少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 更に時は過ぎ、子供達も全員が十代の半ばを超えた。

 

 子供達の会話も幼い物ではなくなり、時折学校での授業の話などもするようになった。

 

 「チェリ姉さん、学校で先生に聞いたんだけどさ……」

 

 みんなで食事を終え全員がくつろいでいるとランダンがチェリに話しかける。

 

 「どうしたの?」

 

 「四大技術の始祖の事で新しい発見があったの知ってる?」

 

 「ロドロフとミシャ夫妻の手記が発見がされて、歴史学者の間で騒ぎになっている話よね?」

 

 「知ってたのかー。うん、先生が話題にしてたんだ」

 

 「人によっては興味深い話だもの、これから他の二人の手記も無いか探そうとしてるとかしてないとか」

 

 「でもさ、俺は信じられないなー。始祖に技術を教えた何者かがいたかも知れないなんて」

 

 何?

 

 「でも、発見された手記には師が居た事が書かれていたらしいじゃない?はっきりと知識と技術を教えてくれたと書いてあったらしいわよ?」

 

 誰にも私の事を言わない代わりに手記に書いていたのか?

 

 私が微妙な雰囲気を出している事に気が付いたカミラが話しかけてくる。

 

 「どうしたのお母様?」

 

 カミラは変わらず私をお母様と呼ぶ。

 

 子供達に母と呼ばれているカミラが子供達に姉と呼ばれている私を母と呼ぶ、関係を知らない者が聞いたら訳が分からないだろうな。

 

 「何も無い」

 

 問いに答えて念話で話す。

 

 『あの子達が話しているのは私の事だと思う』

 

 『そうなの?』

 

 カミラには私自身の事は色々と話しているが弟子達との事は話していなかったかも知れない

 

 『黙っていれば私だと分かる事は無いだろう』

 

 『そう、それなら気にしなくても良いわね』

 

 いまさら私とつながる事など無いので何もせず放って置く事にした。

 

 

 

 

 

 

 私は月面で本を読んでいる、頭上には夜のイシリスがある。

 

 イシリスは夜になると人類の魔法の光が輝いて見える。

 

 子供達と過ごしていた日々は終わった、子供達は大人になり、自立し家庭を持った。

 

 皆が過ごした家はケイとパトラの夫婦が住み、今でも年に数回は集まっているらしい。

 

 二人は結婚まで大分かかったな、私は月面であの二人の事を思う。

 

 皆のために一生懸命なケイに、パトラは兄としてではなく男として好意を持った。

 

 ケイも家で自分を待っていてくれるパトラに妹としてではなく女として好意を持っていたが、兄妹として過ごした時間が長かったため夫婦になるまでかなり時間がかかった。

 

 本人も皆も、二人が本当の兄妹では無い事は知っていたが、同じ人物の養子となり兄妹扱いだった事も多少面倒だった。

 

 最終的に結婚は認められ、現在は夫婦として暮らしているのだが。

 

 みんなが家を出てケイとパトラだけになった後、私達は子供達に家を出る事を伝えて月へと帰った。

 

 子供達は嫌がり、ケイとパトラも自分達と一緒に暮らせば良いと言ってくれたが断った。

 

 私達にも帰る場所があると答え、たまには会いに来る事を伝えると、渋々納得してくれた。

 

 最近は月で過ごしつつも子供達に会うために時々イシリスへと向かう生活を送っている。

 

 ヒトハからの情報で、子供達が私達の正体について話し合っていた事があるのは知っている。

 

 結局「助けてくれたし、優しいしどうでも良い事」という結論になったので私が何かする事は無かった。

 

 話を聞いた時は優しいという言葉に疑問を感じたが、彼らがそう感じているのならそれでいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 それから彼らは小さな問題を起こしながらも順調に日々を過ごした。

 

 皆は子を持ち、孫が生まれ、良い祖父、祖母になった。

 

 そんなある日、私はカミラとヒトハと共に放送で情報を見ていた。

 

 《次の情報です、森林国家ユグラドで神木として長年扱われていた世界樹が切り倒される事が決定しました》

 

 世界樹を切り倒すか。

 

 「世界樹ってあの大きい樹の事よね」

 

 『はい、長年森林国家ユグラドの守り神として崇められてきた樹の事です』

 

 カミラとヒトハの会話をよそに私は情報を聞いていた。

 

 《以前から広範囲の日の光を遮る事や魔道飛行船の航路、土地の問題などで国家間会議で取り上げられていましたが、森林国家ユグラドの神木として残したいとの国の意向を受けて現在まで残されていました。しかし他国からの度重なる要請を受けユグラドがとうとう世界樹の伐採を承諾しました。伐採は計画を立てて行われる予定で……》

 

 私は世界樹に会いに行き、望むならここに連れて来ようと考えた。

 

 「二人とも、話がある」

 

 「世界樹の事?」

 

 『何でしょうか?主様』

 

 二人は私に向き直り答える、この情報を見た後なら予想は付くか。

 

 「私は世界樹が切り倒されるのをただ見ている気は無い」

 

 以前はハッキリとしなかったが、現在は私が回復魔法をかけた樹が世界樹である事が分かっている。

 

 意思の様な物も感じるし、果実や樹液も貰っている。

 

 このまま見捨てる気にはならない。

 

 「どうするの?」

 

 カミラが尋ねてくる。

 

 「世界樹が望むならここに連れてくるつもりだ」

 

 「いいんじゃないかしら」

 

 『この拠点にあの大樹を植えるのですか?』

 

 予想していたようなカミラと疑問を口にするヒトハ。

 

 「そうだ。二人に手伝って貰う事は無いが先に言っておこうと思ってな、何か気になる事はあるか?」

 

 私がそう言うと二人が答える。

 

 『イシリスと比べると月はかなり小さいですが……それでも世界樹を移す事に問題は無いと思います』

 

 「私も特に反対する理由は無いわね、一つ気になる事はあるけど」

 

 「何だ?」

 

 「世界樹って宇宙でも平気なの?あの大きさだと障壁を超えるわよ?」

 

 確かにそうだな、障壁を高くしないと駄目か。

 

 連れてくる前に広げてしまおう。

 

 「連れてくる前に広げる事にする」

 

 私は障壁を世界樹が入る様に広げる。

 

 「……あっという間に広がったわね」

 

 『いつ向かうのですか?』

 

 障壁が広がった事を感じたのか苦笑いして言うカミラと、これからの事を問うヒトハ。

 

 「放送ではすぐに切り倒される訳ではなさそうだが、時間をかける気は無い。今は丁度ユグラドは夜だからな、すぐに向かう」

 

 「そう、行ってらっしゃい」

 

 『行ってらっしゃいませ』

 

 私は二人に見送られ森林国家ユグラドの世界樹へと転移した。

 

 

 

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