ハリー・ポッターと金銀の少女   作:Riena

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29.学年末と夏休み

「学校に『賢者の石』があったらしいよ」

「え?! あのニコラス・フラメルの?」

「そうそう。しかもそれを『例のあの人』が狙ってて、あのハリー・ポッターが守ったんだって!」

「じゃあ、ハリー・ポッターは『例のあの人』を倒したの?!」

「そうなのよ」

 

 ハリーがヴォルデモートを倒したのは三日前。次の日には色々な噂が流され今に至るのだが、これだけ明確な噂話が流れているのはあのダンブルドアが流した噂だからだろう。もっとも、ダンブルドアは否定していたが。

 

 私があの場にいたことを知っているのはダンブルドアとヴォルデモート、そして亡きクィレル先生のみだ。他の生徒の記憶は綺麗さっぱり消しておいた。理由は……まあ言うまでもないだろう。マスコミがこれ以上騒ぎ立てたらこの間のようになりかねない。ちなみにあの事件は、『スタージェント殿の逆鱗事件』と名付けられているらしい。これについては日刊預言者新聞の大見出しになっていたので、嫌でも目に付いた。

 

 それはさておき。

 

 明日は学年末パーティーが行われる。それが終われば夏休みだ。計画でも立てるかと思っていると、隣から名前を呼ばれた。

 

「シエル」

「何かありましたか? フィナ」

「……」

 

 名前を読んだきり黙ってしまうフィナ。少しすると、何かを決心したように口を開いた。

 

「夏休みに、一緒に遊びませんか!」

「え?」

 

 思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

 

「だめ、かな?」

 

 何この可愛い子は。女の子なのに射抜かれた気分ですよ。マジで。何かのアニメですか、これは。

 高速で頭が回った結果、アニメが好きだった頃の心笑瑠が出てしまった。

 一瞬の間にそれだけのことを考えて、答えた言葉はたったの一言だった。

 

「もちろんです」

「本当? やったぁ!」

 

 嬉しそうに小さく飛び上がるフィナ。私も頬を緩ませた。

 

「夏休みに遊ぶって?」

「俺らのこと、忘れてないか?」

 

 その様子を見ていた双子が羨ましそうにフィナを見、シエルを睨む。

 

「俺たちも遊びに行っていいだろう?」

「フィナだけずるいぞ!」

「ずるいも何も……」

 

 私は半分呆れながらも、結局折れることにした。

 

「わかりました。でしたら、私の別荘に来ますか?」

「「よっしゃぁ!」」

「シエルの別荘かー。あっ、リー先輩は?」

「シエルがいいなら俺も行こうかな……」

「人数は多い方がいいですし、ぜひ」

「やった!!」

 

 フィナは目をキラキラさせ始めた。

 

「何かしたいことはありますか? 大抵のことならできますよ?」

「BBQ!」

「花火!」

「ダイビング!」

 

 私は次々と出て来る双子の案を紙に書きまとめていく。フィナとリーはその横で

 

「えっ? そんなのできるの?」

「あのスタージェント殿、だもんな」

「す、すごっ」

「金持ち……」

 

 などと会話をしていた。

 

 数分後。

 

「今年の旅行先が決まりました」

「りょ、旅行?」

 

 フィナの疑問に答える人はいなかった。

 

「わーい、どこどこ?」

「海かな? 山かな?」

 

「場所は!」

「ドゥルドゥルドゥル、ダンッ!!」

「……浜辺のコテージです!」

「BBQも花火もできる!」

「海遊びもダイビングもできる!」

「では、夏休みが始まって一週間後、ホグズミート駅で集合です。また、手紙を渡しますね」

 

 そういう形で、夏休みの予定が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また一年が過ぎた。ご馳走の前に老いぼれの話をちいとお聞き願おう。詰め込んだ知識が空になる夏休みがやってくる」

 

 ダンブルドアは朗らかにそう言うと、大広間をぐるりと見渡した。

 

「ここで、寮対抗杯の表彰を行おう。4位、グリフィンドール312点。3位、ハッフルパフ352点。2位、レイブンクロー426点。1位、スリザリン472点じゃ」

 

 スリザリンのテーブルで大歓声が、大拍手が、嵐のように上がった。シエルは気にするそぶりをせず、紅茶を一口。

 

「よし、スリザリン。よくやったのう。しかし、最近の出来事を勘定に入れねばのう」

 

 ダンブルドアの言葉で、スリザリン寮生は口元を引きつらせた。

 

「こほん。まず始めにロナルド・ウィーズリー。君は最高のチェスを見せてくれた。それを称え、グリフィンドールに五十点じゃ」

 

 たちまち、グリフィンドールのテーブルは大歓声に包まれた。

 

「次にハーマイオニー・グレンジャー。君の冷静な判断と論理を用い、困難を切り抜けたことを称え、グリフィンドールに五十点を与えよう」

 

 誰かの奇声が聞こえた。ハーマイオニーは嬉しさに顔を伏せてしまっている。しかし、ダンブルドアの次の言葉で、大広間はしんとなった。

 

「続いてはハリー・ポッター。完璧なる精神力、並外れた勇気、それらを称え、グリフィンドールには……六十点を与える」

 

 あと一点でスリザリンに勝てる。それに気づいた者は少なかったが、計算する余裕のあったシエルは大騒音に耳をふさいだ。ダンブルドアが手を上げると徐々に静かになっていく。

 

「勇気にもいろいろある。敵に立ち向かう勇気と同じ味方の友人に立ち向かう勇気じゃ。ネビル・ロングボトム、君にわしから十点を与えよう」

 

 シエルが聴力を遮断しようかと本気で考えるほどの騒音、いや、大爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パーティーが終わると、試験結果の発表が行われた。

 一年生のトップは不動のハーマイオニー。私は二位で、三位との差を大きく引き離していた。フィナはまあまあの成績だったらしい。

 

 今年は『変化の年』だった。自分の居場所も、立ち位置も、いろんなものがガラッと変わった。

 

 来年は蛇だ。

 私は列車に揺られながらそんなことを考える。

 叶わぬ普通の生活を願いを心の奥にしまうと、私は窓から空を眺めた。

 茹だるような暑さ。真っ青な空。時々見える雲ももくもくと空を泳いでいた。それなのに、シエルの心はまだ梅雨入りしたばかりの様に、どんよりと黒い雲が晴れる気配はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 窓の外は暗く、虫の音しか聞こえない。時計を見ると4時半を回ったところだった。まだ早いと目を閉じて見るが、一行に眠れる気配はない。二度寝を諦めた私はベッドから降り、シャワールームへ向かった。

 シャワーを浴びて着替えた私は庭に出た。深呼吸をして外の空気を存分に吸う。

 ふと私は視線を感じ、振り向いた。すると、フェッタが私の元へ近づいてくるのが見える。

 

「おはよう、フェッタ。起こしてしまいましたか?」

「ご当主様、おはようございます。わたくしは少し前から起きていましたので、その様なことはございません」

「そうですか。今日は何をする日でしたか?」

「お忘れですか? 今日からご当主様のご友人と別荘に行かれる予定です」

 

 何となく、早く目が覚めた理由がわかった様な気がした。

 

「そうでしたね。では、まだ早いので私は図書館で読書をします」

「紅茶は何がよろしいですか?」

「ストレートで」

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルシウスさん、ナルシッサさん、ドラコ、行って来ます」

 

「スタージェント殿に失礼のない様にな」

「フィナーラル、気をつけるのよ」

「フンッ」

 

 ルシウスさんとナルシッサさんはどこか緊張した面持ちで、ドラコは不満そうに私を送り返した。

 今日から一週間、シエルの別荘に行く。ルシウスさんにその事を話した時は行くなと止められていた。しかし、数日前に来たシエルからの手紙にルシウスさん宛ての手紙があり、それを読み心変わりをしたのか、すんなりと受け入れてくれた。ちなみに私宛ての手紙には当日は一人でくることや持ち物、集合時間について書かれていた。

 

 集合場所であるホグズミート駅。到着した私は、一番乗りと思いきや、先客に後ろから声をかけられた。

 

「フィナ、おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」

「おはよう、シエル。よく寝れたよ」

 

 私はそう答えながら後ろを向くと、シエルが視界に入る。

 

「ほへ?!」

 

 あまりの驚きに変な声を出してしまった。

 

「どうかしましたか?」

「シエル、何でそんな格好してるの!?」

「?」

 

 首を傾げるシエル。その姿を一言で言えば… 

 

「お、お人形さん!?」

「それが、シエルの私服!?」

 

 突然現れた双子が言うように、シエルはまるでフランス人形のような格好をしていた。それはまるで、どこかのお姫様のようだ。

 

「お前ら、何を驚いてるんだよ。シエルは魔法界ではプリンセス。この格好が当たり前だろ?」

 

 リーの言葉にシエル以外の三人は納得したように頷いた。

 

「私の格好は横に置いて、そろそろ出発しますよ」

「どうやって行くの?」

移動(ポート)キーを使います。皆さん、しっかり掴まっていて下さいね。では、3、2、1……」

 

 鍵の形をした移動キーにみんなで掴まった。シエルのカウントダウンが0になろうとすると、鍵に吸い込まれる。

 

 五人が同時に目を開くと、そこは砂浜の上だった。

 

「うわぁ、綺麗……」

 

 まだ昇り切っていない太陽に照らされ、海と砂浜がキラキラと輝いている。また、空の青と海の青とが互いに交わり一つになろうと押し合っているように見えた。

 

「「綺麗だな」」

 

 フィナに続き双子も感想を漏らす。しばらく五人は海風に身を委ねていた。

 

「中に行きましょうか。案内をしますね」

「おう」

「頼むぜ」

「シエル」

「お願いしまーす」

「では、こちらです」

 

 シエルに連れられてやって来たのは大きなコテージだった。細かく言うと三階建てで、五人家族でもまだ余裕のありそうな豪邸。これが別荘ならシエルの家はこれの何倍だろうか。そんな疑問を持ちながらも、フィナたちは別荘の中へと足を踏み入れた。

 

 全ての部屋の案内が終わる頃にはもうお昼時になっていた。昼食はパスタとピザ。取り敢えず美味しい。学校の料理なんてへでもないぐらい美味しい。下手したら高級料理店より美味しい。

 

 昼食を食べ終わると、一度部屋に戻り水着に着替えた。

 

「って、シエルもフィナも水着着てないじゃん!」

「ちっ」

「私たちは服に防水加工しましたので。それより誰か、今舌打ちしましたよね?」

「よしっ、泳ぐぞ!」

「リーも行くぞ!」

「仕方ねえな」

 

 シエルに怒られる前に逃げた双子(舌打ちしたのはフレッド)はリーも連れて海に飛び込んで行った。

 

 バシャンッ――

 

 綺麗な水しぶきが上がり、シエルとフィナに降りかかる。

 

「私たちも楽しみましょうか」

「うんっ」

 

 その後日が暮れるまで遊んだ後、夕食を食べそれぞれ布団についた。

 こうして一日目が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 杖をこめかみに当て、何かを引き出すように腕を動かす。すると、白い糸状の靄のようなものが現れた。それを水盆の中にいれる。ダンブルドアは水盆を篩いながら隣にいたセブルスに話しかけた。

 

「セブルス。決して驚くでないぞ。事実を受け止めるのじゃ」

「はい、校長」

 

 セブルスはそう言うと水盆を覗いた。身体が吸い込まれるような感覚とともに自分が落ちて行く。下に、下に、下に――

 地に足が付いた時。セブルスはプリベット通りの誰かの家の前にいた。

 

 

 

 

 

 

『マクゴナガル先生、奇遇じゃのう』

『やはり、お気づきでしたか』

 

 記憶の中のダンブルドアとマクゴナガルが話している。少しすると、ハグリッドが乗ったオートバイが現れた。毛布にくるまった何か、幼いハリーを抱えている。

 

「これは、ポッターがここに預けられた日?」

「そうじゃ」

 

 現実のダンブルドアがそう答えた。それと同時に視界がぐるぐると回る。次の場所はその家の中、物置の中だった。記憶の中のハリーがそこで寝ている。またまた視界が回った。次は動物園。ハリーが蛇語(パーセルタング)を話しヘビが抜け出して行く。次は荒れた海の上。その次はダイアゴン横丁。次は……次は……その次は――

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 セブルスは精神的な疲れに膝をついた。額は汗に濡れ、無意識に拳を握りしめている。ダンブルドアが彼の肩を叩いた。

 

「恐ろしいことじゃ」

 

 遠くを見ながらダンブルドアはそう言った。いつのまにか校長室に戻って来ている。

 セブルスは息を整えると、疑問を口に出した。

 

「所々変わっている部分もありましたが、それは?」

「きっと、彼女が変えたのだろう。無意識か意識してのことかは定かではないがのう」

「もし変化があるとしても、何か策は練った方がいいと私は思います」

「うむ。わしも少し前まではそう考えておった。しかし、もしそうしてしまえば、彼女の努力は水の泡じゃ」

「彼女の努力?」

「さよう。これまで彼女は未来を変えないことを前提として行動して来たのじゃ。そうであろう?組み分け帽子よ」

 

 ダンブルドアが帽子の方に呼びかけると、しわが動きだした。

 

「そうだ。私は彼女に助言をしたのだよ、アルバス。『救うのはいいが未来を変えるのは罪だ。能力を生かすも殺すも君次第だ』とな。彼女はそれに対して困ったような顔をしておった。きっと私の言葉に矛盾を感じたのだろう。このことは君たちの判断に委ねる。しかし、もしその能力を使うのならば彼女にも一度話をすべきだ」

「ありがとう、組み分け帽子」

 

 ダンブルドアの礼を聞くと、組み分け帽子は元の帽子に戻った。

 

「彼女に話せば、その代償は大きいと見ました」

「そうじゃな……この話は一旦棚上げとしよう。何も手を出さず、ことの成り行きを見る。よいな?」

「分かりました」

 

 セブルスはそう言うと校長室を去る。扉が閉まると同時にダンブルドアはため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間とは早いもので、もう帰るまであと一日となっていた。この一週間で夏の遊びは全てこなした気がする。でも、きちんと宿題も終わらせたし、シエルの計画は素晴らしいものだった。また、ご飯もとにかく美味しかった。一日目のパスタから始まり今日の朝食に食べたフレンチトーストも。中には日本と言う国にある『焼きそば』や『たこ焼き』、『冷やし中華』なども食べた。シエルが言うに、「夏と言えばこれ!」らしい。

 そして最終日となった今日はやりたいことを全てやってしまったためやることがなく、みんなでゴロゴロとしている。だが特別暇なわけではなく、昨日までの6日間の疲れを落すのには最適だった。

 

「くっそ、シエルに勝てねえ」

「チェスマスターと呼んでください」

「何だよそれ」

 

 チェスをやっている双子とシエル。リーは読書、フィナはその様子を眺めている。

 

「次はクィディッチをやりに行こうぜ。シエル、箒ある?」

「本家にはたくさんありますよ。フェッタ、持って来てくれますか?」

「かしこまりました」

「フィナもやる?」

「じゃあ、ご一緒します。リー先輩は?」

「んー、俺はいいや。この本を読みたい」

「ご当主様、お持ちいたしました」

「ありがとう、フェッタ。三人とも好きなのを使って下さいね」

 

 三人が庭に出て行くと、リビングはシエルとリー、フェッタの三人になった。

 

「シエル、少しいいか?」

 

 本を読んでいたリーは少し顔を上げ、シエルを見る。その目はどこか真剣に見えた。

 

「もちろんいいですよ。フェッタ、庭の様子を見て来てくれますか?」

 

 フェッタが下がるとシエルは杖を一振りし、机と椅子を出した。

 

「アイスティーでいいですか?」

「ああ」

 

 再度杖を振るとアイスティーが現れる。シエルとリーは同時にそれを口にふくみ喉を潤した。

 

「聞きたいことが幾つかある」

「答えられることなら」

 

 二人の間に流れる空気は緊張感が漂っている。しかし、二人はポーカーフェイスを貫き、お互いの弱みを見せないようにしている。これではまるで、敵同士ではないか。はたから見ればそれぐらいの空気が流れていた。

 

「まず、なぜあいつらと仲良くする?」

「そこから疑われているのですね私は。理由は友達だからです。それ以外にありません」

「疑っている訳じゃない。ただ、俺の親友があそこまで心を開くのはどうもおかしいと思っているだけだ」

「それは双子に聞いてください。私には分かりませんので」

「わかった。じゃあ、次だ。なぜ、スタージェント当主になった?」

「結構深いところ聞きますね……それは、私以外のスタージェント家の者達が全員死んだからです」

「!」

「正確には殺されたのですがね」

「すまない。聞いてはいけないことを聞いた」

「気にしていませんよ」

「最後にいいか? 土日の午前。一体どこにいる?」

「ばれていましたか」

「ああ。あいつらやフィナに聞いても濁されて終わったからな。一体、なにをしているんだ?」

「仕事ですよ」

「は?」

「当主としての仕事をするために魔法省へ」

「内容は?」

「……」

 

 流石にシエルもそれ以上は言えなかった。しかし、リーは聞く前からそれが分かっていた。

 

「これを見ろ」

「はっ」

 

 シエルは息を飲んだ。そこに書かれていたのは――

 

 シエル・スタージェント

 所属 魔法省 闇祓い局

 年齢 入省時 8歳

    現在 12歳

 経歴 …

 

「これはどこで手に入れたんですか?」

「闇祓いに知り合いがいてな。これが本当に最後の質問だ。なぜ、お前はここに入った? まだ子供のお前が、入局率が限りなく低いここにどうやって滑り込んだ?」

「人聞きが悪いですね。ちゃんと試験で合格しましたよ。今はまだ訓練生ですが」

「俺が聞きたいのはその事じゃない! なぜ、そんな危ないところに入ったか聞いてんだ!」

 

 ついにリーが声を荒げた。拳は強く握り締められ、まっすぐに曲がることなくシエルを見つめている。

 

「言われなくても分かってますよ。これがどれだけ危ない仕事で、あなた達がどれだけ心配するか。分かっているんですよ。でも、私はスタージェントとして、当主としての役目があります。いくら子供でも、大人の仮面を被るのをやめても、友達ができても…何があっても私がスタージェント当主という事実は変えられないんです! だから、だから、もう……」

 

 シエルはそれに続く言葉を言うことはできなかった。

 

「お前の気持ちは分かった。俺も聞き方も悪かった。ごめん」

「私の方こそすみません。取り乱してしまいました。あなたはいつも心配してくれていたのですね。ありがとう」

「礼はいい。それが、友達だろう?」

 

「フィナ、今年から選手になるんじゃないか?」

「キーパーめちゃくちゃうまいじゃないか」

「そうですか?」

 

 ふと、庭から三人が帰って来る声が聞こえた。シエルとリーは先ほどの位置に戻り、シエルは机など魔法で消す。

 

「自分の命が優先だからな」

 

 視線を本に落としたまま、リーがそう言う。シエルはこくりと頷いた。

 

「ただいま」

「おかえりなさい」

「なあ、シエル、フィナがな……」

「あっ、先輩、言わないでいいですよ!」

「えー、何で?」

「なんでってそりゃあ!!」

 

 色々あったが別荘での一週間はあっという間だった。つかの間の日常。そんな感じだ。

 別れ際、手を振る時はいつも悲しくなるものだ。しかし、今日は少しだけ嬉しかった。なぜなら…

 

「またね!」

 

 このたった一言が嬉しかったから。また会えることを約束しているようだったから。学年が上がれば何かが変わってしまうかもしれない。それでも、五人のこの関係だけは変わって欲しくないと全員が思っていた。

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