ハリー・ポッターと金銀の少女 作:Riena
周りにいるのはホグワーツの卒業生や大人たちばかりで、私のような子供は一人も見当たらなかった。それもそのはず、ここは闇祓い本部の適性検査場なのだ。子供が居ていい場所ではない。だが私はそこにいた。
「シエル!」
突然、自分の名前を呼ばれ、私は振り向いた。
「ソード。来てくれたのですね」
ソードが叫んだせいか、私の年齢のせいか、どうやら随分注目されているみたいだ。私は綺麗な笑顔を作って、ソードに応えることにした。しかし、ソードは
「何その気持ちの悪い笑顔は」
全く空気を読んではくれないようだった。
「……見られてるんですよ!!」
小声でそう言うと、ソードは納得したような顔をした。
「それで、今日は復職届けを、局長へ出しに行くんじゃなかったのですか?」
「それなんだけど、局長がオフィスにいなくてね……」
丁度その時、局長が集まっていた野次馬たちの間を縫いながら、私たちのところへたどり着いた。
「これは、
「ええ、そうです」
「はい、そうですよ」
二人重なった声に、局長は苦笑した。
「本当に仲がよろしい。スタージェント殿が合格されたら、間違いなくペアになりますな。おっと、もうこんな時間か。では、また後程」
そう言うと、局長は同じように戻っていった。
すると、周りの人達がざわめき始める。
おっと不味い。私の正体がバレてしまったでは無いか。
すぐさま私はマントのフードを被り、ソードは目くらましの術をかけた。
しばらくして、検査が開始された。当たり前だが、とても厳しい検査だった。とっても。
「ソード、よくあなたは合格できましたね」
「ふふ、これでも私はホグワーツで学年3位よ。甘く見ないで頂戴」
「それは絶対嘘」
「ええまあ、ざっと10位は上乗せしたわ」
さらっと嘘をつき、また、悪びれもせずにウィンクまでしてくる。
私は大きくため息をついた。
数日後。私は無事、合格発表の日を迎えた。
「シエル、オメデトー」
「ソード、アリガトー」
驚きの結果に思わずカタコトになっていると、局長から声が掛かった。
「もっと喜びたまえ諸君。スタージェント殿
そう、数十人が検査したのにもかかわらず、合格者はたった一人、私だけだったのだ。局長に聞けば、そうとうギリギリ合格らしいが。
(合格者のいない年もいるってホントなんだ……)
こうして私は無事、正式な訓練を受けられるようになったのだった。
「早いわね」
初任務の日。集合場所でソードを待っていると、しばらくして声がかかった。
「ソード、遅かったわね」
「それじゃあ、早速行きましょうか。姿現しの経験は?」
「屋敷しもべのなら」
「それなら大丈夫ね。手を」
ソードが手に私は自分の手を重ねた。
2人が消える直前、シエルのペンダントが光った。
――ふっ、 ははっ!!
現場に着くと、錆びた鉄の様な臭いが、2人の鼻をついた。
「なに、これ……」
「人間の血ね」
目の前に広がる、真っ赤な池。所々、人と言う名の黒い島が浮いている。訓練時に何度か血を見て慣れていたシエルだったが、さすがにひどい有様だった。ソードも動揺を隠しきれない様子。
「随分派手に殺ったみたいですね」
「それにしても酷いわ……」
「
シエルは呪文を唱えそこを片付けた。繋がった人体は見る見るうちに女性へと変わり、血の池のあった場所には、きれいな刺繍の施された絨毯が浮び上がった。辺りにあった、布を女性の顔にかけたのは、一応の配慮か。
「マグル? いや、半純血ですかね……にしては襲うものが」
「シエル。きっとこれが狙いだわ」
そう言って、ソードは箱を取り出した。
「中は?」
「空っぽよ」
「中身を盗んだという訳ですね」
「最近、泥棒が増えているって噂、ホントみたいね」
簡単に行き着いてしまった答えに、少し違和感を覚える。
「どうかしたの?」
「いや、なんて言うか。ただの泥棒がここまでするのかな、と」
「確かにそうね……けれど、愉快犯かもしれないし、こうして何か盗まれているわけだから」
「そうなのだけど」
「まあ、犯人を捕まえてみれば分かるわ。
ソードの呪文で犯人の足跡などが現れる。
「ここで姿くらましをして、それから……」
「漏れ鍋ね」
「それじゃ、さっさと終わらせましょう」
そう言って、2人は姿くらましをした。
漏れ鍋に着くと、早速ターゲットを発見した。適当な席に座り、頼む。
ターゲットとの距離は約6メートル。
シエルとソードは目配せをすると、シエルは立ち上がった。少しずつ、ターゲットに近づいて行く。あと、1メートル……数センチ……
「あっ」
あたかも過って躓いたかのようにして、相手の注意を削ぐ。そして、相手の意識外にいるソードが相手を確保する。
はずだった。
シュバッ――
グルグルと視界が回る。これは、姿現しだ。
次の瞬間、たどり着いた場所は魔法省だった。
素早く頭を回し、杖を出す。だが、人混みだと言うことに気がつき、一瞬躊躇ってしまった。
その一瞬に呪文が飛ぶ。
「
「はっ!!」
避けようとしたが、間に合わない。
杖が体ごと吹き飛んだ。
人に使う時は威力を抑えるんだぞ!!
「
後ろから呪文が聞こえ、床とシエルの間に見えないクッションができる。視界の中に敵が杖を上げるのが見えた。私ではない、標的はソードだ。
「ソード!!」
その言葉で意思疎通し、ソードが伏せる。間一髪だった。周りの人々は、悲鳴を上げて逃げ出し、たまたま居た闇祓い達は、速やかに参戦する。
「
「
「
「
呪文が、閃光が、飛び交う。1対複数人。いくら、腕が良くても、人数で負けてしまう。
勝てる……そう油断した時、ターゲットの援護が到着した。
集まった闇祓い達がみな、息を呑む。援護に来たのは………
呪文が行き交うその場所で、私は焦りを感じていた。
騒ぎを聞きつけ、徐々に闇祓いが増えているが、それと同時に戦闘不能者も出ている。対する死喰い人は、数は少ないが腕は確かだ。
――全滅――
そうなるまであと、どれくらいの時間が残されているか。
闇祓いで残っているのは、シエルとソードを合わせて6人だけとなってしまった。その他は、命を落とした者こそいないが、全員が重傷だ。しかも、6人ともに、体力、魔力も限界を越えようとしている。
「
先程まで無言呪文を使っていた一人の死喰い人が、呪文を声に出した。どうやら、相手も余裕がなくなって来たらしい。と、思ったのもつかの間。
「
「きゃっ!?」
「ソード! プロ…
シエルはとっさに守ろうとするが、前方から来た死喰い人に応戦するのに精一杯。
不味い、このままじゃソードがやられてしまう。どうする。どうする! 援護を呼びに行けない。誰か、誰か助けて……。
次々と襲いかかる死喰い人。
今にも殺される寸前であるソード。
周りに倒れる闇祓い達。
味方の血に汚れる杖。
真っ赤な血。血。血。血。
――ペンダントが深紅に染まっていく。
視界が眩み、胸の辺りが熱くなる。そして次の瞬間。
「
視界の全てが紅く染まった。
本来この時代の魔法大臣はミリセント・バグノールドですがこの作品ではコーネリウス・オズワルド・ファッジが大臣にしました。