ハリー・ポッターと金銀の少女   作:Riena

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32.損失と後悔

「アルフィー、話とはなんですか?」

 

 部屋に漂う暗めの空気を切り替えるように、私は明るめの声でそう聞いた。

 

「フィナーラルさんたちと何かありましたか? 周りのことがあるにせよ、おかしいですよ?」

「……」

 

 私は口をきゅっと結び、視線を落とした。なんとなくは気づいていたが、いざ言われると居心地の悪いものだ。

 

「やはり何かあったんですね。良ければ僕に話して頂けますか? 何か役に立てると思いますよ」

「それは……」

 

 私は少し躊躇った。もし彼に話せば今の自分を保てなくなる気がしたのだ。

 けれど私は少しして、私は口を開いた。

 

「あの事件の次の日のことです――」

 

 

 

 

 

 

 退院した私は次の日、グリフィンドール寮に戻った。

 太ったレディに合言葉を言い中に入る。私が談話室に現れた瞬間、生徒の視線が全て集まった。そして、私と判断した瞬間に目を逸らしヒソヒソと何かを話し出した。

 

「来たよ、継承者」

「純血だからって偉そうによ」

「あれはスリザリンがお似合いさ」

 

 耳に入ってくる悪口に軽くため息をつく。しかしそこまで重要視はしない。悪口を続ける生徒たちを一瞥し、私はいつも通り彼らの方へ歩き出した。彼らの誤解を一刻も早く解いて、以前と同じ様に仲良くしたい。

 

『ただいま帰り……』

『行くぞ、フィナ』

『は、はい』

『リーも行くぞ』

『……』

 

 四人は私の横を通り抜け、寮の出口へと歩き出した。私はなす術なく棒立ちになる。

 

『なぜ……?』

 

 私の疑問は周りの生徒の嘲笑に呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――始終を彼に話した私は泣き出しそうになるのを堪え、ただただスカートを握りしめた。

 ここは私の部屋の中。アルフィーに話があると言われここに誘ったのだが、それが間違いだった。いつも過ごしているせいか意識せず心が緩くなっている。

 

「そんなことが……辛かったですね……」

 

 アルフィーはそう言って私の頭を撫でようと手を延ばした。

 しかし――

 

 パシンッ――

 

「あ……」

 

 私はその手を払ってしまった。アルフィーが私に困ったような顔をしている。

 

 まただ。また私はそうやって、みんなを傷つけるのだ。フィナもフレッドもジョージもリーも、今度はアルフィーだって……!

 

「ごめんなさい、アルフィー。もう大丈夫です。今日はありが……」

「シエル・スタージェント!」

 

 私の言葉を遮るようにして彼が私を呼んだ。

 

「貴女はそうやってまた我慢する。嘘をついても、苦しいだけですよ。だから、"あの人"も放っておけないんです。この間も言いましたが、僕は貴女のためにここに来たんです! そんな僕にまで我慢されたら僕は"あの人"にどう顔向けしたらいいんですか!」

「"あの人"?」

 

 私はアルフィーが一体誰のことを言っているのか分からなかった。私のことを放っておけない人? アルフィーが顔向け出来ない?

 

「"あの人"とは誰なのですか?」

 

 私はもう一度聞いた。しかし、アルフィーは一向に話す気配はない。

 

「それも、話せないのですね?」

 

 私の問いかけにアルフィーは頷き、ポツポツと話し始めた。

 

「僕は……去年、日本の魔法学校(マホウトコロ)から転校してきました。貴女のために、僕の役目を果たすために。そして"あの人"は僕の恩人であり、その役目をくれた人でもあります」

「アルフィーは日本人なのですか?」

「はい。僕の本名は星崎 歩譜(ほしざき あるふ)と言います」

「ほしざき……?」

 

 私は彼の名に聞き覚えがあった。それもそのはず。わたしの名前は『()() 心笑瑠』なのだ。聞き覚えがあるどころか、自分の名前ではないか。そして、『歩譜』という名にも聞き覚えがあった。しかしそれをどこで聞いたのか、思い出せない。

 

 歩譜、歩譜、あるふ……

 

「――ッ」

 

 なぜかいきなり激しい頭痛に襲われた。私は思わず顔をしかめる。

 

「どこか痛いところでも?」

「いえ、大丈……」

 

 そこまで言って、私は先ほどの彼の言葉を思い出した。

 嘘をついても、苦しいだけ、か。

 

「少し頭痛がしただけです」

「本当ですか?」

「ええ。本当です」

 

 私の言葉を信じてくれたようで、彼は安心したように胸を撫で下ろした。

 

「話を戻しますが、シエルさんはどうするつもりですか? フィナーラルさんたちと仲直りするのか、このままの状況を続けるのか」

「そう、ですね……もし仲直りしたとして、私は今までのように接することは難しいです。見えない壁が心の距離が出来てしまう気がします。今は様子を見ることにします」

 

 私が辿り着いた答えに満足したのかアルフィーはうんうんと頷いた。そして立ち上がる。

 

「そろそろ僕は行きますね。また何かあれば声をかけて下さい。くれぐれも無理はしないで下さいね」

「分かりました……今日はありがとう、アルフィー」

「こちらこそです。では」

 

 そう言うと、彼はドアから出て行った。

 ――今日からどうしようかな。

 

「ごめん、シエルさん。出口って何処ですか?」

「うわぁ!」

 

 さっき出て行った扉から彼が戻ってきた。考え事を始めようとしていたこともあり、驚いてしまう。そういえば、この部屋に出口はないんだったけ。

 

「ごめんなさい。実はこの部屋出口が無いんです」

「え? じゃあ、どうやって出入りするんですか?」

「それは、これを使って……」

 

 結局、レイブンクロー寮までアルフィーを送り届けることとなった。 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後。私は授業以外のほとんどを自室で過ごし、食事もリーサに運んで貰うなど、極力生徒や先生に関わらないようにした。もちろん、フィナたちにも。

 そして、今日はクィディッチの日。原作では第二の犠牲者が出るはずだ。アリバイを作るためにはどうすればいいか。

 

 パサパサ――

 

 ふと、窓からルーが入って来た。私の手に手紙を落とす。

 

「ん? ムーディから?」

 

『本日の午後8時より緊急任務を行う。闇祓い局入り口に集合しろ。今回、トンクスと2人で任務を行う。くれぐれも気をつける様に』

 

「またですか……もう」

 

 私は愚痴を言いつつも、準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、最近、あいつはどうなんだ?」

「……」

「なんか答えろよ。俺たち友達だろ?」

「……」

 

 大広間にて。

 レイブンクローのテーブルに現れたジョージとフレッド。僕は彼らに何を聞かれても無言を貫き通していた。

 

「お前はシエルの味方って訳か。あいつが継承者でも変わらない態度をするんだな」

「だから、なんですか?」

 

 思わず、言葉が出てしまった。

 

「だからって、友達を辞めるんですか? 継承者だから、当主だから、変な噂が流れているから? たったそれだけで友達を辞めるんですか?」

「お、俺たちはただ……」

「彼女の気持ちを分かっているんですか? どれだけ苦しんでいるのか。一夜にして友達も親友も先生方の信頼までも無くしたその気持ちが分かるって言うんですか? もし僕なら耐えられません。冤罪で地獄に突き落とされたその気持ちを抑えることは出来ません」

「冤罪?」

 

 ジョージが僕にそう聞き返した。

 

「ええ、そうです。大体、彼女は、彼女の家は、純血主義ではありません。昔は子供が多かったためでしょうか。兄弟の誰か1人でも純血と結婚すればいいのですから、そこまで難しくは無いでしょう。しかも、彼女は純血では無く半純血です」

「じゃあシエルはなんで当主をやってるんだよ?」

 

 今度はフレッドがそう聞いた。

 

「シエルさんはいわば仮の当主。本当の当主が存在するのです。それに、『例のあの人』が勢力を上げた時、真っ先に狙われたのはスタージェント家。結局『例のあの人』はスタージェント本家の守りを破ることが出来ず、諦めた様ですがね」

「じゃあ、継承者である確率は限りなく低いんじゃ……」

「やっと、気づきましたね」

「今すぐ謝りに行こうぜ!」

「まだ、間に合……」

 

「ダメです!」

 

 そこで始めて僕は大声を出してしまった。周りの生徒の視線が一度集まるが、すぐに離れる。

 

「シエルさんに謝りに行ったとして、あなた達は何と言うつもりですかもう、謝るだけじゃ済まされないことになっているのが、分からないのですか?」

「「……」」

 

 僕の言葉に2人は黙ってしまう。

 

「シエルさんと元通りになることはもう不可能です。一度の過ちがこれほど大きな損失に繋がったんです。後悔してももう遅いですよ。では、僕はこれで。そういえば、今日はクィディッチの試合がありますね。お二人ともご健闘をお祈りします」

 

 そう言って僕は立ち上がった。

 

 ――もうこの人たちに用は無い。シエルさんをあんな風にした奴らは二度と許すつもりはないですから。

 

 僕は怒りを覚えながらも大広間を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

「また、ため息してるわよ、フィナ」

「い、今のは深呼吸ですよ! ほら、ハリーも先輩たちも頑張ってるなー」

 

 私は心配した顔のハーマイオニーにどうにか取り繕うと、試合に目を向けた。

 

 今日はクィディッチの試合。ハリーはマルフォイとの勝負に負ける訳にはいかない、といつも以上に気合いが入っていた。いつもは大人しいリーくん先輩も今日は面白いアナウンスで会場を盛り上げている。

 

「はぁ……」

 

 私はここ最近、ため息が多くなった気がする。あの事件のせいで、私は私たちは割れてしまったのだ。

 

 あの時。

 

 血文字の書かれた壁、吊るされた猫、そして棒立ちになった彼女を見て、私は状況を把握してしまった。彼女がこんなことを……そう思った瞬間、なぜか涙が溢れてきた。

 

 なんで、こんなことをしたの……?

 

 寮に帰ってからも考えるのはその事ばかり。恐怖、怒り、そして嫌悪、私の胸ではそんな感情が渦を巻いていた。

 

 そして次の日。どうやら入院をしていた彼女のお見舞いにでもいこうと寮を出ようとした時、噂好きの集団からこんな声が聞こえた。

 

「継承者のあいつは()()()らしいわよ」

 

 ちょうどその子以外に誰も話していなかったためか、その声は談話室中に広がった。私は足を止め、その話に耳を傾ける。

 

「四年前、魔法省で虐殺事件があったじゃない? その犯人はあいつらしいわ」

「え? それって、周りにいた闇祓いも死喰い人も全員死亡したあの事件?」

「それなら私も知ってる。確か生存者が1人いて、犯人としてアズカバンに入れられたとか……」

「この学校もすごいわね。まさか、殺人犯を入学させるなんて」

 

 私は驚きのあまり足に力が入らず、へなへなと座り込んだ。途中で誰かが私を支える。

 

「フィナ、大丈夫か?」

「リー先輩……シエルは……」

 

 私の問いかけに先輩は俯き、こくりと頷いた。

 

「俺も知り合いからその話は聞いた。バカみたいな話だが、実話だ」

「殺人犯、なの? あのシエルが?」

「アズカバンにいたことも本当だ。だが、彼女は覚えてないだろう」

「え?」

「アズカバンで8歳の子供が4ヶ月も耐えられると思うか? 答えはノーだ。あいつは一度廃人になった」

 

 アズカバンの看守をする吸魂鬼(ディメンター)は幸福な記憶を吸い、それを糧として生きている。また、吸魂鬼の接吻(ディメンターのキス)を受けた者は口から魂を吸われ廃人となり、後にはディメンターになってしまう。

 ということは、シエルは吸魂鬼の接吻を受け、一度廃人となったもののディメンターにならず、記憶を消し、今のように普通に暮らしていると?

 

「そんなの、そんなの! ひどい………」

 

 私が感じたものがシエルに対する同情からくるものなのか、はたまたシエルに対する怒りからなのか、私自身も判断出来なかった。

 ただ言えるのは、今の自分がシエルと今まで通りに接することは難しい、と言うことだ。

 

「リー先輩、私決めました」

 

 袖口で目元を拭った私は自分の決断を口にした。

 

 

 

 

 

 

 なのに、私は……!

 

 いつのまにか、物思いにふけっていた私は現実に引き戻された瞬間、自分が泣いていることに気がついた。ハーマイオニーに気づかれないように涙を拭う。一つ深呼吸をして、気持ちを整えると、私は彼女に声をかけた。

 

「ごめん、ハーマイオニー。私ちょっと帰るね」

「……分かったわ。寮に帰ってゆっくり寝るのよ?」

「うん」

 

 寮に戻ると、私は部屋に行く気力も無く、適当なソファに座り込んだ。

 無意識に座った場所は彼女の指定席で、なんとなくシエルの温かさを感じた。

 

『シエルとは、一度距離をおこうと思います。私のためにも、シエルのためにも……』

 

 あの時私はそう決断した。しかし、後悔先に立たず。いつも隣にいるはずの彼女がいないという生活に寂しさを感じた。

 

 シエルは今、何してるかな? 大広間でも見かけないし、ご飯ちゃんと食べてるのかな? 授業でも手を上げないから存在感無いし、まだロックハート先生に追いかけられてるのかな?

 

 ――シエルは今、どんな気持ちなのかな?

 

「私。なに言ってんだろ。これじゃあ、まるでシエルがいないとダメになったみた、い……」

 

 私は最後まで言葉に出来なかった。とめどなく溢れてくる涙。それは私の孤独を意味していた。

 

 ううん、違う。私にはリー先輩も双子の先輩もハーマイオニーも先生たちだっている。だけどシエルは、シエルには誰も味方がいない。シエルは私以上に孤独なんだ。

 

「ごめんね、シエル……」

 

 私は最後にそう言うと、ソファにもたれかかるようにして眠った。

 

 

 

 

 

 

「遅いよ、シエル」

「すみません、ニンフ。それでは、行きましょう」

 

 周りにいた闇祓い達にも声をかけると、どこか反応が鈍かった。

 

「なにか、問題でも?」

「い、いや、その……ホグワーツの事って本当なんですか?」 

 

 ビクンッ――

 

 私は心臓が跳ねるのを感じた。

 

「どこでその情報を?」

「こ、これです……」

 

 そう言うと闇祓いの男は新聞を取り出した。そして、私には恐る恐る渡してくる。もどかしくなった私は途中で彼の手から引き抜いた。

 

「なっ」

 

『【スタージェント家当主、ホグワーツでまた事件?!】

 スタージェント家当主の情報がまたもや事件として入手された。その名も『石化事件』。ホグワーツの管理人の飼い猫が××日未明、石化するという事件が起きた。この事件現場には壁に血のような赤い字で――』

 

インセンディオ(燃えろ)

 

 途中まで読んで、バカバカしくなった私は新聞を燃やしてしまった。しかし、記者の名前はしっかりと覚えてやった。

 あのコガネムシ、いつか殺す。

 私が殺意のこもった目をしていると、ニンフが私の肩を叩いた。

 

「シエル、嘘書かれたくらいで怒り過ぎよ。だいたい、その記者はデタラメ流すのが好きでしょ?」

「ありがとう、ニンフ。聞いたでしょう? これはデタラメです。それに、そんな事で心が揺らいでいる、いや、この際はっきりと言いますが、私如きに怖がっているようでは、この先もう長くはありませんよ?」

「す、すみません!」

 

 新聞を焼かれた挙句、訓練生に説教まで食らうというプロ闇祓い。

 

「他になにか言いたい事は?」

「だ、大丈夫です」

「そう。では、行きましょう」

 

 シエルの合図で闇祓いは任務へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また犠牲者が出たんですか?」

「はい。グリフィンドールの一年生、コリン・クリービー君が襲われました」

「あのカメラの子ですね?」

 

 任務を終わらせてホグワーツに戻ってきた頃にはもう空が明るくなっていた。昼過ぎになって図書室前で出会ったアルフィーをお昼ご飯がてら部屋に誘い、今は近況報告をし合っている。

 

「ハリーのお見舞いに行く時に襲われたようで……」

「ハリーのお見舞い? 彼は怪我でもしたんですか?」

「話せば長くなるんですが……簡単に言えば『骨抜き』にされたようです」

「もしかして、またロックハートですか?」

「はい……」

 

 そう言えば、そんなイベントがあったな……確か、ドビーのブラッジャーに腕を折られて、治そうとしたロックハートが彼を骨抜きにするんだったっけ……つくづく可哀想な主人公君だ。

 それはさておき。

 

「周りの生徒の反応は?」

「次は人を襲った! 的な感じですね」

「なんですか、それ? 私は危険動物かなにかですか? まあ取り敢えず、ダンブルドア様の誤解は解けたようなので、大丈夫ですよ。一歩ずつです」

 

 昨晩はあらかじめ任務がある事をダンブルドアに伝えておいた。わざわざタイムターナーまで預け、私が犯人では無いときちんと理解して貰った。今朝の手紙には謝罪文が書かれていたし、もう先生の疑いは晴れたと言っていいだろう。

 

「まだ、様子見ですね」

「ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 十二月になった。相変わらずフィナ達とは避け合っているし、生徒達の噂話も止まらない。二週目になると、マクゴナガル先生がクリスマス休暇に残る生徒達の名簿を取りに来た。私は一番上に堂々と書き、ルシウスからのパーティーの誘いも断った。

 授業では先生達の誤解が解けたことで、発言権を得た。なにかあったかと言えば、魔法薬学で「膨れ薬」を作った時にハリーたちがスネイプを激怒させていたくらいだろうか。とっさの判断で周りにいた生徒たちにも障壁呪文をかけてしまい、気まずい雰囲気が流れたが。

 それからまた一週間すると、「決闘クラブ」というものも開かれた。もちろん私は参加していない。後でアルフィーに聞いたところ、ハリーが蛇語使いということが発覚したらしい。このおかげで少し、ハリーへの疑いの目がかかったが、私から外れることは無かった。

 

 しかし、ここで問題が起きた。

 

「シエル、また犠牲者だ……」

 

 いつも通り近況報告をするために部屋に集まったのだが、彼は今日はやけに深刻そうな顔をしていた。

 

「今度は誰ですか?」

「ジャスティン・フレッチリー、ハッフルパフの二年生とほとんど首なしニックです」

「二人もですか?」

「はい。それと、ピーブズが騒ぎ立てたせいで……」

「もしかして、ポッターが?」

「はい。彼が第二の継承者として完全に疑われてしまいました」

 

 バサバサ――

 

 丁度、シェルが窓から入ってきた。私に手紙を渡すと去って行く。

 

「ダンブルドアさまからの呼び出しです」

 

 アルフィーに差出人の欄を見せながら私はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

「ハリーじゃねえです! ダンブルドア先生。俺はハリーと話してたんです! ほんの数秒前まで!」

 

 校長室に着くと、ハグリッドが入り口付近で喚いていた。ダンブルドアが大きな声で彼を止めるとやっと静かになる。

 

「ハグリッド、少し通してくれますか」

「おっと、すまねえ。俺は外で待ってますだ」

 

 ハグリッドがいなくなると、校長室は私とハリーとダンブルドアの三人になった。

 

「先生は、僕じゃ無いとお考えですか?」

「そうじゃよ、ハリー。もちろんシエルもじゃ」

「なんだって? シエルさんは犯人じゃないんですか?」

「ああ、そうじゃ。ちいと、校内での噂が厄介じゃがのう」

「でも、シエルさんはあの時、ミセス・ノリスが石になった時、僕らよりも先にあそこにいました! だから、彼女が!」

「煩いですよ、ポッター。貴方は話すよりも聞くことを覚えた方が良いでしょう」

「シエルのいう通りじゃ。ハリー、儂は君に聞いておかねばならぬ」

 

 私とダンブルドアの言葉で静かになったハリーは次の言葉を待った。

 

「儂に何か言いたいことはないかの?」

「いいえ。先生、何もありません」

 

 ハリーが去ると、ダンブルドアはため息を漏らした。

 

「シエルよ。この度は本当に済まなかったのう。ずいぶんと遅れてしまったが、今ここで謝罪をしよう」

「いえ。それより、ダンブルドアさま。本物の継承者を捕まえる気はないのですか?」

 

 私はダンブルドアの謝罪を軽く受け流し、真髄を突いた。ダンブルドアは苦い顔をして私を見る。

 

「校長、何の用で……お取り込み中でしたか?」

「いや大丈夫じゃよ、セブルス。シエル、済まないが、今日はもう遅いからのう。帰りなさい」

「分かりました……」

 

 結局何も進展のないまま、私は自室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 クリスマスはとても有意義なものだった。ほとんどの生徒が家に帰ったため、久しぶりに普通に廊下を歩くことができるし、フィナたちもいないため、気を遣うことも無かった。

 ふと、気になった私はアルフィーを連れて事件の起きた廊下を訪れた。

 

「まだ、消されていなかったのですね……」

 

 赤い文字はあの時のまま、変わっていない。そのためか、見ただけで何か発作が起こりそうだった。

 

「大丈夫ですよ。僕がついてますから」

 

 そう言うと、アルフィーは私の手を握った。冷たくなった体が手を中心に温まっていく。しばらくそうしていると、遠くの方から声が聞こえた。

 

「そろそろ、行きましょうか」

「そうですね」

 

 朝になると、プレゼントが六つ、机の上におかれていた。それぞれ、アルフィー、リーサ、ダンブルドア、セブルス、ルシウス、ニンフからだ。

 

 私はお礼を言うために寮を出た。すると、もうすでにそこにはアルフィーがいた。

 

「おはよう、アルフィー」

「おはよう、シエル」

「プレゼント、さっそく使ってくれているのですね」

 

 みると、私の手作りのマフラーをつけていた。鷲の刺繍は大変だったな…。

 

「シエルこそ」

 

 私の首元にはアルフィーからのプレゼントであるマフラーが巻きつけられていた。

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