私達は月で生活しながらイシリスの人類の町が復興するのを待ち始める。
戦争終結から多少時間は経っているが、まだまだ気休め程度しか復興は進んでいない。
被害を出した戦争の期間に対して、復興にかかる時間がかなり長くなる気がする。
無事だった地域に各地から避難民が集まり、捨てられた都市は廃墟になっているらしい。
現在、私は庭で二人と共にのんびりしていた。
「……思ったよりも酷かったわね。かなり人類の数が減っているわ」
ヒトハから人類の被害の情報が集まるにつれて、その被害の大きさが分かって来た。
カミラはその報告を聞いて呟いた、確かに予想以上に被害が大きかったな。
「大丈夫だろう、人類はある程度数がいれば勝手に増えて行くからな」
これはまず間違いないだろう、実際に惑星イシリスに溢れる程に増えたのだから。
一時的に減ったとしてもまた増えるはずだ。
「……人類って実は戦争が好きなのかしら……?」
カミラがそんな事を言うが、この状況を見るとそれほど間違ってもいないのかもしれない。
「数が増えると争って減るように出来ているのかも知れないな」
私はふと、人類にそういった何かが組み込まれているのではないかと考えた。種を繁栄させるために数を増やし、繁栄しすぎれば自ら殺し合い数を減らす。
もしそうなら上手く出来ている。
「だとすると定期的に争って数を減らすのは本能って事?」
「今思いついた事だ。根拠など何もない」
「動物だったか魔物だったかは忘れてしまったけど、お母様が言ったような本能を持っている種がいたのを覚えているわ……人類が似たような本能を持っていたとしてもおかしくは無いわよね?」
「確かに同じような本能を持っている可能性が無いとは言えない。ただ、その可能性はかなり低そうだ」
「でも、こうなる前に誰も止めないのはおかしいと思うのよ……大勢が戦いたくないと思えば止まると思うんだけど……」
「止まらずにここまでしてしまうのは、そうなるように出来ているから、と言いたいのか?」
「もしかしたらだけどね」
例え真実を知る事が出来なかったとしても、こうやって色々と予想するのは楽しい。
「しかし私も戦闘は嫌いでは無いし、カミラも幼い頃から戦闘が好きだっただろう?私達も人類の事を言えないぞ」
そう言うとカミラは笑って言う。
「ふふっ……そうね、暴れるのも殺すのも楽しいわ。お母様の影響で普段は落ち着いているけれど……もしもお母様に拾われなかったら好きなように暴れて、いずれお母様に出会って殺されていたかもしれないわね……」
「どうかな?カミラも地上の他の種族や魔物とは違う珍しい存在だからな。私がそれに気が付いたら生かしておいたと思うぞ?扱いは今とは違ったと思うが」
「もしそんな出会いだったらどんな関係になっていたかしらね?」
どんな関係か、か。
「話が通じるなら友人になってたかも知れないし、話が通じなかったら奴隷化して珍しい研究対象扱いだったかも知れない」
「……なるほどね」
カミラは指を口元に当てながら言葉をこぼす。
私に会わなかったカミラを見る方法が無い訳では無いが、今のカミラが消えて無くなるかも知れないのでやる気にはならない。
別の時間に居るカミラになら今のカミラと共に会う事も出来るだろう、そこに別の私は居ないようだが。
「また戦争前の状態にまで増えるのにどれだけ時間がかかるかしら……」
私が余計な事を考えていると、カミラがそんな事を口にする。
「復興自体は急げば急いだだけ早く終わるが、人類が数を増やすのは急げば早くなる訳では無いからな」
安定した環境で時間をかけなければ人類の数は増えない。
子が生まれるにも、生まれた子が子を産むためにも必ずそれなりの時間がかかる、家畜であってもそれは大きく変わらない。
どこかの世界にはどんどん増える種族も居るかも知れないな。
「……数百年で同じ程度まで増えるかしらね?」
「私は人類がどの程度の時間をかけてここまで増えたのか把握していないから何とも言えないな」
これからも私は特に気にする事は無いだろう、もし必要な時はヒトハに頼んでみるか。
「う、それを言われると……。私もハッキリとは把握していないけれど多分数百年……だと、思うけど……」
カミラも分かっていない事を認め、言葉が弱気になる。
『主様。私が人類から得た情報では亜人種族独立戦争が行われていた頃は今から約千年程前の事のようですが……』
ヒトハが良い情報をくれた。亜人種族独立戦争は確か、国を作った亜人種と人の戦争だったか?
「そうすると森林国家ユグラド、魔工国ガンドウ、獣王国カルガの三国は建国から約千年。当時争っていた国の名前はルセリアだったか?その国はその後滅んだはずだから……」
「ルセリア神王国はアーティア帝国が滅ぼしたのよ、お母様」
カミラが私に言う。
「そうだったな、思い出したぞ。そしてアーティア帝国も無くなりアーティア合衆国になった訳だ」
「合衆国が何年経っているかは分からないわね」
「私がカミラに出会ったのはそれよりも前だ、カミラは千歳以上と言う事だな。私が人類と会ったのは更に前だが、それほど長い時間は経っていないはずだ」
「それでもお母様の正確な年齢は分からないわね」
「休眠前にどれだけの時間を過ごしていたか分からないからな。一万数千歳だろうか?いや、そもそも私が気が付く前の事が一切不明だからな」
「気になる?」
カミラは私を見て聞いてくる。私があの瞬間生まれたなら関係無いが、色々おかしい私の事だ、気が付く前から存在していた可能性もあると思う。
「以前は気になっていたが今はどうでも良いな。勿論分かるならその方が良いが、今の私はそれよりもこれからの事が楽しみだ」
私の正直な気持ちだ、少なくとも執着する事は無い。
「私もこれから何があるのか楽しみだわ」
「何事も無ければ穏やかな日々がずっと続くかもな」
「それならそれでもいいわよ」
カミラは微笑んで言う、私はモー乳を一口飲みカミラ達と会話を続けた。
人類が大幅に減ってから百年程が過ぎたと思う。
各国の人間の数はある程度増え、各地の廃墟と化した都市の建て直しが始まり、再び世界中に人が散り始めた。
「それなりに人類の数が戻ったな」
「そうね。後は一気に増えるかしら?」
『一定の環境下において生物が突然大量に増えるのは時々起こる事です、人類も条件が揃えば同じように増えるかもしれません』
リビングの放送では復興の進み具合と、これからの計画などが放送されている。
この受信魔動機も人類が完全に復興を遂げたら新しい物に変えよう。
ヒトハは最近は情報収集をあまりしていない。
復興中で特に知りたい事が無い事と、ヒトハが私達の傍にいる事を望んだからだ。
私に対して自分の望みを言う、いい傾向だ。私は彼女の望みを尊重し私が必要だと思う事が無い限り自由にする事を許した。
ヒトハは私の傍に常に浮遊して付き添うようになり、私とカミラとの会話が増えた。
以前と比べてヒトハは話し方が変わった。説明しにくいが、ただ物事を伝えるだけだった言葉に変化が現れているように感じる。
ヒトハがまた少し成長した事を嬉しく感じながら、私は二人と日々を過ごす。