少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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056-02

 

 月の拠点に帰り色々と原因の事を考えているとヒトハがやって来た。

 

 『主様、私が持っている情報の中から魔力に関連する物をまとめておきました……どうぞ』

 

 ヒトハは情報のまとめられた紙を五枚差し出してくる、かなりの量があるはずのヒトハの情報の中で魔力に関連する物はこれだけなのか。

 

 「ありがとう、良く集めてくれた」

 

 『お役に立てたのなら嬉しいです』

 

 ヒトハは頭を下げるように縦に動くと私の横の定位置にやって来た。

 

 私は早速ヒトハの持って来た情報が書かれた紙を読み始める。

 

 

 

 

 

 

 読み進めるが本当に大した事が書かれていない、無限の力、人が使える神の力などの様な物ばかりだ。

 

 この様子ではヒトハの頑張りが無駄になりそうだ。

 

 ヒトハの苦労にあわないと思いながら読んだ次の内容に私は目を止めた。

 

 たった数行の内容だったが「魔力が尽きないのは何かが魔力を生み出しているからだ」という内容だった。

 

 私はその文を動かずにじっと見つめる。

 

 もう一度確認しよう。

 

 『主様?』

 

 私は立ち上がると外へと出て行く、向かうのは世界樹の所だ。

 

 『主様、何か気が付かれたのですか?』

 

 「ああ、私は以前それを見ていた。魔力と魔素の関係を」

 

 私達は世界樹に向かいながら会話をする。

 

 『魔力と魔素ですか……?』

 

 「そうだ、魔力はヒトハも使っているしカミラも感じる事が出来るが、魔素は今の所私以外には見る事も感じる事も出来ないようだな」

 

 『そこに何か原因が?』

 

 「私の考えが間違っていなければな」

 

 私は世界樹の元へやって来た、世界樹が喜んでいる気配を感じながら魔力と魔素を見る。

 

 世界樹は月の拠点内の魔素を吸い、魔力を放出していた。次は他の樹を見に行こう。

 

 私は拠点内の森へと向かう、背後で世界樹がさわさわと鳴った。

 

 森に着くと私は樹を見て行く、魔素を吸い魔力を放出する樹とそうでない樹がある、なるほど。

 

 次は家畜だ。

 

 家畜達は僅かな魔力を吸い僅かに魔素を出していたが、魔力を吸わず魔素も出していない種類もいた。

 

 後は魔物だな。

 

 私はマジックボックスに収納されていた生きた魔物を取り出し確認する。

 

 魔物は魔素を吸い魔力を出している。

 

 「帰ろう、まだ推測だが原因が分かったかも知れない」

 

 『かしこまりました』

 

 私はすぐに帰るためヒトハと共に転移した。

 

 

 

 

 

 

 『カミラ、家に来てくれ。原因が分かったかも知れない』

 

 『すぐ行くわ』

 

 私は家に転移した後カミラを呼び出す、ソファにマジックボックスから飲み物を出して座ると、すぐにカミラがやって来た。

 

 「あら?お母様が用意してくれたの?」

 

 用意してある飲み物を見てカミラが言う。

 

 「たまにはな」

 

 「それで、原因は何?」

 

 「まだ過程ではあるが、話そうか。私自身も忘れていたが、簡単な循環だったんだ」

 

 私はカミラとヒトハに話し始める。

 

 「この世界の一部の植物や動物、魔物は魔素を吸い魔力を放出する」

 

 「魔素ってお母様がだけが分かるあれの事?」

 

 「そうだ、そして魔力が使用されると魔素を放出する」

 

 その言葉を聞き、ヒトハとカミラはそれぞれ呟く。

 

 『魔素を吸い、魔力を放出する木々と動物、そして魔物……』

 

 「人類によって森は全て失われ、魔物は一部を残して狩り尽くされている……」

 

 「分かったか?私は現在の魔力の減少が起きたのは、魔素を魔力に変える存在が極端に減った状態で、魔力を大量に消費している事が原因では無いかと考えている」

 

 「なるほど……」

 

 私の言葉を聞きカミラは呟く。

 

 「二人は分からないだろうが、惑星イシリスの魔素は以前より濃くなっている。魔力の減少ばかり気にして魔素を全く気にしていなかった私の落ち度だ」

 

 そこから気が付ければ良かったんだが。

 

 『魔力だけが使用され魔素になっているために濃くなっていると……?』

 

 「恐らくな、魔素を吸い魔力を発生させる者と魔力を使い魔素を発生させる者。人類が森や魔物をほぼ全滅させた事でその循環が破壊された」

 

 「魔力は増える事が無くなり使われるだけとなり……それでも残っていた魔力で維持して来た、けれど限界が来た……そういう事?」

 

 ヒトハに返した私の言葉の後にカミラが続く。 

 

 「きっと人類が森を消し魔物をほぼ全滅させた時点で始まっていたんだろう。この説は私がヒトハのまとめてくれた情報から魔力と魔素の関係を思い出し、調べた事実から推測した内容だが、それほど間違っていないと思う」

 

 「それで……どうするの?」

 

 「特に何もする気は無い、私が魔力を世界に満たせば助かるだろうが、そこまでしてやる気も無い。個人に多少肩入れはしても種全体に肩入れはしない、気まぐれにするかもしれないが」

 

 知らなかったとはいえ森を消し去り魔物を減らしたのは人類だ。魔力に興味を向け、調べていれば間に合ったのかもしれないが。

 

 人類が土地を放棄し、状態を元に戻そうとした所で元に戻るかどうかも分からず、仮に戻ったとしてもそれまで人類が生き残れるかも分からない。

 

 そもそも魔力が減っている事に気がつかなければ話にならない。

 

 

 

 

 

 

 「……以上が魔力濃度測定魔動機での測定結果を元にした魔力の状態です」

 

 俺達は現在四国会議に魔力研究者として参加している、協力して魔力濃度測定魔動機を開発した俺達は、世界の魔力が間違いなく減り続けている事を明らかにした。

 

 そして今。各国の代表の前でその結果を報告した所だ、誰も言葉を発さず静まり返っている……黙っていても現状は変わらないけどな。

 

 「原因は不明です、各国にお願いしたいのは魔力の使用を控える通達です……そして原因の究明に全面的に協力して頂きたい」

 

 各国の代表は魔力の使用を控える通達を行う事と、原因の究明に全面的に協力する事を約束してくれた。

 

 

 

 

 

 

 《国からの通達をお伝えします、現在世界中の魔力が僅かに不安定になっているため、必要以上に魔力を使わない様にお願いします。この通達はすべての国で行われています……》

 

 私達が魔放送を見ていると魔力の使用を控えるようにとの放送が流れた。

 

 「お母様、これは……」

 

 「人類も魔力の減少に気が付いたようだ。感じる者が居たのか、調べる為に魔動機でも作ったのか。どちらにしても優秀だな」

 

 しかしこの通達ではどれほど分かっているか分からない。

 

 本当に大した事では無いと思っているのか、隠して穏やかな表現にしているのか、どっちだ?

 

 『しかし……主様の説が正しければ、分かった所でもうどうにもならないのではないでしょうか?』

 

 ヒトハが私に言う、確かに厳しいが手が無い訳では無い。

 

 「絶対に不可能という訳では無いと思う。今すぐ人類の数を出来るだけ減らして、生きるために必要な最低限の魔力消費だけで数百年から千年程過ごせば、確実に元に戻るとは言い切れないが増えるはずだ」

 

 「それは難しいわね……私やお母様ならともかく、そうしなければ滅ぶと分かっていたとしても実行出来る者が人類の中に居るかどうか……」

 

 「その上確実に戻るかも分からないからな。人類の事だ、何か驚くような解決方法を見せてくれるかもしれない」

 

 「今回は難しそうだけれど……無いと言い切れない所が人の凄い所なのかもしれないわね……」

 

 さて、これから人類はどうするのだろうか。

 

 

 


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