金髪に良く映えている。しかもいつもはおろしている髪を結い、サイドはやわらかく編み込んである。
「ありがとうございます。でも、ドラコもかっこいいですよ」
仕返しに私がそう言うと、ドラコは顔を赤くした。どうやら褒め上手だが褒められ下手のようだ。
「そういえば、ドラコ。無理に敬語でなくてもいいのですよ? 何だか、貴方らしくありませんし」
「いえいえ、そんな……」
「では、命令にします?」
「冗談でも、そういうことは辞めてくれ……」
げっそりとしながらも、彼は敬語を直す。やっぱりそっちの方が、マルフォイらしいな。
「そろそろ子供たちの輪に入るぞ」
ドラコに連れられ、私は足を進めた。
「あっ、ドラコ様よ」
「本当だわ」
「でも見て、誰か女を連れてるわ!」
「あれって、グリフィンドールのプリンセスじゃないの!?」
「なんでスリザリンのプリンスと!?」
近づくにつれて、女の子集団の歓声にも取れる声が聞こえた。ドラコは小さくため息をついている。
「いつもこんな感じなのですか?」
「まあ、特にパーキンソン辺りは小さい頃からずっとあんなだ」
「貴方も大変ですね」
「お気遣い感謝しよう」
私たちがそんな話をしていると、何時の間にかドラコの周りには人が集まって来ていた。
「ドラコ様、お久しぶりですわ」
「元気でしたか?」
「この娘は一体誰ですの?」
「プリンスはふさわしいプリンセスと仲良くすべきですわ」
戸惑っているドラコ。私は助ける事はせず、少し離れたところでぶどうジュースを飲んだ。ノンアルコールのはずで飲んだら、酒が入っていた。喉がヒリヒリした。むせそうになった私は急いでオレンジジュースを飲んだ。
「待って、みんな一度話すのをやめてくれ。僕には重大な役目があるんだ。担えなければ父上に顔向けできない」
ドラコの説得でやっと離れてくれた女子たち。ドラコは私の方を見てこう話した。
「あそこにおられる方は、誰でもない、シエル・スタージェント殿。あのスタージェント家のご当主様だ」
「「「「え?」」」」
集まっていなかった男子たちもその言葉に驚いた。
「スタージェント殿、こちらへ」
「紹介ありがとう、ドラコ。シエル・スタージェントです。以後お見知りおきを。後で説明がありますが、ホグワーツでは偽名を使い身分隠していました」
――やばい。
そこにいたホグワーツの生徒全員がそう思った。そして、その全員が頭を下げる。
「ホグワーツでのご無礼誠に申し訳ありませんでした……」
「私も」
「わたくしも」
次々に謝罪の言葉を述べ、中には土下座しているものまでいた。ドラコを見ると同じように頭を下げている。
「皆、頭をあげてください。今までの無礼は全て許しましょう」
面倒くさくなった私はそうとだけ言うと、テーブルの方へ足を向けた。後ろでドラコが止めるような声が聞こえたが手で制す。
「私がいると楽しめないでしょう?」
シエルの思いやりにドラコは素直に礼を言うと、シエルは振り返らずその場を去った。
「ご来場のお客様にお話がございます。こちらをご覧ください」
会場に響き渡るルシウスさんの声。緊張を誤魔化すために何となくでイギリスの正式名称を復唱していた。
10回ほど言った頃、ルシウスさんから合図がかかった。
「マルフォイ家の新しい娘、フィナーラル・マルフォイです」
慣れないヒールに緊張で震えた足。やっとの事でルシウスさんの横へたどり着くと、私はくるっと向きを変え前を向いた。
キラキラと光る飾り、クリスマスツリー、そして何より観客からの視線が私を貫いた。その中で暖かい視線を感じそちらに目を向ける。すると、シエルがにこやかに手を振っていた。
シエルを見て緊張が少し和らいだ私はルシウスさんの話に耳を貸した。
話が終わった頃には一歳くらい老けた様な気がした。
「フィナ。緊張しましたか?」
「もう肩とかがっちがち……」
近くに来ていたシエルがフィナを見つけるなり声をかけた。
「今から私も出番ですので。良ければここで見ていてください。終わったら一緒にパーティーを楽しみましょう」
「うん、そうだね」
「それでは、続いては三年ぶりのご来場である、スタージェント殿です。こちらへどうぞ」
コツコツ――
彼女の靴音のみが聞こえる静寂。空気すらを支配するその力。見惚れるほど美しい立ち振る舞い。
この場にいる全員が彼女に飲み込まれるようだった。
「ご紹介に預かりました。私はシエル・スタージェント。スタージェント家現当主です」
あの時とは違う優しめの口調。しかし、それが変わったところで彼女の威厳が損なわれるなんていう事は無かった。
これはシエルの策略の一つであり、シエルの様な子供でも逆らう事のできない空気を作るための土台。
「これまで私は身分を隠して来ましたが、ホグワーツへの入学を境に、完全なる社会復帰をご報告します。ホグワーツで使っていた偽名も取り消し、これからはシエル・スタージェントとして過ごします」
少しざわめく会場。ルシウスが手を上げると静寂が取り戻された。
「しかし、私はまだ子供の身。皆様ほど沢山の知識も経験もありません。そのためホグワーツ卒業まではなるべく外部との接触を控え、卒業後に正式なスタージェント家当主の座に着きます。よろしくお願い致します」
シエルはそう言うと一礼をし、舞台を下りた。
張り詰めていた緊張感が消え、会場に音が戻った。
それから数時間後。
無事パーティーが終了し、私は客間へ戻った。
「ふぅ……」
ため息をつきながらソファに座る。そのまま目を閉じ眠気に意識を手放そうとした時、ドアがノックされた。開いたドアから現れるのはルシウスだ。
「お疲れのところ、申し訳ございません。少しよろしいですか?」
「大丈夫ですよ」
私はそう答えるとルシウスを向かいのソファへ座らせた。すぐにフェッタを呼び、お茶を用意してもらう。フェッタが部屋を出て行くと、ルシウスが口を開いた。
「話と言いますのは……契約の話です」
「そういえば、随分と強引に決めてしまったままでしたね」
私は一度そこで区切ると紅茶を口に含んだ。少し苦い味が舌に残る。
「それで……本当に私と手を組みますか?」
今度はルシウスがカップに手をつけた。静かで重い空気が部屋中を立ち込めていく。
しばらくして、ルシウスがカップを置いた。
「少し前までは如何に契約を破棄できるか、考えていたのです」
「悪魔との契約は簡単ではないと?」
「そのような訳では……」
「冗談ですよ。それで?」
「スタージェント殿はナルシッサを守ってくださいますか? ドラコを守り続けると誓ってくださいますか? 私がいなくとも」
ルシウスのグレーの瞳が揺れていた。私は瞳の奥を見つめていた。彼はどこまでも父親の顔をしていた。
「守ります。ナルシッサさんも、ドラコもそして――あなたも」
ルシウスはふっと笑みを零した。私はそれを見ていた。
「これからも、よろしくお願い致します」
そう言って部屋を出て行くルシウスの後ろ姿を見ながら、私は手足の震えを覚えていた。
――恐怖。
変えない、変えたくない。そう言いながらも、私は一つ、また一つと、原作のレールから外れて行っている。これは矛盾だ。自分の考えとは反する方向に物事が進んで行く。
まるで、誰かが私に命令し、私を動かし、未来を……
ザザババガガジダダヅヅヂヂヂゴゴググデデデゾゾゼズジジ
そこまで考えた時、また"ナニカ"が私の思考を邪魔した。眼がジリジリと熱くなり、何も考えられなくなる。
「――ッ」
必死に意識を保とうと歯を食いしばるが、次第に目の前が真っ白になり、意識が飛ぶ。
《…目醒めはまだ早い…》
"ナニカ"はそう言うと彼女を睡らせた。
次の日。
「シエル、おはよう。それと髪飾りありがと」
フィナがまだ眠気の冷めていないシエルを見ながらそう言った。
「ふわぁ……おはようございます、フィナ。気に入ってもらえて何よりです」
「ほら、シエルも沢山プレゼントが届いてるよ!」
「そうですか……って、なんでこんなに?、」
シエルの眠気が一気に冷めた。というのも、ざっと見ただけ数十個はありそうなプレゼントが綺麗に積み重なっているのだ。試しに一つ手に取ると、『親愛なる、シエル・スタージェント殿』と書かれていた。私はなるほどと頷く。
「着替えをしますからフィナは部屋に戻っていてください。少し時間がかかるかもしれません」
「分かった。じゃあ、朝食の時にね」
フィナが部屋から出て行くと、入れ替わりにフェッタが入ってくる。彼女にプレゼントの仕分けを頼むと、私は身支度をした。
仕分けが終わると、次は一つ一つ開けて行く。面倒だったので少し魔法も使った。
プレゼントの中身は、フィナからは『クィディッチ今昔』の本、双子からはそれぞれ手鏡とくし(もちろん悪戯グッズだが)、リーからはクリスマスカード。
ドラコからは高級そうな手袋、ルシウスからは何故かワイン、他の当主からは何かと高級そうな何か。
ダンブルドアからは哲学的な本、セブルスからは香水、リーサからは手作りのクッキー。
他にも幾つかあったが、主なプレゼントはそんな感じだった。一番驚いたのは魔法大臣からのプレゼントで、何と二十枚にも及ぶ契約書だった。防火・防水の効果がかけてあったが、最大出力のインセンディオによって一瞬で灰になる。
「ご当主様、そろそろ朝食のお時間でございます」
フェッタの声でプレゼントタイムに区切りをつけた私は、食堂に向かう。
マルフォイ家で過ごすクリスマス。色々と問題はあったが、結果存分に楽しむ事ができた。