少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 カミラ視点が多いです。





058-02

 

 お母様に挨拶をした私は、イシリスの上空へと転移した。

 

 ……海へ向かう前に少し町の様子でも見てみようかしら?

 

 ここからだと……獣王国カルガの元首都が近いかしらね。

 

 私はカルガの元首都へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 誰も居ないわね……。

 

 かつての首都は誰も居なかった、食料品店をのぞいてみても中には何もない。

 

 首都に暴徒が押し寄せたのよね。

 

 私は大通りを歩く……多少荒れているのはそのせいかしらね。

 

 石で出来た家などは荒れているけど、金属で出来た物は殆ど傷ついていないわね。

 

 人類が金属に傷をつける事が出来るだけの力を無くしているからかしら?

 

 魔動機は放置されたままね。

 

 動かなくなったら役には立たないし、加工も出来ないものね。

 

 高い建物が森の樹のように立ち並ぶ街を歩いていく、すると一つの大きな建物から声がした。

 

 ここはかつて来た事がある。劇場だ、この場所に住んでいる者が居るみたい。

 

 声に誘われて向かうと劇場前に複数の男がいた、私が更に劇場に近づくとその男達が私に気付く。

 

 「おい……」

 

 「スゲェいい女だな」

 

 「逃がすなよ、後ろへ回っとけ」

 

 小さい声だが聞こえている、彼らは野盗なのかしら?

 

 「あなた達、ここに住んでいる野盗なの?」

 

 私がそう言うと男達がニヤニヤしながら答える。

 

 「ねーちゃん俺達の所に来いよ、いい思いさせてやるぜ?」

 

 「やめておくわ、ただ何となく見に来ただけだから」

 

 「残念だけどな……女、逃げられると思ってるなら大間違いだ」

 

 私が断ると目をぎらつかせて立ち上がる、背後にも男達がおり私は囲まれる形になった。

 

 「素直になれば痛い思いをせずに気持ちよくなれるぞ?」

 

 「大人しく引き下がるなら死ななくて済むわよ?」

 

 男の言葉に私がそう返すと、彼らの表情が怒りに染まる。

 

 「痛めつけてからやってやる!大人しくさせろ!」

 

 一人が叫ぶと周囲の男達が襲い掛かってくる。

 

 ……遅すぎる。

 

 「私はお母様のように優しくは無いわよ?」

 

 私は襲い掛かって来た男の腕を無造作に斬り飛ばす。

 

 「へ……ぎゃあぁぁぁああっ!?腕がっ!?俺の腕ぇ!?」

 

 男の肘から先が私の爪によって分割され、バラバラに散らばる。

 

 腕が無くなった事に気が付いた男はうずくまって腕を押さえる事に必死みたい。

 

 「しばらく苦しんでいなさい」

 

 私はうずくまっている男に声をかけた後、他の男達の片腕を次々に解体していく。

 

 あっという間に周囲は血と腕であった肉片、うずくまる男達でいっぱいになった。

 

 「……何というか芸が無かったわね。腕を解体するだけじゃなくて、もっと工夫をした方がいいかしら?」

 

 「何だこいつ!?」 

 

 一人が顔を歪めながら走り出す、逃げちゃ駄目よ?

 

 「ぁがあぁぁぁああ!?」

 

 魔法で足を切り飛ばすと転んでのたうち回る、それを見ると私は自然と笑みを浮かべてしまう。

 

 お母様には幼い頃に戦っている姿を見られているからバレているけれど……ヒトハはまだ私のこういった所は知らないかもしれないわね。

 

 「貴方はもういいわ、さようなら」

 

 優しくそう言ってのたうち回っていた男を爆散させる。

 

 くぐもった爆発音の後、水っぽい音をさせながら男だった物が降り注ぐ。

 

 体に血と肉片を浴びる……気分が良いわ。

 

 私は頬に付着した血を指ですくい、一舐めしてみた。

 

 う……これは駄目ね、不味いわ。

 

 「な……何だこりゃ!?」

 

 その声に振り向くと劇場から大勢の男女が出て来ていた、これだけ彼らが叫んでいたら当然かしら。

 

 「気にしないで?襲い掛かって来た彼らを返り討ちにしただけよ」

 

 私が話しかけると彼らは私に目を移す。

 

 すると全員怯えたような表情をして後ずさった、それだけ数がいるのになんて臆病なのかしら……。

 

 「もうここに用は無いし行くわ、お邪魔したわね」 

 

 そう告げて空へ上昇しようとした所で、周囲のうめき声に気が付いた。

 

 「あなた達も、もういいわ……お疲れ様」

 

 私はうずまって呻くだけの男達を全員同じように爆発させて空へと舞い上がる。

 

 取り敢えずお風呂に入りましょうか。

 

 私は一度月へと帰る事にした。

 

 

 

 

 

 

 カミラの気配だ、もう帰って来たのか?

 

 ソファに座っていた私がそう思っていると血と肉で汚れたカミラが入って来た。

 

 「随分汚れているな、何をしていたんだ?」

 

 彼女に問題が無いのは分かるので心配はしていないが、その汚れようはどうした?

 

 「海を調べる前に人類の様子を見ようと思って見に行ったんだけど……盗賊だったみたいで絡まれちゃって」

 

 「そうか。取り敢えず風呂に入れ、床が汚れる」

 

 大体の流れを察した私はカミラに風呂に向かうように促す。

 

 「うん、そうする……行ってくるわねお母様」

 

 そう答えてカミラは消えた。床を汚さないように風呂場まで転移したか。

 

 恐らく絡まれたから殺したんだろう、あの子の事だから楽しんでいただろうな。 

 

 しばらくするとカミラがさっぱりした様子で戻って来た。

 

 「ふぅ……さっぱりしたわ」

 

 「久しぶりに人の血を飲んで来たのか?」

 

 私がそう聞くと彼女は顔を横に振る。

 

 「一応少し口にしたのだけれど……。不味くて無理だったわ、家で飲む血液が一番ね」

 

 「そうか、ここの家畜達の血液の方が美味いのか」

 

 「多分だけれど、彼らの血が不味いのではなくてここの家畜の血が美味しいのだと思うわ」

 

 「育ちが良いからか?美味い理由が分からないな」

 

 「間違いなく野盗よりもここの家畜達の方がいい暮らしをしているとは思うわよ?」

 

 そうかも知れない。

 

 「カミラ、海の調査はどうするんだ?」

 

 「今日はもうやめておくわ、一眠りしてから改めて行くつもりよ」

 

 「そうか」

 

 カミラが隣に座り私の太ももに頭を乗せる。私はそれを受け入れ、本を読みながら彼女の頭を撫でた。

 

 結局カミラは明け方までそのまま眠った。

 

 彼女は目を覚ました後に私と多少早い朝食を取り、再びイシリスの海を調べるために出かけて行った。

 

 

 

 

 

 

 人類は資源を奪おうとする者とそれを防ごうとする者の争いを頻繁に起こし、以前では何の問題も無かった怪我や病気で死ぬ者が激増した。

 

 まだそれなりに数がいた人類は増える事無く時の流れと共に減り続け、やがて世界には小さな村や町が僅かに点在するのみとなった。

 

 

 


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