英雄と敵の二重生活   作:毎日健康黒酢生活

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魔―a devil―

壊理を確保しオーバーホールとミリオの警戒をしていると、俺を中心に黒い靄が広がっていく。

その靄とともに黒霧さんが現れる。

 

「非常信号が出たから来てみれば…これはどういう状況ですか?」

 

「色々あって死穢八斎會(こいつら)気に入らないから壊(殺)すことにした。」

 

「それはそれは…で?私は何からすればいいですか?」

 

「1にトガ、トゥワイスの回収。2にこの子供(がき)の回収。3に他のメンバーの帰宅かな。」

 

「彼女の援護はよろしいので?」

 

黒霧さんが指さすその先ではマグ姉が2人のペストマスク相手に大立ち回りをしていた。

どうも動きが鈍そうだが、それでも銃を持った2人相手を押しているのは彼女の立ち回りの巧さが大きいだろう。

 

「いいよ。そこは信頼してるし負けそうにないだろ。」

 

「分かりました。では、トガとトゥワイスの捜索をしてきます。」

 

「あっ!俺対策にイレイザーヘッドかミッドナイトがいる可能性高いから気を付けてな。」

 

「了解です。ティキ・ミックもお気をつけて。」

 

そう言い残し靄となってこの場から去る黒霧さん。

気を付けて…か。俺に一番遠い言葉だろう。

ティーズを構えなおして獲物に向き合う。

 

「ヒーローも死穢八斎會(ヴィラン)もまとめてかかって来な。

 さぁ、ラストダンスといこうぜ♪」

 

地下に潜伏していたミリオが壊理に向かい出現するがそう来るだろうと読んでいたので出現地点にティーズを振りぬく。

その肩口から腰にかけて袈裟型に切られたミリオからは柘榴の粒果のような血が滴したたる。

 

「カハッ!!」

 

「…1人脱落♡」

 

「使えねぇ。お前もすぐにバラしてやるよ。」

 

「援護しやす。」

 

無数のコンクリートの棘と銃弾が俺に向かってくるが関係ない俺(・)は(・)世(・)界(・)か(・)ら(・)浮(・)い(・)て(・)い(・)る(・)。

壊理の方にも余波で攻撃が行ってるが正六面体には傷1つ付いていないことを確認する。

手持ち無沙汰になったので内ポケットから煙草を取り出し、火をつける。

その仕草が気に障ったのか、煙草が気に入らないのかオーバーホールは額に青筋を立てながら俺を煽る。

 

「さっきからスカしやがって、そんなに触られるのが怖いのか!?」

 

「お(・)前(・)ら(・)…人間なんて奪われるだけで何も選択できずに死んじまう。その弱小さに愛しさは感じても恐れなんてヘドが出るね。」

 

すれ違いざまにティーズの翅で白いペストマスクの男の首を刎ねる。もう片方のティーズでオーバーホールに切りかかるがギリギリを避けられ片腕を切り落とす。オーバーホールの肩口から血が赤い花のように噴き出した。

 

「クッソが!」

 

「ティキぽん!こっちも終わったわよ!」

 

2人組の相手をしていたマグ姉の方も勝負がついたようだ。

2人の男が足元に倒れている。

こちらに加勢しようと近づいてきたので手で制す。

 

「いつもの顔はどうした?ヤー公?」

 

その瞬間、激しい破壊音とともにオーバーホールが作った壁が壊されヒーローがなだれ込んできた。

少年、イレイザーヘッド、眼鏡をかけたサラリーマン。

 

そして

 

ボロボロになりながら2人の男に支えられて立っている切島。

 

 

 

 

 

親友(ノア)!!!

 

 

 

 

 

「よぉ。久しぶりな顔ぶれだな。元気してたか?切島♪」

 

 

 

マズい。マズい。マズい。

よりによってイレイザーヘッドがここに来やがった。

見(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)。

イレイザーヘッドの個性は個性因子の動きを止める。

俺とオーバーホールの個性が消された。

オーバーホールも何度も地面をバンバンと叩いている。

俺の個性によって作られていた正六面体も消え去り、壊理が倒れているミリオのそばへと落ちる。

 

「マグ姉!」

 

イレイザーヘッドの視界外にいるマグ姉へ指示を出す。

何も言わず、短い指示だけで理解してくれた。

俺の身体に磁力を付与して磁石棒で俺を回収してくれる。

マグ姉の身体の陰に隠れイレーザーヘッドをやり過ごし、地面へと潜る。

 

「サンキュ!」

 

マズいな。

イレイザーヘッドがいるだけで盤面がひっくり返っちまった。

俺が背後や地面、天井からの強襲することも想定しているだろう。

 

…ヤベェ。勝てるヴィジョンが見つからねー。

 

不透明な透明人間。

慢心をなくして、常時世界から浮(・)い(・)て(・)ほとんどの個性の影響を受けなくなった俺の唯一の弱点。

不俱戴天の敵がよりによってこんな時に現れるやがった。

見られたら最後だ。

付け焼刃の格闘術でさえイレイザーヘッドから仕込まれた物だ。通じるわけもない。

 

「若ぁ!!!」

 

マグ姉の後方で倒されたペストマスクの男が叫ぶ。

そのペストマスクの男にオーバーホールは黒いケースを投げつける。

 

「壊理を壊せ!」

 

ガチャガチャと拳銃を弄り黒いケースから弾を装填し壊理へと照準を合わせる。

俺の個性という安全地帯が無くなり、目をつむり事態が落ち着くまで自分の世界へと逃げた壊理。

助けようと思えばできるが俺が姿を現したらゲームオーバーだ。

壊理(ボーナスアイテム)は諦めるか。

俺は観念し、壊理を見捨てた。

 

 

ふわっと壊理を包むようにしてマントが翻る。

 

 

「大丈夫!もう君を悲しませない!」

 

 

血だらけのミリオが笑顔とともに壊理を優しくマントで包み込む。

 

パシュン

 

軽い銃声が周囲に響く。

銃弾は何(・)に(・)も(・)当(・)た(・)る(・)こ(・)と(・)な(・)く(・)直線的に壁に突き刺さった。

 

「へぇ?」

 

ペストマスクの男から気の抜けた声が出ると同時にサラリーマン風の男から押印が飛びペストマスクの男を気絶させる。

その拳銃はオーバーホールのほうへと勢いよく飛んで行った。

勝ち誇ったような顔で重症のミリオは叫ぶ。

 

「ティキ・ミック!君のアドバイスのおかげだ!あの後、俺は必死に特訓して俺の体組織でできたものに包まれた物も一緒に透過できるようになったよ!『Plus Ultra』さ!」

(本当は1秒の制限があるけどね。頼む!これで壊理ちゃんを諦めてくれ!)

 

「へぇ…やるじゃん。」

 

あんな適当に返したアドバイスでそんなに変わるなんてバケモンか?

俺の声に反応して事態を見るしかなかった切島が動き出した。

よろよろとだが1人で立ち、どこにともなく叫び始めた。

 

「オイ!親友(ノア)!聞こえてんだろ!?」

 

「…」

 

「だんまりかよ。お前はいつもそうだったな。一歩引いて大事なことを教えてくれねぇ!」

 

「…」

 

「なぁ!答えてくれよ!俺たちは親友(ダチ)だろ!ノア!」

 

「…俺はヴィラン連合の『ティキ・ミック』だ。表の顔(通形ノア)は捨て(殺し)た。」

 

俺が一言声を返してやると先ほどまでの血気迫る表情から打って変わり、つきものが落ちたような顔でこちらに語り掛けてきた。

 

「あぁ。ようやく『お(・)前(・)』の(・)本(・)音(・)が聞けた気がするよ。」

 

「これで満足か?」

 

「あぁ。お前がネットに動画を上げた次の日爆豪と話し合った。

 

 

 

 

 

 

俺(・)た(・)ち(・)が!

 

 

 

 

 

 

 

お前を捕まえるよ!

 

 

 

 

 

 

 

『ティキ・ミック』!!!

 

 

 

 

「…言いたいことはそれだけか?」

 

「あぁ!後は捕まえてから聞く!」

 

「…そうか。」

 

最後の一言は誰にも聞こえないよう地面の中でひっそりと紫煙とともに溢す。

これは切島たちとの決別だ。

表の顔(通形ノア)と親友(ダチ)たちの。

楽(・)し(・)か(・)っ(・)た(・)時間は終わり。

 

「友情ごっこしてんじゃねぇ!」

 

片腕を失い、顔面が蒼白になったオーバーホールが落ちている拳銃を拾いあげる。

その顔は苦痛に歪みながらもヴィラン連合(おれたち)への憎悪を孕んでいた。

 

「畜生!全部計画もパーになった!壊理(材料)もヒーローに取られた!個性も使えねぇ!」

 

その銃口がゆっくりと壊理やイレイザーヘッドではなくマ(・)グ(・)姉(・)へと向けられる。

 

「最後にお(・)前(・)が嫌がることをしてやるよ!家族(ファミリー)なんだろ!?」

 

その引き金が引かれる光景がゆっくりとして見える。

止めろ!

 

『考(・)え(・)る(・)よ(・)り(・)先(・)に(・)体(・)が(・)動(・)い(・)て(・)い(・)た(・)。』

 

かつての教師(オールマイト)の言葉が脳裏によぎる。

気が付いた時にはマグ姉をかばう様にしてその前に立っていた。

同時に、胸に軽い痛みが走る。

痛みの先に視線を向けると、「無個性薬」が刺さっていた。

既に1発当たってるにもかかわらず、2発目の照準を合わせるオーバーホール。

壊理がくるまれたマントの中から顔を出して叫ぶ。

 

 

「ティッキー!」

 

 

 


 

 

その姿が見(・)覚(・)え(・)の(・)な(・)い(・)少女と重なる。

 

あれ?だれだ?こんな子供(がき)知(・)ら(・)ね(・)え(・)ぞ(・)。

 

それになんだこの既(・)視(・)感(・)は。

 

壊理の姿に黒髪の短髪な少女が重なる。

 

なんだか懐(・)か(・)し(・)い(・)な。

 

 


 

 

その映像に重ねる様にしてこちらに駆けだそうとする壊理を手で制す。

 

 

「いい」

 

 

わりぃ、弔。

 

 

 

 

―――視界が闇に包まれる。

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

side 壊理

 

私に向けられた手が重力に従い力なく落ちていく。

膝から崩れ落ち浅黒いその肌がドンドンと白くなっていき、額にあった聖痕のようなアザは消えていく。

マグ姉をかばってティッキーが不(・)幸(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)。

私のせいだ。

私が助かりたい。

ヴィラン連合(あの人たち)といたいと願ってしまったから神様が私に罰を与えたんだ。

 

「壊理ィ!こっちに来い!お前のせいで傷つくんだ!俺ならすべてを元通りにできる!」

 

怖い人が私に向かって叫ぶ。

怖くてその声に反射的にすくんでしまう。

でも、倒れているティッキーから目が離せない。

 

もし

 

もし、私が個性をちゃんとコントロールできるなら彼を助(・)け(・)ら(・)れ(・)る(・)か(・)も(・)しれない。

 

そう考えた瞬間私の身体はヒーローの腕を振り切ってティッキーへと走り出していた。

ぼこぼことした地形を全力で走る。

うつ伏せに倒れこんでいるティッキーの上半身を起こして、個性を発動させる。

楽しかったあの時間を思い出しながら。

 

「ティッキー!今度は私が助けるから!」

 

私の右額がずきずきと痛み出す。

右側に視界が光に覆われる。

今度こそコントロールするんだ!

 

 

戻れ!

 

 

戻れ!

 

 

戻れぇー!!!

 

 

ティッキーの身体が光に包まれる。

胸元の傷が消えた。

やった!もう大丈夫!

止まって!そう願い個性を止めようとする。

…

嘘!

止まらない!

私がコントロールしなきゃ!

ダメ!

ダメ!

消えちゃダメ!

まだティッキーにお礼を言えてないのに!

 

 

「だめェー!!!」

 

 

ティッキーを抱えていた腕に重さが無くなった。

急に軽くなったその腕に悪い予感を感じながら閉じた両目をゆっくりと開く。

 

そ(・)こ(・)に(・)は(・)何(・)も(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

失敗した。

あぁ、私が何もしなければよかったんだ。

目の前が真っ白になる。

火のように熱く目にたまったままで流れずにいた涙が重力に従い顔を伝っていく。

ティッキーのいなくなったその空間を私の個性はまだ照らし続けている。

 

「壊理ちゃん!」

 

「触っちゃダメ!マグ姉もいなくなっちゃう!」

 

マグ姉が私を心配して手を添えてくれようとしてくれるけど拒絶する。

今の私に触ったら何でも巻き戻ってしまう。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

私が幸せを願ったから。

私が希望を感じたから。

私が救済を欲したから。

ティッキーが不幸になちゃった。

 

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

 

今なお光り続けるテ(・)ィ(・)ッ(・)キ(・)ー(・)が(・)い(・)た(・)場(・)所(・)に祈る様に謝り続ける。

 

あぁ、神様がいるならどうか、どうかティッキーを助けてください。

 

私はもう、幸せも希望も救済もいりません。

 

全部あなたにあげてもいいです。

 

だから!

 

どうか助けて!

 

 

神様ぁ!

 

 

瞬間、両腕に重みを感じる。

涙で滲むその視界の先にはティッキーがいた。

その存在を確かめるように抱きしめるとその鼓動がちゃんと聞こえた。

やった!ティッキーを助けられた!

そう歓喜の涙でほほを濡らしていると、ティッキーの右腕が私の頭に沿えるようにして伸び、その顔へと視線を合わせられる。

浅黒かったその肌は灰色に変化し、飄々としていたその瞳の奥は青白い炎が燃えているように輝いていた。

また、その輝きに追従するように首元からは十字架のように同じ輝きが瞬いていた。

ティッキーはどこか機械的に視線を合わせた私に語り掛ける。

 

 

オ

 

ハ

 

ヨ

 

ウ

 

 

「…ティッキー?」

 

ティッキーは私の腕からまるで操り人形のように不自然に立ち上がった。

周囲を確認するようにしてその生気のない瞳でぐるっと周囲を見て苦しみ喘ぐようにして嗤い出した。

両手で顔を覆う様にして叫ぶ。

その背中からは羽根のように無数の黒いムカデのような触手が這い出してきた。

やがて、そのムカデはティッキーを包むようにして覆ってく。

 

「壊理ちゃん!こっち来なさい!」

 

私からの発光が無くなったのを確認してマグ姉が個性で私を引き寄せる。

 

「ティッキーが!!!」

 

「がっあああああぁぁぁ!」

 

一際大きい叫び声が上がり、ティッキーを包む無数の黒いムカデのような触手は螺旋を描くようにして解ける。

その先には背中からは羽根のように無数の黒いムカデのような触手を生やした黒い騎士のような姿に変貌したティッキーの姿があった。

ティッキーは周囲を確認すると口元を歪にゆがめて嗤った。

 

「……黒い……天使??」

 

『…あはっ♡』

 

その触手でまるで掃除でもするようにして怖い人を押しつぶしてしまった。

そしてヒーロー達に向き直り意味の分からない言葉を吐き始めた。

まるで。

責めるように。

弾劾するように。

呪詛を吐くように。

私たちに問い詰めるように。

 

 

『…人よ…我が子よ。』

 

 

『…なぜ…変わる。』

 

 

『嗚呼…異形(悪魔)に魂の救済を。』




最後まで読んでいただきありがとうございます。

Dグレ要素てんこ盛りです。
あのダークで救われない雰囲気を頑張りたいです。
世界観については完全この作品の独自解釈なのでご理解いただきたいです。
今まで謎だったことがこの章で解明されていくので是非お楽しみにしていただけると嬉しいです。

ティキの世界から浮いている状態は「東方project」の博麗霊夢の夢想天生を常時発動していると考えていただけるとイメージが付きやすいかなと思います。

『実体のある透明人間』と『不透明な透明人間』の対比で「葉隠透」と「通形ノア」のコンビは作者的にはめっちゃ好きなのでいつかifストーリーが描ければなと思ってる今日この頃。

今後も拙作をよろしくお願いします。

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島
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