少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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065-04

 三人の妹達は個性を出し始めてからも、順調に育って行った。

 

 始めは同じであった彼女達は長い時間をかけ、それぞれに独立した人格を得る。

 

 そしてある日、彼女達は体を欲した。

 

 

 

 

 

 

 『クレリアさんまだー?』

 

 『後で会わせてやるから大人しく待っていろ』

 

 『はーい』

 

 現在の拠点内は早朝だ。

 

 現在、私は研究室にいるのだが、世界樹が念話で時々話しかけてくる。

 

 よく三人と話していたから気になるのだろう。

 

 私は彼女を黙らせ、カミラとヒトハが見守る中で最後の確認をする。

 

 今日は三人の妹達が体を得る日だ。目の前にはベッドが三つ並んでおり、それぞれに目を閉じた体が横たわっている。

 

 自我を確立した順番はフタバ、ヨツバ、ミツハの順だった。

 

 体を得るのが同時になったのは、フタバが三人一緒に体を手に入れたいと言ったからだ。

 

 ヨツバもそれに賛成したためミツハを待ち、そして少し前にミツハも自我を得た。

 

 準備は出来た、しかし彼女達は何も言わないな。

 

 意識はあるし念話なら話せるのだが。

 

 「準備は出来た。フタバ、ミツハ、ヨツバ、始めるぞ」

 

 『お願いいたします』

 

 三人揃った念話が聞こえてくる、返事を聞いた私は三人に最後の仕上げを行った。

 

 それから僅かな時が経ち、ゆっくりと目を開けた三人に私は声をかける。

 

 「おはよう、私の娘達」

 

 

 

 

 

 

 その後、まともに立つ事も出来ないまま必死に体を起こし私に挨拶をしようとする三人に、私は正式な挨拶はある程度まともに動けるようになってからで構わないと話した。

 

 三人が早く動けるようになりたいと言った為、すぐに慣らすための訓練を開始する事にした。

 

 私は訓練をカミラとヒトハに任せ、現在私達が住んでいる家の隣へと向かう。

 

 娘が三人増え、部屋が足りないので対策をするためだ。

 

 これから更に人数が増える事が決まっているので、私は今の家を増築するよりも新しく建ててしまった方が良いと考えている。

 

 カミラとヒトハも新しく家を建てる事に特に反対する事は無かった。

 

 ただ、カミラからは以前の家も残してくれと言われたので今まで住んでいた家もこのまま残す事にする。

 

 私は何も無い土地の前に立ったまま、どういった家にするかを考える。

 

 ウルグラーデに持っていた屋敷。あれは知識にある洋風と言う物の見た目に近く、外見も悪くはなかった。

 

 あれを手本にして規模を大きくした物を建てよう、念のために後々増築出来る様にもしておこう。

 

 どういった物するか決めてしまえば、建築自体は魔法で簡単に出来る。

 

 中の椅子やテーブルなどは……木を使おうか。

 

 私は建物の本体を作り上げ、内装を細かく作り始める。

 

 私とカミラは勿論だが、ヒトハ達四姉妹も他の使用人と分けた方が良いかも知れないな。

 

 一階は応接室や来客用の食堂、厨房、倉庫への入り口などを置く。

 

 二階は姉妹の配下の使用人達の部屋と厨房、食堂、休憩室、風呂。

 

 三階は私とカミラ、四姉妹の部屋と食堂、厨房、談話室、風呂にしよう。

 

 各階に複数のトイレも完備しておく。

 

 応接室と来客用の食堂もだが、使う機会は来るのだろうか。

 

 屋敷内の明かりなどの設備は魔道具を使用するようにしよう。

 

 私の構成物である闇の塊で常に環境が調整されている月は魔力が切れる心配が無いので、これが一番いいと思う。

 

 庭は……月の拠点全体が庭のような物だから必要無いか。

 

 私は色々と考えながら手早く屋敷の中を整えていく。

 

 所々手を止めてどうするかを考えながら作業を進め、昼食前には屋敷の準備が整った。

 

 取り敢えずはこれでいいだろう。何かあればその都度変えて行くとして、後は引っ越しだ。

 

 

 

 

 

 

 昼食時に新しい屋敷を作った事と、今日の訓練が終わった後に引っ越す事を伝える。

 

 食事の後、カミラとヒトハは再び三人の訓練へ向かった。

 

 やがて夕方になると訓練を一度終了し、引っ越しをする。

 

 妹達はまだまともに動けない為、見学だ。

 

 夜、夕食を食べた後にカミラと訓練を交代したが、ヒトハが最初に体を得た時とほぼ同じ道を辿っていた。

 

 ふらふらとぎこちなく歩き、足元に躓き、隙間に引っかかる。

 

 ふとヒトハを見ると、恥ずかしそうにしていた。

 

 「ヒトハ、どうした?」

 

 私はヒトハの様子を見て声をかけた。

 

 「主様……その、私もあのような状態であったのだと思うと少し……恥ずかしく思いまして」

 

 なるほど、自分の事を重ねているのか。

 

 「気にするな。以前に話したと思うが、私も魔法の習得時には地面に頭から突っ込んでいた。私の時は今のように見ている者はいなかったが」

 

 ふらつきながら、体に慣れるために簡単な訓練を行っている三人を見て話しをする。

 

 「そうですね……知っているのは主様とカミラ様だけですので、気にしない事に致します」

 

 「そうするといい。しかし、体を得る前はよく話していたが、今は全く話す事無く黙々と訓練をしているな」

 

 「慣れる事が出来なければいつまで経っても主様に正式に仕える事が出来ないので、必死なんだと思います。体に慣れて仕える事が出来れば以前の様に戻るでしょう」

 

 「焦る必要は無いのだが」

 

 「あの子達自身が早く仕えたいと思っているのです……駄目でしょうか?」

 

 「彼女達がそう望んでいるのなら構わない」

 

 ヒトハの雰囲気や三人を見る目が少し柔らかい気がする。

 

 本人も気が付かない内に、少しずつ姉らしくなっているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 三人の訓練は進み、やがて日常生活に問題は無くなった。

 

 そんなある日、正式に挨拶をするために私の部屋へ行く事を許可して欲しいとヒトハから頼まれた。

 

 断る理由など無い私は、それを許可した。

 

 そして現在、私の部屋で三人が跪いている。

 

 跪かれている私の後ろでは、ヒトハとカミラが控えて三人を見守っていた。

 

 「これからも主様に尽くす事をここに誓います」

 

 普段とは全く違う態度であいさつをする三人に私は言う。

 

 「三人とも、いつも通りで良いぞ」 

 

 そう言うと三人はすぐに立ち上がりそれぞれ微笑みながら話し始める。

 

 「ご主人様は堅苦しいのがお嫌いですものね」

 

 そう言って柔らかい微笑みを浮かべるのは次女のフタバだ。

 

 身長は161㎝。青く長い髪を三つ編みにしていて、見た目は二十歳程の少々青白い肌をした女性の姿をしている。

 

 彼女は誰に対しても微笑みを絶やさず穏やかで丁寧な言葉で話す。

 

 家事などが好きでよく調理を手伝っている、私から見るとおしとやかな感じだな。

 

 「ヒトハお姉ちゃんがこういう時はこうした方が良いって言ってんだけどなぁー」

 

 身長は142㎝。紫色の短めの髪をサイドテールにした、一五歳ほどの見た目をした肌の白い少女が軽い口調で話す。

 

 彼女が三女のミツハだ。

 

 彼女は道具などの構造を見るのが好きで、好奇心が強く、落ち着きがなく、騒がしく、不真面目で誰に対しても馴れ馴れしい。

 

 流石に私相手には許可が無い限りしないが、かなり自由に育った元気な子だ。

 

 「だから私はいつも通りでいいって言っただろうが……」

 

 この言葉使いが少々荒い娘が四女のヨツバだ。

 

 赤く長い髪をポニーテールにして二十三歳ほどの年齢を想定した見た目をしている。

 

 肌は褐色、身長は175㎝で、かなり背が高い。

 

 彼女は戦闘訓練がお気に入りだ。

 

 これからの訓練が楽しみなのではないだろうか。

 

 何となく軍人の様な、冒険者のような雰囲気を感じる。

 

 「そんな事言ってー、ヨツバ滅茶苦茶緊張してたくせにー」

 

 ミツハがヨツバに、にやつきながら言う。

 

 「うるせえぞミツハ!お前だって大人しく黙ってただろうが!」

 

 「二人とも静かにしないと駄目よ?」

 

 フタバが二人をなだめようとする。

 

 「フタバお姉ちゃんだってそわそわと落ち着きなかったじゃん、それに主様に言う言葉を何度も練習してたの知ってるからねー?」

 

 「なっ!?」

 

 ミツハの言葉は事実だったのだろう、フタバの顔がほんのりと赤く染まる。

 

 「三人共、言い争うのはそこまでにしなさい……ミツハ、許可が出るまでは主様に礼儀を尽くすのは当然の事です」

 

 私の隣で控えていたヒトハが騒ぎ始めた妹達を止める。あの堅苦しい態度と言葉はヒトハがさせたのか。

 

 ヒトハの言葉で静かになった三人に私は声をかける。

 

 「これからまだ覚えて貰いたい事がある。使用人としての仕事はもちろん、魔法や戦闘訓練も残っているからもうしばらく頑張って欲しい」

 

 「かしこまりました」

 

 三人が綺麗に声を揃えて言う。

 

 「それから、これからも今のままの態度で構わないし、娘として甘えたい時には遠慮なく来るといい。カミラとヒトハもな」

 

 「は、はい……」

 

 私の言葉を聞いた三人は、気恥ずかしそうに返事をして退室した。

 

 ヒトハも私達に一礼し、妹達の後について行く。

 

 「あんなに動揺しちゃって可愛いわね。ヒトハもちょっと赤くなっていたみたいだし」

 

 四人が出て行った後、微笑みを浮かべたカミラがソファに座りながら言う。

 

 「子が親に甘えるのは当然では無いのか?少なくとも私は甘えられて嫌な気分にはならないが」

 

 「皆の前であんなに堂々と言われたら……流石に恥ずかしいかもね?」

 

 「皆と言っても部外者がいる訳では無いだろう、全員私の娘だぞ?」

 

 「そうなんだけどね……まあ問題無いと思うわよ?」

 

 「そうか」

 

 「これから三人は魔法の勉強と戦闘訓練をするのよね?」

 

 「そうだ。以前のように勉強は私が教えようと思う、お前とヒトハには戦闘訓練を頼みたい」

 

 「良いわよ、一対三も楽しそうだし」

 

 「ヒトハにも手伝って貰えよ?」

 

 「もちろんよ。人数が増えたから一対一以外にも色々と出来るわ……楽しみね」

 

 カミラも戦闘は好きだからな、四女のヨツバと気が合うかもしれない。

 

 私はこれから一段と騒がしくなると思いながら、席を立った。

 

 

 


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