少女(仮)の生活   作:YUKIもと

118 / 260
60-02

 

 畑を広げて食料の備蓄が目標を越え、畑を丁度いい広さに戻し終わった頃。

 

 問題無く暮らしていたある日、ライベルが大事な話があると言い私達を集めた。

 

 「みんな……俺は他の人類を探しに行こうと思う」

 

 彼は真剣な表情でそう言った。

 

 事前にこの可能性を考えていた私達は予定通りの対応をする事にする。

 

 「どうやって行くつもり?」

 

 カミラの言葉にライベルは言う。

 

 「持てるだけの保存食料を持って川沿いに移動しようと思ってる。これなら水で戻して食べる事が出来るし、飲み水にも困らないと思うんだ。戻る時に迷う事も無いと思う」

 

 「条件を飲むなら、好きにしていいわよ」

 

 「条件?」

 

 「ヒトハを連れて行きなさい……それが条件よ」

 

 「ヒトハを?でもそうしたら人手が……」

 

 彼は難色を示す、そこに私が口を挟む。

 

 「ここでの生活は安定しているし、畑もある程度縮小したから問題は無い。何があるか分からないお前の方が問題だ」

 

 「う……確かにそうだけどさ……」

 

 「何かあった時一人では危険だ。お前のやりたい事を止める気は無いが、私はお前の母と約束している」

 

 「姉さん……」

 

 彼は私の言葉に何かを感じたのか、表情を曇らせる。

 

 「ヒトハを連れて行け、お前に何かあれば約束を果たせなくなる」

 

 「姉さんにそう言われたら断れないよ……。分かった、連れて行く」

 

 彼は私の言葉に対して困ったように微笑むと、ヒトハを連れて行く事を了承した。

 

 「言うまでも無いとは思うけど……準備は怠らないようにね?」

 

 カミラが釘を刺すと彼は大きく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 それからライベルは長い間、近場の集落の建物を分解したり、周囲を念入りに調べ回って僅かに残っていた木を掻き集めた。

 

 そして私達の協力を得て、その材料で物を乗せて運べる道具を作り上げる事に成功する。

 

 魔車に何となく似ている事から私が人力車と名付けた、この道具は台の上に物を乗せて引いて行くという方法で多くの荷物を運べる物だ。

 

 時間をかけて準備を整え、やがて出発の日がやって来た。

 

 「ライベル、分かっているな?」

 

 「大丈夫だよ姉さん。出来るだけ余裕をもって行動する……だよな?」

 

 余裕は大事だ、余裕は冷静さを生む。

 

 今まで見て来た者達の中には余裕の無い者が大勢いた。

 

 それは時間であったり金であったり食料であったりしたが、そのどれであっても冷静さを失った者達はあまりいい方向へは向かわなかった。

 

 彼にはそうなる前に考え直せるようになって欲しい。

 

 『ヒトハ、頼むぞ』

 

 『かしこまりました』

 

 ヒトハには彼が違和感を覚えない範囲で出来るだけ手を貸す事と、命に関わる場合は力を隠さず助けて私に知らせる事を話しておいた。

 

 

 

 

 

 

 ……川下の方へ向かってみるか。

 

 集落を離れ、川に辿り着いた俺は人力車を引きながら川下へと歩き始めた。

 

 姉さんが名付けたこの人力車は上手く出来たと思う。

 

 母さんと姉さんは凄い、俺の知らない色々な事を知っている。

 

 この人力車だって、手伝って貰わなかったら作れなかったと思う。

 

 ヒトハは荷物の上に乗ったまま周囲を見ているように動いてる。

 

 ……このヒトハも凄いよな。

 

 言葉は話せないけど、こっちの言っている事を理解して動くんだもんな……。

 

 おまけに動力が不明らしい。

 

 姉さんが見つけてからずっと動いているらしいけど……。

 

 本当に大昔の人類は凄い力を持っていたんだなって思うよ。

 

 昔……世界は木々に覆われて多くの生物が住んでいたらしい、その世界で長い間人類は繁栄していたみたいだ。

 

 それがどうしてこうなってしまったんだ……?姉さんは大昔に人類がやりすぎたからだって言ってたけど……。

 

 母さんと姉さんは長命種らしいからまだ人が多く居た頃を知っている。次々と謎の病気で死んで、減ってしまったみたいだけど。

 

 ……きっと俺の方が先に死んじゃうんだろうな。

 

 でも一人じゃない。

 

 ヒトハも居るし、二人ならきっと俺が死んだ後も強く生きて行ってくれるさ。

 

 

 

 

 

 

 時々ヒトハに話しかけながらひたすら歩く。返事などしないと分かっているけど、声に反応をしてくれるからなんだか話しかけてしまうんだよな。

 

 ……そろそろ食事にして休憩しようか。

 

 姉さんの言葉を思い出しそう考える。

 

 無理をせず休憩しておく事にする、急ぐ事も無いんだしね。

 

 「ヒトハ、食料を一食分出しておいてくれる?」

 

 そう言うとヒトハが食料を出し始める、それを確認した俺は川へ水を取りに向かった。

 

 保存食を水で戻す間、俺は地面に座り改めて周囲を見渡す。

 

 そこには荒れた大地に風が吹いている光景しかない。

 

 何もないな……いつ見ても感想はこれ位しか出て来ないや……。

 

 空を見上げれば曇った空が見える、長く歩き続ける時は晴れているよりこの方が涼しくていいかな。

 

 俺は水で戻した保存食を食べしばらく休憩した後、再び歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 それから特に何も無く数日歩き続けた。地面は荒れているけど起伏は殆ど無いし、中々歩きやすいかな。

 

 そうして歩いている俺の目に何かが映る。

 

 「……何かある!」

 

 俺は思わず叫んでしまった。

 

 遠くに何か見える!

 

 はやる気持ちを抑え進んでいくとやがて集落が見えて来た。

 

 「誰かいないか!?」

 

 入り口らしき場所で声をかけてみるが反応は無い……俺はそのまま集落へと入った。

 

 複数の屋根の無いボロボロの木の家がある。

 

 これだけ木が残っているという事は、今まで誰もこの集落に来ていなかったみたいだな……。

 

 俺はその一つを覗いてみる……。

 

 ……何もない。

 

 僅かにボロボロの床板らしき物があるだけで特に何もない、そのまま外に出ると他の家を覗く。

 

 これは……最後に死んだ人、かな……。

 

 そこには人骨が散らばっていた、きっと埋めてくれる人が居なかったんだろう……。

 

 集落の中に墓場を見つけた俺は、そこに穴を掘り人骨を埋めた。

 

 ……せめて同じ場所で眠って欲しい。

 

 ここの家で一晩過ごせるかと思ったけど、これじゃ外と変わらないよな。

 

 俺はこの集落を離れ、先へ進む事にした。

 

 

 

 

 

 

 それからいくつかの集落跡を見つけたけど、誰も見つかる事は無かった。

 

 そんな事が続いていたある朝。

 

 遠くに大きな町が見えた、川からは離れるが分からなくなる程の距離じゃない。

 

 「でかいぞあれは!あれが町という物か!?」

 

 遠くからそびえたつ高い塔が沢山見える、俺は早足になりながら塔へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 見えたから近いかと思ったんだけど……意外と遠かった……。

 

 でも……これはすげぇ……。

 

 丸一日程かけて町に着いた俺は、生まれて初めて見る人類の遺産に目を奪われた。

 

 荒れているけど元々の地面は驚くほど平らである事が分かるし、巨大な建物が隙間なく立ち並んでいる。

 

 何で出来てるんだ、これ……?

 

 町に放置されている大きな何かに近づくと、俺の顔が映る。

 

 軽く叩いてみると不思議な感触がした。

 

 ……凄すぎて俺じゃ何が何だか分からない。

 

 母さんか姉さんなら何か分かっただろうけど……。

 

 半開きの扉から建物の一つへと入ってみる……空気が少し淀んでるな。

 

 中には何もない……と思ったけど、長方形の何かが一つだけ床に落ちていた。

 

 手に取って見てみると、色々と小さい何かが付いていて妙に軽い……なんだこれ?

 

 拾った何かを持ったまま奥に目を向ける。

 

 奥へ行きたいけど、暗すぎるかな……?

 

 扉から入る光じゃ入り口の近くしか見えない。

 

 これ……持って帰ろうかな?母さんか姉さんなら何か分かるかもしれないし。

 

 俺はこの何かを持ち帰る事を決めて外に出た、人力車にしまってから町の中を進む。

 

 途中にある大きな物を覗いて見ると中に座れそうな形をした物があり、その上に別の何かがおいてあるのが見える。

 

 中に入れないかと色々としてみたがびくともしない。

 

 諦めて透明な板に張り付いてよく見てみる……四角い板か何かに人の顔が……書いてある?

 

 妙に耳が長い気がするけど……良く見えないな……。

 

 俺は大人しく諦めて先に進む事にした。

 

 それから途中にある色々な物を見たり触ったりしながら長い間この町をうろついていた。

 

 そしてふと気づく。

 

 ここじゃ水が手に入らない、もう戻らないと不味い。 

 

 町に夢中で忘れていた……こっちに来る前に汲んでおいた水は予想外に遠かったからほとんど使ってしまった。

 

 ここから川に戻るにも一日程かかる、俺はすぐに戻ろうとして固まる。

 

 ……川の方向は……どっちだ?

 

 俺は体が急に冷えて行く感覚がしていた。

 

 どちらを向いても似たような町並みがあるだけ、夢中でどう進んだかも覚えていない。

 

 不味い……不味い、不味い、不味い!

 

 

 

 

 

 

 ライベルは無言で強張った顔をしていますね。

 

 夢中になって町を見て回り始めてからこんな予感はしていましたが……迷いましたね?

 

 私は浮かび上がると荷物の上から降り、川の方向へと移動し始めます。

 

 「え?……ヒトハ?」

 

 ライベルは私の行動に戸惑っているようですね……私は一度彼の方を向き再び進みます。

 

 「こっち……なのか?」

 

 私はもう一度振り返り縦に頷くように動き、進みます。

 

 彼は大人しくついてきました。

 

 町を出てからも進み続け、やがて遥か遠くに川が見えました。

 

 「川だ!良かった……ありがとうヒトハ……」

 

 彼は私を抱きしめ呟いていますが、主様の命ですから当然の事です。

 

 私は荷物の上に戻り、再び彼を見守ります。

 

 

 

 

 

 

 俺は大いに反省する事になった、初めて見た町に浮かれて迷うなんて。

 

 ……食料が手元にあっても水はあの場所では手に入らなかった。

 

 ヒトハがいなければ死んでいた可能性が高い。

 

 俺はヒトハと、ヒトハを連れて行くように言ってくれた母さんと姉さんに感謝した。

 

 それから川から離れる時は常に川がどちらにあるか気にしながら進むようにした、こんな失敗何度もしたら姉さんに叱られる。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。