少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 私達の予想通り、人類の陸路と海路の交通手段と生命線である食料、医療施設が稼働を止めた。

 

 「本格的に人類の危機だな」

 

 「……そうね」

 

 人類の現状をヒトハから聞いた後、私達は人類について話をしている。

 

 カミラはヒトハから報告を受け始めた時点では各国の対応が遅すぎる事に大分不満を漏らしていたのだが、現在はいつもの様子に戻っている。

 

 人類内でも早々に魔力の使用制限をかけようという話は出ていたようだ。

 

 しかし各国は長年揉め続け、決定が伸びていたらしい。

 

 最終的には交通手段と各施設が停止した事でようやく危機感を持った者達が、各国の邪魔な者達をやや強引にその地位から引きずり降ろして行動を開始したようだ。

 

 その話を聞いたカミラは何も言わなくなった。

 

 「カミラ、思う所はあるだろうが人類には様々な者が居るし色々な事がある、一部の者の行動が世界を滅ぼす一因になる事もあるだろう」

 

 私としては、事が起きてしまってからでは間に合わないのではないかと考えている。

 

 「ヒトハのあの話を聞いて心底呆れてしまったわ、私もお母様と同じで滅んでも生き残ってもどちらでも良くなったわね」

 

 状況が悪化しているのが分かっているにもかかわらず、長い間そんな事をしていたらカミラだけでは無く大抵の者は呆れてどうでもよくなるかも知れない。

 

 「ヒトハ、人類は全員が現状を知っているのか?」

 

 私はヒトハに尋ねる。

 

 『各国では現在も状況は公開されていません。実際に停止した施設などに関わっていた者やその周囲の者達から情報が広がっていますが、そういった施設から離れている町や村では情報が遅れていると思われます』

 

 「そうか、ありがとう」

 

 放送を見てみようか。

 

 「カミラ、放送を……」

 

 そう言いながらカミラへ振り向くと、既にカミラが受信魔動機を操作していた。

 

 「お母様、もう放送はされていないみたい」

 

 これは人類にとってはかなりの痛手だな、恐らく様々な連絡手段も使えなくなるだろう。

 

 様々な設備や交通機能の停止、その上連絡手段も無くなるか。

 

 「早く魔力の使用を制限していれば、考える余裕くらいはあったかも知れないのにね……」

 

 放送を映さなくなった受信魔動機を見つめながらカミラが呟いた。

 

 

 

 

 

 

 それからの人類の状況は悪くなる一方だった。

 

 食料、医療、交通の施設が停止し、魔力によって支えられていた人類は混乱し始めた。

 

 各国もようやく魔力の使用制限などの対策を広めようとしたのだが、その時には既に遠距離の通信は不能になっていて各地に連絡をする事が出来なかった。

 

 その後完全に通信が不能になった事で、各地は分断された。

 

 それぞれの国は魔力の回復の研究と魔力に代わる新しい技術の開発も始めていた様だが、間に合うのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 ……俺達はこのまま死ぬのか……?

 

 食料は減り、錬金薬も新しく作った物はまともな効果が無くなっている。

 

 何処にも連絡は繋がらず、魔放送も見る事が出来ないため何が起きているかも分からない……。

 

 どこかに移動し助けを求めようにも移動用の魔動機が動かない。

 

 徒歩で長距離を移動など出来る訳がない……。

 

 ひょっとしたらどこも同じ状況で助けなど無いかも知れない。

 

 俺はどうすればいい……?

 

 

 

 

 

 

 私は拳を握り締め自らのふがいなさに歯を食いしばるしかなかった。

 

 魔力の消費を減らさなければいつかこうなると感じていたのに、こんなにも長く時間を費やしてしまった!

 

 私も……危機感を感じながらも、どこかでどうにかなると考えていたのでしょうね。

 

 もっと早くあいつらを黙らせておけば……。

 

 この時間は間違いなく命取りになる、きっと私達はお終いだわ。

 

 ここまで機能不全を起こしてしまったら、近い内にこの国は無くなる……。

 

 恐らく至る所で物資の奪い合いが起こると思う。

 

 軍が出てくれば一時的には治まるでしょう。

 

 だけど……追いつめられた国民は間違いなく国にも牙を向けるわ。

 

 

 

 

 

 

 俺は家族と実家へと戻る、自給自足出来なければきっと全滅してしまうと感じたんだ。

 

 「あなた……」

 

 「大丈夫だ、俺の実家は食料を生産してる。そこで自給自足出来るようにするんだ」

 

 「でも食料生産の設備も止まってるって……」

 

 「魔力に頼らずに作るしかない。かなり昔はそうやっていたらしいし、出来ない事は無いよ」

 

 俺は不安を感じさせない様に妻に明るく言うが、内心では不安で一杯だ……。

 

 魔力を使わず、一から食べ物を作る方法なんてろくに知らない。

 

 ……それでもやらなければ。娘を、家族を死なせてたまるか!

 

 

 

 

 

 

 「映らないなぁ……」

 

 魔放送が映らなくなってからそれなりに時間が経ってる。

 

 どうしたんだろう?最近はあまりいい事が無い。

 

 食材も大分遅れてる、連絡も通じないし……何か事故でもあったかな?

 

 困ったな……ここは首都からかなり離れてるし、買い替えるにしても結構時間が掛かるんだよね。

 

 はぁ……どうしようかなぁ……。

 

 僕は受信魔動機を見て溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 「食料や生活に必要な物を買い集めろ、いくら使っても良い」

 

 「かしこまりました」

 

 執事に指示を出し、私はソファへと座る。

 

 まさかこんな事になるとは……幸い私の家は金がある。

 

 そこら中から必要な物を買い集めればそれなりに持つだろう。

 

 ……正しかったんだな。

 

 魔力の消費を減らさなければ大変な事になると、国が主導して制限をかけるべきだという話は何度もあった。

 

 だが私達は……いや、正確には一部の利益を求める者達だが……彼らはそれを認めなかった。

 

 私が手を貸していれば彼らを押さえる事が可能だったかもしれない。

 

 そう……可能だったかもしれないんだ……。

 

 私は酒を取り出してグラスへと注ぐ。

 

 「彼らに流されて何もしなかった私が何をいまさら……だな」

 

 私はそう呟いて酒を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 魔力に代わる新しい何か……。

 

 すでに引退した私に何を言うかと思えば……やれと言うのならやりますけどね。

 

 ……私だって死にたくありませんから。

 

 でも、その何かが見つかるまで……我々は持ちこたえる事が出来るのでしょうか?

 

 

 


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