さて、評価ありがとうございます。5人から色がつくのですね
風速10m/sで波0.8mはおかしいとか、APFSDSはどうなんだとか、護衛艦の射程の話とか。
いろいろ妙に思うでしょう場所はありますが今のところはスルーです
どんな評価が下されようと、作品を作者が愛さなきゃどうするんだって話ですし、続けていきますよ
今回の三つの出来事
①前回から少し三人称に挑戦。これアンチ・ヘイトはどうするべきか。
②申し訳程度のR-15・性転換・ガールズラブがようやく参入。なお()
③ようやく2人目の艦娘が登場します。今あるプロットで主要艦娘は4人。
(それでも読もうと)アッハイな皆様は、筆者と地獄に付き合ってもらうよ
世にメタルマンのあらんことを
3/28 修正
32.25tは最大重量でした
真っ黒な海を船舶と航空機の速度に驚きながら進むこと1時間ほど。
水しぶきでプロペラが破損しかけるという事故があったものの、シールドの限定展開でプロペラだけ保護して難を逃れた。
シールド、限定展開なんてできたんだなあ。
『説明する時間がなかった。』
ああ、そう……というか博士はあと何個俺に話していない機能があるんだ?
二式大艇のスペックはわかっても博士のいう、ヘルメットの機能とやらは全容がわからないままだ。
というか、妖精さん言ってたじゃん、いい加減な操縦だと水しぶきで歪むって。
それと結局、懸念していた会敵はなかった。
索敵を怠ったつもりもないが、こう敵がいないと不気味に思える。ここ赤い範囲の中なんだけどなあ。
<我が海軍は、いずれハワイをものみこむだろう>
なにはともあれ、俺たちはエリアFFに到着した。
エリアFFは空から見ると島などが三日月状に点在する環礁のようだ。
『周囲になにかあるようには見えないな。』
(ええ、動画では何か言っていた気がするんですけど)
スキャンモード。カモフラージュを解除する。
波が高いものの、他に気になる点はないが………。
すると緑髪さんから<えりあFFの北西からはっこうしんごう>と声が掛かった。
(発光信号?)
こう、ぴかぴかするやつだっけか?
<そだよー>
茶髪さん、起きてるなら働いてよ……。
(ちなみに、なんと読み取れました?)
<"鬼さんこちら"だそうですー>
ん? ああ、そういえば、誰かここで待っていることを言われたような。
『エミリー、合流したほうがよさそうだ。』
(ずっと待たせているわけですしね)
光の方角に向かうと、海岸沿いにやや大きめの岩があった。
波が打ちつけられ、水しぶきが舞っている。人の気配は感じられない。
<あの裏からですねー>
(おーい、誰かいないのかー?)
声をかけながら岩の裏手に回ってみたが。
(誰もいない……?)
周りを見回す。岩の上に掌サイズの物体──"図鑑"曰く「探照灯」が置いてあった。
(これ、だよな? 光を出してたのは)
<そのはずですー>
じゃあ持ち主はどこへ?
そう思った矢先。
<敵の潜水艦を発見!>
金髪ちゃんが叫ぶ。
(駄目だ! じゃない、どこ!?)
やっぱりおいでなすった! 海面を急いで確認。潜望鏡があるはず……!
<その程度もはっけんできないのか>
なんで煽られた!? ええい、どこだ。見当たらないぞ。こうなったら……
(【Clock Up】!)
虎の子を使うまで!
(……………)
まぁ、そんな都合よくいくわけないよね。
『エミリー、まだクールタイムのようだ。』
はい。
<はいじゃないが>
メーデーする前に、俺の
速度的に、今から離陸しようにも間に合わない。ここまでか……。
来るであろう衝撃に身構える。
予想通り、すぐにそれは来た。
真下からの衝撃。
(ごっ……)
腹に来た。燃料がもうぎりぎりだったのが幸いか、吐くことはなかった。
空中に打ち上げられたのか、視界が高くなる。
(あっけないものよ……)
父さん、母さん。親不孝者でごめんなさい。俺もすぐそっちに行くよ……。
妖精さんたちもごめん。どうやら俺じゃあここまでのようだ。本当に申し訳ない。
でもおかしいな、父さんも母さんも顔を思い出せない。
父さんは俺が2L牛乳パックを直飲みすると「俺も飲むんだぞ」と怒ったり、母さんは俺が密かに片思いしてた女の子と一緒に登校するために、家をでる時間を合わせてたのに気がついて弄ってきたり。
そんなどうでもいいことばかり思い浮かぶってのに。なんでだろ、涙が出るや。
あの子、今は元気にしてるかなぁ。名前も思い出せない……。
でも何で父さんと母さんは死んだんだっけ? 俺はまだ20代だったはず。
まあいっか。どうせ死んだら向こうで会えるんだ、小さなことじゃないか。
さよなら、さよなら……。
……。
…………。
………………。
……………………。
というかいつまでたっても爆発しないな? 魚雷かと思ったんだが……。
意を決して閉じていた目を開ける。
赤い瞳が俺を見つめていた。
(あっ、どうも……)
ひえっ……。よく見ると、瞳の中に桜が映っている。
視線の倍率を下げると顔が見えた。幼さの残る顔立ちで、その表情は愉悦。まるでイタズラが成功した子供のようだ。
どうやら人らしい。次に見えたのはピンクがかった薄い菫色の長髪。ツインテール? いや、ポニーテール?
表現が難しいその髪を緑色の大きなリボンで纏めている。首にはチョーカー。
全体を確認すると、少女は半身を海に沈めスク水を着ていた。胸のゼッケンには「イ19」と記入されている。
…………?????
なんで海で旧スク!? 絶滅したはずでは……まさか自力で脱出を!?
いや、そうじゃない、海で着るのも変じゃないけどなんで太平洋のど真ん中で!?
混乱する思考。いや、理解不能でしょ……。しかも、ゼッケンが立派なもので膨らんでいる。
脇の次は胸? なんでこんな会う先々露出度高いのかなぁ!?
(えっと……)
言葉に詰まる。なんと話しかけたらいいんだ?
どうやら、俺は艇体をこの少女に持ち上げられている。その力は強く、脱出しようにもびくともしない。
そんなことを考えていると"図鑑"にヒットした。
彼女は「伊19」。潜水艦型艦娘だ。つまり味方である。
(ちょっと、金髪ちゃん……?)
話が違う。敵の潜水艦といわれたから身構えたというのに、蓋を開ければ味方だ。
張り詰めた意識が萎えていく。
<まぁそんなわけないよね>
赤ヘルさんが笑っていた。他の妖精さんも。
(ちょっと、まさか皆知ってたんですか!? 俺だけのけ者にして!)
心臓がきゅってなったんだが! 命かかったおふざけはやめてくれよ……。
こちとら死に際の挨拶みたいなことしてたってのに!
<ほんとうにもうしわけない>
博士の真似までしだした。
(博士は?)
『本当に申し訳ない。』
チクショウ! ご本人もだ。
(ところで、この子はなんで喋らないんだ? おーい)
「…………」
拗ねた俺は妖精ズとの話を切り上げ、少女を観察する。
しかし俺を捕まえている少女は依然、ニコニコしたままだ。何の反応も示さない。
(もーしーもーしー)
「…………」
(なーにーかー)
「…………」
(その手をHA☆NA☆SE☆)
「…………」
駄目だこりゃ。お手上げだ、どうするんだよこれ。
<無線ではなしかけてみますー?>
見かねた緑髪ちゃんが提案してくれた。確かに、無線ならなんらかの反応はあるはず。
そう思ってお願いしようとした時、ザザーッという耳鳴りが聞こえた。
(なんだ……?)
ザ、ザ、ザザ……。
そんなノイズみたいな音がした後。
[こんにちはなの。アナタが二式大艇ちゃん?]
直接脳内に!?
聞こえてきたのは子供のような甘ったるい声。それが脳内に響いた。え、なんで脳内に直接!?
待っていたのはこの人か? でも状況的にそうだよな。
(え、ええ)
[んふー、よかったぁ。潜水艦、伊19なの。イクって呼んでもいいの]
少女を見る。ニコニコしているが、口は動いてない。どうやら考えていたことは同じだったらしい。先に無線で話しかけて来たわけか。
もしや服装に反して結構しっかりしてる? いや、そんな失礼なことを考えるより挨拶には挨拶で返さなければならない。古事記にも書いてある。
(こちらこそ、二式大艇のエミリーです……もしかして、ここで待っていたのは)
[そうなのね、待ちくたびれたなの]
──伊19──
大日本帝国海軍が建造した潜水艦。正式名称は伊号第十九潜水艦。
巡潜乙型とよばれる、旗艦設備を廃棄して変わりに水上機を搭載できるようにしたタイプ。
中でも伊19は米空母ワスプに攻撃した際、6発の魚雷で空母1、駆逐1撃沈、戦艦1中破という潜水艦として大戦果を挙げた艦でもある。
この時の艦長である木梨 鷹一氏は潜水艦長として唯一、陛下に単独謁見の栄誉を賜った人だ。
この伊19、二式大艇とも因縁がある。
というのも、「K作戦」前に水上機でオアフ島の偵察を行ったり、実行時には二式大艇に燃料を補給した艦だからだ。
そして今回も、伊19に燃料の補給を頼んでいるらしい。
余談だが、潜水艦で水上機を運用した先駆けはイギリスで、「ベト」と呼ばれる小型の水上機をM型潜水艦に搭載して使ったらしい。
その後フランス、イタリア、アメリカも実験して技術的には成功したが発展せず、本格的に取り組んだのは日本のみである。
というのも、日本の潜水艦は潜望鏡が水面上1メートル程度しかないのだ。レーダー技術は他国に比べてかなり劣っていたもので、必然的にレーダー以外でその索敵範囲の狭さを補う必要がある。
それで水上機を載せよう! となるのだから当時の技術者たちは変態としかいえない。
さらにこれが発展してとんでもない水上機を潜水艦に搭載させるのだが……これはまだ開示されてない。
(ところでイクちゃん、なんでさっき声かけたとき反応してくれなかったんです?)
まさか妖精と以心伝心して俺を嵌めようと……?
[えー? 聞こえなかったのね。何か言ってたの?]
え、聞こえなかったの?
(俺、ちゃんと話しかけてみましたよね?)
妖精さんに確認する。
<話かけてましたねー>
<いちおうね>
(ほら、妖精さんもそういっているんですよ)
[でも聞こえなかったのね]
強情な……こうなったら、博士!
『エミリー、実のところ、君の声は私たち以外には聞こえないのだ。』
ひょ?
(え、じゃあ俺はこれまでずっと独り言みたいにやってたと?)
『申し訳ない、そうだ。』
(なんでそれ言ってくれなかったんですか!)
『時間がなくて説明できなかった。』
嘘付け! まあ、なんだかんだ博士のことだし意味があるんだとは思うけど、一言欲しかったなぁ。
[ぶつぶつ、独り言は済んだなの?]
え、まさか博士の声も?
『そうだ。』
えぇ……。
(ええ、まぁ……)
[歯切れが悪いのね。体調悪いの? お薬いる?]
(いや、そうではなく……それより!)
嫌味かと思ったら心配してくれてたのか。
[それより?]
(だとしてもなんでイクちゃんはずっと黙ってたんです?)
俺が独り言をブツブツ言いながら死ぬかもしれないことに神経すり減らしてたのを見て愉悦してた可能性が?
そんな、ドSだったのか……って何の話だ。
[…………]
ところが聞いた途端、彼女はそれまでの笑顔を消して無表情になった。
笑っているが、笑っていない。
瞳の奥に黒い渦が巻く。思わず引き込まれてしまいそうな……。
だがそれは決して明るいものではない。殺意や悪意と呼ばれる暗いもの。
ぞくっ。
(……っ)
思わず息を呑んだ。地雷を踏んだか…………?
だがしかし、彼女は一瞬でまた元の笑顔に戻ってしまったのである。
[ちょっと、建造時にいろいろあったみたいなの]
彼女はそっと首を撫でた。チョーカーが揺れる。
うん? 艦娘を造れるのは妖精さんだけなんだよな。
(妖精さんって失敗することもあるんです?)
<新人ならあるよー>
<でも、それに気がついた熟練妖精がなおすはずなんですけど>
茶髪さんの後に緑髪ちゃんが補足する。
そりゃ、新人なら失敗することもあるか。茶髪さんとか……。
<失礼なことかんがえてない?>
いえ、なにも。
[まあ、過ぎたことはいいのね。そ・れ・よ・り♪]
イクちゃんの声に意識を戻す。彼女の声は喜色に揺れていた。
ちぃ、知ってる。こういうとき俺にとって嫌なことがあるんだ。
そして案の定、イクちゃんの後ろから4本の管のような何かが伸びてきた。
…………いや、それ触手だよね?
うねうねと揺れる青いそいつはどっからどう見ても触手だ。言い逃れできないぞ。
[いひひっ♪]
しかもあろうことか彼女は俺にそいつを近づけてきた!
奴は俺を獲物に捕らえたのか、ちろちろと揺れ動く。
それぞれ主翼に1本ずつ、艇底と艇上に1本。
(え、ちょ、なにそれは……)
[補給の時間なの♪]
あっそっかぁ……。そういえばその為にここに来たんだったわ。
(でもなんで触手?)
[直接中に注いだほうが効率いいのね]
まさかお注射ですよ~だとか、点滴の時間ですよとか、そんな感じなの……?
じりじりと近づく触手。そして、先端から針が飛び出した。ぴゅっ、と茶色い液体が漏れる。
針? 針? マジ? ちょ、マァアアアアアアアアアアアアアア!!!!
(ヤメロー! シニタクナーイ! 俺は尖端恐怖症なんだ! そんなものぶッ刺されたら)
<だめ、しんじゃう>
そうだよ! 絶対心不全で死ぬわ! 心臓ないけど!
[えー? でも補給は必要なの]
(別の方法があるでしょ別の! 効率がどうとか言ったからには他にもあるんじゃないの!?)
俺も嫌なものはいやだ。必死で抵抗する。
[でもぉ……]
なんで渋るんだよ! はやくこの触手をどうにかしt──
ぴとっ、と冷たい感触が俺の艇体に触れた。
ぎぎぎ、と視線を向ければ、光に反射して光る白いものがあった。
(くぁwせdrftgyふじこlp)
くそっ、体を動かそうとしてもエンジンが動かない! なぜだ!?
<あららぁ? ねぇ、これやばいんじゃない?>
赤ヘルさん!? オンドュッラギッタンディスカ!?
なんてことだ、エンジンを止められてしまった。これじゃあまな板の上の魚だ。
一体どうすれば……。
『落ち着け。』
(博士!)
そうだ、俺には博士がいる。この裏切りじみた状況にもきっと対応をしてくれるに違いない。
『よく聞け。尖端恐怖症を克服する方法を教える。』
そっちかーい!
(それよりこれ止めてよ博士!)
『申し訳ない、無理だ。』
なんか新しいバージョンだ。じゃない!
<燃料受ケ入レ用意ヨロシ>
あっ妖精さんなにしてんの!?
触手は今にも俺の艇体を突き破らんとしている。
(ぎゃー! 迫ってる、迫ってる!)
<情けないやつ!>
<あれれ、まさかびびっちゃったぁ?>
なんでだから煽ってくるんだよ!
『まず"尖端恐怖症"という言葉を思い浮かべる。そしてゆっくりこう唱えるんだ。「存在しない」と。』
やばい触手もとまらないし、博士もとまらねえ!
やるしかないか……。
(存在しない!)
……お? おお、触手の先端を見ても全然怖くないぞ。これ結構いい能力なのか?
『人間の脳の中には恐怖を司る領域が存在する。ナノ・ロボットがそこに進入して、君の脳内にある尖端への恐怖を削除したんだ』
え? それ人体改造────
次の瞬間、何かが開いた音と共に、俺のそんな疑問はぶっ飛ぶほどの衝撃が全身に走った。
ぷすっ。
(あ゛き゛っ゛)
なにか、入って、きたぁ……!
[注入開始なの]
(あ゛っ゛あ゛っ゛あ゛っ゛お゛っ゛)
な、なにこ、れ、なに、か、たたきつけ、られてりゅ♥ごりごりってぇ♥びゅーっ♥びゅーっ♥てぇ♥
『ふむ。これは中々に良いものだな。』
い、いきおい、とまりゃない♥ おなかのなか♥とびまわって♥なかに♥なかぁ♥
(んぅ……ぁっ、はか、はかしぇ、み、みないでぇ……)
ま、まっひぇぇ♥こんにゃの♥こんにゃの♥しりゃにゃぃ♥
[へぇ。アナタ、ここがいいのね?]
むきが、かわったぁ♥ からっぽたんくにびゅーっ♥ってきたぁ♥
(んひぃっ! ぅぅ、ぁぁっ、ゃ、やぁ……)
しんじゃう♥しんじゃう♥いき♥できにゃい♥お゛っ♥お゛っ♥お゛っ♥
やぁ……やぁ……!
きちゃぅ! わたしのねんりょうたんくにしゅごいのきちゃうぅ!
とんじゃう、とんじゃううううううううううう!
ゲロマズ圧縮航空燃料しゅごいのぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉ!
おえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。
◇◆◇
────ふぅ。
偉い目にあったなぁ……。
(はぁぁぁぁぁぁ………)
ちくしょおおおおおおおおお!!!!!!
俺は男だぞ! なんで、なんであんな……
『エミリー。心拍数が上がっているな。これは軽度の興奮状態にあるということだがなにか──』
(博士は黙ってて!)
『エミリー。目上の者にはふさわしい口調というものがあるだろう。』
うっせーーーーーーーーー!!!!!!
くそっ、くそっ、くそっ! 最悪だ!
何が最悪って、男の俺がアレされたのもそうだが────
何よりも、あれをちょっといいと思っちゃったことだよ!!!
キェェェェェェェェェェェェ!!!!
◇◆◇
『エミリー。落ち着いたか。』
(はい、博士)
賢者モードって奴ですけどね。
[悪かったなの。あそこまであえ]
(あー! あー! あー!)
[いひひっ。必死でかわいいなの。でも、イクには提督がいるからごめんねなのね]
(俺は今誰に振られたんだ???)
駄目だ、このスク水少女の相手は疲れる……。
さて、俺が何をぶち込まれたかというと、"圧縮燃料"というものである。
この圧縮燃料は名前のごとく圧縮された燃料なのだが、すごい粘り気がある。
端的に言って、まずい。マーマイトか? うなぎゼリーか? その辺の味なのである。
恐らく燃料は航空機にとっての食事なのだが、なぜこんな軍用レーションみたいな仕打ちを……そういえば俺扱いは軍属なんだったわ……。
うぇ、まだ口に残ってやがる。というか人間の味覚やらがあることのほうが驚きだわ。この状況じゃ拷問だよ。仮に圧縮されなくてもガソリンを人間の味覚で摂取したらヤバイことになるわ。
ちなみにこの圧縮燃料、製造元は妖精さんらしい。酷い。
とはいえ、現在の俺の全長はおよそ1.5mほどである。それでいて本来の二式大艇と同じスペックを誇るのだから、全てが圧縮されてしまうのも仕方ない。
こんな図体でも最大重量32.25tである。目の前の巨乳娘でさえ、基準排水量2198tである。見た目に騙されてはいけない。
本当、妖精さん何者?
[補給はこれで終わりなの。任務、よろしくなのね]
(んひっ)
そういって、イクちゃんは触手を外して俺を海に下ろしてくれた。
変な声? 出てません。出てませんったら!
確かに偉い目にはあったが、こう、力が漲るような感覚がある。これが燃料を補給したってことかな?
(ええ、まぁ……ありがとうございました)
[いひひっ。クセになったらまたくるといいなの♪]
(いえ、お断りします)
[えー]
なんでそんな残念そうな顔をするかなぁ……絶対俺の顔見て笑いたいだけでしょ。騙されんぞ。
(妖精さん、早く行きましょう)
<おー>
<前進あるのみー!>
エンジン点火!
燃料を入れて重量はあがったため体は重い。だが新鮮な燃料が入って火星は武者震いが止まらないようだ。
スキャンモード。周辺状況を確認。
風45度14メートル、波浪20度から波高2メートル、雲高100メートル、霧・曇り、雲量8、視界不良。
波が高い。自分以上あるんじゃない? それでもやらねばならぬ。
それに、俺は一人じゃあないんだ。
<じゃあがんばってねぇ!>
<以後無線はへいさしますね>
<二式大艇、いっきまーす!>
『エミリー、出発だ。』
[エミリーちゃん、行ってらっしゃいなの。作戦の成功を祈ってるのね]
さぁ、出撃だ!
ピストン機構が唸る。圧縮された空気に触れてガソリンが燃える。
単排気管の火星エンジンから白い尾を引きながら、二式大艇は進みだした。
水上機の特権は風の方角に発着が影響されないことだ。どんな方角に風が吹いていようとそれに合わせれば問題ない。
荒波を強引に押し進む。
ふと、とんっ、とんっ、と軽くジャンプし出したのに気がついた。
あれ? これ……。
<ポーポイズだよー>
<エンジンカットー!>
どんっ! と海面に叩きつけられる艇体。
(いてぇ!)
幸い破損はなかったが、痛い。
ポーポイズ現象が起きてしまったら、もうエンジンを止めるしかない。
一度仕切りなおして、今度は上手く離水できた。海鷲はハワイへ向けて飛び立つ。
なんだかしまらないなぁ……。
[イクも、貴方を使えたら「提督」に褒めてもらえるの?]
オイルと破片にまみれた海の上で、そのつぶやきは
◇◆◇
さて、これは"図鑑"で知ったことだが
昭和17年1月5日のことである。
真珠湾の飛行偵察を命じられた伊19は索敵機を発艦させようとしたが、射出機が故障。
水上におろして発進させることには成功したがひと悶着あり、結果偵察機と伊19は敵哨戒艇に発見されることと相成った。
無事に逃げることはできたものの、その影響で偵察は完全なものとはいえないものになる。なにせ大慌てだ。
いくら水上偵察機を積んだとしても、その偵察範囲はやはり広いとはいえない。
だが、そもそもアウトレンジで運用される二式大艇なら話は違う。
長大な航続距離・時間、軽快な足回り、重武装、水上機として異色のレーダー搭載。
そんな存在を目の当たりにした彼女は、果たしてなんと感じたのか。
あの昏い瞳が、俺には忘れられなかった。
◇◆◇
「ねぇ、どうしてアナタは人間を信じられるの?」
出口の無い鳥かご。真珠のない貝殻。光一つない地獄の底。
少女は、一人孤独だった。
「私はただ、アナタが帰ってきてくれさえすればよかったのに」
少女は、現実に打ち勝てなかった。
「あんな無茶を、する必要だって、なかったのに」
少女は、思い出に浸ることでしか自我を保てない。
「一言、ただいまって、言って欲しかっただけなのに」
『大丈夫、オレが言うさ。君の悲しみが消えない限り』
少女は、マガイモノに慰められなければ立ち上がれない。
「ありがとう。さぁ、はじめましょう?」
『ああ』
「殺すわ。アナタを」
────アナタヲ、裏切ッタ人間ヲ
それは、遠い記憶。
遠い遠い、今はもう、思い出すことも難しくなってしまったけれど。
とてもとても、だいじな記憶。とてもしあわせだったころの記憶。
少女が少女で、彼女も彼女だったときの記憶。
あいとゆうきがあったころの記憶。
「ねぇ、ほんとに行くの? やめよう? 今からでも遅くないよ、──さんに頼もう?」
少女の言葉は震えていた。袖を掴んで、止めようとする。例え、その意味がないと知っても。
「それでも、オレは信じたいんだ、彼らを。今を必死に生きている、0と1の存在じゃない彼らを。
右も左もわからなかったオレを導いて、何も出来ないゴミをここまで育ててくれた、その恩を返したい」
「でも!」
少女の脳が警鐘を鳴らす。このまま行かせてはいけない。止めないと。
他の人間なんて知ったことか。彼女さえ、彼女だけ、彼女にこそ少女は側にいて欲しいのだ。
醜いといわれてもいい。どうせ
ただ、今回は駄目だ。事前情報からして怪しすぎた。
[救援求ム]の四文字だけで依頼を送ってくる馬鹿がいるか! その上報酬が不釣合いなまでに多い。相場の三倍だと? 疑わないほうがどうかしてる。
それでも彼女は受けてしまう。致命的なまでのお人よしだから。全てが空回りするくせに救われたいと願うサバイバー症候群だから。
依頼主もそれを知っててやってる。気に食わない。今までお礼なんてしなかったくせに。彼女の善意で生きてきたくせに!
お前らが殺すのか。よりによって、彼女が一番最初に助けたお前らが。ふざけるな、ふざけるなよ。
頭の中をぐるぐる、ぐるぐる、何をすれば彼女が止まってくれるか考える。
逃げよう────駄目だ。彼女は1より100をとる人間だ。自分という1で100が助かるなら喜んで自分を捨てる。
私を一人にしないで────駄目だ。ならばこれを受け取ってくれ、なんて形見をよこすに決まってる。少女は温もりが欲しいのに。
私もいく────駄目だ。彼女は優しいから最初はやんわり断るけど、ダダをこねる私を強引に気絶させて勝手に行ってしまう。
駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ
駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だだめだだめだ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ
駄目だだめだだめだ駄目だだめだだめだ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だだめだ駄目だ駄目だ
駄目だ駄目だ駄目だだめだ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だだめだ駄目だ駄目だだめだ駄目だ駄目だ
駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ
駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ
─────────
正解なんて、なかった。
密かな自慢だったIQ173の頭脳も、肝心な時に少女が望む未来を映してくれない。
少女はもう、かんがえることなんてできなくなってしまった。
少女に残された道は一つだった。
そんな少女を見て、困ったように頭を掻きながら、彼女は告げる。
「安心しろって。そうだな、帰ってきたらプレゼントをやるよ。とっておきのな」
少女は、その言葉だけを信じ続けた。
◇◆◇
・エミリー(/)
ようやく声が出ていないことに気がついた。
尖端恐怖障なのになんで秋津洲の髪に反応しなかったのか。コレガワカラナイ
落ちろ! 落ちたな(確信)
・博士
エミリーの熟練度()が上がってきてご満悦
本編でもスケベだから間違えてないよ
・妖精
確信犯。
・二式大艇
補給(意味深)
BAN喰らう前に運営からタグの警告がくると聞いたからたぶんんヘーキヘーキ
大丈夫だよね? キスくらいは他の作品でもよく見るし……
これは燃料補給です。実際健全。
・伊19
忘れ物をしちゃったの。
未実装艦を使う勇気が筆者になかった事で26(実装済み)や15/23/25(同未実装)の分まで働かされた
リボンは彼女曰く「提督」のもの
念のため言っておきますと、史実の偵察ではwiki曰く空母1,巡洋艦9,小型艦6を見つけてるので十分偵察は成功してます
本来の燃料補給は1分間200リットルらしい
・謎の少女
一体誰なんだ……
エンディングはもう決めています
あとは思い付きで風呂敷を広げすぎないよう注意しなければ
なお新人が書く際、登場人物は両手に収まるくらいまでにしたほうがよいらしい
……あっ
このSSを書くにあたってやりたかったことの一つがこの話。
航空機に燃料補給、いいよね……いいよね?
艦娘のキャラ崩れがないかが怖い