英雄と敵の二重生活   作:毎日健康黒酢生活

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お疲れ様です。

本日ご紹介する作品はこちら。
white riverさんの『クリムゾン・キングの宮殿』です。
有名なジョジョのディアボロに憑依物ですね。
原作ではサラッと語られたエジプトでの盗掘の話をあそこまできれいにまとめ上げるのは一重に作者様の愛の力でしょう。
矢に触れるまでスタンドは無いので工夫を凝らしながら戦いを生き延びるシーンは見ていてわくわくします。
ジョジョ好きの方もそうでない方もどうぞご一読ください。


それぞれの『i』
それは柔らかな胸の痛み


私は『美しい』ものが好き。

 

ちやほやされるのだって好き。

 

いつからか分からないけど美容とショッピングが好き。

 

皆が私を「綺麗だ」と言って近づいてくる。

 

贈られる薔薇も、お酒も、ブランド品も、贈ってくる男達も全てが私を彩るためのジュエリーにしか過ぎない。

 

()()

 

口うるさく頭ごなしに説教をかましてくる大人は嫌い。

 

歳をとり『醜く』なった女も嫌い。

 

むさくるしい正義感を振りかざさす男も嫌い。

 

あと……。

 

これから歳を取って靡ていく自分が嫌い。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

ううん、結果的に死んじゃうだけ。

 

私の『美』を保つために、何十人も殺した。

 

きっかけは『アイツ』のせい。

 

『アイツ』をなんかの動画で太客にお店で見せられた瞬間、

 

……『美しい』と感じてしまったの。

 

その気づいた時には太客もお店のスタッフも他の従業員も()()()()()()()()()()()()()

 

たまたま、マグ姉が駆けつけて逃亡先を用意してくれたけど、あのままだったらあのモヤモヤとした感情に任せ、全てを殺してヒーローに捕まってかもしれない。

 

まだやってみたいこともたくさんあったし

 

若い身空で服役生活なんてまっぴらだった私は迷わず彼女に着いて行った。

 

そして……。

 

その先に『アイツ』とも出会った。

 

『アイツ』の顔を見るとモヤモヤとするの。

 

だから、『アイツ』は嫌い。

 

……だけど、ヴィラン連合(ファミリー)は好き。

 

誰も私を「美しい」と褒め称えないで、ただ受け入れてくれる。

 

大量殺人者なんてヴィラン連合(ここ)ではありふれている。

 

「美しいままでいたい」という殺人理由もヴィラン連合(ここ)ではマシな方よ。

 

世間では「悪魔みたい」とでも言われそうな異常な私はヴィラン連合(ここ)では普通ね。

 

「美しさ」に眩むバカもいないし、それなりに居心地がいい。

 

……先の事件でネイルを描いてくれたりした仲間(ファミリー)が死んでしまったが、彼は彼なりに己に準じて生き方を貫いたのだ。

 

遺されたヴィラン連合(ファミリー)は素直に見送ることしかできない。

 

入れ違えるかのように、暗い過去を振り切るかのように純粋で明るい()ヴィラン連合(かぞく)入りした。

 

ヴィラン連合(ここ)にはまともな人間が少ないから、淑女(レディ)としての立ち振る舞いを私が教えている。

 

お店でも新入りの子の世話をしていたこともあるので、その延長よ。

 

最近は、……そうね。

 

『アイツ』のせいで動きづらくなったけど、協力関係を結ぶヴィラン組織の選別や敵対組織のせん滅をしてるわ。

 

お金も奪えて、美容にもいい。

 

本当にいいことしかないわよね。

 

 

 

これが私の新しい日常。

 

 

 

ただ、一つワガママを言うのならば。

 

 

 

女が最も『キレイ』になる方法。

 

 

 

『誰かを■したい。』

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

闇夜の帳は降り、たちまち暗い夜が重い幕のように落ちて空模様、指でかきわけられそうな夜の色の中、怪しい外観の店の煌びやかな室内で赤いドレスに身に纏った女性と、強面のいかにもな感じの雰囲気を醸し出す男たちが対面していた。空気はひんやりと一触即発に近く、頭目の男が勢いよくドスを机に刺す。

 

「てえぇとなんだい?嬢ちゃん。ヴィラン連合(てめぇら)はうちの組とは組まないってか?」

 

「えぇ、そうよ。アンタたちみたいな思想もクソもない奴らはヴィラン連合(わたしたち)の戦いには指揮官クラスとしては要らないわ。その他大勢に混じるならOKよ。この言葉は私のひいてはヴィラン連合(ファミリー)の総意よ。それに、ヴィラン連合(わたしたち)アナタ達みたいないわゆるスジ者?って奴、大ッ嫌いなのよね。」

 

エリアーデとその背後にいるであろうヴィラン連合の明確な拒絶に殺伐とした雰囲気が一気に殺気を帯びる。

それなりの武闘派集団として裏社会では名を馳せていた男たちはその矜持(プライド)を傷つけられ、看板に泥を塗られる発言をされたことで各々が個性の発動の用意をする。あとは頭目の一言次第で開戦の火ぶたが切って落とされるだろう。

それなりに歳を取った頭目が語り出す。

 

「そうかい、そうかい。それはあの悪の後継者(ふたり)もそう言ってんだな?」

 

「えぇ。いたずらに力を振るう者は精々、巻き込まれるだけで死ぬから要らないそうよ。……だけど、雑兵でも良くて戦線に加わるならその後の自由は約束するわ。」

 

やや、考え込んで頭目は黙って手を差し出し、握手を求める。

この男は若き時、あの『悪の象徴(『先生』)』の暴虐を実際に体験し、逃げ出したことがあった。

あの男の後継者ならば、若くともあの『悪意』に選ばれた者なのだ。

逆らうことは百害あって一利なしだということは自明の理だ。

大人しく、()()()()()()に賭けて一兵卒として傘下に入る決意をする。

 

エリアーデも大人しくその手を握り返す。

 

「交渉成立ね。用があるときはこちらから追って連絡するわ。」

 

穏やかに2人の交渉は終わる。

頭目の後ろの若い衆は納得がいってないようだったが自分たちの代表の決定だ。大人しく渋々と従うように戦意を引っ込める。

 

その瞬間。

 

扉が勢いよく開かれ警官隊と数名のヒーローが現れる。

 

「ヴィラン連合『エリアーデ』とヤクザ者だな!」

 

『我ガ校ノ生徒ノ不始末ハ我々ガツケル』

 

「神妙にお縄に着け!!!」

 

若手の精鋭『シンリンカムイ』、不屈の男『エクトプラズム』、そして、ブラッドヒーロー『ブラドキング』。

『ヴィラン連合』逮捕の為に全力で協力をすると宣言した雄英高校教師陣が『ティキ・ミック』への手がかりを掴みに乗り込んできた。

多勢に無勢、エリアーデとスジ者たちはヒーローへの抵抗を始める。

 

エリアーデのシャボン玉がスジ者を巻き込みながら部屋一面に広がる。

 

ヒーロー側はそれをシンリンカムイの樹木を盾に、エクトプラズムの分身を人身傀儡にして防ぐ。

しかしながら、無数に宙に不規則に浮かぶシャボン玉はヒーローの接近を許さない。

シンリンカムイの樹木を盾にブラドキングがなんとかエリアーデに接近する。

 

「あぁ!もう!ホント男ってすぐこれなんだから!淑女(レディ)の扱いを心得なさいよ!!!」

 

悪態を付きながらもシャボン玉が無数にブラドキングが迫る。

ブラドキングはコスチュームから器用に血液をシャボン玉に当て最短でエリアーデの拘束に向かう。

 

「ッチ!スジ者はホント使えないわね!あんな雑な攻撃に巻き込まれるなんて雑魚過ぎよ!」

 

「仲良く逮捕されな!!!」

 

エリアーデはブラドキングの猛攻をうまくシャボン玉を織り交ぜながら往なすが、元はただの夜の蝶、本人自体の戦闘能力はそれほど高くないためこの均衡もあまり持たないことが予想される。

シンリンカムイはブラドキングのサポート、エクトプラズム、警官隊はエリアーデの対処を2人に任せ、スジ者の捕縛を進める。

一斉検挙もすぐそこまで迫っている。

やがて、エリアーデの体力が付きブラドキングに組み伏せられてしまう。

 

「大人しくしろ!」

 

「あぁ!クッソ!ツイてない!」

 

エリアーデはうつ伏せに後ろ手で地面に組み伏せられる。

事態は落ち着き、コレでようやく『ヴィラン連合』の足取りを掴めるかと全員が油断したその瞬間。

喚いて暴れてたエリアーデが頬を吊り上げ怪しく微笑する。

 

「……なぁーんてね♡」

 

エリアーデの身体から特大のシャボン玉がブラドキングにぶつかる。

一瞬で体は木乃伊のように枯れ果て、首から下が一気に水分を失い靡る。

 

「ふふふ、ざぁーんねんでした♪」

 

「ヴァ――――カ!!!」

 

「わざわざ接触するなんてお馬鹿さぁん?」

 

勝利の余裕で尽きることの無い悪態を吐き出す。

悪女がその微笑を以て吸血鬼を討伐した。

しかし、それは完全な油断。

重力に従い落ちていく吸血鬼(ブラドキング)の頭は起き上がろうと仰向けに体制を変えたエリアーデの首元の右側に咬みついた。

 

「ちょっ!最後までキタナイわねぇー!ばっちいのよ!」

 

頭を払いのけようとするエリアーデだったが、吸血鬼(ブラドキング)の頭は首元から離れず、むしろ深く、首元の血管を切り裂き、エリアーデの柔らかな皮膚はいとも簡単にその歯に負けて柘榴の顆粒を潰したかのような赤い血液が流れだす。

そして、エリアーデからは個性『脱水』によって供給された余剰な水分が溢れ出し吸血鬼(ブラドキング)が飲み込む。

 

その顎の力が緩んだ一瞬の隙でエリアーデは組付きから逃れ、距離を取る。

木乃伊のようだった吸血鬼(ブラドキング)の身体は一気に潤い、乾いたスポンジが水を吸うかのように膨れ上がり元の筋骨隆々とした姿に戻る。

それと同時に、エリアーデの身体の周りに黒い靄が現れる。

息も絶え絶えにエリアーデは恨み言を言う。

 

まだ、動けたの……?

 

「…――ッ!?エリアーデ!大丈夫ですか!?急いで手当を!」

 

「大丈夫よ。見た目だけ、水分はまだまだあるしそんな深くないわ。」

 

2人の姿が黒い靄で覆われて混戦からの撤退を始める。

警官隊やヒーローの視界からエリアーデの姿が隠れるその一瞬、エリアーデが()()()()呟く。

 

 

 

「バイバイ、……()()()だけの吸血鬼さん。」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

それから、しばらくしてエリアーデの傷は癒え、今回の検挙の反省としてヴィラン連合(ファミリー)としても各人一人行動はしないよう二人一組(ツーマンセル)で私生活を送ることとなり。

エリアーデはマグ姉と、トガはトゥワイスと、荼毘はスピナーと、実質的なキングの弔は黒霧とMr.コンプレスの二人体制で警護し、ティキ・ミックは壊理と拠点を転々と移動しながら待機の半監禁状態で生活することになった。

 

エリアーデはこの戦いの後、イライラ気(愛おしそう)に消えない傷痕を左手で撫でる癖ができたという。

 

消そうと思えば配下の個性で消せるのに

 

隠そうと思えば化粧で隠せるのに

 

あえて、見せつけるように傷痕を残している。

 

 

 

「あぁっ!もうっ!うっとおしい傷痕ね!!!」

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

拙作のエリアーデの一人称は「()()()」です。

エリアーデの話はDグレでも特に印象深いエピソードでした。
漫画の細かい絵のタッチ。
ダークで重い雰囲気。
そして、最後のシーン。
その全てが好きです。

私事ですがマルチ連載している「『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね」がランキング入りしたり、敬愛する作者様からご感想をいただいたり、嬉しいことが続いているのでモチベーションが上がっております。(リアルは超絶ブラックなのに)

もしかしたら、ご批判が多く書き直したエピソードから派生する初期プロットの方もifルートとして程々に『英雄と敵の二重生活』の完結を優先させつつ連載するかもしれません。
そっちのルートはDグレのようなダークで孤独に報われない雰囲気で話が進んでいく予定でした。まぁ、いまとキャラの設定は『ティキ・ミック』と『壊理』、『通形ミリオ』以外は同じですが……。

今後も拙作をよろしくお願いします。

『英雄と敵の二重生活』ifルートを……。

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