英雄と敵の二重生活   作:毎日健康黒酢生活

24 / 48
悪の花

神野区の戦いでオールマイトが引退してから半月が立った。

それでもなお、世間は『先生』の逮捕、『平和の象徴』の引退、2人の戦いを間近で見ていたヴィラン『ティキ・ミック』、ヴィラン連合について等『神野の悪夢』についての報道が止まない。

当然世の中は緊張状態で、平和の象徴の存在によって成り立っていた平和は、少しずつ崩れていっている。

ヴィラン連合がせっせと入れてきたヒーローに対する信頼への亀裂が『先生』という起爆剤により一気に崩壊した。

とはいえ、『先生』のような大規模な破壊をもたらすヴィランが現れるわけでもなく、『平和の象徴』という大きな鎖がなくなったことでヴィラン同士が徒党を組み、小悪党な犯罪をするといった強盗等の犯罪率は増加していた。

 

 

そんな中、『とある動画』が動画投稿サイトに投稿され世間をまたもや騒ぎ立てた。

 

 


 

暗闇の中にテーブルと椅子に腰掛けている男の後ろ姿がスポットライトに照らされる。

カメラワークは正面に移り、黒髪の癖毛をオールバックにし、浅黒い肌に額には聖痕のような痣があり、左目の下に泣きボクロをした英国紳士のような正装をした眉目秀麗なヴィラン『ティキ・ミック』の姿が照らされた。

 

『この映像を見ている一般市民の方には、突然の無礼を許して頂きたい。

 

私は『ヴィラン連合』所属『ティキ・ミック』であります。

 

話の前に、もう一つ知っておいてもらいたいことがあります。

 

私は『雄英高校』で『通形ノア』という名で呼ばれたこともある男だ。

 

私はこの場を借りて、『先生(オールフォーワン)』と『平和の象徴(オールマイト)』の遺志を継ぐものとして語りたい。

 

もちろん、『雄英高校』の『通形ノア』としてではなく、『ヴィラン連合』所属『ティキ・ミック』としてです。

 

我々は一人の悪の象徴(英雄)を失った。

 

我々『ヴィラン連合』の遺志は、現ヒーローのような欲望に根差したものではない。

 

現在『平和の象徴』が倒れた事実は、社会の大きな混乱に繋がっていると気付いているでしょう。

 

私たちが求めたのは『真の平和』の為だった。

 

今までの平和は『平和の象徴』ただ1人によって生まれていた。

 

そして、その平和に感け私たちは、その生活を当たり前だと思うことによって、『彼』1人に全ての重荷を押し付けていた。

 

それは不幸だ。

 

もうその歴史を繰り返してはならない。

 

互いに手を取り合うによって、個性など関係なく『真の平和』が出来ると、何故信じられないのか?

 

この『平和の象徴』ただ1人に支えられた平和の犯罪率を見て何て言っている。

 

かつての同志『ステイン』が言ったように、現在のヒーローたちは『平和の象徴』が倒れたあとのその人気を奪い合う人々の集まりで、『平和』を食いつぶそうとしているのだ。

 

人は長い間、『個性』に翻弄し続けられてきた。

 

しかし! 時はすでに『平和の象徴』から、巣立たつ時が来たのだ。

 

その期に至って何故我々が戦わなければならないのだ。

 

世界を自然の姿に戻し、お互いに手を取り合おう。

 

あの『雄英高校』さえ何度も『ヴィラン』に侵入されている。

 

それほどに世界は荒れきっている。

 

今、誰もが平和を求めている。

 

ならば自分の欲求を果たす為だけに、引退をした『平和の象徴』に寄生虫のようにへばりついていて、良い訳がない。

 

現にこの社会は大きな混乱にある。

 

犯罪率は『平和の象徴』が倒れてから膨れ上がり、ヒーローは逆らうものは全てを悪と称しているが、それこそ悪であり、社会を衰退させていると言い切れる。

 

この映像を御覧の方々はお分かりになる筈だ。

 

これがヒーローのやり方なのです。

 

我々が武力で制圧したのも悪いのです。

 

しかし、ヒーローは『ヴィジランテ』のように自分達の味方となるような『ヴィラン』がいるにも関わらず『絶対悪』として全てを破壊しようとしている。

 

この映像を見ている一般市民の方には、突然の無礼を許して頂きたい。

 

私は『ヴィラン連合』の『ティキ・ミック』であります。

 

世界を変えるのに、『個性』は必要ありません。

 

必要な力はすべて、私たちの中にすでにあります。

 

平和を求めるその心です。

 

その心を、少しの勇気を出して言葉にするだけでいい。

 

自分の力で立ち上がれ!

 

声を上げるんだ!『真の平和』を!

 

さあ、来てくれ。ここが君のヴィラン連合(居場所)だ。』

 

瞳を潤ませて懇願するかのような表情でカメラを見る『ティキ・ミック』をカメラがズームして数秒間写す。

映像の最後で画面に向けて手を伸ばして演説が終わる。

 

 

そして、『ティキ・ミック』の堂の入った礼で映像が途切れる。

 

 


 

 

5分ほどの短い動画だったが、渦中の人物からの直接的なメッセージである。

瞬く間に動画はネット上で拡散され、消されては誰かが上げなおすイタチごっこ状態になった。

テレビのワイドショーなどでも取り上げられ、『真の平和』とは?や、『神野の悪夢再び!?』、『ヴィラン連合はヴィジランテか?』など不安を煽るような報道がなされた。

ネット上はもはやお祭り状態であった。

『ティキ・ミック』の蠱惑的な容姿も相まって熱烈な信者や、『真の平和』に共感するもの、『2代目ヒーロー殺し』と世間で言われてたこともあり『ヒーロー殺し』の思想に傾倒していたもの、様々なシンパが誕生した。

また、ヴィランの間では次の『悪の象徴』は『ティキ・ミック』や『ヴィラン連合』にあると確信して身の振りを考えたり、虎視眈々と消えた『悪の象徴』の座を狙おうとしたりそれぞれの行動が急速に変化していった。

そして、『通形ノア』を入学させていた雄英高校にも矛先が向き、異例の2度目の謝罪会見がなされた。

 

 

その熱狂は1つの旗印(ヴィラン連合)へと向けられる。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

side ヴィラン連合

 

 

薄暗い室内、寝転んでいる人影とテレビを見る影が3つ。

 

「ねーねー、ティッキー!テレビやばいよ!ティッキーだらけ!」

 

「パンツ見えてるぞ。トガ。」

 

「ぎゃー!えっち!」

 

「そういうのは見えてても言っちゃダメよ。ティキぽん♡」

 

「マグ姉ぇ。その呼び方やめてほしいんスけど。」

 

「お前目当てでまたウゼェ奴らが来そうだな。」

 

「あっ!弔くん私たちのことうざいっていったー!」

 

「弔。ヴィラン連合のリーダー(キング)はお前だよ。」

 

「はっ、当たり前だ。」

 

「そうね。じゃあ、ティキぽんはJOKER(ワイルドカード)ね。

 今回みたいに(キング)にもなれるし騎士(ジャック)にもなる。

 そ・し・てアタシがお姫様(クイーン)ね♡」

 

「やめろって、冗談がキツイ。」

 

そういうと、寝転んでいたティキが立ち上がり出口へと向かう。

 

「オイ、どこいく?」

 

「...タバコ買ってくる。」

 

そう言ったきり、扉を出て行ってしまう。

残されたメンバーにマグネが語りかける。

 

「ねぇ、2人とも。ティキぽんが雄英襲撃から変わってるのに気づいた?」

 

ヴィラン(こっち)に専念したことですか??」

 

「…」

 

「ティキぽん、いつも個性を使って()()()()してるのよ。」

 

「えっ!?そうなんですか?」

 

「あぁ、どういう心境の変化か分からないけどな。」

 

「アタシはね。ティキぽんが心配なのよ。」

「みんなもそれぞれの事情で社会からはみ出してヴィラン連合(ここ)に来たと思うんだけど、アタシってさ()()じゃない?」

「だから、その分()()()()()()()生きてきた自覚があるのよ。ティキぽんって今回の件で良くも悪くも世間から注目を浴びているじゃない。」

「その上、個性で触る事を許してなくて、物理的にもこの世界から()()()いるのよ。それって、言い方はキツイかもしれないけど()()()()()()()()()()()()()ってアタシは感じてるのよ。」

 

だから

 

「だからアタシはね。ヴィラン連合(アタシたち)だけは『彼』をちゃんと()()()()なきゃいけないし、()()()()てもらえるようにならなきゃいけないと思うの。」

 

 

------1人ぼっちはサミシイものね。

 

 

と、マグネは続けた。

社会、性別、ルール、固定観念、様々なものに縛られ苦しめられてきた()()だからこそ感じるティキの危うさを2人に訴える。

それに弔も思い当たることがあるのか答える。

 

「...お前の性癖込みで言ってるだろ。」

 

「いやん♡当たり前じゃない♡」

 

「まぁ、いい。安心しろ。マグネ俺たちは共犯者(ファミリー)だ。」

 

「そーですよ!うぃーあーふぁみりー!です!」

 

「弔ちゃん。トガちゃん。ありがと♡」

 

話がひと段落ついたところで扉が開く音が聞こえた。

 

「ただいまー。」

 

「「おかえり!ティッキー/ティキぽん!」」

 

「...早かったな。」

 

「おぉー、嫌だね。どこもタス○、タ○ポって愛煙家には生きにくい世の中に変わっててるよ。世知辛いねー。しゃあないから個性使って盗ってきちゃったもん♪」

 

「ティッキーやることが小悪党だよ。」

 

「アタシので良かったらあげるのに。」

 

「オレ、メンソール系の苦手なんだよね。」

 

などと雑談を交わしていると。

弔がティキに向かって言葉をかける。

 

「…オイ。」

 

「おっ!弔も吸ってみる気になったか?」

 

「ちげーよ。」

 

「??」

 

「...手ぇ。出せ。」

 

「ほい。」

 

弔に向かって差し出された手を弔は握手するようにして掴もうとするが、透過されており、その手のひらは空を切ってしまう。

 

「あっぶな!そんなタバコ嫌だったのか!?」

 

「...ッチ!違ぇよ。...握手しろ。」

 

「えっ!どうした急に?」

 

「...オレも指一本外してするから早くしろ。」

 

そう言われ、弔から差し出された手をティキは個性を使用せずに掴む。

その様子をトガはニコニコと、マグネは安心した様子で見ていた。

 

「ティッキー!次!私と握手です!」

 

「あらあら、じゃあアタシとはハグかしら?♡」

 

帰ってきたらいきなりスキンシップを求めてくるヴィラン連合のメンバーにティキは困惑する。

 

「おいおい、どーした急に?」

 

「なんでもないわ。なんでもね。」

 

この様子を見てマグネは自分の心配が杞憂だったことを知り安心する。

そして、自分自身もありのままの自分を受け入れてくれるヴィラン連合(居場所)に居心地の良さを感じていることに気が付いた。

 

 

 

(ありがとうね。みんな。だけど...神野区で見たティキぽんの『()()()()()()()()』はアタシだけのヒミツね♡)

 




最後まで読んでいただきありがとうございました。

ティキぽんのファン第1号はマグネだったよっていうお話。
演説の大筋は某仮面さんの演説を使わせていただきました。
一般人とヴィランでは受け取る意味が違くなるような演説を作ってみたのですがどうでしたでしょうか?もう一度読み返してしてみたりすると印象が変わるかもしれないです。

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。