英雄と敵の二重生活   作:毎日健康黒酢生活

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ありがとう。全部話すよ。

暗く、辺り一面が水浸しの廃墟になった世界

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その水面で泣いていた黒い月が実体を伴って浮かんでくる。

 

黒い月は灰色の肌をした少女に姿を変える。

 

少女は1人だけの世界で水面を揺らす。

 

「僕たちの子だけどさ。」

 

()()()()()()()()。」

 

ノアの一族(みんな)は眠りに就いてるのに。」

 

「1人だけで行っちゃって。」

 

「寂しがりなのに。」

 

()()()()()()()()()。」

 

口では皮肉を言うが、語調は穏やかに独り言ちる。

 

稀人(まれびと)に着いて行ったノアの一族(兄弟)を見送る。

 

時間の概念が存在しない世界で少女はノアの一族(兄弟)の帰りを待つ。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

場の雰囲気も殺伐としたものからある種の結束を感じさせるものに変わったのを皮切りに各々がそれぞれの居場所に戻り俺の次なる説明を待つ。

壊理はマグ姉の腕の中から俺の膝の上に移動して真剣な表情で話を聞こうとする。

 

「まずは、壊理の個性の説明をしよう。彼女の個性は『巻き戻し』。個性が発動中に触れたモノの時間が巻き戻る。この個性をそれをどういう理屈か分からないが死穢八斎會は『壊理』を原料にして『無個性状態』まで人を退化させるクスリに精製した。」

 

黙って様子を見ていた荼毘が口を挟む。

 

「…そのクスリ俺たちにも精製出来ないのか?機材も、資金も、協力者(壊理)もいる。」

 

その言葉に無言でティーズの翅を開き投擲する。荼毘は紙一重で躱し俺の方を睨む。

 

「なぁ、お前さ俺の話聞いてたか?仮にも家族(ファミリー)って言ったやつを実験体(モルモット)にするなら……()()()。」

 

「お前こそ話は最後まで聞け。トガとトゥワイスが調達した資料を解読すれば、壊理も傷つかずにクスリの開発ができるかもしれないだろう。それに流通させれば死穢八斎會と同じく大きなシノギ、流通させなければ重要な戦力にもなる。」

 

あくまでも現実主義者(リアリスト)として、組織の為に壊理を気遣いながら出された意見に俺と荼毘の間に殺気立った空気が流れる。

()()()()()()()()()()()

心の奥底から。

白い俺(ノア)も前世界の記憶(メモリー)から許さない。

悲鳴が

叫び声が

怨嗟が

俺の中で渦巻く。

 

そんなことをするなんて。

 

まるで。

 

イノセンス(ハート)がやったことじゃないか。

 

 

一触即発の空気に思いもよらない横槍が、俺のひざ元からその顔を覗かせる。

俺の顔をその小さな両手で包むようにして頬に手を添えて、年齢に不相応な智慧を秘めた厳しい眼差しで両手で俺の顔を下にさせ視線を合わせる。

 

「ティッキー。私はね、あの時助けてもらってすっごい嬉しかったんだ。()()()()()()()()()()()()()()()。だから、ティッキーが私に「なんだってしてやる。」って言ったよね。私も同じ気持ちなんだよ。」

 

少しはにかみながら不器用に笑いかけるその表情に壊理の覚悟と()()()()黒髪の聖母の面影を感じた。

事態の弛緩したのを見計らい、弔が仲裁に入る。

 

「ティキ。壊理もこう言っている。壊理に一番負担のない方法を見つけたらその方法が是か否か壊理も交えて家族会議(ファミリーで話)して決めよう。」

 

「……。あぁ。分かった。」

 

少し張り詰めたような雰囲気の中トガがマイペースに独り言ちる。

 

「傷だらけも私は好きですよ。ティッキーは過保護です。」

 

案外、小心者のスピナーが殺伐とした雰囲気を断ち切りたかったのか話の続きを促す。

 

「壊理の個性については分かった。それがティキの個性の暴走にどう繋がるんだ?」

 

「あぁ、少し前置きが長いがちゃんと聞いてくれ。これは今ここにいるヴィラン連合(ファミリー)だから話せる大事な話だ。」

 

 

 


 

 

 

 

 

『…なんでも言って、ちゃんと聞くから。』

 

 

 

 

 


 

 

 

そよ風と共に、『エシ』の声がかすかに聞こえた気がする。

 

「古くは『生命の螺旋』と言われるモノ。進化を促す希望と災厄の力を知っているか?」

 

「随分と骨董品な考えを持ち出してくるじゃない。勿体付けないで分かりやすく『DNA』って言えば良いじゃない。」

 

一見すると豪奢な姿から物事に疎そうに思われがちだがその実、智賢を兼ね備えているエリアーデが分かりやすい返答をする。

 

「あぁ、その認識でいい。じゃあ、壊理の『巻き戻し』を()()()()()()()使()()とどうなると思う?」

 

「そりゃあ、段々若くなって……赤ん坊以前に戻っていなくなるのか?」

 

「あら?じゃあ、ティキぽんがあの時姿が消えて戻ってきた理由が分からないわ。その理論だと死んじゃうじゃない。」

 

コンプレスとマグ姉が素早く思ったことをレスポンスする。

 

「そうだ。()()()()()。」

 

「…ごめんなさい。」

 

俺の言葉に壊理が消え入りそうな小さな声と共に俯く。表情が陰った壊理の頭を乱雑に撫でて、小さな声でフォローし話を続ける。

 

()()()()()()()()()()()()

 

「だけど、クスリも使い方次第で劇薬にも良薬にもなる。要は壊理の個性もコントロールを覚えれば怪我をする前の姿に戻せるようにもなる。」

 

「ドンドン脱線してきてるぜ!」

「歪み無ぇーな!」

 

「わりぃ、わりぃ。付き合ってくれよ。」

 

急かすトゥワイスをしり目に胸ポケットから煙管を取り出しマッチで火を付け紫煙を燻らせる。

()()()()()()()()()()()使()()()

 

「近くに子供がいるのですよ。」

 

「うぅん。大丈夫だよ、モヤモヤさん。私この匂い好きだから。」

 

「うへぇー、厳しいね。こりゃ。」

 

黒霧さんが軽く窘めてくるが、壊理が許可してくれたので構わずに喫うことにする。

誰も触れてこなかったが、長くなった黒髪を指先で弄び、浅黒い肌から黒がかった灰色に変化した指先を眺め独白していく。

 

「…そう。俺は『生命の螺旋』を遡って根源へとその原始にまで戻りきった。」

 

「そこで妄想なんかじゃない確かにあった絆。」

 

「俺のとめどなく溢れてくる殺意の理由。」

 

「『人間』が理由もなく嫌いだったワケ。」

 

「この世界の成り立ち、その全てを知ったんだ。」

 

「世界の始まりノアの一族(神様)は愛に満ちた平等な人類を作ったんだ。」

 

「今思えば、全てが一緒で、全てが愛される失楽園(ディストピア)なんだけどな。」

 

「だけど、いつしか人類は『生命の螺旋』に従い進化をしていった。」

 

ノアの一族(神様)はその在り様を是として受け入れた。」

 

「人類は進化を続けていき、生まれ、人種、能力、価値観の差が生まれてきた。かつての全てが愛される世界の面影などないほどに。」

 

「進化の果てに新たなブレイクスルーが生まれた。」

 

「そう。『()()』だ。」

 

「その進化()はかつてノアの一族(神様)に逆らったイノセンス(悪魔)のような姿で多種多様にノアの一族(神様)が作った世界を変えていった。」

 

「優しすぎるノアの一族(神様)はその進化すら是として受け入れた。」

 

我が子(旧人類)異形(新人類)に侵略されることすらな。」

 

「そして、その進化()ノアの一族(神様)の力すら模倣を始めた。」

 

煙管を口に咥えゆっくりと紫煙を吐き出す。

ヴィラン連合(ファミリー)の面々の反応も様々だ。

怪訝そうにする奴、話の続きを待つ奴、そして、()()()()()()()()をしている奴。

 

「まぁ?いきなりこんな話しても信じてもらえると思うほど夢見がち(ロマンチスト)じゃないさ。」

 

両腕を広げておどけて見せるがそれすら誰も反応してくれない。

向かい合うようにして俺の膝に座っていた壊理が俺の頬に手を添える。

 

()()()()()

 ()()()

 ()()()()()()()()()()。」

 

その言葉に、瞳に、衝撃を受け、痺れた。

小さな掌に伝わる雫を見て、意図もせず泣きながら話をしていたことに気が付いた。

揺れた心を抱きしめて、煙管をもう一度口に咥える。

紫煙と共に言葉を、全てを、吐き出す。

 

「…()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「とある裕福な家庭に無個性の子供が生まれました。」

 

「無個性の子は珍しいですが両親は変わらず愛を注ぎました。」

 

「しかし、周囲は個性を持った子供ばかりでその子は浮いていきます。」

 

「両親はそのことを気の毒に思い東奔西走し、遂に個性を与えてくれるという魔王に出会いました。」

 

「両親は大金を払って魔王と契約をしました。」

 

「魔王は契約通りその子に個性を与えました。」

 

「しかし、神に愛されたその子(旧人類)が魔王に神を模した力(個性)を与えられた瞬間、ノアの一族(神様)に触れて個性が暴走し、魔王との戦闘になりました。」

 

「魔王と生まれたての天使(その子)との激しい戦闘の余波でその子の両親は魔王の拠点ごと無くなりました。」

 

「魔王と天使(その子)の戦いは長くは続きませんでした。」

 

「結果はまだ幼い天使(その子)の体力が無くなる形で魔王の勝利となりました。」

 

天使(その子)は魔王に引き取られて、魔王の後継者として育てられていきました。」

 

天使(その子)は成長していき、偶然にも天使(その子)は小さな少女の手によってノアの一族(神様)の元に送り届けられました。」

 

「そこで天使(その子)は世界の真実を知ります。」

 

自分(天使)新人類(悪魔)を殺したい理由も。」

 

天使(その子)は今もこれからもノアの一族(神様)の為に新人類(悪魔)と戦っていくことでしょう。」

 

「…ちゃんちゃんっと。」

 

重い静寂の中、弔だけが口を開く。

 

ヴィラン連合(ファミリー)を代表するように。

 

普段は全身に付けている掌をすべて外して。

 

その子()の目の前に歩み寄る。

 

ハッキリと小さいが()()()()()()()()()()()()()()ほんの少しの小さな不安が混じった声で。

 

 

 

 

「…ティキ。()()()()()()()()?」

 

 

 

 

ヴィラン連合(ファミリー)が俺の様子を窺っている。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

そんな真剣な雰囲気で聞いてくるなよ。

 

不安なら言わなきゃいいのに。

 

おずおずと俺を見る壊理の頭をゆっくりと撫でてやる。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「…そうだな。

 さっきの話に結末に付け加えるとしたら。」

 

 

 

 

 

 不思議なことが起きました。

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()

 

 

 

 

 

 天使(その子)新人類(悪魔)と一緒にいるけど

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

この話が作者の伝えたかったこと、描きたかったことの全てです。

今後も拙作をよろしくお願いします。

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島
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