少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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068-02

 

 月に戻った私は、信長を眷属化する前に最後の説明と確認をした。

 

 ジャンヌにも眷属化する前に短命種を長命種に変える実験でもあるという事は伝えていて、彼女も理解した上で眷属となった。

 

 この事はカミラと侍女隊の者達も全員知っていて、もし異常があれば私に連絡が来るようになっている。

 

 そして私の話を聞いた彼は、迷う事無く眷属になる事を了承した。

 

 

 

 

 

 

 「光秀は討たれたか」

 

 「お前の死体が見つからなかった事で、何処かで生きているのではないかという話が出ているな」

 

 「見事に的中しているでは無いか!」

 

 着物姿の信長が笑いながら言う。

 

 彼の立場は、私の眷属であり友人であり……月の警備隊だろうか?

 

 警備隊と言っても彼一人な上に、全員が彼より遥かに強いので今はあまり意味は無いかも知れない。

 

 現在は彼が気になっているであろう事を話して聞かせている所だ。

 

 「天下統一。今となっては何と小さき事か……宇宙はどこまでも広い」

 

 不意に彼はそう呟いた。

 

 信長は月から地球を見ている。

 

 イシリスは今、人類から「地球」と呼ばれている。

 

 今ではイシリスと言っても人類には伝わらない為、私達も彼らの呼び名を使う事にした。

 

 彼は始めて月から地球を見た時、大きな衝撃を受けた様だ。

 

 日本の狭さは知っていたようだが、宇宙の広さを知ると彼は言葉を無くした。

 

 その時、今まで抱いていた野心が消えたらしい。

 

 今の彼は私達の教える事を身に着けている途中だ。

 

 何が起きるか分からない宇宙では戦闘技術と魔法は覚えておいて損はない。

 

 最低限の知識と力を身に着けなければ自由は無い事を伝えた私に、彼は一言「道理」と答え、熱心に学び始めた。

 

 女子供に完膚なきまでに敗北する事に我慢出来ないのではないかと思っていたが、そんな事は無かった。

 

 「姿は人でも、お主らは人ではない。人をやめたばかりの己が太刀打ち出来るなどと考えていない」

 

 そう彼は語り、挑み続けた。

 

 カミラとヨツバが一番彼を気に入っている。

 

 戦闘訓練的な意味で、らしいが。

 

 フタバ、ジャンヌは男が私の眷属に入る事を快く思っていないようだが、私が決めた事ならと納得している。

 

 ヒトハは私が決めたのなら何も思う所は無い様で、ミツハは信長にも絡んでいるため嫌いという訳ではないだろう。

 

 多少問題もあるかもしれないが、今の所全員の関係は悪くない。

 

 

 

 

 

 

 「まずは念話を覚えてもらう」

 

 私は基礎を習得した信長にまず念話を教える事にした。

 

 何かあった時、連絡出来ないのは困る。

 

 「念話か、どんな物なのだ?」

 

 『これが念話だ、分かるか?』

 

 私が念話をすると信長は目を見開く。

 

 「これは何とも不思議な感覚だな……」

 

 念話を受ける感覚は実際に体験しなければ分からないだろうな。

 

 「では、授業を開始しよう」

 

 「頼む」

 

 私の言葉に、彼はそう言って姿勢を正した。

 

 

 

 

 

 

 信長は中々早く念話を覚えた。

 

 私は彼が念話に十分に慣れた頃、世界樹の元へと連れて行く。

 

 「……見事な大樹だ」

 

 信長はそう呟き、世界樹を眺めた。

 

 「世界樹と言う、仲良くしてやってくれ」

 

 「仲良くだと……?」

 

 『お?新しい子だよね?よろしくねー』

 

 信長は軽く体を反応させたが、すぐに世界樹へと目を向ける。

 

 「念話……?この樹か?」

 

 『目の前の樹がボクだよ、よろしくね信長君』

 

 「……よろしく頼む。ここに居ると愉快な事ばかり起きるな」

 

 「のんびりと日々を過ごす事の方が圧倒的に多いぞ。ジャンヌとお前はその長い時を耐える事が出来るかが問題だが」

 

 「やってみれば分かる、その為に儂らはいるのだろう?」

 

 「そうだな、耐えられなくなったら言え。死ぬか耐えられるようにするか選ばせてやる」

 

 「心得ておこう」

 

 「よし、では行こうか」

 

 『え?ちょっと早くない?』

 

 「信長、世界樹は大抵念話で誰かと会話している。声をかけられた時、気が向いたら話し相手になってやってくれ」

 

 「分かった。世界樹よ、また会おう」

 

 『信長君、またねー』

 

 信長が笑いながら世界樹に声をかけ、そのまま再び授業へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 時は流れ、ジャンヌと信長が私の眷属になり数百年は過ぎたはずだが、ジャンヌと信長に異常は見られない。

 

 これは予想以上にいい結果だ、このままどこまで問題無く過ごせるか試そう。

 

 現在の世界は二人が人であった頃から大分変わった。

 

 日本も他国と関係を持つようになり文化が混ざり合い発展している。

 

 世界の国々も、戦争は起きているが以前よりは落ち着いてきたように見える。

 

 色々な事があったが、私の中で一番大きかった事は科学を知った事だ。

 

 その言葉が彼らの歴史に現れた事は非常に興味深かった。

 

 人類の「科学」と私の中に在る「かがく」が同じかは分からない。

 

 その言葉しかなく、どんな物かは分からないからだ。

 

 私は彼らの「科学」が「かがく」だと思う事にした。

 

 また同じ名を耳にしたら、その時に考え直せばいいだけだ。

 

 科学を発見した後、彼らは科学を使い発展していった訳だが、その途中で私は考えた。

 

 魔法人類の時は姿を隠しひっそりと紛れ楽しんでいたが、今度は私達が自由に世界を楽しみつつ、出来るだけ私達の正体が分かりにくい状態を作れないか……と。

 

 私達の正体が、力が全人類に知られてしまうと、自然な反応を楽しめない。

 

 恐らく大半が首を垂れ、何でも言う事を聞くようになってしまうだろう。

 

 反抗する者や意に介さない者も勿論いるだろうが、恐らく多くはないと思う。

 

 それでは駄目だ。

 

 私は出来るだけ彼らが自由に過ごしている世界を楽しみたい。

 

 そして、私は環境を整える事を決める。

 

 普段やらない事をしてみるのも面白いかも知れないしな。

 

 

 

 

 

 

 皆にも協力を頼んだ所、カミラと信長が食いついた。

 

 私がどういった状態を目標にしているかを聞いた二人が、自分達に任せて欲しいと頼んで来たのだ。

 

 私が「二人に関係なく私は勝手に動くが、それでも構わないのなら任せる」と言うと、構わないと返答された。

 

 やる気を見せる二人を見て好きにさせてやろうと思った私は、二人に任せる事を決める。

 

 カミラからどうしても私が必要な時は手伝って欲しいと言われたので、それも了承した。

 

 私の力では無く、私が必要な時と言っていたが、何をする気なのだろうか。

 

 その後、使える人間を引き込んで使ってもいいかと二人から提案され、問題を起こさないなら良いと認めた。

 

 侍女隊の者達もカミラに手を貸して色々としていたようだが、楽しんでいるのなら良いだろうと私は特に何も言わず、何をしているかも知る事が無いように注意して過ごした。

 

 

 

 

 

 

 それからある程度の時が経ったある日。

 

 私はカミラ、信長の両名から現在の状況を報告された。

 

 地球上の大国を含む多くの国が裏では私達の支配下にある事。

 

 しかし、特に指示はしておらず、自由にさせている事。

 

 人類の中から集めた私達側の者達が世界中の企業の社長などの要職に就いている事。

 

 その企業などから集めた金が、人類の世界での活動費になっている事。

 

 大体このような事を説明された。

 

 そしてその途中、私は「月の庭園」という言葉を耳にし、カミラに尋ねる。

 

 「この月の庭園という名前は何だ?」

 

 「いつの間にか私達を知る者達からそう呼ばれていたのよね。どうやら侍女達の名前に花に関係したり、それに近い名前の者が多いから……らしいわよ?」

 

 「花関連で庭園は何となく分かるが、なぜ月なんだ?」

 

 人類は私達の拠点に気が付いているのか?

 

 「ああ、それは人類は月に神秘性を感じていて、「人とは思えない美しさ」みたいな意味で使っているみたいよ?」

 

 なるほど、拠点に気が付いている訳では無いのか。

 

 「見た目に惑わされる愚か者達だ……いくら美しくとも触れれば命を奪う毒花だと言うのにな」

 

 信長が愉快そうに話す。

 

 「失礼ね、何もしなければ美しい花のままよ。それと、この名を知っている者は程度の差はあっても裏を知っているという証拠だから。覚えておいてね?」

 

 カミラは信長を一瞥して文句を言った後、私に説明する。

 

 「分かった」

 

 いつの間にか人類に私達の名前が決められていて、定着している様だ。

 

 悪くは無いし、このままでも良いだろう。

 

 「それで……大きな国のトップが入れ替わる時は顔合わせする事にしたから、彼らに会って欲しいのよ」

 

 私が会うのか。

 

 「会ってどうするんだ?」

 

 「これからも励めと言ってやればよい」

 

 私の質問に信長が答える。

 

 そういえば、信長も以前は一国一城の主だったな。

 

 「好きなように話してくれれば良いわよ?」

 

 「必要な時は手伝うと言ったが……必要か?」

 

 「必要よ。彼らは私が月の庭園の支配者だと思っているわ……お母様が居る事を教えないと」

 

 私は支配している訳では無い。

 

 ……いや、そういった部分もあるな。

 

 しかし、人類の世界で過ごす気でいる私は知られない方が良いと思うのだが。

 

 彼らが私を知らず、カミラの事を頂点だと思っているのが嫌なのだろうか?

 

 「北極の地下に謁見用の部屋を用意してあるわ。そこに侍女が転移で連れて来るから……お願い」

 

 「分かった。元々手伝うと約束していたし、色々と頑張っていた様だからな」

 

 私はそう言って報告の続きを聞き始めた。

 

 

 

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