少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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067-03

 

 出会ってすぐに彼らを無力化した私は、彼らと関わる事にした。

 

 言葉を話し意思の疎通をしている彼らは、知的生命体と呼べるのではないかと考えたからだ。

 

 私に身振り手振りで意思を伝えようとする彼ら、私は言語が習得出来るか確認するために、しばらく彼らと生活を共にした。

 

 どうやら、彼らは私を特別な存在だと考えている様だ。

 

 何が原因なのかは分からない。

 

 私は特別な事をした覚えは無い、彼らから見たとしてもその様な事はしていない筈だ。

 

 言葉を覚えた私が初めて話した時は少し騒ぎになったが、彼らは話が出来る事をとても喜んでくれた。

 

 

 

 

 

 

 会話が出来るようになってから少し時が経つと、彼らは自らを人間と言う様になった。

 

 彼らの事を私が暫定的に人間と呼んでいた影響だと思う。

 

 私は言葉を覚えてから彼らと共に住む事をやめたが、彼らのもとには頻繁に訪れていた。

 

 そんなある時、私は娘達も彼らと交流させておこうと考える。

 

 私は強制では無いが、興味がある者は彼らと交流を持って欲しいと皆に話した。

 

 するとカミラとヒトハ、フタバ、ミツハ、ヨツバの四姉妹、侍女達の多くも興味を持ち、彼らの元へと時々訪れるようになる。

 

 彼らは突然訪れた彼女達に対して警戒したが、私が彼女達の事を仲間だと説明すると安心してくれた。

 

 私や娘達を特別扱いする態度は全く変わっていない。

 

 娘達の言語の問題に関しては魔法を使った。

 

 私が魔法を使わず、わざわざ言語を覚えたのはそうしたかっただけだ。

 

 彼らと交流する事が彼女達にとって良い刺激になればいい、そんな事を考えながら私は彼らと交流する娘達を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 ある日、彼らは私達の話している言語を知りたがった。

 

 私はひたすら頭を地面に付けて頼む彼らに、私達が普段使用している言語を教える事にした。

 

 話せるようになる事は悪い事では無いし、簡単な事を多少教えれば満足するだろう。

 

 

 

 

 

 

 私は彼らを侮っていたようだ。

 

 簡単な事を教えれば満足すると思っていたのだが、気が付けば殆どの者がかなりの言語を習得していた。

 

 そしていつの間にか、私達の言語を一定以上話せるようになった者の中から選ばれた者達を選び、新たな地へと送り出すという風習が出来ていた。 

 

 どうしてそんな事をするのか彼らに聞いてみると、増えた数を減らすためだそうだ。

 

 それは追い出されるという事なのではないだろうか?

 

 彼らの様子を見ると、選ばれた者達は全員が選ばれた事を喜び、選ばれなかった者達は選ばれなかった事を泣きながら悔しがっていた。

 

 私には全く理解出来なかったが、選ばれる事は彼らにとって嬉しい事の様だ。

 

 詳しく話を聞いても「これは嬉しい事」といった意味合いの事しか言わない。

 

 私はそれ以上聞く事をやめ、旅立つ彼らを見送る事にした。

 

 

 

 

 

 

 ある時期から彼らの私達への扱いが、特に私への扱いが更に変わった。

 

 当初から私は彼らに特別な存在だと思われていたが、彼らはどれだけ世代を重ねても変わる事無く訪れる私達を見ている。

 

 恐らくそれが原因で、私達を自分達とは違う遥か格上の存在なのだと認識した様だ。

 

 更に、私に侍女隊の者達が跪く光景を見た彼らは、私が最上位の存在だと考えたらしい。

 

 

 

 

 

 

 彼らと娘達の交流が始まってから時が経ち、娘達は一人、また一人と交流をしなくなり始め、月で過ごす生活に戻った。

 

 元々強制ではない。これからも交流したいのならすればいいし、したくないのならしなければいい。

 

 そして、彼らとの交流をする者が数人程になったある時、彼らは姿を消した。

 

 交流を続けていた侍女からの報告を受けて私が訪れた時、そこには荒野が広がり、彼らが居たという痕跡も無くなっていた。

 

 全滅したのか移住したのかは分からない。

 

 周囲の森が無くなっているのを見た私は、火山が原因では無いかと考えた。

 

 恐らく噴火の影響でこの場所に住めなくなり、移動したのだろう。

 

 仮にこの場所に住んでいた彼ら……人類が全滅していても、ここから旅立った者達がどこかで生き延びているだろう。

 

 観察の続きをするために他の人類を見つけておくか。

 

 私は、彼らが魔法人類のように繁栄する事を期待している。

 

 魔法人類とは、現在の人類と過去に居た人類とを分ける為に私が付けた名前だ、魔法を扱っていたため単純に魔法人類とした。

 

 魔法人類が滅びた時、私は観察対象が消えてしまう事をつまらないと感じていた……と思う。

 

 しかし、今は種の最後を見届ける事が楽しいと感じている。

 

 どの様な道をたどり、どのように滅んでいくのか。

 

 それを見ているのが面白い。

 

 人類には出来る限り生き残って貰いたい。

 

 この先、彼らがこの惑星で繁栄する可能性を感じているからな。

 

 その後、私は別の場所で暮らす人類を見つけたが、彼らはいつの間にか服を着るようになり姿が以前より私達に近づいていた。

 

 彼らはまだまだ進化の途中の様だ。

 

 

 

 

 

 

 新たに見つけた彼らの前に私が訪れた時、彼らは私に平伏して「精霊様」と言った。

 

 そして、私達の言語を儀式の様な物に使っていた。

 

 何がどうなってそうなったのかは不明だ。

 

 ただ、私達……特に私の事が代を重ねても言い伝えられ続けている、という話を聞いた。

 

 私の事を知っているという事は、彼らは私達が交流していた集落から旅立った者達の子孫なのだろう。

 

 しっかりと生き延びていたようだ。

 

 彼らは同じ場所にとどまらず、移動しながら生活していた。

 

 定住する者達と旅を続ける者達がいるのか。

 

 しばらく彼らと過ごした私は月へと帰り、その後は時々イシリスに降りては各地の人類と交流した。

 

 

 

 

 

 

 彼らとの交流の中で、少しずつ姿を変えながら賢くなっていく人類。

 

 しかし、過去に存在した魔法人類と明らかに違う特徴がある。

 

 それは彼らが異常な程に脆い事だ。

 

 簡単な事で負傷し、死んでしまう。

 

 以前に多少高い樹から落ちただけで死んだのを見た時は多少驚いた。

 

 あの程度、魔法人類ならば子供でも軽傷で済む、死ぬ事などまず無い。

 

 魔法人類と同じ感覚で接していると、思わぬ被害を生みそうだな。

 

 彼らのこの脆さは、惑星から魔力がほぼ無くなっている事が原因だと思う。

 

 実際に魔法人類も絶滅間近の者達はかなり脆くなっていた。

 

 現在のイシリスには魔物が存在せず、かなり弱い生物しかいないが、人類はそれらの生物より更に弱い。

 

 私は彼らの先を期待し、道具の作り方や彼らでも出来る火の使い方のきっかけを教えた。

 

 それからの彼らは道具を持ち、火を使う様になった。

 

 これが人類が今まで絶滅せずに生き延びて来られた理由の一つだろう。

 

 武器を用いて非力さを補い、防具を纏い肉体の脆さを補う。

 

 道具を使い作業の難易度を下げ、時間を短縮する。

 

 火は冷気を遠ざけ、武器にも明かりにもなり、物に熱を通す事が出来る。

 

 子を多く産み数を維持し、集団で暮らし隙を無くし、数で攻め獲物の命を奪う。

 

 こうして人類は今も滅びる事無く存在していた。

 

 物を作るという事は大きな可能性を秘めている。

 

 人類はいつか様々な物を作り出し、その脆さをものともせずにこの惑星の支配者になる可能性もある。

 

 私はきっかけを与えたが、ここまでにしたのは人類だ。

 

 この先、何かのきっかけを得る度に彼らは進化し、発展して行くかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 「人類の様子はどう?」

 

 イシリスから戻り屋敷の談話室で四姉妹達とカードゲームをしているとカミラがやって来て私に聞いて来た。

 

 「これからの彼らに期待して道具の作り方と火の使い方のきっかけを教えたが、それなりに使いこなしている様だ」

 

 「魔法人類の時と同じような感じね?」

 

 「あの時より簡単な物だ、きっかけを与えただけで授業などはしていない」

 

 「大丈夫なの?」

 

 「今の所は問題無さそうだ」

 

 「このまま文明を持つまでに進化するかしらね?」

 

 「私がその気なれば手を貸すつもりだが、危機を迎える度に助ける気は無い。場合によっては滅びる事もあるだろう」

 

 そんな事を話しているとゲームに負けてしまった、最下位か。

 

 「やったぜ!主様に勝った!」

 

 「やったー!いえーい!」

 

 「こういった遊びでは御主人様に勝てるので嬉しいですね」

 

 「勝たせていただきました」

 

 彼女達はそれぞれに反応している、勝者はヒトハだが妹達は私より上である事を喜んでいる様だ。

 

 「私はここまでにする、後はお前達で楽しんでくれ」

 

 「はーい」

 

 「またやろうな!主様!」

 

 私は彼女達から離れ、カミラと共にソファに座る。

 

 「お母様。彼らは自分達を人間、人類と名乗っているけれど……本当に見た目が私達に近づいて来ている気がするのよね……」

 

 座った私にカミラが話す、私は遊んでいる四姉妹と侍女達を見ながら答えた。

 

 「それは私も感じている」

 

 最初は獣の血が濃い獣人のような姿だった彼らは、今ではかなり私達の姿に近くなっている。

 

 「以前の人類とは全く別の生物よね?……ここまで似る物なのかしら?」

 

 「今の所、何か関係があるとは思えないが……確かに似ていると感じるな」

 

 以前やって来たニアレ星系種。あの知的生命体も多少違う所はあったが、今思えば大部分は私達や人間に似ていた。

 

 「……知的生命体になるためにはこの形状になる必要があるとか?」

 

 カミラが考え込みながら言うが、恐らく違うだろうな。

 

 「それが合っていれば簡単で良いが、クログウェルや世界樹がいる」

 

 私はカミラを見て話す。

 

 世界樹は植えられている月の拠点の中央付近から動けないが、念話で私達の内の誰かと話している事が多いため、全員と仲がいい。

 

 世界樹の根元に侍女達が集まっている事もある。

 

 「あ……そうね。もしそうならクログウェルも世界樹も居ない事になっちゃうわ」

 

 私の言葉に照れた様な表情をするカミラ。

 

 「案外、ただの偶然かも知れないぞ?」

 

 「それは流石に……そうなのかしらね?」

 

 「もし何か理由や原因があったとしても、簡単には分からないだろうな。時間をかけて研究すれば何か分かるかもしれないが、そこまでして知りたいとも思わない」

 

 「そうね……この話はここまでにしましょうか。私はあの子達に混ざって来るわ」

 

 そう言って席を立ったカミラは四姉妹と侍女達の元へ向かい、歓迎されてその中に加わった。

 

 

 

 

 

 

 道具と火を使うようになった彼らは滅びる事無く世界中に広がって行く。

 

 その間も多少イシリスの環境の変化などがあったが、人類全体を脅かす程の脅威にはならなかった。

 

 人類を始めとした様々な生物が増えて行く中で、イシリスも植物に覆われて行く。

 

 

 

 

 

 

 月に戻って娘達と過ごし再び人類の様子を見た時、彼らは火を使い金属を精錬する事が出来るようになっていた。

 

 更に農耕をするようになり、彼等の生活は一気に安定するようになった様だ。

 

 魔法を全く使わない方法だが、中々上手く行っている。

 

 今のイシリスは魔法人類が滅びた時に比べれば魔力がある、だが新しい人類に魔法を使える者は現れていない。

 

 調べてはいないが、恐らく魔力受容体が元々存在しないのだろう。

 

 他の地域では進化の過程で環境による影響が出たのか、肌や頭髪、目の色が違う者達が現れている。

 

 だが、色が違うだけで大きな差は無く、魔法を使える者も現れていない様だな。

 

 様々な地域を見ていた時に気が付いた事だが、一部の地域に住んでいる者達はまだ精錬や農耕を知らない。

 

 各地で進化にかなり差が出ている事が分かる。

 

 

 

 

 

 

 私は人類を見続けた。

 

 全滅する地域も多く発生したが、人類自体が絶滅するような事は無く、生き残った人類は順調に進化して行く。

 

 そして時が経つにつれ、顔にかなり特徴があるものの、それ以外はかなり私達や魔法人類に近い容姿になっていた。

 

 私は現在、月の談話室で飲み物を飲みながら本を読んでいる。

 

 普段はそれなりの人数が居る談話室だが、今は誰も遊んでおらず数人の侍女が居るだけだ。

 

 「お母様、聞きたい事があるのだけどいいかしら?」

 

 そこにカミラがやって来て話かけて来た。

 

 「何だ?」

 

 「今の人類には妙に体が太い者がいるわよね?」

 

 「いるな」

 

 彼らの中には体格が大きい者達がいる、主に力を必要とする作業をしている者達に多く見られる特徴だ。

 

 「私達や魔法人類とそう変わらない者達も多くいるけど……彼らはなぜあんな事になっているのかしら?」

 

 カミラは不思議そうだ。

 

 「いつもの様に仮説で良いのなら話してもいいが、どうする?」

 

 「聞かせて欲しいわ」

 

 カミラは即答した。

 

 「では話そう。彼らの肉体があの様に変化しているのは、肉体の性能が影響しているのだと思う」

 

 私はカミラに話し始める。

 

 「性能……力とか速さの事?」

 

 「そうだ。より強い力やより速い動きを得るためだ」

 

 「何でああなるの?」

 

 「カミラ、魔法人類と人類。何が一番違うと思う?」

 

 私に問われ、しばらく考えてからカミラは答える。

 

 「……魔力かしらね」

 

 「そう、魔力だ……魔法人類は魔力で肉体が強化されていた。彼らは力の源が魔力だったため、肉体があまり変化しなかったのだと考えている」

 

 「じゃあ……人類は何を力の源にしているのかしら?」

 

 考えるような仕草をするカミラ。

 

 「人類は魔力が使えず、力の源は肉体のみだ、強くなるには肉体自体を強化するしかない」

 

 「なるほど……」

 

 納得したような表情だな。

 

 「もし人類に魔力を使える者が生まれた場合も、程度の差はあるだろうが極端に肉体が発達する事は恐らく無いと思う」

 

 「……魔力的な強化が圧倒的に上で、肉体的な強さがほぼ必要無いから?」

 

 カミラが大体言いたい事を言ってくれた。

 

 「その通りだ。まとめると、魔力的に強化されていた魔法人類は肉体の強さがほぼ必要無いため細身の者が多く、肉体自体を強化するしかない人類は体格が大きくなるという事だな」

 

 「なるほど……お母様は仮説というけれど、説得力が凄いわね」

 

 「どんなにそれらしく言っても仮説は仮説だ」

 

 私達はそれから部屋に侍女が増えるまで雑談をしていた。

 

 

 

 

 

 

 私はそれからも人類の進化を見続け、時々イシリスへ向かう日々を送る。

 

 そしてある時、人類初だと思われる文明が生まれていた。

 

 すぐに生活している様子を見に行ったが、実際に見て私は彼らの成長を感じた。

 

 洞穴や森で生活していた彼らは、文明を起こすまでに進化したのだ。

 

 それから私はこの文明を訪れながら過ごしていたが、やがてイシリスの各地の大きな川の周辺でも新たな文明が生まれ始める。

 

 私は新たな文明が生まれる度にその文明へ向かい、見て回った。

 

 初期の文明は文字などが無かったが、いくつかの文明が現れて消えた頃には文字を使う文明も現れた。

 

 地域によって使う文字や言葉は勿論、その文明のみの技術や発明など、多くの違いがあった。

 

 私はそれらの文明全てに関わり続けた。

 

 多少私の影響を受けた文明もあるが、彼ら独自の文明を壊す程では無かったと思う。

 

 文明を起こした人類がどこまで行く事になるのか、これからも見せて貰おう。

 

 

 

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