中学校を出て桜の綺麗な公園を歩く。大きな池を桜が二重、三重と囲むように植えられていて、左右上下を花びらで覆われる。風が吹くたびに桜の花びらが舞い散り、木漏れ日が揺れる。
「
名前が呼ばれて振り返ると、親友の
「燈矢、今年も同じクラスだ。よろしくな」
「ああ」
この春、俺たちは晴れて中学生となる。新入生代表の燈矢の付き添いで何度か中学校には赴いており、そのとき仲良くなった先輩の部活、バスケ部に入学前だけど練習に参加させて貰っている。
「燈矢はやっぱり帰宅部か?」
「親父がな……」
燈矢の親父さんはプロヒーローで、かなりの有名人だ。長年No.2を維持し続けているが、No.1のオールマイトに強い対抗心を一方的に持っている。そのため、燈矢がオールマイトに勝るように虐待に近い教育をしている。
「そうだな。お前のその熱に弱い体質は個性由来のものだ。鍛えて慣れれば上限も上がるだろう。親父さんを見返すためにも、頑張れ」
「……ああ。ありがとう」
冬美ちゃんは燈矢の横で小さく会釈して、燈矢と共に横を抜けていった。
俺は池の柵に寄りかかり、空を仰ぐ。
桜色が空色をバックグラウンドに踊る。風が止み、花びらが俺の顔に向かって落ちてくるその時、頭が軋んだ。
「うっ」
頭を抑え、しゃがみ込む。片手は柵を強く握り込み、個性が暴発する。
柵がもの凄い強力によって握り潰され、その後直ぐに俺を起点に風が吹き荒れる。池の水面に波が立ち、桜の木が揺れる。辺り一帯の花びらが舞い上がり、そして凍る。
春に似合わない街の片隅で起こった小さな事件だった。
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目が覚めると、見知らぬ天井が広がっていた。
「あっ、起きましたか?」
覗き込んでくるのは、見知った顔。つい先ほど会ったばかり冬美ちゃんだ。
「ここはーーー」
「病院ですよ。あの後、忘れ物に気付いて戻ったら、借盗さんの周りが凄いことになっていて驚いたのですから。お父さんが直ぐ来て病院に連れてこられたのですよ」
「そうか。ありがとう」
「いえ」
個性の暴発。そのトリガーは未来視の個性だろう。あまりの衝撃に個性の制御を失い、保持していた個性を片っ端から順に使ったのだろう。
「失礼する」
ノックと共に、声が掛かり、ドアが開いた。
「ちょっと、お父さん!?返事待ってよ!」
冬美ちゃんが慌てて入り口に向かう。
「む。冬美も居たのか。ああ、もう起きたか」
大柄で体格の良いどこか燈矢に似ている男性が入ってきた。俺が燈矢の家に行くときはいつも仕事で外にいたため、初対面だ。
「どうも、燈矢の友人の
「ああ、エンデヴァーだ。よろしく。ところで、君の個性を聞いても良いか?」
冬美ちゃんが新しく出した椅子に座り、こちらを覗く目は俺を捉えて放さない。
「ーーー俺の個性はコピーです。いくつかの個性を保持して置くことが出来、3分間使えます」
「何個の個性を保持出来る?」
視線を一切動かさないエンデヴァー。俺は視線を自分の手のひらに向ける。
「現在は最大で3個ですーーー」
「嘘はいらん」
言葉を止められ、驚いてエンデヴァーの顔を見る。
「私は現場を見ている。実際は何個だ」
個性が暴発したとき、俺の意識は飛んでいたため、どれだけの個性を使ったのか分からない。
「お父さん!」
冬美ちゃんがエンデヴァーの肩を掴み、詮索は良くないとーーー
「少なくとも、桜を吹き飛ばす暴風、辺り一帯を凍らせた氷結、柵を壊した怪力、手の怪我を治した治癒。隠そうとしたのだ。だいたい5つと考えるべきだろう。相手の弱点をつけ、切り替えもスムーズに出来るようになれば、3分で事足りるだろう。十分優れた個性だ。どうだ、冬美と結婚しないか」
バシッ
冬美ちゃんがエンデヴァーの頰を平手打ちした。
涙を浮かべ、口元を強く結んでいる。
「私は、あなたの駒じゃない!!」
駆け足で病室を出て行く。
「……」
何も言えない。
「あの、ーーー」
「君も、気が向いたら家に来なさい。鍛錬をつけてやる」
そう言うと、エンデヴァーも部屋を出た。
この物語がどこに行くのか自分でも分からなくて怖いです。アドバイスをいただけるとありがたいです。