少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 今回はほとんど他者の視点です。




054-02

 

 あれから更に百年程が過ぎた。現在人類は見事な復興を見せ、以前のような繁栄を取り戻した。

 

 「以前の様な状態まで戻ったわね。早かったのか遅かったのかは……何とも言えないけれど」

 

 「私は思ったよりも早いと感じたな。近い内にイシリスへ降りて最新型の受信魔動機を買おうか」

 

 『以前から主様は交換したいと話していましたからね。情報を集めておきましょうか?』

 

 「いや、今回は必要ない。店頭で見て決めようと思う、カミラとヒトハも一緒に見て決めないか?」

 

 ヒトハの申し出を断り、皆で店に買いに行く事を提案する。

 

 「良いわね。ついでに他の店も回りましょうよ」

 

 『お二人とお買い物ですか。楽しみです』

 

 二人も乗り気のようだ、カミラはきっと服屋だろうな、私も新しい本と魔道書庫のカードが作られていないか確かめに行こう。

 

 

 

 

 

 

 「どうだ……?」

 

 「駄目です……作動しません」

 

 俺は頭を抱えたくなった……二百年程前、人類は戦争を起こしお互いに魔道戦略兵器を撃ち合った。

 

 そして人類はその数を急激に減らし、一時期危険な状態にまでになったらしい。

 

 だが人類はそれを乗り越え、こうして復興したと言う事だが……ここ十年程で魔道兵器の調子が徐々に悪くなり、つい最近とうとうまともに作動しなくなった。

 

 「原因は……分からないよな……だからこうなってんだからな」

 

 「はい……すみません……」

 

 俺の苛立つ声に謝る彼、おっと不味いな……彼が悪い訳じゃないのに。

 

 「謝らないでくれ。俺が悪かった……原因が分からず気が荒れていたようだ」

 

 「いえ……この状況では仕方ありませんよ」

 

 上の奴らは原因を調べろと言うが……これは魔道兵器の欠陥じゃない、一から全て何度も何度も複数の人員で確認したんだ。

 

 これで魔道兵器の欠陥だったら俺達は全員辞職してやるさ。

 

 「私は魔力の問題ではないかと思っているんですが……」

 

 彼が俺にそう言ってくる。魔力ねぇ……確かに圧縮魔力の溜まりがここ十年程で大分遅くなった。

 

 「魔力の問題か……思いつくのは魔力の変質……後は枯渇だが……あり得るのか?」

 

 魔力は確認は出来ないが世界中に溢れている。

 

 今までなくなるような事は無かったし、誰も魔力が無くなるなんて考えちゃいない。

 

 「魔法使い達にも話を聞いてみましたが……今の所魔法を使えないという事は無く、魔力に違和感を感じる事も無いそうです」

 

 「あー、わっかんねぇな……。魔法使い達も分からないような変質が起きているとか、考えたくはないが単純に魔力が減っているか……」

 

 どちらにしても原因を調べる事は難しい、そしてもし原因が分かったとして、人類にどうにも出来なかったらどうするのか……。

 

 「俺達は魔道兵器の開発と研究をしているだけで魔力に関しては分かんねぇんだよな……」

 

 「あの……実はつい最近、私の知り合いの魔法使いにも相談したんです。それで、その時こっそり教えてくれたんです……魔法使いは魔法を使う技術が高いだけで魔力に関して知っている事は……殆ど無いそうです」

 

 「何だよそりゃ……」

 

 俺は内心冷や汗を流した……今まで散々使って来た魔力の事を、人類は何一つ知らない可能性がある事に……。

 

 「そもそもどうして魔力がある事が分かった?……この技術を作り出した始祖達は何か知っていたのか……?」

 

 「その始祖達に師がいたって記録が残っているらしいですけど……」

 

 彼も連日の検査と原因の特定で疲れているのか話を始めた。

 

 「本当にそんな奴がいたとしたら魔力の事を聞いてみたかったぜ」

 

 「上にはなんと報告しますか?」

 

 「魔道兵器に問題は無いと伝える。恐らく魔力の問題で、俺達は魔力の専門じゃない事もな」

 

 「納得しますかね?」

 

 「辞職する事になるかもしれないが……問題無い物は問題無いし、分からん事は分からん。大人しく引退するよ」

 

 この問題が起きているのが俺達の国だけなのかが知りたいな……。

 

 「ただいま戻りました」

 

 休憩に行ってたやつらが戻って来た、もう一度だけ最初から確認するか……。

 

 

 

 

 

 

 俺は魔道兵器研究所を辞職した。

 

 金は十分稼いでいたし、何よりも他国の魔道兵器研究者と話がしたかったからだ。

 

 そして俺は各国の相応の地位にいる研究者達に手紙を送り呼び出した。

 

 内容はたった一言「大型魔道兵器が作動しない事について話し合いたい」と書いた。

 

 これは賭けだった。でも、もしも世界規模でこの状況が起こっているなら必ず彼らは乗って来る。

 

 何故なら俺も彼らも研究者だからだ。

 

 そして俺は賭けに勝ち……郊外に用意した俺の別邸に各国の研究者が集まった。

 

 「集まってくれてありがとう……早速俺が今回皆さんを集めた理由をお話します」

 

 俺は大型の魔道兵器が十年ほど前から異常を起こし始めた事から、最近作動すらしなくなった事までを話した。

 

 すると各国の研究者達も同じ状況でありこの現象が世界規模である事が判明した。

 

 俺はこの現象を解明するために国を越えて協力したいと申し出た、彼らは快く協力を約束してくれた。

 

 こうして俺はこの別邸に住み全員のつなぎ役となった。原因を特定するために様々な情報を集め、特定の日に集まり話をする事を決めて解散した。

 

 

 

 

 

 

 「くそ……」

 

 俺は部屋のソファに倒れ込みながら呟く。

 

 各国の研究者に協力を頼んでから、俺も皆も出来るだけの事はして来たが、未だに原因が分からない。

 

 情報を集めようにも魔道兵器が動かなくなるという現象しか分からない。俺達は魔力を見る事が出来ないし周囲の魔力を感じる事も出来ない。

 

 魔法使いは体内の魔力であれば多少感じる事が出来る様だが……残念ながらそれだけで何も有効な情報は得られなかった。

 

 俺も今まで何も考えず、当然のように魔力を使って来たが……本当に人類は魔力の事を何も知らなかったのだと思い知った。

 

 協力してくれている研究者達も諦めてはいないが何一つ進展はなく、きっかけすらも掴めていなかった。

 

 

 

 

 

 

 「嘘だろ……」

 

 ある日、協力者である研究者の一人から魔力を多く消費する他の魔道兵器も不調になり始めていると言う情報を貰った。

 

 今は少し違和感を感じる程度だが、現在動かなくなっている魔道兵器の時と同じ現象である事を確認したとの事だ。

 

 「……隠していたら取り返しがつかなくなるかも知れない……」

 

 俺は協力してくれている研究者達に各国に連名で報告して欲しいと相談した。

 

 状況は少しずつ悪くなって来ている。

 

 国にこの問題を認識させ、人類全体で解明しなければ取り返しのつかない状況になるかもしれないと自分の考えを説明した。

 

 皆は俺の考えに賛成してくれた、それから全員がすぐに集結し、連名の報告書を複数作製した。

 

 そして俺達が一斉に報告書をそれぞれの国に送ると、効果はしっかりと発揮された。

 

 各国の優秀な研究者である彼らの連名の報告書は重く受け止められ、ようやく国はこの事態を把握する事になったのだ。

 

 

 

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