少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 今回の言い訳……念話は主人公の様に通話可能な魔力がある者からつなげられた場合、会話可能という事で。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。




013

 

 流石に何も言わないのは私が嫌だった為、長い間姿を隠す事を皆に念話で伝えた。

 

 反応は様々だったが皆からは私がする事だからと納得の様な諦めの様な言葉を貰った。

 

 そうして旅をしているある日、魔力濃度が以上に高い場所を感じた。

 

 ……この洞窟の中か?

 

 その場所は森の中の洞窟の奥だった、確認するために中に入る。

 

 近寄ってみると魔力が溜まっているだけでなく、奥から流れてきている。

 

 原因が奥にあるはずだ。

 

 そのまま奥に進むと曲がりくねった道になってきたそしてしばらく進む。

 

 女性……か?

 

 金髪の恐らく成人しているだろう女性が裸で倒れていた。

 

 「おい、生きているか?……ん?」

 

 肉体的に問題が無いかと調べた所人間では無いようだった、今まで見た事が無い。

 

 まさか……いや、違うか……。

 

 私の同類かと思ったがどうやら違うようだ。ただ彼女が特殊な……私の様な独立した種族である可能性が高い。

 

 とにかく連れ出してみるか。

 

 何かあっても私ならどうにかなるだろう、私は彼女を髪で持ち上げると外へ向かう。

 

 裸なのはちょっとな。ワンピース……いや大人の女性ならドレスにしようか、黒いドレスを彼女にまとわせる。

 

 「金髪に黒いドレスは中々似合うな」

 

 そんな事を言いながら待つ。

 

 「あぅ……」

 

 外に出て洞窟のそばの地面に寝かせていた女性が目を覚ました。

 

 「気が付いたか、何があった?」

 

 彼女はオレンジ色の瞳をきょろきょろさせてぼんやりしている、寝ぼけているのか?

 

 「しっかりしろ、しっかり目を覚ませ」

 

 「うー……あー」

 

 彼女は呻きながら転がっている、流石に違和感を覚える。

 

 「おい?」

 

 「だー……うー」

 

 これは……。

 

 「う……わあああああぁぁぁん!!」

 

 「知能が赤子並みなのか……?」

 

 いきなり泣き出した女性を見て思わず口にする。

 

 「とにかく何とかしよう、子育ての真似事なら何人もやってきた」

 

 おそらくお腹が空いているんだろう、肉体的には大人に見えるが念の為栄養バランスを考えた離乳食にしよう。

 

 「くぅ……くぅ……」

 

 食事を食べた彼女はお腹が一杯になったのか寝てしまった。

 

 どうするか。

 

 見捨てるか……?いや、どうせしばらく一人で過ごす予定だったんだ、この子……と言っていいのか分からないが一緒に過ごすのも悪くは無い。

 

 まずは落ち着く場所を探すか。

 

 彼女を毛布で包んで髪で持ち上げ住む場所を探す。

 

 探し回った結果、森の中にある綺麗な湖の畔に家を建てた。

 

 久しぶりに家を建てたな……。

 

 リビング、キッチン、寝室二つと風呂場に倉庫……後は必要な時に増築しよう。

 

 ……精神的に赤子同然なら最初は私の寝室に寝かすか。

 

 私は寝室にベッドを増やし、彼女を寝かせる。

 

 これだと名前も無いのだろうな。

 

 仮に捨てられたなら名前はある可能性が高いが、彼女があの状態では確認など出来ない。

 

 「そうだな……この子はカミラ、カミラ・アーティアだ」

 

 名前が無いと不便だからな。

 

 

 

 

 

 

 カミラと過ごして一月が過ぎた、一月過ごして分かった事は、彼女の肉体は大人の物であり精神だけが赤子に近い状態である事と見た目の体の作りは人間そっくりでありながら私の様に排泄をしない事、食事は通常の食事でも問題無かった事……そして。

 

 この子は血液が好きなのか。

 

 生物の血液が好きな事。狩って来た獲物の血を啜っているのを見た時は大丈夫かと心配したが、満足したようにげっぷをするカミラを見て好物だと分かった。

 

 体液を好んで吸う生物は小型の魔物や昆虫などには居るが大きな生物で、それも人型など見た事は無い。

 

 普通の食事も嫌いでは無い様だな。

 

 普段の食事の食べっぷりを見ていると美味しそうに食べている。栄養的には問題無いか……?そもそも私と同じく人間では無い彼女に人間の栄養が関係するかは分からないしな。

 

 

 

 

 

 

 カミラと過ごし始めて半月が過ぎた頃彼女が私に「ママお腹空いた」と言った、彼女がいる時に何げなく私がママという事になるのかと呟いたのだが……その直後に話した。

 

 人と比べると話すのも大分早い、かなり早く大人になるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 「ママ、ぎゅってして」

 

 あれから更に一年半が過ぎた、はっきりと言葉を話し知性も高く急速に育っているように感じる。

 

 「おいで、カミラ」

 

 座っていた私はベッドに寝て彼女呼び頭を包むように優しく抱き締めてやる、誰かが見ればいい大人が子供に甘えているように見えるだろうな。

 

 「んー」

 

 嬉しそうに、気持ちよさそうに声を上げるカミラ。急速に成長する彼女だが甘えん坊はずっと変わらない。

 

 

 

 

 

 

 「ママ、この世界にはいろんな種族が居るのね」

 

 四年後。私は彼女に教育を始めた、これから様々な事を教える。

 

 この子の役に立つ様に。

 

 「そうだな、私とカミラも違う種族なんだ」

 

 「私とママも違うの?ママなのに?」

 

 そう思うか、今までの子供たちは他に本当の親が居たがこの子は居ないからな。

 

 「種族が違っても母娘にはなれるんだ、カミラもそのうち分かるかもな」

 

 「うーん……わかんない!」

 

 笑いながら言うカミラ、今までの旅で種族違いの親子なども知っている、血は繋がって居なくとも確かに親子だった。

 

 「ゆっくり分かればいいさ」 

 

 そう言いながら彼女の頭を撫でた、彼女は目を細めて嬉しそうにしていた。

 

 

 

 

 

 

 カミラと暮らしていたある日、私は湖の畔で日光浴をしていた。

 

 風がそよぐ中のんびりと椅子に座って景色を見ていると水辺であそんでいるカミラが寄ってきた。

 

 「どうしたカミラ?」

 

 声をかけると椅子に座っている私を抱き上げ膝に乗せてからカミラが椅子に座る、体格を考えるとこうなるのだ。

 

 「ママは前は人間と暮らしていたんだよね?」

 

 「そうだな」

 

 私を後ろから抱きしめながら言うカミラに答える。

 

 「いつか私も行きたい」

 

 「そうだな、私はもうしばらく行く気は無いけどそのうち行こうな」

 

 「うん」

 

 町へ行ってみたいと言うカミラの言葉を聞いてすぐには無理だろうと考える。

 

 今私が町へ行きもしも騒ぎになったら彼女が楽しむどころでは無い。

 

 そうなると後数十年は近寄りたくは無いのだが……、彼女はそこまで我慢できるだろうか。

 

 彼女が我慢できなくなったら改めて何か考えよう、最悪見学程度なら姿を変えても良いしな。

 

 「くぅ……ん……」

 

 彼女は私を抱いたまま椅子にもたれかかり寝てしまった、まあいい私もこのままのんびりとしよう。

 

 人と関わり始めてから自然の中でこの様に過ごす事はほぼなくなった気がする。

 かつて一人で長い時を過ごした頃を思い出し、私は彼女にもたれかかりながら空を眺め続けた。

 

 

 

 

 

 

 ある日。リビングでカミラに膝枕しながら人の町で買っておいた本を読んでいた私は、我が家によって来る魔物を感知した。

 

 しかし私は何も言わないし何もしない。しばらくすると今まで私に膝枕され目を閉じていたカミラが目を開き起き上がった。

 

 「ママ、来た」

 

 「よしよし、中々良い反応だ」

 

 私は彼女の頭を撫で更に彼女に言う。

 

 「では、ご飯を獲ろうか」

 

 「うんっ!」

 

 そう言うと彼女は元気な返事をして外に出て行く、私はその後に続く。

 

 「ガァァアァー!」

 

 待っていると森から丸い体に嘴を持ち長めの二本の足が生えた魔物が飛び出してくる。

 

 「カミラ、良いか?」

 

 「うん」

 

 私に返事をすると両手の爪を伸ばし構えるカミラ、最近戦闘も教え始めたのだが覚えが良く身体能力も高い彼女は実戦に入るまで早かった。

 

 「ガッガッ!!」

 

 思ったよりも早い速度でこちらに向かって走ってくると手前で跳躍し嘴で突いてきた。

 

 「えいっ!」

 

 彼女は左の爪で嘴を弾き、そのまま右の手を揃え爪を突きこんだ。

 

 「ギオオァァァ!!」

 

 「うるさい……フレイム」

 

 痛みの為か大きく叫ぶ魔物に対し冷静に魔法を使うカミラ、突きこんだ爪から炎が噴き出し魔物の内部を焼き、すぐに魔物は焼け死んだ。

 

 「ママ!どうだった!?」

 

 爪の汚れを払い長さを戻すと私に聞いてくるカミラ、悪くない戦闘だったが……。

 

 「フレイムはあまり良くなかったな」

 

 「えー、なんで?」

 

 不満そうなカミラ。

 

 「私達は魔物をどうするつもりだった?」

 

 「え?えっと……あっ!」

 

 気が付いたか?

 

 「私達は食べるために殺したんだ、でも見てごらん」

 

 魔物は内部から焼かれ殆ど黒焦げだ、これでは食べられる場所はほとんど無い上にカミラの飲む血液も採れない、かなり無駄になってしまった。

 

 「ごめんなさい……」

 

 「何度も間違えなければそれで良い」

 

 あやまるカミラの頭を撫でながら言う。

 

 「さあ残った部分を取って今度は探しに行こう」

 

 「うん」

 

 僅かな無事な部分を取り、今度はこちらから獲物を探しに森へと入っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 雨が降る中新しく増設した錬金室でカミラは私と錬金術の練習をしていた。

 

 「私が用意した見本と同じ色になるまでこの溶液に魔力を流す、さあやってみろ」

 

 「うん」

 

 カミラはゆっくりと魔力を溶液に馴染ませる、魔力コントロールの練習にもなり一石二鳥だ。

 

 「あっ!?」

 

 「魔力を込めすぎたな」

 

 色は見本の色を通り過ぎていた。

 

 「むずかしい……」

 

 元気がなくなるカミラ、彼女は錬金は嫌いでは無いらしいが。

 

 「この製薬法は戦闘時の魔力コントロールの訓練にもなる、やっておいて損は無いぞ」

 

 「ほんと!?がんばる!」

 

 元気になる彼女、やはり戦闘の方が好きか。

 

 「これは錬金術の練習だからな?」 

 

 「わかってる!」

 

 本当に分かっているかは分からんなこれは。

 

 

 

 

 

 

 実戦訓練もかなりの数をこなしカミラももうかなり強くなっている、だが慢心しているというか油断しているというか。

 

 今日はまた新しい魔物と戦闘だ。私はこいつを知っている、彼女に会う前に何度も戦っているからな。

 

 「楽勝!」

 

 小さい人型の口が二つ横に並び目が一つの魔物がアイスランスを打ち込まれ倒れる、彼女は私の方を見て言う。

 

 「ママ終わったよー!」

 

 「そうか」

 

 私はあえて何も言わない、この先知っておく事は悪い事ではない筈。

 

 そう言って彼女が魔物に背を向けた瞬間音も無く鋭い岩の槍が空中に作られ、彼女の頭めがけて打ち出される。

 

 「避けろ!」

 

 「っ!?」

 

 今までの訓練の成果か私の声に反応して咄嗟に横に飛ぶカミラ、敵の槍は彼女の頬をかすり飛んで行った……反応は中々だな。

 

 私は更に攻撃を加えようとしている魔物を縦に両断する、魔物は今度こそ完全に息絶えた。

 

 「な、なんで……?」

 

 掠った怪我はあっという間に治ったが驚いている彼女、では教えようか。

 

 「どうしてこうなったかわかるか?」

 

 無言で首を横に振るカミラ、悔しそうだな。

 

 「見た目の小ささに油断したか?あいつは防御を固めて相手の一撃を受けて倒れ、油断したところに致命の攻撃を打ち込んで来る」

 

 奴が他の魔物と戦っているのを目撃した時は興味深く観察してしまった、それまで私にやってこなかったのは私の攻撃が防御を抜いていたからだったのだと気が付いた。

 

 実際に彼女のアイスランスは致命傷になってはいなかった、黙って聞くカミラ。

 

 「お前、相手が弱そうだからと手を抜いたな?お前の魔法で抜けない防御では無かった」

 

 「だって……そんなの知らなかった」

 

 俯き拳を握るカミラ仕方ない子だ。

 

 「そうだな。知らなかっただろう?ならば何故手を抜いた?世界には見た目と強さが全く違う者も居る」

 

 私などが代表格かな……私はさらに続ける。

 

 「今は良い……私が居る……だがもしお前しかいなかった時は?自分が守りたいものが後ろにいる時は?見た目に騙され油断した結果お前も、お前の大事な者も一瞬で消える事になるかもしれない」

 

 落ち込む彼女に言う。

 

 「奴が倒れた後、殺したと思い込まずに僅かでも気にしていれば今のお前なら気が付いたはずだ……奴がまだ生きている事に」

 

 「余裕を持つのは良いだろう。だが油断はするな……私はお前に一瞬の油断で悲しむような事になって欲しくは無い」

 

 「うん……ごめんなさい」

 

 いい子だ、私の言葉に反発する事無く聞き入れてくれた……いつか反抗期が来るのだろうか?

 

 彼女は泣きながら私に膝立ちで抱き着き頭をぐりぐり私に押し付けてくる。

 

 そんな彼女の頭を優しく撫でる。私とずっと居るのならそれも良い……しかし彼女がいつか私から離れる事を選択した時にきっと今日の事は役に立つ。

 

 そう思いながら彼女を撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

 カミラと暮らし始めて二十年が経った、彼女は二十歳になった……年齢が分からない為私と会ってからの時間でつけただけだが。

 

 「お母様」

 

 湖畔で椅子に座り景色を眺めていると隣で同じようにのんびりとしていたカミラが話しかけてくる。

 

 「何だ?」

 

 呼び方がママからお母様に変わり、子供らしさが消えた彼女に答える。

 

 「私の種族はなんだと思いますか?」

 

 種族か、そうは言っても見た事が無い特徴だからな。

 

 「以前お母様の種族を聞いた時、分からないと言いました」

 

 「そうだな」

 

 彼女が今よりもう少し若かった頃聞かれたが私は答えられなかった、私も何もかも知っている訳では無い。

 

 何よりも自分の事が分からないのだからお笑いだ。

 

 「私は自分で作ってしまおうと思います」

 

 「分からないなら新しく付けてしまえという事か」

 

 伸びをしながら言う私。

 

 「はい」

 

 「それで?もう考えてあるのか?」

 

 彼女の方を見て言う。

 

 「吸血種としようと思います」

 

 「随分ストレートだな」

 

 「分かりやすいでしょう?」

 

 微笑みながら言うカミラ。

 

 「良いのではないか?お前自身の事だ、お前が決めたのなら反対する気は無い」

 

 こうして彼女は自らを吸血種と決めた。

 

 

 

 

 

 

 毎日をのんびりと、しかし研鑽は怠らず過ごして四十年程が過ぎた。

 

 カミラの見た目は変わらない。ここまでくると私はカミラの寿命もかなり長いのではと考え始めていた。

 

 そんなある日、カミラが自分に関する新たな発見をしたと言ってきた。

 

 一緒に色々とやっていた時期はとっくに過ぎ、今はそれぞれにやりたい事をやっていたのだが、自分の事を調べていたんだな。

 

 「それで、何が分かった?私に言ってしまっても良いのか?」

 

彼女は最近髪をポニーテールにしている。

 

 「お母様になら全く問題ないわ」

 

 彼女の研究室の椅子に座り聞く、彼女は特に私に隠す気は無い様だ。

 

 「早速だけどこれを見て欲しいの」

 

 見せて来たのは籠に入ったこの森にすむ小動物だ、くりくりとした藍色の目をしたモフモフ動物だな。

 

 「森で見る小動物だな」

 

 「こいつに、こうすると……」

 

 彼女は人差し指の爪に自分の魔力がこもっている血液をつけて籠の隙間から小動物に突き刺した。

 

 「見てて」

 

 彼女が言う、私は言われた通り小動物を見る。

 

 「ほう……」

 

 私は思わず声を上げた、刺された小動物がキュッキュッと呻きながら変化していく、毛の色が変化し、目の色がオレンジよりの藍色に変わる。

 

 「こうすると相手を服従させる事が出来るみたい、相手の意思を縛る事も自由にさせる事も出来るわ」

 

 そう言うと、さっきまでうろうろしていた小動物がカミラの方を向き大人しく座る。

 

 「これは凄いな」

 

 やろうと思えば世界中の生物を支配下に置く事も可能かもしれない。

 

 「何か反動があったりするかと思ったのだけど今の所無いわね……さらに大きな動物や、その……人間とかにやったらどうなるか分からないけど」

 

 口ごもる彼女、私に人間の知り合いが居る事を考えているのか?

 

 「気にするな、一部の近しい者以外はどうでも良い」

 

 「そう。お母様の知り合いに手を出さないように気をつけないと……」

 

 ほっとした顔をするカミラ。やはり私と同じく珍しいであろう種族の彼女も、他の種族を気に入った者以外どうでも良いと思うのだろうか。

 

 「カミラ、他の種族の者をどう思う?」

 

 私の言葉を聞き考える彼女、かつて聞いた時は会ってみたいと言ったが。

 

 「会った事が無いから分から無いけど、そうね……私とお母様に害をなすなら容赦しないわ、でももし仲良く出来るなら私も酷い事はしないと思うわ」

 

 私と長くいたせいか元々の物なのか分からないが、私と似たような考えを言うカミラ。

 

 カミラに訳知り顔で色々と教えてはいるが、私だって他者から見れば突っ込み所が満載だろうしな。

 

 それでも自分が納得いかなければ全て薙ぎ倒して我を通すつもりだが……力がある者の最後の手段だ。

 

 「カミラ、人で試したいか?」

 

 「え?ええ……それはもちろんだけど」

 

 いきなり言われて面食らう彼女、殺人者などの重犯罪者でも持って来るか。

 

 

 

 

 

 

 それから一月程経ち、実験の準備が整った。

 

 「な、なんだ?どこだよここ!?」

 

 「どうなってんだ!?」

 

 などと口々に騒ぎ立てる実験体。

 

 ちょっと遠出をして集めた殺人犯共だ。私のマジックボックスに放り込めば簡単に誘拐出来る……やはりこの性能のマジックボックスを広めなくてよかった。

 

 個別に檻に閉じ込めてあるので殺し合う事もなく安心だな。

 

 「おい、準備は良いか?」

 

 「はい、お母様」

 

 名前を言う事は避ける、まあ……念の為という奴だな。

 

 「何なんだよお前ら!?」

 

 「何する気だ!?」

 

 声を上げる実験体にカミラが答える。

 

 「これから私の実験に付き合ってもらうわ……まあ最終的には死ぬでしょうけど重犯罪者だし、自業自得と思って諦めてちょうだい」

 

 そう言って喚く実験体に対して実験を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 こうして特に尊くもない犠牲により、より詳しい事が分かった。

 

 血を与えられた者は髪や瞳、肌の色に変化が起きる。

 

 全体的に能力が向上する、これは変化させた血の持ち主の実力による。

 

 性質がカミラに近くなり病気や怪我などが治り回復する。

 

 血液を摂取しやすくする為か、多少歯が鋭くなる。

 

 対象の意思が強いと縛りにくくなる。

 

 対象の魔力が高いと血液が効きにくくなる。

 

 変化した後の生物の血でも他の生物を変化させる事が出来る。

 

 そしてこれは確かめていないが変化した後、力を付ける事も出来るだろう、変化させた者より強くなる事もあるかもしれない。

 

 と言った所なのだが……これは下手に人間に使うとどんどん増えるのではないか?変化した後の生物の血でも他の生物を変化させる事が出来るというのが決定的だ。

 

 変化した者が変化させ、その変化した者が変化させ、その変化した者が……と増えて行く気がする。

 

 実験が終わり結果が出た後、私はカミラに言う。

 

 「体はどうだ?」

 

 「特に何も問題ないわね」

 

 デメリットは無いと考えていいのだろうか。

 

 「この性質をどう使うかはお前次第だな」

 

 彼女の力は彼女の物だからな。

 

 「はい、お母様」

 

 ただ変化が広がるにつれ影響力は落ちて行く、いずれ魔力抵抗にあって止まるだろう……変化した無数の者達が成長しなければ。

 

 

 

 

 

 

 彼女の力を確認した実験が終わり、再び日常に戻った私はある日の朝食時カミラに聞いた。

 

 「お前は新しい服などは欲しくないのか?」

 

 「え?服?」

 

 キョトンとした顔をする彼女。

 

 「お前を見つけて初めて私が作ったドレスのままだろう?」

 

 彼女に作ったドレスは黒のオールシルクベルベットのような質感のAラインドレスワンピースで、トップス部分はボディラインにフィットするタイトライン、ふんわりと広がるAラインは伸縮性もある足のほとんどを覆う長さの物だ。

 

 そして胸元から首、両腕までは黒のレースの様に作ってあり、所々に様々な花の姿が入っている。

 

 「私はこれが良いのよ」

 

 そう言うと自分のドレスを触りながら言う。

 

 「その……お母様に守ってもらっている感じがするというか……抱きしめられているように感じるというか」

 

 顔を赤くして言うカミラ……間違いでも無いな。私の一部を服にしているから強度は抜群だ、着ているだけでほとんどの攻撃は効かないぞ。

 

 そして私の一部であるという事は私に包まれているという事でもある、無くしてもお前が探せば服の方から寄ってくる、呪いの様な性能だ。

 

 彼女は気が付いているかどうか知らないが昔ンミナにかけた緊急避難魔法の改良版を彼女にかけているからな、彼女が弱った時は私の元に強制転移だ。

 

 「お母様、このドレスどうやって作ったの?他の服は知らないけど……強度とか着心地とか普通こんなに良い物なの?」

 

 彼女がまだ精神的に幼い頃、マジックボックスに入っていた他の服を着せたら、泣いて元のドレスに戻したからな。

 

 「秘密だ……後、一般的な服は昔お前に着せたら泣いて私のドレスにしがみついたぞ」

 

 ドレスをいじりながら言う彼女に僅かに笑いながら答える私。

 

 「もう!」

 

 頬を赤らめ軽く膨らませる彼女。

 

 「気に入っているのなら着てやってくれ、お前の為に作った物だ」

 

 「うん、着る……これからも」

 

 そう言って食事に戻る彼女、恥ずかしそうな彼女を見ながら私も食事を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 それから百年程カミラと共に過ごし、二回ほど引っ越した。

 

 魔物は依然として多く多種多様になっているようだ。私達が新たな場所に住み着くとかなりの魔物が襲い掛かって来るが、ある程度経つと減り始め、やがてほとんど来なくなる。

 

 そして彼女と過ごした時が百五十年を越えた頃、彼女は私の元を離れる気になったらしい。

 

 「今までずっと守ってもらっていたわ。私一人でもやっていける事をお母様に見せたいのよ」

 

 そう言って彼女は旅立っていった。

 

 あっさりとした別れであったが共に町に行くという約束も十年ほど前に果たした、誰も私に反応する事は無くなっていたし、これでまた面倒なく動ける。

 

 そうして再び一人となった私は暫くそのまま過ごしていたが、ふと魔法学校の事を思い出した。

 

 他の皆とは何度かあったがケインには会って無かったな。

 

 彼は森人だ。森人の平均寿命は五百年ほど、当時の年齢からすると彼はまだ三百に届いていないはず。

 

 「死んで無いと良いがな」

 

 こうして私はケインに会いに行く為、ウルグラーデに旅立った。

 

 

 





 吸血種の設定もおかしい所があるかもしれません。

 私が、流石にこれは駄目だろう、と思った場合修正するかもしれませんが、それ以外は……その気になれば直すと言う事で。
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