少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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056-03

 人類の国が魔力の現状を知り、使用を控えるように通達してから時が経ち、その間も私は魔力の状態を確認し続けていた。

 

 「人類は本当に魔力の使用を控えているのか?」

 

 私がそう口にした原因は魔力の状態にある。

 

 魔力の使用を控えるように通達された前と後で減る速度が変わっていないからだ、これでは使用を控えているとは言えない。

 

 「今まで好きなだけ魔力を使って来たんだもの……控えろと言われても難しいでしょうね」

 

 確か人類……いや、人類だけでは無い、生物は一度良い環境に慣れるとそれ以下の環境に落ちる事を嫌うのだったか?

 

 『各国が行った通達は殆ど効果が無かったようですね』

 

 「強制力の無いただの通達なんてこんな物よ。取り締まって罰を用意しなければ、わざわざ節約して手間をかける事なんてしないわよ」

 

 私はその手間を楽しいと思う事もあるのだが、その辺りは好みだからな。

 

 『人類は現状ほぼ何もしていないと言う訳ですか』

 

 「そうなるわね」

 

 しかしカミラは人の事をよく分かっているな。

 

 私もそれなりに長く人と過ごしていると思うが、理解出来ない事が多い。

 

 どれだけ長く共に過ごしてもこの先ずっと分からないままかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 そして人類の魔力の使用量が変わらないまま時が過ぎ……ある時、魔力の減少により人類にとって大きな出来事が起きた。

 

 《えっ……!?……失礼しました……こ、ここで緊急の情報です。アーティア合衆国、魔工国ガンドウ間を飛行中の魔道飛行船に異常が発生し……墜落したようです……都市に落ちた飛行船の乗員の状況や都市の被害についてはまだ分かっておりません……》

 

 魔放送を見ていると魔道飛行船の墜落が放送された。

 

 魔道飛行船の稼働も不可能になったか、魔道兵器が順番に動かなくなったんだ、更に減れば消費の多い順にこうなるのは予想出来た。

 

 「恐らくそう時間を空けずに全ての魔道飛行船は稼働しなくなるだろう」

 

 「魔道飛行船の維持が出来なくなる量にまで魔力が希薄になったのね」

 

 私の言葉にカミラが答える。

 

 人類は一番の移動手段を失った、各地の状況はどうなるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 魔道飛行船が使えなくなり移動が難しくなった影響は大きかった。必要な場所に人員が到着出来ず、各地の様々な場所で問題が起きた。

 

 各国は問題無く動いている陸路の交通手段を大幅に増やし、対応したようだがそれでも数が足りていない。

 

 このままではいずれ陸路で使っている魔動機も動かなくなるだろう。

 

 「この状態でもまだ本格的に魔力の使用を制限しないのね……本当に滅ぶ気なのかしら……?」

 

 「魔道飛行船が落ちたんだ、流石に国民も無関心ではいられないだろう。原因を知りたがるだろうし隠すのはもう難しいだろうな」

 

 「私は出来れば人類には生き残って欲しいけれど……お母様はそこまで気にしていないでしょう?」

 

 「そうだな、滅んでも生き延びてもどちらでも構わないと思っているが……」

 

 「巫女達の事は良いの?」

 

 カミラは私にそう問いかける、巫女達か。

 

 以前の巫女達なら助けていたかもしれないが現在の巫女達を助ける事は無いだろうな。

 

 かつて私が狂信者とまで思った信仰心はすでに無く、いつからかただの仕事になっていたからな。

 

 現在に至っても変わらず私を信じ、待っているなら巫女として見る事が出来たし、流石に放っておかなかった。

 

 だが現在は巫女として仕えている対象が、自由神が何なのか、誰一人知らないらしい。

 

 私とンミナの話が書き残されていたはずだが、それも今では失われているようだ。

 

 かつての信仰心を維持している巫女がいたならその巫女だけでも助けようとヒトハに調べて貰ったが、一人もそのような者は居なかった。

 

 もし居たのならその巫女だけでも月に連れて行こうかと考えていたのだが。

 

 「お母様?迷っているの?」

 

 考え込んでいたな。

 

 「少し今の巫女達の現状を思い返していただけだ、私は今の巫女達を助ける気は無い」

 

 「そう、お母様がそう考えているのなら私が口を挟む事じゃないわね」

 

 『念入りに主様の巫女達の事は調べました、まず間違いはないと思いますが……』

 

 ヒトハは不安そうだな。

 

 「そんなに気にするな、誰にでも失敗はある。私も色々忘れたりしているだろう?特に魔力と魔素の関係を忘れていたのは自分でも酷かったと思っている」

 

 『主様は頂点に居られる方ですから、何も問題ありません。私は役に立たなければどうにでもなる存在ですから』

 

 「私はお前が敵になら無い限り、処分する気は無い」

 

 『主様……』

 

 「お前がいつか心から何かを望んだなら、私にその望みを聞かせて欲しい、嘘偽りなく正直にな」

 

 『……はい、主様』

 

 その時は彼女の意思次第だが出来る限りの事はしてやろう。

 

 私の隣ではカミラが微笑んでヒトハを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 魔道飛行船が使用出来なくなった後、人類は陸路と海路を充実させる事にしたようだ。

 

 魔道船と魔道車は魔道飛行船が登場してから数を減らしていたが、再び多く作られ運用された。

 

 その努力もあり世界の交通手段はある程度は確保された。

 

 それを月から見ていた私達は、この状態が長く続かない事を感じていた。

 

 一つ一つの魔力消費は少なくても数を増やせば同じ事、数を増やしすぎた魔動機は魔力の消費を魔道飛行船があった頃と同じ程度まで増やしていた。

 

 人類は以前より確実に衰退はしていたが、再び安定し生活をしていた。

 

 

 

 

 

 

 全ての魔道飛行船が稼働を止め、陸路と海路に移ってから時は過ぎ……。

 

 ある日を境に食料生産施設や医療設備、そして陸路と海路の交通用魔動機達が次々と稼働を止め始めた。

 

 

 


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