英雄と敵の二重生活   作:毎日健康黒酢生活

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お疲れ様です。

本日ご紹介する作品はこちらです。
かがたにつよしさんの『アイドルは労働者(仮)』です。
『アイドルマスターシンデレラガールズ』の世界に社畜がTS転生オリ主として登場します。
主人公の合理主義な考え方、プレゼン能力は見ていてすごく楽しいです。
実際はアニメ世界のような巨額な資本が動く仕事なほど夢や希望が入り込む余地はなくなっていくのですが、そこもうまく表現できているともいます。
主人公のデビューシーンは何回でも見ていられます。

是非ご一読ください。



インターン~表~

side 切島鋭児郎

 

今日のインターンはサー・ナイトアイの事務所に集合するって、ファットガムさんから連絡があった。

学校を出たところで、緑谷と麗日、蛙吹と出会い、目的地が一緒なことが分かったから一緒に電車に乗り、向かうことになった。

電車内でクラスの中では()()()()()()()()()()()について緑谷が話し出す。

 

「…みんなは『ヴィラン連合の無個性薬』の動画見た?」

 

「あぁ/えぇ/うん。」

 

「ノア君なんだよね。『ティキ・ミック』は。」

 

「爆豪も証言してるし、本当のことだ。」

 

「…そっか。どこで間違えちゃったんだろうね。」

 

まるで透明人間のようにいなくなってしまった「()()()()()()」の事を思い、俺たちの周りには電車の揺れる音だけが響き、石のように黙ってしまった。時折、クラスでもいなくなった『あいつ』の話題になると、同じような静寂が流れる。重苦しい空気を変えるためにインターン先での話を切り出す。

 

「それより、なぁ!みんなのインターン先の話聞かせてくれよ!」

 

「そうね。アタシたちのところは――――」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

サー・ナイトアイの事務所の大会議室へと着くと、全国各地の名だたるヒーローたちが集まっていた。

集められた面々の間に流れる空気を見て、これからただ事ではないことが行われるのかもしれないと覚悟を決める。

サー・ナイトアイのサイドキックのバブルガールに席に案内されて、ファットガム、天喰先輩と並んで席に着く。

集合をかけたヒーローが全員揃ったのか、サー・ナイトアイが壇上に立ち挨拶をする。

 

「皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。本日皆様にお集まりいただいたのは()()()()()()()()()()()()について知りえた情報とともに協議を行わせていただきたかったからです。」

 

『『『---!?』』』

 

一瞬にして場の空気が張り詰めるのを感じる。

今、世間を最も注目させているヴィラン達の話だ。それに、『ティキ・ミック(あいつ)』についても新しい情報があると思う。

 

「順を追って話します。我々ナイトアイ事務所は2週間ほど前から()()()()()()()()()()()死穢八斎會について追っていました。そして捜査開始から数日後ヴィラン連合と接触があり、その数日後、つまり先週に「あの動画」がネット上にアップロードされました。調べたところここ1年で他の裏稼業団体との接触が急増していることが分かり、今回の「無個性薬」の制作資金を集めようとしていたようです。」

 

「…そこで今一番世間を騒がしているヴィラン連合と接触したのか。」

 

「はい。このような過程があり、世間からの注目度が高くなる案件になることが予想されるため、今回H・N(ヒーローネットワーク)で皆さんに協力を呼びかけました。」

 

「そこでこの『個性を消すクスリ』なんやがな。先日の『烈怒頼雄斗』がデビュー戦で、粗悪品とはいえ実物を手に入れてくれましたわ!」

「実際に打ち込まれた子を病院で見てもらったら、個性因子が傷つけられていることが判明しましたわ。」

 

「イレイザーヘッドの『抹消』とは違うのか。」

 

「切島くん!ホンマよくやってくれた!」

 

「俺っすか!?ありがとうございます。」

 

会議室にいるヒーローが俺のことを褒めてくれる。

俺を褒めてくれていたファットガムの明るい表情が真剣なものに切り替わる。

 

「このクスリ…中身を調べてみたらメッチャ気色の悪いモンが出てきた。」

「人の血ィや細胞が入っとった。」

 

会議室中が重苦しい空気に包まれる。

その沈黙を破る様にしてリューキュウが喋る。

 

「つまり…そのクスリは人から作られたってこと?」

 

「治崎には出生届はないが娘がいることが確認できました。そして、その手足には夥しく包帯が巻かれていました。」

 

「…まさか、そんなこと!」

 

たどり着いたおぞましい真実(せいかい)にプロヒーローでさえ息をのむ。

俺はその恐怖から一瞬世界がぐにゃりと歪んで見え、心臓の鼓動と呼吸とが、同時に止まったように思った。

そんなクスリを『あいつ』は笑顔で紹介していやがったのか!?

まさか、とは思うが『あいつ』は共同で研究していたと言っていた。この事実を知らないわけがない。

 

「『彼女』の救出。それが今回の目標になります。」

 

 

「…だけどよぉ。あいつらからの動画のせいで世間は『クスリ』の実態を知らないとはいえ沸きに沸いている。そこのところはどうするんだ?」

 

「そこです。なので皆さんには作戦に参加していただくのなら覚悟をしていただきたい。」

「いくら正直に話したとしても世間は納得いかないし、もし公表したら次なるヴィランがその少女を狙うことは予想できます。」

「なので、今回の作戦はマスコミには公表できません。しかし、()()()()()()()世間からはバッシングを受けることになるでしょう。」

「その覚悟があるものだけがこの場に残ってください。もし、ここで立ち去ったとしても誰も責めません。皆さんそれぞれの事情もあるでしょうし、たとえ正しいことを成したとしても謂れのない非難は誰でも受けたくないです。」

 

しかし

 

「私の()()()()()()()()はこう言ってました。」

 

 

『ヒーローは決して悪に屈したらいけないんだ。プロはいつだって命懸けさ!』

 

 

瞬間、平和の象徴(オールマイト)の姿が全員の頭によぎる。

この場から立ち去るヒーローなどいない。

 

女の子1人守ってやれなくて何がヒーローだ!

 

この場のヒーローの心は一つになった。

誰も立ち去る様子がないことを確認するとサー・ナイトアイが続ける。

 

「死穢八斎會と繋がりのある全国各地の拠点をリストアップしましたので、『彼女』のいるような拠点を探してください。今、死穢八斎會は多くの資金を手に入れたはずですその資金が向かう先、そこに『彼女』はいるでしょう。」

 

『『『応っ!』』』

 

 

会議が終わりそうなる中、勢いよく手を挙げる。

 

「…その、1つ言っていいですか?」

 

この会議中ずっと言いたかったことを言うため、サー・ナイトアイに一瞥して許可を求める。

 

「構わない。この会議にいる以上君も選ばれたヒーローの1人なのだから。」

 

「ありがとうございます。えっと…俺はファットガムの事務所にインターンさせていただいている雄英高校の切島鋭児郎って言います。」

 

一言発するだけでも部屋中の視線が集まってくる。

だけど。

いくら有名なヒーローがいるからと言って()()()()は譲れない。

 

「…死穢八斎會とヴィラン連合の動画で『ティキ・ミック』が出てきました。『あいつ』は多分『彼女』がいるところにいるんだと思います。」

 

「今回の捜査で『あいつ』を捕まえるような事態になったときはその場所に俺を呼んで欲しいんです。」

 

 

「その…『あいつ』とは親友(ダチ)で。」

 

 

「『あいつ』が捕まった時。」

 

 

「その場にいなかったら!」

 

 

 

「俺は!!!」

 

 

 

親友(ダチ)として一生後悔します!!!」

 

 

 

だから、お願いします。と言って頭を下げる。

 

ファットガムからパチパチと手を叩く音が聞こえた。

 

「えぇやないか!自分!」

「『無個性薬』についてもこの子の活躍がなかったら情報が手に入んなかったんです!どうか!俺からもお願いします!」

 

ファットガムも椅子から立ち上がりプロヒーロー達に頭を下げる。

その様子を見ていた相澤先生が手を上げ、発言する。

 

「切島。今日はヴィラン連合との関りがあるから君たちのインターンの中止を提案するつもりだったんだがな。」

「お前のその友情は確かに美徳だ。だが、行き過ぎれば悪徳だ。お前は『ティキ・ミック』と会って何をするつもりなんだ?」

 

有無を言わせない相澤先生の物言いに顔を上げ、その目に目線をあわせる。

多分、ここで相澤先生を納得させられなきゃ本当にインターンの中止を宣言させられるだろう。

 

「…『あいつ』っていつも一歩引いたところにいたんですよ。」

 

「みんなが騒いでる時も」

『8:2坊やが怒った~!』

 

「USJの時も」

『大将!俺も助けに入るぜ!』

 

「体育祭も」

『さっきの試合()()()()()()()ぜ。』

 

「林間合宿中も」

『挑戦はいつでも受け付けるぞー。』

 

「その癖、1人ぼっちは寂しいから誰かといつもいるんです。」

『倒れないっていうのはシンプルだけど()()()()()()()()。』

 

 

だから

 

 

「もう一回会って()()()話をしたいんです!」

 

 

一瞬たりとも相澤先生から目を離さずに、俺の本心を伝える。

相澤先生の測る様な視線が胸が痛くなるような静けさをもたらす。

しばらくの沈黙の後。

 

「そうか。ここでその意思を曲げたら『烈怒頼雄斗』の心には、一度折り目がついてしまった紙は延ばしても延ばしてもその折り目が消えないように、お前の心に折り目が残っていくんだろうな。」

「分かった。俺が見ておく、するなら正規の活躍をしよう。切島。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

時は流れて、死穢八斎會本拠地検挙当日。

 

AM8:30

 

こんな朝の早い時間でも死穢八斎會に張っていたマスコミや募金をしに来た一般人はたくさんいた。

その避難誘導を済ませて、後は突入を待つのみとなった。

 

「いよいよですね。ファットガム。」

 

「せやな。気張ってけよ!『烈怒頼雄斗』!」

 

「はいっ!」

 

門前では警察の人が令状を読み上げる。

すると門を破りながら大柄の男が警官隊へ突進してきた。

一気に場が動き出す。

 

「ファットガム!」

 

「ようわからん!もう突入や!行くぞ!目指すんわ最短ルートや!」

 

その言葉とともに邸宅内へ突入する。

が、予定されていた道には壁があり進むことができなくなっていた。

 

「邪魔だ!コノ!」

 

 

烈怒頑斗裂屠!

 

 

先走ってその壁を破壊した俺にファットガムさんが声をかけてきた。

 

「気張るのはええけど無茶するなよ。烈怒頼雄斗!」

 

「はい!スミマセン!」

 

邸宅の地下を進む。

入り組んでいることは事前にサー・ナイトアイの予知で知りえた情報で知っていたが、予想以上に広い。

だが、最短ルートしか知らないため、ただ突き進む。

 

後ろから轟音がした。

振り返り確認すると、相澤先生が壁に飲まれるところだった。

やばい!

そう思った瞬間に体は動いていた。

相澤先生をかばう様に飛び込んだら、むにょんと何か柔らかいものに包まれた感触がした。

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

「ん゛~~~!」

 

ぷはっ!

 

周囲を確認する。

ファットガムさんが覆いかぶさるようにして、俺の上にいた。

 

「なにしとん!?」

 

「いや、俺も相澤先生をかばおうとしたんですけどファットガムに被ったみたいッス」

 

「まぁ、しゃーないわ!それより気ぃ張れ!」

 

「ファット!後ろ!」

 

ファットガムをかばう様に移動し、全身を硬化させる。

 

安無嶺過武瑠!

 

瞬間、すさまじいまでのラッシュが俺とフォットガムを襲う。

その衝撃に俺は壁まで吹き飛ばされてしまった。

 

「かはっ!っくうううう

 

俺の全力の装甲が割れた。

ずきずきと鋭い痛みが両腕から発せられる。

俺はまだ!

『あいつ』に会えてすらいねぇんだ!

気力で安無嶺過武瑠の状態を維持する。

 

「えぇで!烈怒頼雄斗!その状態解くなよ!こんな三下さっさと蹴散らしてみんなに合流するぞ!」

 

「おめぇら分かってんじゃねぇか!天蓋これ外せ、いらねぇ!」

 

「私欲に溺れるな。オーバーホール様の言いつけを守るんだ。」

 

「うるせぇ。」

 

言葉とともに先ほどの凄まじいラッシュが味方を襲う。

死穢八斎會も一枚岩ではないようだ。

だが、そのラッシュを天蓋と呼ばれたヴィランは物ともせず個性ではじく。

 

「はぁ、それで処理できるならすればいい。」

 

「分かってくれたか。いい引きこもりだ。」

 

「なんや、ナカ悪そうやな。ケンカしようや!乱波くん!」

 

「おまえいいデブだな!」

 

ファットガムに向けてすさまじいラッシュが放たれる。

くっそ!全然間には入れるタイミングが無い。

2人の攻防のレベルの高さに足がすくんでしまう。

そうしている間にもファットガムがどんどん削られていく。

 

俺が、今できることは!?

 

ファットが俺をかばって死んじまう!

 

 

『倒れないっていうのはシンプルだけど()()()()()()()()。』

 

 

そうだよな。親友(ダチ)

 

 

ここで俺が守らないで誰がファットガムを守るんだ。

 

決心を固めて2人の間に入り、ラッシュを受ける。

俺が間に入ってもまったく気にしないでラッシュは続く。

全力の装甲が割れたからなんだ。

割れたそばから硬めていけばいい。

親友(爆豪)のラッシュと比べたらまだマシだ。

 

「いいな、おまえ。」

 

ああああああ!!!」

 

俺の渾身の一撃は天蓋のバリアに弾かれてしまった。

だけど、乱波もそのバリアに阻まれて何もできない。

後方に倒れると同時にファットガムの顔が見えた。

 

後は、頼みます。

 

 

「おおきに!ようやった!敗因は一つや!お前らも!俺も!甘く見ていた!烈怒頼雄斗っちゅうヒーローの漢気を!」

 

 

同時に爆音が周囲を包む。

 

 

「切島くん!意識はあるか!?」

 

「誰っすか?」

 

「ファットさんや!」

 

「俺…守れましたか?」

 

「あぁ!やってやったで!」

 

 

 

 

 

次に気が付いた時には医務室のベッドに寝かされていた。

周囲を見るとファットガムと乱波がいた。

俺の上半身を見ると包帯でぐるぐる巻きにされており、手荒ながら治療が施されていた。

 

「ファットさん!乱波が!」

 

「えぇねん。こいつが切島くんの治療を申し出てくれたんや。」

 

「オイ!烈怒頼雄斗だったか?」

 

「あぁ。」

 

「いい勝負だった。また戦おう。」

 

話を聞いてみると、どうやら乱波は義理があって死穢八斎會にいるのではなく、ただオーバーホールに挑むためにこの組にいたようだった。

 

「なぁ。ファットさん俺どんくらいトンでました?」

 

「10分無いくらいやな。」

 

その時通信が入る。

 

『こちらルミリオン。「オーバーホール」を発見しました。保護対象ならびに『ティキ・ミック』、『マグネ』のヴィラン連合メンバーを確認しました。』

 

勢いよく上体を起こしてベッドから降りようとするがうまくいかずにそのまま落ちてしまう。

 

「切島くん!何やっとんねん!絶対安静や!」

 

「俺!…行かなくちゃ!今度こそ!」

 

「なんだかわからないが、烈怒頼雄斗はオバホのところに行きたいのか?」

 

「あぁ!でも、1人では立てそうにない頼む!俺をそこに連れて行ってくれ!」

 

ベッドから落ちた姿勢のまま、床に這いつくばる様にして顔だけを上げて、ファットガムと乱波に頼む。

 

「はぁ、しゃーないな。連れてったる!」

 

そうファットガムが言うと、乱波が俺の身体を乱暴に自分の背中に乗せてくれた。

 

「行くぞ。道案内は頼んだぞ。」

 

「おおきに。乱波くん!」

 

「ありがとうございます!二人とも!」

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

なんかね。休みってこともあって切島SIDEの話だけで6000文字近くも書いてしまった。いつもは大体3~4000文字なのに。
ヤクザ編結末は決まってますのでどうか皆さん楽しんで拙作を読んでいただけると嬉しいです。

今後も拙作をよろしくお願いします。

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島
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