今回ご紹介する作品はこちら。
せりぬんさんの『走れセリヌンティウス』です。
伝説的なハーメルンの二次小説ですね。
『走れメロス』の二次創作になります。
シュールギャグです。
日本人の多くが知っている原作とのあまりの落差が大きな笑いどころです。
作者さんのお名前と言いもはやプロが狙ってやったといわれても信じます。
最近笑い足りてないなと思った人には是非ご一読をお勧めします。
「地下をぐるぐるぐるぐる30分。私そろそろ歩き疲れたわ。」
「もー、エリちゃんもうすぐ着くわよ。ね?」
「…着いた。」
下っ端に案内された先には扉が見えた。
開けて中に入ると必要最低限の物だけがある応接室になっていた。
机を挟んで向こう側には死穢八斎會の若頭『オーバーホール』が座っており、その後方には幹部と思われるメンバーたちが控えていた。
「やっ♪今回はヨロシク。事前の話の通り、
「どこで誰に見つかるかわからないし、客が何を考えているのかもわからないからな。この応接室も地下の隠し部屋の1つだ。」
「提携先なのに随分と警戒するこって。誰か座れば?」
「じゃあ、お言葉に甘えて♡」
「無駄に歩かされてクタクタよ。座るわ。」
「じゃー、あたしも!」
「エシは立ってます。」
「俺も立ってるぜ!」「座りて―けどな!」
見事にヴィラン連合の男性陣と女性陣で別れることとなった。
マグ姉、エリアーデ、トガが座り、俺、エシ、トゥワイスがその席の後ろに立つようにして死穢八斎會の面々へと向かい合った。
「
「…あぁ、熨斗を付けて返してもらったから大丈夫だ。」
「そりゃ重畳。で?俺たちはどうすればいい?」
「基本的には組の者同様、我々の指示に従ってほしい。まずは、おまえらの個性の詳細を教えてほしい。もしものときに連携がとれないと困るからな。」
「えー?ヤダよ。個性なんてお互いトップシークレットじゃん。おたくらから教えてよ。」
もうすでに
「いくら提携先と言えど舐められてんな」って弔にも言われているから、あくまでも主導権はこちらにあると交渉をするが、ヴィラン連合のメンバーが口々に自分の個性を説明していく。
「…エシの個性は『加重』です。触れたものの重力を2倍にします。大体4回くらいで立てなくなって8回でぺちゃんこになります。」
「私の個性は『脱水』。私の体から出るシャボン玉の泡に触れると水分がなくなるわ。人間が触ると一瞬でミイラになるか気を付けてね。」
「アタシの個性は『磁力』よ。大体半径4.5mの人に磁力を付加させるわ、全身でも一部にでも付加できるし、その強さも調整できるけど、私自身にはムリ。男の子はS極で、女の子はN極。物には付与できないことが欠点かしら。」
「俺の個性は『二倍』!あらゆるものを二つに増やす!個性の発動に必要なのは明確なイメージ!しっかり見てしっかり測って初めて一つを二つにできる!本物と違うところは耐久力!ものによって異なるが、一定のダメージが蓄積されると崩れ去る!同時に増やせるのは二つまで、二つ目は耐久力が更に下がる!そして一身上の都合で俺は俺を増やせない!」
「わたしの個性は『変身』です。血を摂るとその人に変身できます。摂取量が変身時間と比例して、コップ一杯で大体一日くらい。一度に色んな人の血を飲めばそれだけ色んな人に変身できます。服も含めて変身できます。元々着てる服と重なって裸んぼにならないといけないから恥ずかしい。」
……
「…オイ。」
「違うの!ティキぽん!口が勝手に!」
どうやらもうすでに会話の主導権は
視線をマグ姉からオーバーホールに向けなおす。
オーバーホールは少し驚愕の顔をしていたが、すぐ元の無表情に戻った。
両手を広げてあきれたリアクションをとる。
「…はぁ、用心深いこって。」
「なんで、お前には効いていないか気になるが、まぁいい。お前らは死柄木かティキ・ミックから裏切りの予定を聞かされているか?」
『無いです/無い/無いわ/NO/いいえ』
「あぁ、
「まぁ、俺も『
「…あぁ、概ね間違いない。」
「じゃあ、ちょっとしたエンターテイメントやらないかい?」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
後日、新たにヴィラン連合からのメッセージとして新しい動画がネット上にアップされた。
その動画の内容により、世間をまたしても
映し出された映像は明るく、前回とは違い部屋全体の様子がわかるものだった。
殺風景な事務所を背景に高級感のあるソファーに『ティキ・ミック』と『ペストマスクを被った男』が並んで座っていた。
『この映像をご覧になっている方々お久しぶりです。
私はヴィラン連合所属『ティキ・ミック』と申します。
私の隣に座っているこの男は死穢八斎會の若頭『オーバーホール』といいます。
彼はいわゆるスジ者と呼ばれるヤクザであります。
が、しかし!
同時に優秀な研究者でもあるのです。
今回このようにまたしてもメッセージをお届けしたのは
そいう言い終えると『ティキ・ミック』は懐から黒いケースを取り出し、そのケースの中にある針のついた弾丸のようなものをカメラへと見せた。
『
これを刺すと
このことをフェイクだと思う方もいらっしゃるでしょう。
なので、今回この効果を
そう言われ出てきたのは黒光りした昆虫がそのまま人間のサイズになり立ち上がったかのような男だった。彼は『G・G』その見た目から不動の人気ワーストワンと呼ばれることの多いヒーローだった。
『G・G』の前肢を手に取り、さっきほど座っていたソファーまで連れていき座るように促す。
座った彼の後ろへと移動し、彼の両肩に手を置いて『ティキ・ミック』は話を続けた。
『彼のことを知っている方は多いと思います。
彼の個性は『
そんな境遇でも彼は人々を助けることをやめませんでした。
まさに『
彼もまた個性に翻弄された人間と言えます。
この映像を見ている皆さんにも自分の個性さえなければ!と思っている方も多くいると思います。
今回『G・G』はそんな心の声を持った人たちの代表としてこの動画に協力してもらうようオファーしました。この場に現れてくれた彼には本当に感謝の意を述べたいです。
そろそろ、
では、この薬を試す前に確認させていただきます。
あなたはの『個性』は
「あぁ、
それより、この話本当なんだろうな。」
『えぇ。私たちヴィラン連合は『真の平和』を目指していますから。その願いには個性に翻弄された人たちの「無個性になりたい」という願いも含まれています。
このクスリを刺せば
それではご覚悟はいいですね?』
「あぁ、頼む。」
『G・G』の意思を確認すると『ティキ・ミック』は首元へとクスリを刺した。
刺された『G・G』は痛がる様子もなく、じっと座っていたが、少し苦し気に嘔吐くと顔を上半身にある4本の肢で覆った。
そこからの変化は劇的だった。
まず、顔を覆っていた4本の肢が2本になるように合わさっていき、
その様子を、その両手を『G・G』は信じられないというような驚愕の表情で見つめる。
「……なぁ!手!手だ!お前らにも見えているか!?虫の肢じゃない!
『えぇ、しっかりと見えています。
『G・G』は信じられない様子で『ティキ・ミック』へと確認をする。
その間にも変化は続いていく。
筋骨隆々だった黒光りする肢はどんどんと靡ていき
その変化を確認するかのように『G・G』は自分の掌で顔を触る。
「あぁ、鼻だ!口もある!耳もだ!…視界も違う!世界はこんな風に見えていたのか!なぁ、頼む。誰か鏡を持ってきてくれないか?」
その言葉に『ティキ・ミック』が懐から手鏡を取り出し、『
鏡に映ったモノを見た瞬間、男の瞳から涙がこぼれ落ちる。
全身を大きく震わせながら男は喋る。
「……顔だ!……俺の顔だ!なぁ!アンタも見てくれよ!
「あぁ!……ありがとう。ありがとう。」
男は『ティキ・ミック』のもとへ駆け寄り膝をついてその感謝を伝える。
『ティキ・ミック』も膝をつき、男の両肩を包むようにして抱きしめる。
『…長い間苦しかったでしょう。』
その一言だけを呟き、男の涙をその胸で受け止める。そして、『G・G』の興奮が収まるのを見計らいソファーへと座りなおすように促し、ソファーに3人で座る。
『このように効果のほうは万全です。しかし、先ほども言ったようにこのクスリは
が、現状の設備、資金では
どうか、この動画を見ている良識のある方は
どうか、どうか。お願いします。』
そう頭を下げる『ティキ・ミック』の姿が映されると映像は終わった。
『
また、どうにかして資金を投資しようとする人が詰めかけたため、入り口前にテントを張り昼夜問わず募金を受け付けるようになったという。
世間ではフェイク映像だろうと言う人もいたが、実際に『G・G』がワイドショーに出演し発言したり、元の姿に戻るまでずっとカメラを回させていたためその疑いは少しずつ晴れていき、世紀の大発明を
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「ってな訳で、死穢八斎會は出向組を構うことすら難しいくらい忙しくなってるよ。
『はっ!傑作だな。極道が医療施設みたいな扱いを受けていやがる。最高な気分だ、ティキ。』
「気に入ってくれたようで何よりだ。」
『それに
「ご機嫌だね。こっちはヤクザのノウハウを勉強中だってのに。」
『…しばらく、大人しくしていろ。どうやら近々、
「へぇー、研究成果の強奪ですかい?」
『…そうかもな。名目は
「りょーかい♪テキトーにケリ着けますわ。んじゃ。」
定期連絡を死穢八斎會の事務所にある固定電話から済ませる。
「想像以上の成果過ぎて対応が追い付かない。」とはオーバーホールの談である。
あいつもこの件で様々なツテから顔合わせの予定が入り大変なようだ。
会話の内容も死穢八斎會は把握していると思うがそんなことは知られてもいい情報だ。
現在ヴィラン連合のメンバーはそれぞれ1人の監視をつけられて放置されている。
俺にも個性で
なので俺も個性で壁を抜けながらこの地下の施設を探検したりして時間を潰している。
個性を消すクスリの研究のためだろう、研究施設のような設備がたくさんあり見ていて飽きない。
今も個性を使って部屋を回っている。
薄暗い室内、それとは対照的に明るい絵本に出てきそうな部屋の壁紙。部屋の床には未開封のおもちゃ、ぬいぐるみが乱雑に置かれていた。
「ふーん、ここは初めて来たや。」
「っ!?」
音のするほうへ顔を向ける。
俺が壁から現れたことで部屋の中央に設置されてたベッドにいる人物を驚かせてしまったらしい。
「…へぇ?
「オイ!テメェ!部屋から出ろ!」
ミミックの声が壁から発せられるが無視をしてタバコに火をつける。ベッドへと近づき、子供がビクビクした様子でこちらを窺っているのを無視してベッドに座る。
「…わりぃ、火ぃ着けちまった。一服したら出るわ。」
「テメェ!ふざえけんじゃねぇ!」
お目付け役がうるさいので個性で
俺の様子を窺う子供に話しかける。
「俺は『ティキ・ミック』。ティキかティッキーって呼んで。」
「……わっ、私は壊理です。」
「ずっとここにいるのか?」
「え?…うん。抜け出したら誰かが怒られるから。」
「…そうか。」
この地下に子供がいる理由が分からないが、この子供の腕に巻かれている包帯、さっきのミミックの反応、子供のビビり具合から言って虐待されていることは確実だろう。
だとしたら、
12畳ほどの部屋は子供が1人で過ごすには十分すぎるほど広い。もしかして、オーバーホールのシュミか?だとしたら面合わせるのはゴメンだな。
お互いに沈黙が流れる中、紫煙だけが空中に幾何学的な模様を描きながら天井へ立ち昇る。
長い沈黙の後、タバコも喫い終わり部屋から出るので子供に声をかける。
「…んじゃ、行くわ。」
「……はい。」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
週間18位月間43位ありがとうございます。
昨日は、書き貯めもないのに本日同時投稿した短編を執筆してしまったためお休みさせていただきました。
そちらはネタ要素の多い話ですが、実はヒロアカ二次を投稿している人や読者の皆さんもルビが振ってなかったらそう思ったことあるだろうな。というあるあるネタを後書きで書くつもりが、想像が膨らみに膨らみ短編になってしまいました。
ご一読していただけると幸いです。
最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m
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