英雄と敵の二重生活   作:毎日健康黒酢生活

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お疲れ様です。

本日ご紹介する作品はこちらになります。
のぶほしさんの『風越先鋒、宮永咲』です。
作品説明が分かりやすく咲-Saki-の世界に転生したオリ主(麻雀部の監督)によって風越女子に入学することになった宮永咲と対木もこが原作とは違う物語を繰り広げてくれます。
選手として参加するのではなく監督というアプローチが珍しく引き込まれる世界観です。
作者様なりの考察もあって原作では輝かないキャラもいい味が出てます。
是非、ご一読下さい。
 


『ティキ・ミック』をたずねて・CALL

「おい、ティキ。お前本当にやってないんだろうな?」

 

不意に弔が連日報道される『ティキ・ミック』によるヒーロー連続殺人事件の真偽を聞いてくる。

現在、ヴィラン連合ではこのヴィラン隆盛期に万が一、何かが起こりその象徴となっているティキ・ミック(オレ)が捕まることの無いように壊理の個性特訓以外での外出を許していない。

そのくせ、連日のようにこの報道がなされているので俺が隠れて抜け出してるのではないかと弔は疑っているのだ。

 

「俺じゃないって、寝ても起きても壊理と一緒だよ。夜なんて寝てる時に離れたらお姫様が起きちゃうからすぐ分かるって。」

 

「もう!言わないでってゆったもん!」

 

俺の膝を枕にして『エシ』の画集を眺めていた壊理が膨れて怒り出す。

壊理と同衾していることはもはやヴィラン連合(ファミリー)には公然の秘密なのに、以前に一度このことでトガがからかい出してからこの話題になると怒るようになってきた。

膨れた壊理の様子を見て弔が苦笑いしながら考えこみ、一転し真剣な目つきでオーバーにアジトにいるヴィラン連合(ファミリー)にも聞こえるように喋り出す。

 

「って、ことは何だ?ティキの模倣をする木っ端ヴィランが居やがるってことか?それは、ヴィラン連合(おれたち)の沽券にも関わるんじゃねぇか?『レプリカント』は要らない。」

 

オーバーに両腕を広げてリアクションをとる。

鋭く、言外にその偽物の抹殺を宣言する。

拠点にたまたまいた荼毘がワイドショーの情報を漏らす。

 

「ニュースでは以前とは違い関東圏に被害が集中しているから雄英高校への当てつけ目的ではないか?なんて言われてたぞ。」

 

「雄英に恨みを持つ模倣犯か、逆張りで関東圏以外の可能性とかは?」

 

「いや、黒霧さんみたいな移動の個性を相方にしてない限り、関東圏で間違い無いからその線で調べるのがいいだろう。」

 

弔の一言でヴィラン連合(ファミリー)の空気が仕事の雰囲気になり、柔綿で首を絞めるように徐々に犯人像のプロファイリングが進んでいく。

こういったところもヴィラン連合という超一流犯罪者(メジャーリーガー)の集まりだからこそ蛇の道は蛇というがすぐにおおよその人物像などが浮かんでくる。

思考を深めるために煙草に火を付け紫煙を吐き出す。

 

「個性はティキと似たモノだろう。じゃないと国家の犬(警察)理想主義者(ヒーロー)はお前の犯行だと断定しないだろう。」

 

「関東圏を移動できるだけの個性か財力を併せ持ったヤツだな。」

 

弔の言葉に荼毘が重ねていく。

マグ姉も暇つぶしがてらプロファイリングに混ざってくる。

 

「んー。複数犯は無いんじゃかしら。資金の問題もあるし、複数犯だと痕跡がどうしても残ってしまうわ。あと、関東圏を出ないことを考えちゃうと個性の有効範囲の問題か財力、もしくは生活圏の問題じゃないかしら?」

 

「犯行は深夜ってことらしいから昼間は働いているか、…学生か?」

 

「複数や働いてたら財力は問題無さそうだし、学生の線が濃いな。あと、事件の再現性から以前に『ティキ・ミック』のおつかいを目撃、もしくは詳しく調べる能力がある…とかこんなもんか?」

 

「…若ければ耳障りの良い『ティキ・ミック(オレ)』の言葉に影響されるのも頷ける。」

 

たった数分で「個性は俺に酷似したことができる、関東圏、学生、単独犯、手口を知っており事件時のバイスタンダーもしくは熱狂的なシンパ」といったところまで特定できてしまった。

膝枕から俺の隣に座りなおした壊理が首を傾げながら疑問に思ったことを口走る。

 

「その人はなんでそんなことをするの?」

 

「こりゃ、ムズカシイこと聞いてくるね。動機か…ヴィラン(おれたち)はやりたいからやるんだよ。」

 

俺の説明に納得いかないのかむむむと唸っている。

そこに分かりやすいように荼毘が少し外れた答えをする。

 

「壊理も俺たちといたいからここにいるんだろう?そういうことだ。」

 

その答えに分かりやすくはっとした壊理が簡単になった犯人像を身近な人物に重ねて話す。

 

「その人はティッキーになりたいんだね!トガちゃんみたい!」

 

「おいおい、あんな頭ブッ飛んだ学生がそんなにいてたまるか。」

 

「トガちゃんを悪く言わないで!」

 

弔が呆れがちに放った言葉に壊理が抗議する。

死穢八斎會では大人しいおどおどした印象だったがヴィラン連合(ここ)に来てからは、普段は大人しいが芯を持った譲れないことには引っ込まない性格に変わっている。

ただその変化、成長が愛おしく感じて思わず頭を撫でる。意味も分からず撫でられる壊理は首を傾げながらはにかむ。

その様子を見た弔が壊理に俺が味方したのかと思ってか不機嫌ながら結論をまとめる。

 

「仲のいいことで。とにかく『レプリカント』の捜索は黒霧や外回りに出てる奴ら、義爛みたいな裏のブローカーにも借りを作ることになるが調べてもらう。」

 

「リョーカイ♪

 〆るのはヴィラン連合(ファミリー)全員で行くかい?

 それとも本物(オレ)()()()()()で殺すか?」

 

「全員はナシだな。『レプリカント』のやつがどんな個性か分からないからお前が対処するのが一番確実だ。殺れるか?」

 

「モチロン♪

 家族と神様以外ならどんなものでも俺の敵じゃない。」

 

軽くパフォーマンスで黒い蔓のようになった小さい触手を展開してお道化てみせる。

喫い終わった煙草を消して2本目を喫う。

新しく天井に昇っていく煙の筋を追いながら思考に耽る。

 

『レプリカント』

実態はわからないままだが、俺の犯行をなぞるだけの殺人鬼か。はたまた、別の目的を持ってアプローチを仕掛けているのか。現時点では不確定な情報が多すぎて参考程度の知識に留めるしかない。

 

 

 

だけど。

 

 

 

ティキ・ミック(オレ)になりたいか。

 

 

 

自分は自分でしかないのに。

 

 

 

トクベツなナニカになれるわけないのに。

 

 

 

トガといい、変身系の個性はどうも苦手だ。

 

 

 

かつてのノアの一族(家族)にダブる。

 

 

 

自分の記憶じゃないのに嫌でも重なってしまう。

 

 

 

いつまでも引きずっている自分が嫌になる。

 

 

 

むしゃくしゃした気持ちを壊理の頬っぺたを指先で弄び慰める。

新しい遊びだと思ったのか壊理はなすがままに頬を変形させながら楽しんでいる。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

なんだかんだ女々しいティッキー。
人間臭くて人間らしいですけどね。

壊理ちゃんの可愛さをもっと表現したい作者です。
原作では大人しいのですが拙作では作者の設定のもと原作よりも明るい性格に成長しています。

今後も拙作をよろしくお願いします。

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島

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