黒霧さんのワープを抜けてまず見えたのは俺の能力によって守られたエシの棺。そして、周囲には俺を囲むように無数のシャボン玉が飛んでおり、武器を構えて待ち構えている
見覚えのある其処はエシやエリアーデ、死穢八斎會と面接した工場跡地だった。
ここ1か月以内の事なのに色々な出来事がありすぎて大きなうねりに流されたかのように昔の事に思える。
俺への警戒態勢が続いたまま最奥にいた弔が散歩でもするようなのんびりした足取りで俺に向かって歩き出してきた。
そして、腕一本分の距離になるとその腕を伸ばし
「…なぁ、今回の件。ちゃんと説明しろ。
じゃないと、
「分かった。マグ姉からどこまで聞いてる?」
そう言いながら両腕を広げて無抵抗をアピールする。
組織の首として弔は仲間殺しの大罪人を処罰しなくてはいけない。
静謐な空気の中、遅れて黒霧さんも帰ってくる。
この雰囲気を感じ取り
「まず、死穢八斎會との決裂とそれによって起こった武力衝突。次にお前の原因不明の個性の暴走。そして、エシがお前の救出に向かったことまでは把握している。」
「そうか。…どこから説明が欲しい?」
「
「じゃあ、まずは死穢八斎會との決裂から話すか。」
弔の言葉を受けて事態の把握が完全にはできていない荼毘やスピナーにも向けて
「今回、
俺の問いにトガとトゥワイスが勢い良く返事をする。
「モチロンです!ティッキーの指示してくれた場所に実験器具と資料、そして今回ゴクドーが集めたお金がありました!」
「そこでコピー
「俺たち何もしてねー!」
「そして、『壊理』もマグ姉が保護している。結果的には
ここまで説明したところで弔は鋭い目つきで俺を睨んで言葉を返す。
「…じゃあ、何だ。お前は
その言葉にマグ姉に抱えられている壊理はびくりと跳ね縮こまる様にして俺の様子を窺う。
壊理を抱えているマグ姉の目線には鋭いものが含まれていた。
その態度にさらに大げさに両腕を広げて呆れを表す。しかし、視線は真剣に弔に向ける。ここだけはどうしたって譲らない。
「いや、しねぇよ。
『
むしろ、彼女を自由にしないなら俺は
掌に仕込んでいたティーズの翅を広げて抵抗の意思を見せる。
その動作にまだ警戒していた面子がざわつくが弔が腕でそれを制止する。
弔の顔を見ると口元を吊り上げ、瞳の中に驚愕と関心が見える。
「…へぇ、
お前の趣味か?
だったら、いますぐ塵にしてやるぞ。」
「へっへ、そりゃカンベン。俺が『
「じゃあ、『エシ』について話せ。
「あぁ。」
俺の胸に置かれている4指の圧が強くなる。
ゆっくりと息を吐いて
「『
人差し指がそっと置かれ、俺の胸元のタキシードが崩れていく。
あと数㎜、一撫ですれば弔によって殺されるだろう。
「待って!!!弔ちゃん!!!」
ピクリと弔の人差し指は跳ね、崩壊は止まる。
叫んだマグ姉が涙ぐみながら俺に言葉を投げかける。
「…ティキぽん。
『
「…笑顔だった。
見たこともないとびっきりの笑顔だった。」
エシの最後の恍惚とした表情を思い出す。痛みや出血で意識が無くて当たり前の状況で最後の力を振り絞って魅せた笑顔を。
その言葉を受けて俺をかばう様にマグ姉が独白する。
「『
『
その真摯な言葉に涙が一筋零れ落ち床を濡らす。
涙の跡を拭って答える。
「…あぁ、痛いほどに。
『エシ』が俺を押さえてくれたから。
『エシ』の声があったから暴走状態が収まった。
黒霧さんとの契約を繰り返す様に
その宣誓を聞き弔の腕が力なくゆっくりと重力に従い降りていく。
しかし、抑えきれない感情が燃えるように瞳を火照らせていた。
侮蔑とも叱咤とも取れるような口調で言い放つ。
「…なら
お前はいつまで死体を抱いている!」
瞬間、俺の頬がカァっと熱くなる。
視線を戻すと弔が掌を振りぬいていた。
そのまま弔は『エシ』の棺へと向う。
そして、棺を
俺の『絶対の拒絶』は解かれ宙に浮かんだ『エシ』の亡骸を優しく撫でる。
先程までとは打って変わって穏やかな口調で弔詞を詠む。
「『エシ』ありがとうな。
お前の覚悟。
工場内に不自然だが、気持ちの良い微風が吹き、エシの崩壊していく亡骸を揺らして吹き抜けていった。
弔が俺に向き直る。
いや、
そして、手を差し出す様に伸ばす。
「改めて言おう。
ここにいる
人に。
社会に。
ルールに。
ヒーローに縛られて苦しんだ。
現在をぶち壊す。
この思いだけが一致している。
だから、一緒に来い。」
俺は差し出されたその手を。
「あぁ。やってやろうぜ。
その手に重ねる様にして黒霧さんの手が乗せられる。
「
マグ姉の手が。
「じゃー、アタシが
トガの手が。
「マグ姉。まだ言ってるですかー?」
トゥワイスの手が。
「お前ら最高に好きだぜ!!!」
「ここにいたら退屈しませんからね。」
荼毘の手が。
「……。」
スピナーの手が。
「正しき正義の為に。」
エリアーデの手が。
「…フンッ。」
その様子をおずおずと壊理がマグ姉の腕に抱かれながら見ている。
まだ幼い壊理に出来るだけ優しく分かりやすいように選択を委ねる。
「壊理。俺はお前のためなら何だってしてやる。だから、お前が望むならすぐにでも開放するし、お前の救助に来たヒーローに預けて人並みの幸せな人生を俺の力が及ぶ限り手助けするつもりだ。」
「…ティッキー。そこにティッキーやトガちゃん、マグ姉たちはいないんだよね。」
「あぁ。俺たちは
「うん。分かった。」
そう言うと決心のこもった瞳で俺を見つめ、その小さな掌を俺たちの掌の上に置いた。
「じゃあ、
人並みの幸せも。
ありきたりな希望も。
手が届かない救済も。
全部、みんなといる刹那と比べられない。」
その瞳には不安からか涙が溢れそうになっている。
子供独特の高い声で出せる精一杯の声量で宣言する。
「『壊理』です!
言われたことは絶対に守ります。
実験も嫌がりません。
ワガママも言いません。
だから、
その様子を見た弔が顔を下に俯かせながら、空いている手を個性が発動しないように不器用ながら壊理の頭まで持っていき撫でた。
「…
すぐ泣くし、やかましい。
だけど、それが仕事だ。
だから、
壊理も
その言葉に壊理は撫でられながらその小さな顔一杯に笑みを広げながら年相応のあどけない無垢な表情で笑う。
「うん!!!」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
更新が遅れたのはGW中遊んでたのと283事務所でプロデューサー業をしていたからです。
仕事中の方がアイディアがドンドン浮かんでくる不思議。
『いつまで死体を抱いている』
作者の大好きな作品の台詞。
ありがたいお言葉と共に『笑わせるなよ甘ったれども!真に愛するなら壊せ!』と続く。
作品、次元を超えたやりとりは鳥肌です。
描いていて壊理ちゃんの可愛さに歯止めが利かなくなりました。(これでも大分削った)
エリちゃんの可愛いシーンもいつか描きたいものです。
掌を重ねる描写中すっごいそのキャラ独自の返しが浮かんできたので原作者様の堀越先生の描写能力、キャラ付けの分かりやすさに改めて脱帽しました。
作者の描写能力じゃどうやってもトガちゃんがバカワイイ娘になちゃうから原作の狂気的な一面が難しすぎる。
今後も拙作をよろしくお願いします。
最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m
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