少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 「……はい、ありがとうございます」

 

 あたしが答えると、一瞬で景色が変わる。

 

 突然の出来事にしばらく呆然としていたあたし達だったが、突然あたし達が現れたのを見た移動先の乗組員も同じような物だった。

 

 先に我に帰ったあたし達があの宇宙生命体を絶対に攻撃しない事とすぐに撤退する事を話すと、素直に頷いてくれた。

 

 幸いワープの準備だけは終了していた。あたし達は生き残っている他の艦に同時通信で攻撃をせず撤退するように一方的に話をした後、そのまま即座に撤退した。

 

 本星への移動中、あたし達が移動した艦の群長は落ち着いた後に語ってくれた。

 

 早い時点でワープをしようとしたが、上手く行かなかったと。

 

 嘘だとは思っていなかったけど、あたしはあの宇宙生命体が言っていた事が本当だったと改めて知る事になった。

 

 あたしは越権行為で処分される事を覚悟していたけど、群長を始め全員から感謝される事になった。

 

 自分達がこうして生きて帰れたのはあたしのおかげだと。

 

 その言葉を聞いた後、あたしは意識が遠くなった。

 

 

 

 

 

 

 次に目にしたのは軍の病院の天井だった。あたしが目を覚ました事を知ると医者が呼ばれ、状態を確認した。

 

 あの未確認宇宙生命体が乗り込んで来た艦に居た皆も衰弱していたみたい。

 

 その中でもあたしが一番酷く、二週間が過ぎてようやく目を覚ましたのだと話をされた。

 

 そして、あたしは本当に生きて帰れたのだと実感し泣き崩れた。

 

 

 

 

 

 

 「起きているか?」

 

 「はい」

 

 あたしが目を覚ましてから数日後、先輩が私の病室へと訪れた。

 

 「大体の事は他の者から聞いているし、俺がするような事じゃないと部下には止められたが……あの宇宙生命体と会話をしたお前から直接話を聞きたくてな」

 

 私は体が小刻みに震えだすのを感じた、精神的な障害でも負っちゃったかな……。

 

 「すまない……お前がそんな状態であっても俺は話を聞かなくてはならない」

 

 先輩は私の手を握り、辛そうに話す。

 

 私はゆっくりと息を吐くと静かに話し始める。

 

 あたしは隠す事無く全てを話した。

 

 知性があり語り掛けて来た事、話し合いを求めてきた言葉を無視してあたし達が攻撃を仕掛けた事、反撃で一瞬にして全艦隊の半分程が消滅した事。

 

 「……なるほど。その後に艦を破壊して回り、お前達の艦に突然現れて艦が欲しいと言ったのか」

 

 「そうです……その際に宇宙生命体に向かって攻撃した者が一人殺されました……やめるように言ったのですが」

 

 私は声を上げて止める事しかできなかった、今思えばアレを前にしてよく声が出たと思う。

 

 「それ程の宇宙生命体に至近距離で接して被害が乗員一人で済んだのはむしろ凄い事だろう。お前が気にする事では無いよ」

 

 「はい……」

 

 先輩は気にするなと言うけど、すぐには割り切る事は出来ない。

 

 「直接会話してみて、お前はどう感じた?」

 

 先輩は私にそう聞いてくる、私は感じた事を素直に話す事にした。

 

 「とても……理性的だったと思います。話し合いを求め、反撃以外に攻撃をせず……艦の対価としてあたし達を含む攻撃をしない艦全てを見逃してくれました」

 

 「なるほど……」

 

 先輩はそう言って考え込んだ。

 

 なんだか眠い……でもあたしはこれだけは言っておかなければと思い言葉を続けた。

 

 「ただ……」

 

 「……ただ?」

 

 「あれはあたし達程度が触れて良い存在ではありません。ただそこにいるだけで周囲の生命を削る……そんな存在です。あたし達は今回の事を覚えておかなければならない。忘れてしまえばまた触れようとする者が現れます……先輩がどんな判断をするかは分かりませんが……出来る事なら……これから先……未来永劫触れる事無く……そっとしておくべきだと……そう……感じます……」

 

 酷く眠いから途切れ途切れになっちゃったけど、これがあたしの偽りのない本心だ。

 

 あたし達はいつの間にか……宇宙には手が出せない存在もいる、という事を考えなくなっていたんだ。

 

 「ありがとう、とても参考になった。しばらくゆっくり休んでくれ……俺もまたお見舞いに来るよ。今度は軍人としてではなく、一人の友人としてね」

 

 「うん……待ってるね……」

 

 あたしはそう呟くと、眠気に耐えきれずそのまま眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 その後。

 

 先輩がうまく立ち回った事で、例の星系はブラックホールが大量に発生している危険区域として立ち入りが禁止される事になる。

 

 後々は星間図からも消すつもりだと先輩は言っていた。

 

 そして、あたし達には緘口令が下された。

 

 もしも他言した場合。話した者は勿論聞いた者も死罪になるという、現在ではまず考えられない様な厳しい罰則が決定されていた。

 

 あたしはその話をすんなりと受け入れた、それ位はするべきだと思ったからだ。

 

 事の発端となった星系調査結果と映像は何処かに厳重に保管され、存在を知る者は極僅かな者だけに限られた。

 

 多くの者に知られる事が無いように。

 

 同じ事を繰り返さぬよう、覚えておくために。

 

 

 

 

 

 

 「お疲れ様」

 

 「お帰りなさいませ、主様」

 

 「ただいま」

 

 私は出迎えてくれた二人に言葉を返すと、風呂に入った。

 

 その後は皆で食事だ、ヒトハも一緒に食べるようにしているので皆で用意をする。

 

 ゆっくりと食事を楽しみ、食後に全員がリビングに揃った。

 

 「お母様、そろそろ知的生命体との事がどうなったか聞きたいのだけど」

 

 カミラがタイミングを見計らったように聞いてくる。

 

 「私も食後に話すつもりだったから話そうか」

 

 私がそう言うと二人はすぐに話を聞く体勢になる。

 

 「まず先に結果を教えよう、友好的な関係は結べなかった」

 

 「襲って来た?」

 

 「ああ、話し合いに持って行こうと声はかけたが駄目だった」

 

 「言葉が通じなかったのですか?」

 

 「通じてはいた。だが、相手は最初から私を捕らえる気でいたようだ」

 

 そう話すとカミラが苦笑いをする。

 

 「馬鹿な事考えたわね、どうにかなると思っていたのかしら?」

 

 「情報が無いと判断を誤るとは、こういう事を言うのでしょうか?主様がどのような存在か知っていれば、きっとそのような事は考えなかったと思いますし」

 

 「そうね……彼らはお母様の事を何も知らなかった。だからそんな事を考えたのね」

 

 「攻撃して来たから反撃した、例の力を解放した魔法の実験もついでにやって来たぞ」

 

 「どうだった?」

 

 カミラが飲み物を置いて聞いて来る。

 

 「惑星内で使う事は出来ないな。範囲と威力が大きすぎて敵も味方も周囲の惑星ごと消えて無くなる。実際に一度で広範囲に展開していた敵の艦隊が半分ほど消えたからな」

 

 「……今までよく平気だったわね」

 

 「イシリスが消えてしまっていた可能性があったのではないでしょうか?」

 

 二人にそう言われるがその通りだな。

 

 「あくまで出来るだけで、私がやろうと思わなければそのような事はまず無いとは思う。それに、問題がありそうだと感じたら対処はするつもりだ」

 

 「それで……彼らは全滅したの?」

 

 「いや、話の分かる者に偶然会ってな。彼女に免じてある程度の者達は生かして返した」

 

 私がカミラの疑問に答えると、ヒトハが言う。

 

 「それなりの数を生かしておく事にしたのですね?」

 

 「全体の数と比べて多いのか少ないのかは分からないが、そうだな」

 

 「また来るかしらね?」

 

 「どうだろうな。今回の戦力は数は多かったし個々の強さもイシリスで戦った魔道戦艦よりは強かったが、それは比較した場合の話で、どちらにしても私にとっては大した物では無かった。もし彼らの手元に何か特別な戦力が存在し、自信があるのならもう一度くらいは来るかもしれない」

 

 「……来るでしょうか?」

 

 ヒトハが尋ねて来る。

 

 「恐らく来ない可能性の方が高いはずだ。彼らに特別な戦力があったとしても、今回来た艦の戦力から見て、私に手傷を負わせる事は難しいと思う。ただ、判断するのは彼らだ。彼ら自身が私を殺せると判断すれば来るだろう」

 

 「本当に主様に傷を負わせるほどの物である可能性もありますが……かなり確率は低そうです。ほぼ不可能なのではないでしょうか?」

 

 ヒトハは私を見ながら話す。

 

 「私はいつまでも余裕でいられるとは思っていない。だからこそ日々力を高め、様々な力を得ようとしている」

 

 私はヒトハに答える。今の力に満足していてはいつか負ける時が来るかもしれないからな。

 

 「お母様はどこまで強くなるのよ……いるだけで周囲に被害が出るとか、そんな事にはならないわよね?」

 

 カミラが呆れたような声で言う、その言葉からは何となく私の身を案じる様な雰囲気も感じる。

 

 「それは注意しておこう。力を手に入れる事に固執して、自分の身や周囲を滅ぼすような真似をする気は無いからな」

 

 「お母様の事だから平気だとは思うけど、一応言っておかないと不安だもの……ねえ?ヒトハ?」

 

 「はい、主様の行動に問題を感じた場合はすぐに進言いたします」

 

 二人はそう言って静かに笑い合う。

 

 彼女達はこれからも私を見ていてくれるらしい。

 

 「気軽に何でも言うと良い、何を言われようと聞く気ではいる。実際に行動するかは別だが」

 

 「勿論そのつもりよ。今までもそうだったじゃない」

 

 「はい、遠慮なく進言させていただきます」

 

 私の言葉に二人は返事を返し、雑談に花を咲かせ始める。

 

 二人の仲が良好で何よりだ。

 

 私はそう思いながら二人が話しているのを聞いていた。

 

 

 




 帰還後の知的生命体達の体調がすぐれないのは、極度の恐怖と緊張のせいという事で。



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