書く事が無かったり、思いつかない時は時間が飛びます。
この作品の注意事項
・作者の自己満足
・素人の作品
・主人公最強
・ご都合主義
・辻褄が合わないかもしれない設定
・注意事項が増える可能性
等が含まれます。
以上をご理解したうえでお読みください。
読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。
商会の皆に別れを告げ徒歩で旅をする、その途中見えてきた町の様子がおかしい。
魔物が来ているな。
町の入り口で戦闘が起きている。戦っている者達は強いとは言えない動きだった、装備がもっと悪ければ死んでいると思う。
町に立ち寄るつもりだったが……あのままではそれ所では無いな。
私は町に急いだ。
「おい!武器を貸せ!」
「え?子供?!」
戦闘に近づき傍にいた治療師らしき女の持っている剣を奪う。
「この程度の魔物に苦戦するとは……」
襲って来ていた魔物は犬のような魔物で大きさは人間の大人より少し小さい程度だ、警戒するように唸っている。
私の事を知らない者達の前で魔法はともかく髪や他の手段は使いたくない、奪った剣を持ち豚に近寄る。
「止せ!近寄るな!」
周りの人間が声を上げ助けようとこちらに向かって来ようとするが、すぐ終わるぞ?
人としての戦闘訓練をしていてよかった。明らかに人では無い戦い方をしたらどんな反応をされるか分からんからな。
私は魔物の噛みつきを流れるように避けながら首を切り落とす。
「え……?」
誰とも分からない声がする、子供だと思っていたらあっさりと魔物を殺せばこうもなるか。
「悪かったな。返すぞ」
剣を持ち主に返しながら言う、さて町に入って宿をとるか。
「待ってください!」
宿を取ろうと町に向かおうとする私に声がかかる。
「何か用か?」
立ち止まり、声をかけてきた者……剣を返した女に答える。
「旅の方にこんな事をいきなりお願いするのは失礼だと分かっています。ですがお願いします、私達の話を聞いていただけないでしょうか?」
「ソニアさんいきなりそんな事を言っても……」
戦っていた男たちの一人が苦言を呈する、聞くだけなら聞いてみようか。
「良いぞ」
嬉しそうな顔をするソニアと呼ばれた女と驚く男、話だけなら聞くらいはする。
「ただし聞くだけだ、どうするかは内容による」
「ええ勿論です、ではこちらへどうぞ」
こうして私は町に入るのだった。
「こちらです」
案内されたのは町の入り口近くの建物だった、見た感じでは詰め所だろうか。
部屋に案内された私は彼女と男達が見守る中椅子に座った。
「先に話しておこう、私はこう見えて成人している、特に気を使う必要はない」
初めて会う相手に子ども扱いされるのは当たり前になってしまった、この見た目だから当然だが。
「まじかよ……」
男達から声が聞こえる、その反応も良くある事だ。
「皆さん失礼ですよ」
「す、すいません」
彼女が咎め、男達が私に謝る。
「なに、気にしていない、この見た目だ、そんな反応は慣れている」
「申し訳ありません……それでお話なのですが……」
彼女の話を聞くと、魔物が増えて町に来る頻度が上がりそれをどうにかする為に自警団を作ったのは良いが、戦闘の素人しかおらず教える者が居ないとの事だった。
「貴女の戦いは見事でした……素人の私でも見とれるほどに」
人が出来る程度に抑えているからな。
「どうか暫くこの町に留まり私達に戦い方を教えていただけませんか?」
私の人を育てる楽しみがやってきた、良いだろうしっかりと教えてやろうではないか。
「良いぞ、その話受けよう」
「ありがとうございます!」
喜ぶソニア、男達も嬉しそうだ、まあ勝てなければ町が被害を受けるんだ当然か。
あるいは私が居る間は安全だとでも思っているのかな。
「私はこの町の代表の様な立場におります、ソニア・ニグレットと申します」
「クレリア・アーティアだ、好きに呼べ」
お互いに自己紹介し握手をする、こうして私は彼らを鍛える事になった。
「中々良い部屋だな」
あれから私は滞在する間の宿に案内された、宿と食事の代金は町が負担するらしい、他に欲しい物は自分で買って欲しいとの事だった。
明日から早速訓練開始だ、まずは現状どの程度なのか確かめないとな、今は町に出て店を覗いてみよう。
「そうだ武器を買おうか」
いままで魔法でごまかしていたが訓練するとなれば用意しておいた方が良いな。
「いらっしゃい!」
通行人に訪ねて武器屋に来た、店によって扱っている物が違うらしいが。
「長剣……ロングソードを見たいのだが」
「それならあの辺りがそうだぜ」
近寄って見てみる、装飾は無いが中々良い作りをしている。
「中々良い物だな」
「当り前よ、この武器はあのロドロフの弟子の鍛冶師が作ってるんだからな」
感想を口にする私に武器屋の主人が答える……そうか彼の弟子が作っているなら納得だ。
この装備が自警団の命を守っているんだな。
私は一本手に取り周囲の安全確認をしてから軽く振ってみる。
風を切るいい音がする……重量バランスも中々良い、これにするかな、そう思っていると武器屋の主人がこちらを見ているのに気が付いた。
「どうした主人」
「いや……今まであんな鋭い音出して振れる奴いなかったもんでな。あんたかなり使えるな?」
「少なくとも自分が弱いとは思って無いな」
「この町には立ち寄っただけなのか?」
そう聞いてくる主人。
「立ち寄っただけだが、やる事が出来た……この剣にあうベルトも頼む」
剣を持ちカウンターに乗せる。
「やる事?」
「この町の自警団を鍛える事になった」
金を払い剣とベルトを付ける、今の服装は黒のワンピースの腰にベルトと剣……変では無いよな?
「そいつは助かる。誰かが守らなきゃ町が危ないのは分かってるが、俺はもう年で戦えん……だが出来れば若い連中に死んで欲しくはねぇ」
「どこまで強くなれるかは奴ら次第だな」
そう言い残して武器屋を出た。
宿への道の途中魔道具や錬金薬の店も見かける、魔法武具や魔道具は今も高価だがロドロフとミシャの技術によって安価な物も以前より良い物になった。
錬金薬と魔法学校による魔法の普及は様々な場面で有効に使われている。
そしてそれらの技術は生活を豊かにし、今も増え続ける魔物に対抗する力にもなっている、きっとこれからも進歩を続けるだろう。
そして魔物も進化するだろうな、眠りにつく前と比べても種類も数も全く違うからな。
「どちらかが滅ぶような事にはなって欲しくないが」
魔物も進化を続ければ意思の疎通が出来る者が生まれるかもしれないからな。
やがて宿に着き、食事をし翌朝まで静かに自らを高めるのだった。
「これから皆を鍛えるクレリア・アーティアだ、好きなように呼んでくれ」
自警団の訓練場に団員が集まり私が紹介された、十人か、命を懸ける事を考えると多い方かもしれないな。
事前に私の事は話してあるようでそこまでざわつくことは無いまま挨拶は終わった。
「まずそれぞれがどれだけ動けるかを確かめる」
「こんなガキみたいな女使えるのかよ……」
……ふむ、まずはお前からだな。
「そう言う事は心で思うか聞こえないように言え」
そう言うと言った男が皆から見られる、男は怒ったように言う。
「こんな奴に頼って恥ずかしくないのか!俺達だけでやれるだろう!?」
「私はソニアに頼まれて此処に居る。文句があるのならソニアに言え」
顔を赤くする男、私はさらに続ける。
「私は訓練を受けたい者に訓練をする。受けたくないのならさっさと帰れ」
そのまま戦っても早いうちに死にそうだからな。
「……このガキがあぁっ!」
男は突然私に向かって突っ込んでくる。
「私は成人している」
突っ込んできた男を軽くいなして気絶させる。
「よし。一人ずつ模擬戦用の武器でかかってこい、どの程度か確認する」
そう言いながら気絶した男を脇に放り模擬戦用の剣を取ると団員の一人が聞いてくる。
「あ、あの……アーティアさん。彼は……」
さっき気絶させた男の事か?
「放っておけ、そのうち目が覚める」
「は、はい」
男は顔を引きつらせながら返事をした、別に殺していないぞ?手加減も上手くなったからな。
「よし、適当に順番を決めて始めるぞ」
それから暫く経った訓練場には全ての団員が死んだように転がっていた……持久力が無さすぎる。
気絶させた男が起きる前に終わってしまった。仕方ない……今日は彼らの現状を確かめるだけだったしな。
「クレリアさんこれはいったい……」
ソニアを呼びに行き、訓練場を見た彼女の第一声がそれだった。
「現状を知りたくてな。全員と模擬戦をした」
「すぐに治療しなくては」
そう言って回復魔法をかけ始める。
「魔法を使えるのか」
「はい、ティリア魔法技術学校に三年在籍していたので」
ケインの学校の生徒か、初めて生徒に会ったな。
「頼りになるな」
「基礎的な物だけですけどね」
照れくさそうなソニア、魔法は使えるだけでかなり役に立つぞ。
「あら?彼は……?」
放っておいた男に気が付いたようだ。
「奴は私に鍛えられるのが嫌なようでな。向かって来たので気絶させた」
「そうですか」
奴がどうするかは知らんが真面目に訓練するなら鍛えよう。
「今日はもう終わりだ、また明日同じ時間に行う」
「分かりました」
予定を伝えると彼女は了承し治療に戻る、そうだ伝えておかないと。
「その男にどうするかは勝手だが邪魔をするなと伝えておいてくれ」
大人しくするなら良し、余計な事をするなら残念だが出来ないようになってもらおう。
「……はい」
ソニアは目を瞑りながら返事をした、その答えを聞いた私は訓練場を後にした。
私の部屋に戻り食事も風呂も終え後は朝を待つだけとなった夜、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「ソニアか」
鍵を外し扉を開けるとソニアが立って居た。
「入っても良いでしょうか?」
「いいぞ」
ソニアを招き入れ、果実水を用意する。
「ごめんなさいクレリアさん」
「ん?なにがだ?」
突然謝るソニア、意味が解らず問い返す。
「訓練場で団員の一人が貴女に……」
「ああ、その事か」
彼女は責任を感じて詫びに来たのだろう、気分を損ねて話を無かった事にされるとでも思ったのかな。
「特に気にしていない、初めて会う者に姿で侮られるのはいつもの事だ」
「事前に話はしておいたのです……その時は特にそのような事は無かったのですが」
実際に見て想像以上に私が幼く見えたからかもしれないが。
「私は訓練を止める気は無い。奴も次から真剣に訓練を受けるのならそれで良いし、諦めても構わない」
「ありがとうございます……」
ほっとした顔をするソニア、そこまで心配だったのか。
「クレリアさんはどうしてこのお話を受けて下さったのです?」
そんなことを考えながら果実水を飲んでいるとソニアが聞いてきた、理由か……そうだな。
「最初は人を育てるのが楽しそうだったからだな」
「最初は?」
不思議そうな顔をするソニアを見ながら言葉を続ける。
「もう一つ増えた理由はソニアがティリア魔法技術学校の生徒だった事だな」
「学校……ですか」
不思議そうな顔は変わらず声を漏らすソニア。
「あの学校には少し思い入れがあってな、生徒だった者に少し手助けしたくなっただけだ」
初めて出会った生徒だ、多少手を貸すのも良いだろう。
「なるほど……」
返事はするもののやはり不思議そうな顔のソニア、まあ気にするな。
そして翌日、ソニアにも来てもらい待っていると団員達はソニアの治療のおかげか多少疲れが残って見えるが全員揃った……そう、全員揃った。
「良し、今日から暫く体力を上げる訓練をする、何をするにもまずは体力をつけなければ話にならない」
そう告げると訓練場を走るように指示をすると全員走り始めた、昨日の男も。
「あの男訓練を受ける気になったのだな」
「ええ、貴女が訓練場を後にしてすぐに目を覚ましまして。あの惨状を見て驚く彼に貴女がやったと説明したんです」
ふむ、私の力を認めたのかな?
「元々彼も命の保証はない自警団に志願した一人です……町を、仲間を思う気持ちは確かなんです……意地を張っても仕方ないと納得したのだと思います」
このままだと勢力増し続ける魔物に町が飲み込まれるかもしれないからな。やれる事はやっておいた方が良い。
こうして時間をかけて団員の体力を上げる訓練が始まった。
「教官!準備が出来ました!」
団員の訓練を開始してから半月皆体力も付き人員も増えた、魔物が町を襲う事もそれなりにあったが、私が付いて行きそれすらも訓練の一部とした。
そんな事をしていたら団員から教官と呼ばれ態度が変わってしまった、最初はもう少し、こう……違ったはずなのだが。
「分かったすぐ行く、お前達は装備を整え待機して居ろ」
「はっ!」
背筋を伸ばし気を付けをして返事をする団員……違ったはずなんだよな……。
訓練場に移動した私は武器を取る、模擬戦用の刃を落とした鉄の剣だ。
「全員!気を付け!」
並んでいる団員の一人が声を上げると皆、気を付けをして私の言葉を待つ。
「今日は月に一度の私との模擬戦だ。訓練の成果を全てぶつけてかかって来い」
「はい!」
団員の良い返事が重なる、以前ソニアに自警団というより軍隊に見えると言われた、その通りだな。
私が中央で武器を持ち立つ、相手の男がやって来る、彼らの武器は刃を落としていない実戦用だ。
そう思っていると団員が突然こちらに駆け寄り、中々良い剣筋で切り付けてくる。
私はそれをはじき返し、言う。
「戦闘に開始の合図など無い……良いぞ」
更に打ち込んでくる彼、それを受けいなし躱す私。
「それでは隙が出来るぞ」
「ぐっ!?」
振り抜いた攻撃の隙を縫って踏み込み柄で彼の鳩尾を打つ、それでも攻撃をしようとするがうずくまってしまった。
「中々悪くなかった、次は相手に躱された後の事を考えて見ろ」
「あり、がとう、ございました……」
つっかえつっかえに返す彼は一礼し、よろめきながら戻って行った。
「良し、次!」
こうして訓練は実を結んでいった。
更に三年が過ぎた、町の守りとしては今の所十分な練度と数がそろった。
「それぞれ相手との模擬戦を行うように」
「了解しました、教官」
私は軍隊のような状態を改善するために以前皆に話をした、私に対する態度は好きにしていいが団員同士はいつも通りで構わないと説明した、その結果以前より気軽な感じになった、私以外には。
もう私が模擬戦をする事は少なくなった、人数が増え難しくなったのだ。
すぐに倒しては訓練にならず、時間をかければ時間が足りない。
だから初期からいるメンバーを代理として団員内で訓練をするようにした、今では何かない限りは私が戦う事は少なくなった。
ソニアも少数ながら魔法を教えるようになり、魔法を扱える者も増えてきた。初歩であってもやはり魔法は便利なのだ。
そんな日々を過ごす中私が長く世話になっている宿の部屋に居ると、誰かが訪ねてきた。
「開いているぞ」
「し、失礼します」
入ってきたのは若い、恐らく十三歳前後の男の子だった。
「誰だ?」
見覚えは無い、知り合いでは無いだろう。
「ぼ、俺はルランド・カリスと言います!」
「クレリア・アーティアだ」
名乗られたので名乗り返す、はて何の用なのか。
「お話を聞いて欲しくて来ました!」
今までに何度か覚えのある状況だが。
「聞くだけなら聞いてやる」
彼の話の内容は、自分の町の様に魔物に脅かされている町や村を回って救いたいという物だった、それを行う為に自分を徹底的に鍛えて欲しいと。
「駄目だな」
俯き拳を握り締める少年、意味も無く言っているわけではない。
「まずお前はいくつだ?若すぎる。徹底的には鍛えられない……そしてお前、両親にこの事を話しているか?」
「それならそれまでに少しずつでも鍛えて下さい」
顔を上げて言ってくる少年、真剣だな。
「ふむ、それなら構わないが……両親の事に答えていないぞ」
再び顔を俯かせる少年、この感じは……。
「両親は居ません……俺がもっと小さい頃魔物に襲われて死んだと聞きました」
現在彼は十三才らしい。
「そうか」
それでこんな事を頼みに来たんだな。
「お祖母ちゃんは好きにしなさいと言ってくれました」
その言葉を言った祖母は悲しそうな顔をしていなかったか、とは聞かない事にした。
「本気なんだな?」
「はい」
両親を殺した魔物を殺して回るか、私が気にしても仕方ない事だな。
「明日の朝また来い詳しい話をしてやる」
「っ!じゃあ!」
顔を上げて聞いてくる。
「鍛えてやる、覚悟はしておけ」
「分かりました!」
動きやすい服装で来る様に言い帰宅させる、少年が帰った後ソニアにこれからの事を相談し許可をもらった、これで少年の訓練に集中できる。
「来たな」
「よろしくお願いします、先生」
翌朝、私の部屋に来た少年を連れ自警団の訓練場の一角を借りる。
「まずは訓練を開始する前に守る事を教える」
「はい」
「動きやすい服装で必ず来ること、どんなに食欲が無くても食事は食べる事、焦って自分で訓練をせず夜はしっかりと眠る事」
「これだけですか?」
気の抜けた顔で言うルランド、団員が言うには意外と大変らしいぞ、特に食事が。
「そうだ。分かったら早速始めるぞ」
「はい、先生」
こうして訓練を開始した。
少年を鍛え始めて二年、体もでき始めきつい訓練に耐えられるようになってきた。
「ふっ!」
訓練場に金属音が連続で鳴り続ける。
「良いぞ、その調子だ」
基礎訓練を終えた後は私との模擬戦だ……実戦に勝る訓練は無いと言うしな、ひたすらに様々なスタイルの私と戦い続ける。
「そこまで!」
「っは!!……はっ、はっ、はっ!!」
その場に倒れるルランド、倒れている場合では無いぞ。
「訓練後の柔軟をしろルランド」
「は、はい……先生」
立ち上がり体をほぐす彼、最初は途中で投げ出す事も考えていたのだが、弱音は今まで吐いていない。
「育て甲斐のある教え子だ」
自然と薄く笑みを浮かべながらルランドを見ていた。
「次は魔法だぞ」
私は彼に魔法も教え始めた、私が魔法を使える事に団員もソニアも驚いたようだが、その後ソニアがなぜか納得したような顔をしていた。
更に三年後、十八才になったルランドも卒業間近だ、団員も彼の強さを認めており仲がよい。
「ルランド」
いつものように基礎訓練を終え、私との模擬戦に臨もうとする彼を呼び止めた。
「はい、先生」
「お前はもうすぐ卒業だ。それからは好きにすると良い」
「え……でも先生。私は一度も貴女に勝てた事がありません」
私に勝つなど一万年早い。
「強くなった気がしないのか?」
「正直な所……はい……」
そうか……。
「今日の模擬戦は中止だ、ついてこい」
こうして私は彼を連れ町の外に出た。
彼を連れて森へ入り目的の魔物を見つける、触手がたくさん生えた大きなネズミのような魔物だ。
「あれと戦って見ろ」
「あれは……昔俺が挑まされて死にかけた相手じゃないですか……」
顔をしかめるルランド、いい思い出では無いだろうな。
「良いから行ってこい、油断はするなよ」
「勿論です」
私に行けと言われれば彼は断れない、戦士の顔になり向かっていくルランド。
戦闘はあっという間に終わった、彼は触手を躱し続け相手の噛みつきを流れるように受け流し首を落とした、それはまるで私のような動きだった。
「あれ……?」
かつて殺されかけた相手にあまりにも簡単に勝ってしまった彼は間抜けな声を上げた。
「ルランド、勝ったからと言って気を抜くな!」
全くこいつは、今のお前の実力なら当然だ、ずっと私を相手にしていたんだぞ。
「すいません!先生!」
我に返った彼が答える、そんな彼に声をかける。
「これが今のお前の実力だ」
「どうして急に……?」
急に強くなる訳ないだろう……。
「急にでは無い……今までの成果が形になっただけだ。お前は私と模擬戦ばかりしていたが強くなるにはこれが一番だった。私と戦い続けているうちにこいつをとっくに超えていた訳だ」
「そうか、俺は……」
そう言って武器を持つ手を見る彼。誇れ、お前は強くなった。
こうして今日は終了とし、私はいつものように食事と入浴を済ませて部屋で寛いでいた、その時扉がノックされる。
「ルランドかどうした」
「もうすぐ卒業らしいから話をしておきたくて」
「まあ入れ」
彼を部屋に入れ果実水を出す。
「それで話とはなんだ?」
私を見て黙っていルランド、しばらく沈黙が続き私が再び促そうとした時、ルランドが言った。
「先生。俺は貴女を愛しています、俺と一緒に街を巡ってください」
私を見つめて言うルランド。
は?いや待て。
こいつ私に恋をしていたのか?何故よりにもよって私に……その想いは報われないぞ。
「無理だな」
「……なぜです」
苦しそうな顔の彼、新しい恋を見つけて欲しいが。
「お前の気持ちは嬉しいが私は人を恋愛対象として見ていない……そもそもそんな物が無いからな」
苦しそうな顔から困惑した顔になる彼……これは話しておくか。
「信じられるかは分からんが聞いて欲しい」
そしていつもの様に私の事を話した、過去の事、私が人では無い事、ここに至る迄の事を。
話し終わった後、静寂が訪れた彼は俯き拳を握り締めている。
「それでも、俺は先生の事が……」
幼い少年に戻ってしまったような声で言う彼。
「お前の気持ちは嬉しく思う。恋愛感情は分からないが……私もお前の事は大切な教え子だと思っている」
子供の様に涙を流す彼の頭を撫でる。私はお前の想いに答えられない……新しい恋を見つけ幸せになってくれ。
暫くの間泣き続ける彼を撫で続けていた。
その後、彼はすっきりとした顔になりいつもの様に戻った。そして数日で準備を整え目的のために旅立っていった、いつか魔物から全ての町を救い私に妻を紹介すると言って。
私が人間に求愛されるとはな。
今までそんな事が無かったからそれなりに驚いたぞ、そう言えば私は美人だったな、強くて美人でいつまでも若く見える……そんなにいい事なんだろうか?
そして私は彼の出発を機に街を離れた、今までまったく気にしていなかったが町の名前はシルチと言うらしかった。
これでルランドとも会う事は無いだろうと思っていたのだが。
ルランドの旅立ちを見届けてから十年後、街道を歩いている私に念話が来た。
『先生、聞こえてるか?……これでいいんだよな?先生?』
これはルランドか?向こうから念話が来るのはもしかして初めてじゃないか?あいつらは全く連絡をよこさんからな……まあ私も用が無ければしないが。
『先生?駄目なのかな。どうすっか……』
おっと不味い。
『聞こえているぞ』
『うおっ!?良かった駄目かと思ったぜ、先生』
『お前から連絡が来るとは思わなかったぞ』
『どういう意味だよそれ?』
随分感じが変わったな。悪くなってはいない、何というかフレンドリーになったような感じか?
『お前も大人になったか?』
今いくつになったんだルランド。
『何年経ったと思ってるんだよ先生……十年だぞ、俺も二十八だ』
『ん?まだそんなものか、意外と経っていないな』
『……そんなんだから一万年をサラッと過ごしちまうんだよ』
言われてしまったが、寝てたようなものだぞ。
人間は僅かな時間で色々変わるものだな。
『で……何の用だ?』
『先生の知恵を借りたい……俺のいる町に来てくれないか?』
何かあったのか、私を頼るような。
『構わんぞ、可愛い教え子の頼みだからな』
『ありがとよ先生……町の名前はレクシドだ分かるか?』
アルベリク商会のある町じゃないか、久しぶりに見に行くか?でもまずはルランドの事だな。
『分かったすぐ行く』
『どれぐらいかかる?』
私は開発していた転移魔法でレクシドのそばに飛んでいた
『もう着いた』
『……はあっ!?』
レクシドに着いた私は混乱するルランドに場所を聞き移動した。
大きな趣味の良い屋敷がある。どうやらこの十年で辺境の英雄などと呼ばれて部下も各地に出来て、ギルドと言う戦闘集団を作って各地の魔物と戦っているらしい。
「此処か」
扉に近づき門番に近づくと声をかけてくる。
「お嬢さん何か用かい?」
感じは悪くない、中々良い仲間に出会えたようだな。
「ルランド・カリスに会いに来た、クレリア・アーティアが来たと伝えてもらえないか?」
「……分かった、ここを頼む」
彼は僅かに訝しんだが、別の門番に声をかけると屋敷に入って行った、そしてしばらく待つと急いで戻ってきた。
「ルランドがお会いになります、どうぞこちらへ」
態度が変わっている、奴に何か言われたかな。
屋敷の応接間に案内され、飲み物を飲んでいるとドアが開き歴戦と言った風体の男が入ってきた、この男……。
「十年ぶりだな先生!」
「元気そうで何よりだ」
やはりルランドか、昔よりもずっと腕を上げているようだな。
「積もる話もあるだろうが今は用件を聞きたい」
そう切り出すと彼は語り始めた。魔物の増加に伴って魔物の素材が多く取れるようになった事、需要はあるが各地で異常に高かったり安く買い叩かれたりと差が激しすぎる事。
そこで彼は考えた。自分達ギルドが魔物を狩り各地の商会と連携して、買取価格の安定と需要と供給のバランスを取れないかと言う話だった。
ただ具体的にどういう仕組みにすればいいかわからず悩みに悩んで私に頼る事にしたらしい。
「一つ良いか」
気になる事がある。
「なんだい先生」
「この案お前が考えた訳では無いな?」
彼はバレたかと言った顔になる。
「正解。知り合いの商会の案だよ」
なるほどな、なら恐らく……。
「その案を出した者に聞いてみろ、誰かは知らないが恐らく何か考えていると思うぞ」
モニカだったら食いついて来そうな話だな。
後日ルランドが発案者に訪ねてみた所、すでに考えてあると答えが返ってきたらしい。私は何のためにここに来たんだ。
その後彼の家に泊まる事になった私は、談話室でルランドと話しをしていた、色々な話をしてそこそこの時間が経った後私は聞いてみた。
「ルランド、お前は結婚はしないのか?」
「……先生がそれを言うのか」
彼は苦笑いしながら答える……彼の初恋は私だったな。
しばらく黙っていたがポツリと彼が言う。
「気になってる相手は居るんだ」
良かった、私にこだわっても良い事は無いからな。
「誰だそれは」
「俺にあの案を話した商会の娘だよ」
商売だけでなく、人生も一緒にか。
「名前は何というんだ?」
「マリア・アルベリク」
……アルベリク?私が離れた時は男だけだった気がするがまた生まれたのか?
「どうした先生?」
おっと考え込んでしまった。
「上手く行くと良いな」
「ありがとよ」
それから頻繁にルランドとアルベリク商会の話し合いが行われ色々と話が形になってきている、その間わざわざ来てくれたのだからと、私はルランドの屋敷に世話になっている。
そんなある日、私は町に出て店を見て回っていた、アルベリク商会の本拠があるだけに規模も数も他の町とは一味違う。
「失礼そこの方?」
声が聞こえるが私は商品を見ている、そうしてしばらくすると。
「あの、すいません」
真後ろで声がした、私は振り返り声を上げた人物を見た。
「申し訳ありません、間違っていたら申し訳ありませんが……ルランドさんの屋敷に滞在している方でしょうか?」
赤い髪の大人しそうな少女だ、誰だこいつは。
「ああ、確かに滞在しているがそれがどうかしたのか」
「あの、こちらへ来ていただけないでしょうか?」
私を人気のない方へ誘う女、何かするようには見えないしまあ良いだろう。
人気の無い所へ来た私に女が質問してきた。
「ルランドさんと貴女はどんな関係なのですか?」
……ん?どういうことだ?
「その前に聞きたいのだが、お前は誰だ?」
ハッとする少女、彼女は姿勢を正し答える。
「申し訳ありませんでした。私はアルベリク家長女、マリア・アルベリクと申します」
ほう、こいつが例の娘か、私とルランドの関係を聞いてきたと言う事は、案外この二人上手く行きそうだな。
「なるほど、それで私と奴の関係か」
「はい」
彼女は私が名乗り返していない事など気にならないのか答えをせかす。
「先生と教え子、だな」
「ルランドさんに教えを受けていたのですか?」
逆だが細かく説明も出来ないし、する気もない。
「通りかかったから少し模擬戦をしていた」
「その……男女の関係などでは……」
顔を赤くして聞いてくるマリア、なるほどな私と恋仲なのではと心配になったわけだ。
「誓っても良いがそんな関係ではない」
昔、告白はされたがな。
「そうですか……」
ほっとした顔の彼女、良かったな、両思いだぞ。
「もういいか?」
「あっ、はい……ありがとうございました……あの、お名前を」
「クレリア・アーティアだ」
そう言ってその場を後にした。
「困った」
私の部屋を訪ねたとたんに言うルランド。
「今度はなんだ」
また何かあったのか。
「新しいギルドと商会の仕組みにギルドカードってシステムを組み込もうとしてるんだよ」
ギルドカードね、身分証明のようなものかな。
「それで?」
話を促す。
「魔力パターンを利用した物を基礎にしようと思っていたらしいんだが、開発者が許可してくれないんだ」
昔ロドロフとミシャと一緒に開発した物か、しかしなんで許可しないんだ?
「何故断っているんだ?」
「それが自分達以外にもう一人開発者が居て元はと言えばそいつの為に作った物らしくてな」
何故念話で聞いてこないんだ?
「少し待ってくれ」
「お?おう」
ルランドに断りを入れて念話をつなぐ。
『ロドロフ、ミシャ聞こえるか』
『うお!?つながった?』
『私も聞こえたよ』
二人の声が聞こえる。
『二人とも魔力パターン技術を使うのを断っているようだな』
『ああ、お嬢の為でもあるし俺達だけで決める訳にもな』
『なぜ念話で聞かなかった?』
『それが、聞こうと思ったんだけど繋がらなかったんだ』
ミシャが答える、繋がらなかった?
『どういうことだ?』
『俺にも分からねえ……ずっと使わなかったからいつから駄目になったのかも分からないんだ』
どうなっている?
『今はその事は良い、後で調べてみる』
『分かった』
ひとまず用件を終わらせよう。
『魔力パターン技術使わせても良いぞ』
『いいのかい?』
『ああもちろんふたりも良いと思うならだが』
ミシャの確認に返す私。
『お嬢が良いなら俺達は構わないけどよ』
『そうだね』
二人とも構わないようだ。
『では頼んだ、念話については何か分かったらこちらから連絡する』
会話を終えてルランドに話しかける。
「魔力パターン技術使って構わんぞ」
「え?なんで先生が……嘘だろ!?」
困惑した後、驚くルランド。
「良いから開発者に連絡を取ってみろ、今度は許可を貰える」
「ありがとよ先生……」
そう言って部屋を出て行った。
一年後、無事に許可を得たルランド達ギルドとアルベリク商会を始めとした各商会は魔力パターン認証技術としてギルドカードを作製し、徐々に世界へと広がっていく。
その途中ルランドはギルド総括長として各地のギルドを統率する立場になった。
更に五年後、魔物の買取が安定した結果、ギルドメンバーの中に魔物を狩りより価値のある珍しい魔物を求めて未開の地にもおもむく者が現れ始め、やがて彼らギルド所属者は冒険者と呼ばれるようになり数を増やし、一種の何でも屋の様な立場になってゆく。
その間に念話の問題も判明した、本人の魔力と大気中の魔力濃度が念話に影響していることが分かった、私の様に大きな魔力があれば問題ないが、少なくなってくると距離や先程の大気中の魔力が影響して繋がったり繋がらなかったりする様だ。
そして私はそれを見届けた後、町を離れ旅を再開した。
最後は細かく書くのが大変そうだったので、説明でお終いです。
念話は、本当は教え子から念話が来て……と言う話を書くつもりだったのですが、気が付けば誰も連絡して来ないままになってしまったので、こういった設定を無理やり付けました。