申し訳ない、二式大艇だ   作:さっちぇみー

7 / 10

×強襲
○急襲

日向改二着ましたね。開発資材181ってなんぞや。対潜高すぎて草
開発資材がない人は6-3同志になろう。お前も家族だ。
対潜仕様の変更や新たなオートジャイロ、ヘリコプターと盛りだくさんなアプデ。
ついにヘリ憑依もかけるわけですがどなたか如何です?

ここまで読めばわかるとは思いますが、やりたい放題小説です
知識も造詣も深いわけではないので、そのあたりは自己責任でどうぞ

統合なんちゃらはオリジナルです。メンタルモデル式武装制御だとお考えください。



申し訳ない、ハワイだ

 

◇◆◇

 

 

 

(それにしても視界が悪い。この雲どこまであるんです?)

<さぁ……わたしたちも支配領域で青空を見たことはないんですよ>

(え、それは……もしかして成層圏までこの調子とかありえたり)

<そうかもしれませんね>

(流石に冗談であってほしい)

<同感です。あ、もうすぐN島ですよ>

 

 

 現在高度4500メートル。雲の中、巡航速度で太平洋沖を南東方面へ進軍中。

 雲の中は相変わらず暗い。おまけに真紅の稲妻が暴れまわっている。

 被雷は嫌だなあ、今の俺は金属だから怖い。救いは雨が降っていないことか。

 とはいえこの視界の悪さは敵も同じ。雲の中にいれば見つかる確率も下がるはず。

 霧は相変わらずだが。

 いよいよ敵が近いためか既に妖精さんたちは戦闘配置。約1名を除き周辺警戒を行っている。

 赤ヘルさん、緑髪ちゃん、金髪ちゃん、橙さんはそれぞれコクピットの副操縦席、電信席、電探席、機関士席。紫さんは胴体中央にある統合火器管制席。

 例外の茶髪さんは前方見張席で双眼鏡片手に眠っている。どうせ見えないんだから出番はない、とのこと。

 ああ、そう、いつの間にか機内の様子が詳しくわかるようになっていたんだ。

 二式大艇は大きく前部、胴体上部、胴体下部、後部の4つに分けられる。

 うち銃座は前部、胴体上部、後部の三つに合計5門。

 前部は偵察室。胴体上部はコクピットや仮眠室など。胴体下部は酸素ボンベや燃料タンク。後部は弾薬庫だ。

 

 話を本題に戻そう。ハワイを偵察するにしても、ただ闇雲に進むのでは敵に見つかってしまう。

 そこでマップには予め辿るべきルートが設定されていた。

 さらに地図の拡大・縮小もできて世界地図がわからない俺にもやさしい。

 カーナビみたいに矢印が表示されるのだ。やっぱりハイテク過ぎない?

 目印となる島は3つ。N島、B島、G島。

 緑髪妖精ちゃんのナビゲートも受けつつ、俺はハワイ諸島を列島線沿いに進んでいる。

 それによればもうすぐ1つ目のN島が見えてくるはずなんだが。

 

(……見えませんね)

<です、ね……>

 

 雲や霧は勿論だが、暗視機能でも見えない。

 うん、あったんだ暗視機能。二式大艇には夜間触接をした話があるからそれの影響だと思う。

 スキャンモードなら使えるらしい。

 4500からじゃ海面なんて見えないだろって思ったけど、存外見えるものだ。

 便利なことに視界もカメラみたいに拡大できるからね。

 ともかく、地図に「N島」と表示されてはいるが見えるのは一面の青だけだ。

 

(俺らは間違えた場所を飛んでいるんですかね?)

<いえ、それはないはずです>

 俺の疑念を緑髪さんは否定した。

<今まで私たちの"目"が誤魔化されたことはありませんから>

(ならどういうことなんでしょう。幻覚、ってわけでもないでしょうし)

『ふむ、どうやら陸上型がいるらしいな。』

<ああ、それがありえますね>

 会話に入ってきた博士に聞き返す。

(陸上型?)

 初めて聞くな。

『海上ではなく、陸の上に拠点を築く深海棲艦だ。』

<魚雷が命中しないため水雷戦隊や攻撃機の天敵なんですよ>

(陸上、って深海棲艦は海だけじゃないんですか?)

 艦なのに基地みたいなのか。

<ええ。始まりの深海棲艦については諸説ありますが、陸上型だったのではとも言われるくらいですから>

 そこまで聞いて、あ、と思った。

(もしや)

『そうだ。この陸上型は陸地を支配するが故に、厄介な能力を持っている。』

<人間たちは海を陸に埋め立てますけど、彼女たちは逆に陸を海に"拓き興す"んです>

(それ、島国にとっては天敵すぎませんか?)

『そうだ。』

<ですから、日本は陸上型を通常の深海棲艦より優先目標に指定していますよ>

 日本なんて特に島の集合体だし、日本のEZZは外洋に点在する島で成り立ってるからなぁ。それが海に戻されたとなっちゃ、戦いが終わっても経済的には大打撃だ。

(その陸上型がいるとして、機動部隊とはまた別なんですよね?)

<はい。陸上型と機動部隊は別ですが、だからといって機動部隊がいないと決め付けるのは早計です>

 そうだよなぁ、見てみなきゃわからないだろうし。なおさらそんな奴を放置していたら日本が滅んじまう。

 というか太平洋の島々は無事なのか……?

 各国が反撃できない理由、このあたりにもあるような気がする。

(って、攻撃機の天敵って話でしたけど、どうして? 爆弾とか落とせば当たるはずじゃあ)

<ええ、そう思いますよね>

 訳があってですね、と前置きをしてから続ける。

<陸上型には"防護障壁(フィールド)"と呼ばれるものがあるんです>

(防護障壁?)

<はい。とはいっても便宜上の呼び名なんです。簡単に言えば、陸上型深海棲艦はバリアのようなものを展開するため外部からダメージを与えることができないんです>

(俺の【シールド】みたいな?)

<そのような認識で構いません>

 え、なにそれは。

 そういえば俺の【シールド】の限界ってどこまであるんだろ。

(博士、【シールド】の解除条件は?)

『任意か燃料切れだな。』

 やっぱり燃料が切れると駄目か。

(その防護障壁の強度ってどれくらいですか?)

<戦艦の主砲を余裕で耐えることができますね>

 もしかしなくてもヤバイ奴じゃん。

(どうしろと……?)

 そんなトンでもバリアを持った相手に勝つとかできるの? 無理じゃない?

<安心してください。今回は偵察任務ですし、戦闘の必要はありませんから>

 そうは言っても不安なものは不安だ。

 顔、もとい気配に出ていたのか、緑髪さんは<防護障壁を停止させる方法はちゃんとあります>と付け足した。

<仮にやるとしても艦娘さんたちでしょうけど、勿論障壁にはエネルギーが必要なんです。その供給源と思われるものが必ず他の深海棲艦か、あるいは陸上施設のどこかにあるのでそれを破壊すればなくなります>

 なるほど、一応供給源を絶てば問題はないのか。

<他にも三式弾などを使った飽和攻撃や、陸戦装備の私たちが直接攻撃したりですね。速度のあるものには反応しますがゆっくり動けば反応しないんですよ>

 そう言われると結構弱点らしきものはあるんだな。

(というか、妖精さんたちも戦うんですか?)

<はい、とはいっても陸戦隊の皆さんですけどね。私たちは無理ですよ? 航空科ですし>

 妖精さんたちにも部隊? みたいなのがあると。

(はは……艦娘の人たちは陸戦が出来ないんですか?)

 できそうな感じがあるが。

<彼女たちは"船"ですから。出来なくはないですが陸上だと艤装は動かなくなります>

 あくまで"艦"娘。海が本懐ってわけか。

 無線機から手を離してこちらを見る。

<これで少しは安心できますか?>

(はい、ありがとうございます)

 ヤバイ奴の存在が明らかになったけど、島が見えない理由は確認できた。この方角でいいんだよな。

(って、もしかしたら他の島もなかったり)

<あはは……大丈夫です、きちんとナビゲートしますから>

(助かります)

<いえいえ>

 慣れてますから。そういった緑髪さんの横顔には哀愁がこもっていた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 さて、ちゃんと当時の「K」作戦も図鑑で見ておけばよいものを、俺は概要しか見ていなかったおかげでこの後かなり苦労することになる。

 いや、あるいは────

 考えてもしようが無いか。

 というのも、真珠湾が爆撃されたのに当時米軍は何もしなかったのか。いや、そうではない。

 実のところ、二式大艇が真珠湾に接近していることは「敵味方不明機」としてレーダーが捉えていた。

 始めはただの迷子かと思ったが、なお接近する反応を見て、オアフ島防空指揮所は邀撃機を上げ、第14海軍区司令官は空襲警報も出している。

 ではなぜ史実において「K」作戦が成功したのか?

 それは当時の米航空機がレーダーを搭載しておらず、雲量8という悪天候も影響して発見できなかったこと、空襲警報の不徹底、米軍の慢心。

 ただこれのみである。まさに運がよかったのだ。あるいはパイロットの技量か。

 

 

 そもそもK作戦とはなにか。すなわち、沿岸急襲攻撃である。

 太平洋戦争前でいえば日中戦争初期、中華民国にアメリカなどが物資を輸送する「援蒋ルート」絶滅のため、華南沿岸主要港をに対して行われたものがあった。

 開戦後実施された、便宜上第1次と呼称する「K」作戦、もとい第2次ハワイ攻撃は文字通りハワイオアフ島真珠湾を爆撃・偵察した作戦であるが、それを踏まえて考えると第2次「K」作戦が偵察だけだというのは少しおかしい。

 そもそも、史実において元々「K」作戦は真珠湾攻撃の直後、米軍が損傷した港湾設備を修復していることに気づいた日本軍が、その修復を妨害し米軍に精神的打撃を与えることを目的にして行ったものである。

 当然、これは継続的に行われるものであり、少なくとも2回目までは予定されていた。

 しかし、二式大艇の「K」作戦参加機数は2機のみで2番機が補給時に損傷、他予定より期日遅れが原因で第2次「K」作戦──第3次ハワイ攻撃は行われなかった。

 では第2次「K」作戦はもう実施されなかったのか、といわれれば少し違う。

 前後して二式大艇の能力に目をつけた軍部がミッドウェー・ジョンストン島の偵察を命じるも、これは割愛。

 あくまで第2次「K」作戦は延期されたに過ぎなかった。

 そしてその延期先というのが、昭和17年6月。

 かのミッドウェー海戦と重なるのである。

 自然、第2次「K」作戦の目的はミッドウェー海戦に備えた米空母機動部隊の索敵へと変わる。

 ここまでは特に問題ない。二式大艇は長距離策的に秀でた機体である。

 問題なのは、その作戦計画が第1次「K」作戦と全く同一のものだったことである。

 同じ経路、同じ補給地点、同じ時間。

 違うのは搭乗員と、米軍が既に二式大艇の存在に気がついていたことだ。

 当然補給地点は警戒され、補給が出来なければ作戦を中止せざるを得なかった。

 そして運の悪く、二式大艇の索敵予定範囲に米空母機動部隊はいたのである。

 その結末は恐らく戦争に興味の無い者でも知っているだろう。

 もっとも、俺は軍略家ではないから仮に索敵が成功していたらどうだとかはわからない。

 俺にわかるのは、この身が宿すかつての願いだけ。

 

 ここまで話して何が言いたいのかといえば、ここは相手の領域であり、当然警戒もされているということ。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 オアフ島まで残り30分ほどといった距離になると、機内の空気はピリピリとしたものになっていた。

 いつも微笑んでいる緑髪さんもメガネの奥を鈍く光らせている。

 結局、B島もG島も海に還っていたようで、確認することは出来ずじまい。

 しかし、どうも俺には居心地が悪い。こんなピリピリしてるなら煽られたほうがまだマシって感じだ。

 というか妖精さんたちはよく何時間も動かずにいられるな……。俺は駄目だ。

 ここは一つ芝居でも打って空気を換えるか?

 ちなみに【フルステルス】は使っていない。燃料効率が悪すぎる上にばれた前科もある。

 

(なんか静かですね。敵の支配領域なのに敵機もいないしさっきとはえらい違いだ)

<ああ。ここらの迎撃機は軒並みミッドウェーに送ってるのかもな>

(まっ、そんなのもう関係ないですけどね)

<上機嫌だな>

(そりゃそうですよ。偵察が成功すればみんな助かるし、妖精さんはがんばってたし、俺もがんばらないと)

<ああ。そうだ……>

 

 橙さんは乗ってくれたが、これ滑ってるわ。

 さらに選んだ話題が悪かったのか。

 機内に警報音が鳴り響いた。

 

 

<敵機発見! 迎撃戦闘用意!>

 

 金髪さんが叫ぶ。電探が敵機を探知したのだ。

 その声と同時、俺はまた奇妙なものを幻視する。

 このまま進んだ俺が下から飛翔してきた物体に破壊される姿だ。

 何が起きたかわからない表情で激痛を最後に死んでいく夢。

 

(ぐぅっ!)

 

 嫌な予感がした。

 無理矢理機首を上げて急減速。フラップ全開。親子フラップはその役目を十全に果たした。

 直後、目の前を火の束が通り過ぎる。

 曳光弾だ。敵機の射撃!

 間一髪命を拾ったが、その代償はGという形になって艇体に返ってくる。

 二式大艇は雷撃も出来るような比較的舵の軽い飛行艇だが、同時にそれは艇体の脆弱性を併せ持つ。

 フラップが傷み翼が歪む。けどまだだ、まだやれる。

(ちっ)

 吐き捨てると正面を影が通過した。数は4。あのコウモリだ。しかし色が違う、緑ではなく橙。

 "図鑑"にヒット。

 

──深海棲艦戦Mark.Ⅱ──

 緑の上位互換だ。性能は上がってるけど誤差範囲。武装も同様。

 

(だとしても、数が増えてるからきっついな)

 通り過ぎたコウモリたちは雲の中に入っていった。

 上をとられたわけだ。速度もエネルギーも向こうにある。

 

<やっとあたしの出番ね! ヒャッハー!>

 

 上部銃座が20mmを雲に叩きつける。爆発音はしない。

 というかなんか紫さん性格変わった……?

(どうしようか)

 このままここを飛んでいてもまた撃たれるだけだ。かといって……。

 そもそもなぜ見つかった? 相手もこの雲の中じゃ見えにくいはずなのに。

『ふむ、どうやら向こうの基地にはレーダーがあるようだな』

 悩んでいると博士が話しかけてきた。

(基地のレーダー? ぐるぐる回るような?)

『そうだ。既にこちらの姿を捉えて邀撃機を上げたのかもしれない。』

 まさかあの時のコウモリが? なんにしてもいい状況じゃない。

 

<敵機直上!> 

 

 くそ、考える時間もくれないか!

(【シールド】!)

 緑の膜が機体を覆い、頭上から現れたコウモリの銃撃をはじく。

 コウモリは下の雲に入っていった。

 一撃離脱に徹するつもりか?

 長期戦は駄目だ。燃料の問題もある。

『エミリー。』

(わかってます。先にこいつらをどうにかしなきゃいけませんね!)

<ヤツヲウテー>

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

<あぁん、生きがいいわね!>

 紫さんがぼやいた。

<弾幕薄いよ、何やってんの!>

<やってるわよ!>

 戦闘開始から5分。銃座が火を噴くが、有効打を与えられていない。

 一撃離脱に徹されては厳しい。次から次へと襲い掛かってくる。ストレスも溜まる。

『エミリー、主翼の外側に意識を集中してみろ。』

(博士!? なんです、手短に!)

 見かねたのか、博士が声を出してきた。けどこっちも回避運動で忙しい。

『そこにミサイルが各1発ずつ格納されている。それを使うんだ。』

(ミサイル!?)

 ミサイルとかは電波妨害があるんじゃ。

『誘導自体はナノ・ロボットが行うから問題はない。』

 ナノ・ロボットって何者なんだよ。

 というかなんでミサイルなんてあるの? 二式大艇にそんなもの積んだ記録なんてないんだけど!?

『エミリー、時間がないぞ。』

 話している間にも撃ってきた。エルロンコントロール。横滑りで回避する。

(確かにそうですけど、どこ!?)

 くそっ、マルチタスクは出来ない。

(赤ヘルさん、操縦お願いします!)

<あ、ぽいっと>

 赤ヘルさんに操縦を変わってもらう。主翼、主翼、どこだ……あった!

 主翼外側、着水灯の隣。小さな何かがある。

 イメージは適当だけど扉が開くイメージしておけば問題ないでしょ!

 発射口が開いた。どうやら正解か。

(いでっ)

 ごん、と叩きつけられた痛み。急制動を行ったらしい

<あ、ごめんねぇ?>

(大丈夫です、それより敵機を前に!)

<ハハッ、それじゃやろうかァ!?)

 

 急加速と急上昇。顔が後方に叩きつけられる。

(うぐぐぐ)

<バイノハヤサデー>

 後ろを確認。敵機は追いかけてくる。

 しかしなぜ急上昇? と思ったら失速、頭を上にしたまま急降下。

 当然敵機は速度を変えられぬまま、前を通り過ぎていく。

<之でいいんじゃなぁい?>

(それはそうですけど!)

 絶対これ飛行艇がやる行動じゃないでしょ! 骨も痛いし。尾翼を酷使してる。

 けどこれでレティクルに入った。

 脳裏に浮かぶ「発射」という単語。それを選択する。

FOX1(発射)!)

<ロケット発射>

 白い煙を上げ、2条の矢は敵機を打ち抜いた。

 

(これはすごい! 博士、他の奴もやっちゃいましょうよ)

 これがあればすぐ倒せそうだ。文明の利器は最高だよ。

『残念だがエミリー。搭載しているのは2発だけだ。』

 え?

(じゃあ終わりなんです?)

『申し訳ない、そうだ。』

 そんな。すぐ終わると思ったのに。

 後の3機は自前でやるしかないか。でもどうする?

 一撃離脱に徹されては1機1機を追っても別の機が妨害してくる。

 やるなら同時だ。

 操縦権を戻してもらい、姿勢を水平に戻す。

 どうする、どうするか。

<ウエダー、シタダー>

(しつこい奴ら!)

 また仕掛けてきた。回避運動。避けきれない敵の弾丸はシールドに阻まれる。

 1機が落ちたんだから帰ってくれればいいものを。そう上手くはいかないか。

 

 

(ん?)

 5分見続けてわかったことだが、なぜかあいつらは上下からしか仕掛けてこない。前後からは来ないのだ。

 もしやこの機体の銃座配置をわかっていない……?

 じゃあ敵機は何を見ていたんだという話にもなるが、重要なのはそこじゃない。

 仮に艇体を横に倒したらどうだろうか。

 横向きであれば20mmを上部、側面、尾部の3門が使える。

 今ここにいるのは俺、博士、妖精さんたちだけだ。

 人間はいない。

 つまり、人間の肉体を考慮する必要が無い。言い換えれば、人間の耐えられない機動を行っても問題ないのだ。

 思い立ったが吉日。陳腐な作戦ではあるが。

 

<へぇ、撃てるならなんでもいいわよ>

 

 

 艇体を傾けてそのまま飛行。

<4時の方向!>

 10秒もしないうちに反応あり。

 ビンゴ! 下から突っ込んできた。

 こちらが銃座を向けていることに驚いたのか、僅かに動きが鈍る。軌道を変える気か?

 だが遅い。5分も追い回されたこのストレスをくらいな!

 

<ってー!>

 

 鯨の咆哮がコウモリを飲み込んだ。

 爆散する機影。

 これで残り2機。

 

<これよこれ! アハッ、もっと撃ちたいの!>

 

 ……誰? 初見のイメージと違いすぎる。

 あとそもそもシールドを展開しているなら回避行動をとる必要はないのではないか?

<あ、ようやく気づいちゃった?>

 …………恐れる必要なんてなかったな! ガハハ!

 次に姿を見せたときが貴様らの命日だ!

 

<センメツー>

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

<ふぅ。硝煙の臭いは最高ね>

 いやぁ、敵機は強敵でしたね。

 少し大回りなルートを取らされたが、もうすぐ敵の中央エリアのはず。

 敵にばれているというなら強行偵察だが、退くという選択肢はない。

 頼まれたことだ、やり遂げねば。妖精さんも逃げる気はないみたいだし。

 敵の攻撃も【シールド】があればほとんど防げる。

 それに隠れる必要がないなら視界の悪い雲の中に隠れる理由もない。

 雲の下、高度1000まで機体を下げる。

 

 

 

 周辺を見ていると、一際大きい雲を見つけた。

 

<太平洋の嵐>

 

 まさに。

 あの大きさだと台風並じゃないか? 竜巻のようにも見える。雲が渦巻いているのだ。

 海面から雲の中までその嵐は続いており、雷の発生頻度も高い。

 これ見よがしに何かを守っているようで、敵の本拠地って感じだ。

 スキャンモード……駄目だ、中が見えない。ますます怪しい。

<あそこから強度の高い電波妨害が発生しています>

(ということはやはり?)

<可能性は高いですね。用心していきましょう>

 台風は真ん中が目になっていて無風状態だとも聞く。拠点とするには丁度いいだろう。

 出力全開。一気に通り抜ける。

<トツゲキー>

 

 

 雲に突入すると、今まで以上の風が襲ってきた。

 機体が右に左に揺れる。

 雨まで降ってきた。ほぼ無視界飛行だ。MAPにも乱れがある。

 真横に雷が落ちた。こればかりは目視後に避けられず祈るほか無い。

 踏ん張って耐えていると、ふっと風はなくなった。中心部にきたのだ。

 相も変わらず雲で太陽は見えない。が、それは上空の話。周囲はよく見える。

 暗いだけで不思議なことに霧もない。久しぶりの良好な視界。

 下を見ると、ちょうど中央に陸地があった。

 

<敵の陸上施設を発見>

 

 誰かがいた。

 

 赤い球体を侍らせ、陸の上に立つ女。

 

 台座に乗ったその女は黒い髪と白い角を持ち、身に纏うは同色のドレス。

 

 海上はさまざまな異形が蠢いている。見ているだけで吐きそうだ。キモチワルイ。

 

 女と目があった。

 

 

 

────────ッ!

 

(左旋回!)

 

 咄嗟に叫んだ。ほぼ直感だ。自分の反応速度では追いつかない。赤ヘルさんに手伝ってもらう算段だった。

 

<ギャハハハハ!>

 

 赤ヘルさんは瞬時に反応し、機体を左に傾けてくれた。

 

(よし、これなら!)

 

 いける、そう思った。俺の右隣を極光が迸った。

 

 光につれられて右を見る。

 

(は?)

 

 俺の右翼が半分、消えていた。

 

 切れ端は真っ赤に染まり、一部は炭化している。

 

 唖然とする俺。

 

<右翼大破! シールド再展開不能!>

 

 俺を現実に戻したのは凄まじい激痛だった。

 

(あ゛っ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?)

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

 死ぬ、死ぬ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!

 

(痛い、いたいよ博士! 死ぬ、死んじゃう! 助けて! 嫌、嫌、嫌! 死にたくない! 死にたくない!)

 

 死にたくない! やだ、やだやだやだやだ!

────ミナゾコニカエルガイイワ

 うるさい! 誰がやった? アイツだ。真ん中で涼しげに微笑んでいるアイツだ。

────フフ

 イライラする。俺が痛がってるってんのに。笑ってる? アイツは?

────モウ、トベナイノ

 ぐつぐつ煮えたぐった火口からマグマが噴出した気分だ。

────ワカル?

 なんだァ? テメェ…………。

────ウッフフフフフフフ

 なんだよ、なんなんだよ、なんなんだよテメェ! ムカつくなァゴミクソが! ぶっ潰す!

 アイツにも同じ痛みを与えなきゃ気がすまない。

 この腹の虫は収まらない。

 くそが、痛い。痛い。痛い。痛い。痛いってんだよ畜生が!

 

(死んで詫びろやガラクタ風情がよォォォォォッ!)

 

 エンジン出力を全開。まっすぐいってぶっ飛ばす!  

 

<ねぇ、撃つ? 撃っちゃう? やっちゃうわよ~>

<銃座さんは乗らないで!?>

<えー、電信ちゃんは真面目すぎるわよ。あたし撃てるなら撃ちたいんだけど~>

<着☆剣せよ>

 そうだ。俺だってアイツをぶっ潰したい。

『落ち着け。』

(あァ゛!? 博士、止めないでよ、アイツ殺さないと)

『そうだな。だが今の君の目的はそれではない。』

<そうですよ、わたしたちの任務は偵察なんですからっ>

(は? 冗談きついよ。俺の役目はアイツらをぶっ殺すことでしょ?)

『そうだ。』

<そこで認めないで!?>

(やっぱそうじゃん。じゃあ、俺はいくよ)

 あん? ちっ、体がうごかねぇ。

<ところがぎっちょん!>

(赤ヘルさん、邪魔だよ。コントロール返して)

<あっ、そうなんだぁ……で?>

(は? お前、邪魔だっつってんだろうがよ! どけよこの────)

 

 あぐっ!? 何かが首筋に刺さった?

 くそっ、なんだよ、どいつもこいつも! 

 俺の邪魔ばっかしやがって。ぶっ殺すんだからぶっ殺していいんだろうがよ!

 くそ、クソクソクソ!

 

<頭冷やせよ。ヒヨっ子が>

 

(く、そが……)

 

 ああ、くそ、眠い。野郎睡眠薬打ち込みやがったな、ゆるさねぇ。起きたら覚えてろよ────

 

 

<あ~ん、残念>

<そこまでしなくとも……>

<ギャハハッ、駄目駄目。生意気な餓鬼はちゃんと教育しなきゃ>

<人の犯した過ちはこのマフティーが粛清する>

<戻ります。カエリマショー>

<ふわぁ……。おはよ~>

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「フフ……」

 雲の中へと赤子のようにふらふら逃げ帰る飛行艇を眺めて女は嗤う。

 随伴艦は追撃すべきと言うがそんな無粋なことはしない。

 そういうのは彼女の仕事だ。

 潰すなら相手が全力のとき。正面からの総力戦で潰す。

 

 まあそれでも。

 

「ナンドキテモ……オナジナノヨ……」

 

 

 

◇◆◇





・エミリー(//)
チンピラ
よくキレるオリ主

・博士
空気気味

・妖精
捌ききれない

・二式大艇
片翼吹っ飛んだんですけど。え?この状態からでも入れる保険があるんですか?

・深海棲艦
オリ主がチートじみてるのに敵は普通なんてありえない


海軍初のレーダー搭載機は97式飛行艇らしいですね
回を重ねるごとに読者が半数になるので、あと6話くらいで理論上読者は0になります
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