in 雄英高校 学生寮区画
上弦の月と周囲の街灯が目の前にそびえたつ建物にデカデカと「3-A」と書かれている入り口の前に彼は1人で立っていた。
勇み足でここまで来たはいいが待ち人の不在を親友の先輩から聞き悪態をついている。
「―――ッチ!!!」
自分の携帯の画面を見つめ舌打ちが漏れる。バンドメンバーや親友から先日の非礼を窘められ自ら謝罪のため訪ねてきたが気持ちばかりが先走るばかりだ。
頭を掻きむしり苛立ちを露にしながら自分の寮に戻る。
一瞬後ろ髪を引かれる想いをして、3年の寮を振り返る。
その瞬間、3階ほどの高さから人影が飛び降りるのが見えた。
「…――ハッ!?」
気が付いた時には
まるで親友のような個性の使い方に飛び降りた人物が自分の目的の人物であることを悟る。
「アンタ、もう寝てるんじゃなかったのか?」
「あっ!…いや、ちょっと夜風を浴びに来たみたいな?」
地面から浮かび上がってくるその姿に無意識に奥歯に力が入り、硝子の表に思いッ切り疵を付けるような無気味な歯ぎしりの音が周囲に響く。
上下スウェット姿に、パーカーのフードで頭を覆うシンプルな姿。
そして、
「何やってんスか。
もし、この人が狙ってやっているのだとしたら先日の件も相まって、本気で俺や1-Aをイラつかせようと挑発してるんだろう。
しかし、俺の質問にその人はとぼけた様子で返事をする。
『あれ?大将…
「質問に答えろ!!!なんでアンタは
『あぁ、そっか。……ゴメンよ。』
俺の怒号に『通形ミリオ』は少しだけ悲しそうな表情をしてみせる。
そして、俯きながら頬を少し掻いて物悲しそうに言う。
『決して君を怒らせるためにやってるんじゃないんだ。分かって欲しい。』
「だったらなんでだよ!!?」
『通形ミリオ』はかけていた瓶底眼鏡を外して、その決意に満ちた視線を、悲しさと親愛と優しさが籠った瞳で俺を見つめる。
その真摯な真剣な表情に先ほどまで俺が考えていたような考えはこの人には無いことが分かった。
まるで迷子のような寂し気な表情で語り出す。
『…
だから、と小さく消え入りそうな声で続ける。
『待っててくれ。
恥ずかしそうにはにかんで、まるで
『なぁ、大将。』
そして、俺にその手を差し出してきた。
まるで
幸せを。
希望を。
救済を。
地獄からの救済を求める聖人のような、その表情に
俺の様子を見てフッと軽く笑って、全てを諦めたかのような表情で歩き出し、俺の方へと向かってくる。
何もできない俺とすれ違うその一瞬、小さく呟く声が聞こえた。
『…行ってくるよ。大将♪』
その声色に『
「おい!待てよ!」
俺の声に何の反応も返さずに地面に潜ってしまった。
姿が消えていったその地面に手をかざし、何にもできなかった自分や訳の分からない事態に苛立ちが募り、その地面を幾度も叩く。
「クソがぁっ!!!」
訳の分からない苛立ちと共に体は動き出す。
『通形ミリオ』が向かっていった方向に、目的地など知らずに。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
行く当ても分からないまま近くの市街地に飛び出してきた。『通形ミリオ』の行先なんてわからない、だけど、このまま寮に帰って明日を待つのはマズイと何故か思って姿の見えない『通形ミリオ』を焦燥感に駆られて追っている。
月夜に照らされた市街地は人通りは少なく、上弦の月だけが物寂しく輝いていた。
月を見上げているとその月を隠すかのように柱のようなものが夜空に打ちあがり、そして雷鳴のような破壊音と共に粉砕された瓦礫が周囲の建物に当たる音が周囲に鳴り響く。
その先には、ドーム状に周囲が更地になった建物が全く無い空間の中心に、探していた人物『通形ミリオ』が宿星の敵『ティキ・ミック』が交戦しているのが見えた。
勇み、その戦闘に加わろうとすると、一筋の糸のようなものが行く手を遮る。
糸を避けその先に視線をやると、見知ったヴィラン『ヴィラン連合のボス 死柄木弔』がいた。
「よぉ。スカウトを蹴ったと思ったら今度は売り込みに来たのか?爆豪くんよぉ!」
「ッ誰が入るか。クソ手ヤロー!!!」
この糸の詳細は分からないが『死柄木弔』の個性の延長ならば十分に気を付けなくてはいけない。
多分、触れただけでもアウトの攻撃だろう。
遠距離がアッチにあるなら中途半端に距離を取るのは不利になるので距離を取らずに近距離で戦闘をする。
「また、ヴィラン連合か。大人しくしてやがれ、クソ共が!!!」
「そんなこと言うなよ。
「知るか!ボケッ!」
コイツ…巧い。一撃必殺の個性をブラフに蹴りを織り交ぜて多彩な攻撃をしてきやがる。
自分は危険地帯に身を置かずに指揮をするだけのモヤシヤローかと思ったら俺の動きに着いてきて翻弄してくる。
俺の爆破や上下3次元の攻撃、投石にも対応してくる。
ニヤニヤと嗤いながら喋り出す。
「なぁ、
「うるっせぇ!ここでお前を捕まえれば解決するだろ!」
「…あぁ、やっぱりお前のその野心は
「…。」
「
攻撃を止め、俺に向かって手を差し伸ばしてくる『死柄木弔』。その姿には以前よりも増したカリスマのような凄み、覇気のようなものがある。
だが、その問いの答えなんて前と一緒だ。
親指を立てて、首を掻き切るジェスチャーをする。
「誰がなるか!このクソ共っ!!!」
「…残念だよ。」
しかし、変わらずにニヤニヤと『死柄木弔』は嗤う。
俺の背後を指さし口元を一層大きく歪めて、その狂気に染まった瞳を見せる。
「後ろ、
「…――テッンメェ!!!」
「大変だぁ。ヒーローは多いよなあ?守るものが。」
粘つく嫌らしい視線を後方の一般市民に向ける。その言葉と共に『死柄木弔』の掌から延びる糸が野次馬の近くのビルに向かい、ビルが分解されていくかのように崩れていき崩壊していき、その瓦礫に多くの人が悲鳴をあげて逃げ惑っている。
「ホラ!助けに行けよ!『ヒーロー』。
『死柄木弔』は撤退していく。
呪いのような一言を叫びながら。
「
ハッハッハッハァ!!と嗤う『死柄木弔』の嗤い声を背中に受けながらケガ人の救助に駆けだす。
行く先には多くの人がビルの倒壊に巻き込まれて傷ついている。
その光景を生み出したのは『死柄木弔』だが、トリガーとなったのは
「…クソが!」
悪態を一瞬つくが、救助者を目の前にして限界の声量で叫ぶ。
「大丈夫!俺が来た!!!」
「動ける奴は周りのやつを助けろ!」
「増強系は俺と一緒に瓦礫を退かすの手伝え!」
「ぼさっとすんな!!!」
俺の声にハッとした人たちがそれぞれ自分ができる最善の動きをしようとする。
「クソがっ!」
いつでも被害を拡大できる『死柄木弔』が近くにいるのに、相手に出来ないもどかしさに悪態が出る。
あいつが約束を守るとは思えない。だけど、俺が無視して相手をしたら、宣言の通り更なる被害を生むことだろう。あいつはやると言ったらやる、そんな悪意に満ちたヴィランなのだから。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
まさかのsideのお話。
ほんわか雰囲気の拙作のヴィラン連合がヴィランしている。
だって、こいつらヴィランだもん。
弔の微強化。
分かる人は分かる。
コイツただでさえチート個性なのに中、遠距離まで習得しおった。
今後も拙作をよろしくお願いします。
最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m
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