英雄と敵の二重生活   作:毎日健康黒酢生活

35 / 48
聖戦ブラッド

 

「―――というわけで。第一にトガとトゥワイスはサブミッションを完遂の上、帰宅。第二に『あの子(壊理)』の確保も完了。第三に……残りはアナタとエシのみです。」

 

自分の仕出かした出来事に思わず頭を抱えてしまう。

正気じゃないから、憎き仇(新人類)だったから、なんて言い訳できない。

家族(ファミリー)をこの手で殺めてしまった。

その事実を受け止めながらその亡骸を収めた空間を指でなぞっていると、黒霧さんが声をかけてくる。

 

「ティキ・ミック。

 エシは私の制止も聞かずにアナタの為に命を捧げました。

 『アナタを見捨てればアナタに家族(ファミリー)と胸を張って言えない』と言ってアナタを止めに行きました。」

 

「あぁ。多分、エシの声があったから戻って来れたんだと思う。」

 

あの居心地のいい夢の中でノアの一族(過去)に固執しないでヴィラン連合()に戻る気になったのも、現実でエシが必死に俺を押さえて、その思いを語りかけてくれたからのような気がする。

黒霧さんが真剣に親が子を窘めるように言葉を続けていく。

 

「ならば止まらないでください。この先、組織を拡大を続けていくうちに残っているヴィラン連合(ファミリー)にも欠員が出ることでしょう。

 

 だが、『扇動』したアナタは立ち止まってはいけない。

 

 ()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 私も死力を尽くしてヴィラン連合(ファミリー)に尽くしましょう。」

 

だから、と黒霧さんは続ける。

これは彼の宣誓だ。

俺と弔に対する誓い。

そして、エシへの弔詞だ。

 

()()()()()()

 

 ()()()()()

 

 アナタが指し示した道を。

 

 弔が歩き、作った道を。

 

 ヴィラン連合(私たち)が走り抜け(わだち)にしましょう。」

 

言葉と共に片膝をつき、片方の手を俺に伸ばす。

その瞳、声色から堅い意志が窺える。

黒霧さんの手を取り俺も誓う。

 

「あぁ。誓うよ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

()()()()()()()。」

 

普段の穏やかな雰囲気に戻り、感慨深そうに珍しく諭すような、親が子を褒めるような口調で独白する。

 

「正直、『先生』にアナタたち2人を紹介されたときは不信感を覚えていました。大人子供(ワガママ)快楽殺人者(シリアルキラー)どちらも後継者として役不足でした。

 アナタは特に酷かった。

 『先生』から幼少期の話は聞いていましたが、『先生』が逮捕されるまではひどく歪な形に殺意が赴くままにこの世の全てを敵に回そうとしていました。

 多分、アナタにとっては『先生』ですらその対象だったのでしょうね。」

 

長年、『先生』と共に俺のことを見てきた黒霧さんには自分ではうまく隠していたつもりだった全能感(殺意)はバレていたようだ。

だが、そんなことも気にせずに()()()()の再会に黒霧さんは話を続ける。

 

()()()()()()()()()()()エシの死に何も感じていなかったでしょう。

 

 しかし、()()()()()()()()

 

 エシの死を嘆き、悲しみ、糧としている。

 

 そんなアナタだからこそ。

 

 ヴィラン連合(私たち)はその爪牙になります。」

 

 

この瞬間、この宣誓を以て。

 

ここに悪魔(天使)の契約が成された。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

『ティキ・ミック』の暴走により、ヒーロー並びに警官隊、死穢八斎會の逮捕者達は壊滅状態に陥っていた。

無傷と言える者は無く、多くの死傷者、重軽傷者で溢れていた。

その光景はまるでかつて起きた『大災害』の再来のようだった。

しかし、あの時とは違い『平和の象徴(オールマイト)』はいない。

『黒い悪魔(天使)』が居なくなった地上では辛うじて体が動くヒーローによって懸命な救助活動が行われていた。

その騒動に避難誘導されていた一般市民たちも助けになろうと救助の手伝いを始める。

 

そして、邸宅から緑谷、切島、ミリオ、天喰、イレイザーヘッド、ロックロック、ファットガムが出てきた。

瓦礫をどかしていたねじれがそれに気づき駆け寄る。

 

「大丈夫だった!?

 ……サー・ナイトアイは?

 他のみんなは?」

 

7人しか出てきていないことに気が付き、他の突入隊のメンバーの安否を問う。

しかし、7人の暗い面持ちで答えを知る。

 

「…サーは僕たちの盾になって。

 死穢八斎會の逮捕者達もやられた。」

 

地上よりもひどい惨劇が繰り広げられたであろうことをその言葉で知る。

あれだけいた突入隊が、警戒していた構成員たちが。

皆一様にしてあの『黒い悪魔(天使)』に殺されてしまった。

その事実を受け止めていると、()()()()()()()()()()ぽっかりと開いた地下への穴から黒いムカデのような触手が無数に蠢きながら這い出てきた。

 

その姿を確認して、動けるプロヒーローたちは迎撃の構えを取るが、ただ天に向かって伸びるだけで周囲の人間を襲ってはこなかった。

 

そして出来た、天に伸びる黒い塔はやがて結び解けるようにして崩れていく。

 

その中から背中からは翼のように無数の黒いムカデのような触手を生やした灰色の肌をした英国紳士のような服装をした『ティキ・ミック』が現れた。

 

その翼で飛ぶようにして上空に停滞し、周囲を見回した後。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に『ティキ・ミック』の声だけが響き渡る。

 

『やぁ、気分はどうだい?ヒーロー?

 …俺は最悪だよ。』

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

全てを聞いて覚悟ができた俺は演出の為に翼を上空に向かってただ伸ばす。

 

どこにいてもこの黒が見えるよう何よりも高く。

 

ただ天に向かって伸ばす。

 

そして、十分な注目を集めた後、解き解く。

 

黒い柱から現れた俺を周囲の人間が様子を窺うように注目する。

 

俺の声以外の音を全て拒絶して俺の声が届く全てに語り掛ける。

 

「やぁ、気分はどうだい?ヒーロー?

 …俺は最悪だよ。」

 

邸宅の入り口ではイレイザーヘッドが黒い翼(コレ)を消そうと目を見開いている

 

だが、消えるわけがない。

 

快楽(ジョイド)のノア』は()()()()()じゃない。

 

丁度、()()もその場にいたので言いたいことがあったから向かう。

イレイザーヘッドともう2人が生徒を守る様にして立ちはだかる。

 

「ティキ・ミックなぜ俺の個性が効かない?」

 

「イレイザーヘッド。

 (ヒーロー)にネタ晴らしするわけないでしょ?

 ()()()()()()()

 生徒だったからって教えてもらえると思ったのか?

 そりゃあ、…()()()()()()。」

 

色々と世話になった意趣返しで嫌味を言ってやる。立ちはだかる3人のヒーローを無視して切島に肩を貸している()()の元に歩いていく。

当然、三者三様に、ミリオ達も妨害してくるが無視して歩みを止めない。

少年と切島の目の前に立ち、独白するように尋ねる。

 

「なぁ、|ノアの一族の子孫(少年)。なんでお前は(個性)を欲したんだ?」

 

自分に声がかけられると思ってなかった()()はビクッと反応だけし、無言で続きを聞く。

 

()()()()()()()()。お前誰から(個性)貰った?」

 

「…――ッ!?」

 

その表情が驚愕に染まる。

『通形ノア』の時に感じていた理由のない親しみ、爆豪の昔話、その全てが、ノアメモリー(過去)を思い出した俺には分かった。

 

こいつは異形(新人類)に魂を売った我が子(旧人類)だ。

 

しかし、その問いに答えが出る前に支えられた切島が俺に向かい歩いてくる。

拳を構えて今にも殴りかかろうと話始める。

 

「おめぇに言いたいことは沢山ある。

 

 だけど!

 

 とりあえず、一発殴らせろ!!

 

 

「ヤダよ。痛いじゃん♪」

 

 

その大ぶりのテレフォンパンチは。

 

空振る。

 

その勢いのまま手負いの切島は地面へと倒れこむ。

 

「―――ックッショウ!」

 

…何だか冷めてしまった。

そのまま、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()空気を踏みつけ空を歩む。

去り際に一言旧人類(少年)に言う。

 

 

 

「次までに答え用意しておけ。次は殺すから。」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

その日、ネットに上げられた動画が、ヒーローはもとより国家に対する重大な不信感を世間に煽った。

 

 


 

 

救助活動を手伝っていた一般市民の携帯から撮られた映像なのだろう。

画質は荒いが確かに黒い翼を持った『ティキ・ミック』が宙に飛んでいた。

 

澄み切った青空と浮かぶ『黒い天使(ティキ・ミック)』。

 

そして、地上の荒れ果てた惨状。

 

地下まで続く地獄のような大穴。

 

その姿はまるで一種の宗教画のような幻想的な光景だった。

 

雑音は全く入らずにただ『ティキ・ミック』の声のみが響く。

 

 

『私はヴィラン連合所属『ティキ・ミック』です。

 

 今回の惨状は、国家による弾圧により起きました。

 

 我々ヴィラン連合は提携先の死穢八斎會を失い、『無個性薬』に関する多くの研究資料、設備が破壊されました。

 

 我々はただ、個性に悩む人たちの力になりたかった!

 

 現在では多くの人が個性という名の拳銃(ピストル)を持っています。

 

 日常で隣り合う誰かが強力な拳銃(ピストル)を隠し持っている。

 

 すれ違う誰もが拳銃(ピストル)を隠しあう。

 

 誰もが犯罪者(ヴィラン)になりうる。

 

 その危険性、その進化(不条理)を解決したい。

 

 ヴィラン連合はただそれだけなのです。

 

 それが今回、『無個性薬』という金脈に目を付けた国家権力が弾圧を仕掛け、このような惨状が広がりました。

 

 ヴィラン連合は研究を再開するのに優秀な人材を待っています。

 

 誰もが声をあげるだけでは駄目だ。

 

 言葉を行動に。

 

 綺麗ごと(理想)を言葉にして実行する。

 

 自由を!

 

 正義を!

 

 平等を!

 

 『真の平和』を!

 

 来いよ。ここが君のヴィラン連合(理想郷)だ。』

 

 

そう短く言い残すと『黒い天使(ティキ・ミック)』は黒い靄に包まれて消えた。

そして、その幻想的な光景にしばしの余韻を持って映像は終わる。

 

 


 

 

今までの演説と比べると短く。

 

だが、それ故に要点や主張が分かりやすい動画は瞬く間に広がり、国会の前では連日デモが行われ、ヴィラン連合に感化された人間が武装し、立ち上がり社会は大きな混乱に包まれる。

治安は『神野の悪夢』以降悪化していたのがさらに加速し、皆が個性という名の拳銃(ピストル)に怯え、この演説を思い出すようになった。

そして、その反動は国家、ひいてはヒーローの批判につながり、社会は『ヴィラン連合』を中心に大きな炎が燃えるように混沌に包まれていく。

 

 

 

この事件で実利を得たのは『ヴィラン連合』のみで、『死穢八斎會』が実質的壊滅、『ヒーロー』は大きな批判の的にされ、『国家』はその信頼を失った。

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

少し原作が落ち着くまでプロット練りなどするので、しばらくは日常回をお送りすると思います。

拙作でも描写したのですが覚醒したノアの手の甲には十字架があって、それが酷くアレンのイノセンスの通常状態に似てるんですよね。
すごく気になっているところ。

作者は原作Dグレでアレンが言っていたことを拙作のティッキーに絡めていくのが好きな模様。(今話のとかAKUMAの救済とか)

今後も拙作をよろしくお願いします。

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。