少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 少し修正しました。

 書き溜めしていると、現時点での設定を忘れますね。





068-04

 私は帝母の時の様な服装に着替え、北極の地下にある謁見室へ移動する。

 

 やりすぎない程度の装飾が施された美しく広大な空間に、私の椅子が用意されている。

 

 せっかく娘が用意してくれた場所だし使わせて貰おうか。

 

 そう思いながら、用意された席に腰を下ろす。

 

 私の右側にカミラが立つ。

 

 一段下がった位置の両脇には四姉妹が二人ずつに分かれて立ち、正面の扉まで侍女隊の者が一定間隔で並び両脇を固めている。

 

 「カミラ」

 

 「なに?お母様?」

 

 「帝母だった頃を思い出すな」

 

 「そうね」

 

 「少し会話すれば良いのだな?」 

 

 「話す内容は自由にしていいから。お願い」

 

 「分かった」

 

 

 

 

 

 

 「日本国内閣総理大臣、松本 英明(まつもと ひであき)様。次期内閣総理大臣、荒谷 和幸(あらや かずゆき)様。ご両名が参りました」

 

 「入れなさい」

 

 カミラの言葉で扉が開き、年配の男とそれなりに若そうな男が入ってくる。

 

 二人はゆっくりと歩いて近寄って来るが、若い方の男は少し震えているな。

 

 私達の見た目は人類の女性と大して変わらない。

 

 そこまで怖がるような姿はしていないはずだが。

 

 やがて二人は丁度良い距離で止まる。

 

 すると年配の男が跪き、もう一人がそれを見て慌てて真似た。

 

 「日本国内閣総理大臣、松本英明でございます。御身にお目通り出来た事、心より嬉しく存じております……」

 

 松本英明と名乗った男に目配せされ、もう一人も話し始める。

 

 「じ、次期日本国内閣総理大臣、荒谷和幸でごじゃいます……っ!?」

 

 噛んだな。

 

 すると噛んだ本人だけでなく隣の者まで固まった。

 

 少し緊張をほぐしてやるか。

 

 「荒谷和幸と言ったな。私は故意でないのなら失敗など気にしない。ゆっくりでいい、もう一度言ってみろ」

 

 「は、はい!……次期日本国内閣総理大臣、荒谷和幸でございます。御身にお目通り出来た事、心より嬉しく存じております」

 

 「丁寧な挨拶ありがとう。しかし、私はお前達のような改まった話し方をする事が苦手でな、多少無礼でも許して欲しい」

 

 二人は黙って聞いている。

 

 「私の名はクレリア・アーティア。お前達が月の庭園と呼んでいる者達の支配者という事になっているが、そんな偉そうな物では無い。あえて言うなら……彼女達の親だな」

 

 そう言うと跪いている二人の困惑が伝わる。

 

 カミラが微笑んでこちらを見ているのを感じるな。

 

 「日本国は私達の事を世界から隠す事に尽力してくれているそうだな。娘のカミラが色々と無理を言うかもしれないが、どうしても無理なら私に言うと良い。説得してやろう」

 

 カミラが微妙な表情をしているのを感じる。

 

 「ありがたく存じます」

 

 私の言葉に年配の男が答えた。

 

 

 

 

 

 

 その後少しだけ話し、彼らは帰って行った。

 

 「本当に少し話しただけだな」

 

 「謁見なんてそんな物よ?」

 

 「そうだったな」

 

 二人が帰った後、私は皆に後を任せて南寄り島へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 侍女に連れられ戻った二人の男は黙ったまま総理官邸の部屋へと戻ると、力が抜けたように椅子に座った。

 

 「お前……心臓が止まるかと思ったぞ……」

 

 「すいません……。あんなに緊張したの生まれて初めてで。……あの場所は多分……総理官邸の地下じゃないですよね?松本さんは何か知ってますか?」

 

 「地球の何処かの地下らしいぞ、転移で俺達を移動させているらしい」

 

 「は……?転移?……何だそれ!?完全にSFかファンタジーじゃないか……便利だろうな」

 

 「……荒谷。お前意外と総理大臣に向いてるかもな」

 

 「だって何と言うか……俺の失敗も軽く流してましたし。人間よりよっぽどまともに見えましたよ?……凄い美人だらけでしたし……特にお母様……クレリア様が」

 

 「言ったろ?多少失礼な程度で怒るような方達では無いと。敵対しなければかなり温和な方達なんだ……変な気を起こすなよ?」

 

 「でも、昔のトップは消えてるんですよね?」

 

 「敵対したからだろうな。隠れようとしているあの方達の事を世界に広めようとしたか……排除しようとした。だから消された」

 

 「なるほど……という事は、どうせ俺達が想像出来ない程強いんでしょう?」

 

 「ああ……具体的には見た事は無いが、地球程度なら簡単に壊せるそうだ」

 

 「マジか……。ははっ!本当にファンタジー世界じゃないですか……」

 

 「トップが消えた時に、敵対するとどうなるか他の国も知ったはずだ。だが謁見前に言ったように、ただ人類を使っている訳じゃなく恩恵もある。資源や食料を融通してくれたり、大きな災害時は月下グループとして援助をしてくれる事もある」

 

 「月下ってそうだったんですか!?」

 

 頭だけを松本に向けて声を上げる荒谷。

 

 「後……死者を蘇生したり人を不老不死にも出来るらしいぞ」

 

 「今、死者蘇生と不老不死って言いました?」

 

 「……出来ないと思うか?」

 

 「出来ると思うか……じゃ、ないんですね」

 

 「どう思う?」

 

 「分かりませんよそんな事……」

 

 二人の男はしばらく椅子に身を預けたまま会話していた。

 

 

 

 

 

 

 『お母様、ちょっといいかしら?』

 

 彼らとの謁見を終えてしばらく過ぎたある日、北寄り島の家に居た私はカミラからの念話を受けた。

 

 『どうした?』

 

 『ミツハからの報告にあった物の中にお母様の判断を聞きたい物があるの』

 

 ミツハ達の侍女隊は各国を回って情報を集めていたはず、何かあったのか。

 

 『アメリカで月に行く計画が進んでるみたいなのよ』

 

 そうか、人類は宇宙に進出する気なのか。

 

 私は微笑みを浮かべた。

 

 『どの月だ?』

 

 『私達の拠点がある、この月よ』

 

 なるほど、これは私に相談して正解だ。

 

 『彼らが本当に月に来るようであれば見えない様にしておく』

 

 『止めなくていいの?』

 

 『私達の庭に遊びに来るような物だ。それに彼らには伸び伸びと発展して欲しいからな』

 

 『分かったわ。この件に関しては放置して……成功して月に来そうならお母様に連絡すればいい?』

 

 『それで良い、頼んだぞ』

 

 

 

 

 

 

 「月への有人飛行は成功し、我々の技術力を世界に知らしめることが出来ました」

 

 アメリカのホワイトハウスで大統領達に嬉しそうに報告する男。

 

 それもそのはず、十年以上かけた計画が無事に完了したのだから。

 

 「しかし、不思議な事がいくつも起こったと宇宙飛行士達は証言しています」

 

 「不思議な事だと?」

 

 大統領が聞き返すと、進行役とは別の男が言う。

 

 「危険な状況に陥った時、何故か何事もなく乗り切れたそうです。それらが無ければ生きて帰れていたか分からなかった、と彼らは証言しています」

 

 そこで聞いていた者達の一人が話し始める。

 

 「謙遜だな。彼らの行動力と機転が困難に打ち勝ったのだろう」

 

 他の者もそれに賛同し口々に宇宙飛行士達を褒めたたえるが、大統領である男は何かを考えているように黙っている。

 

 「大統領?何か……?」

 

 大統領の様子に気が付いた進行役が声をかけるが……。

 

 「良くやってくれた。我々は人類として始めての偉業を成し遂げた」

 

 彼はそう言っていつもの様子に戻った。

 

 

 

 

 

 

 「お母様、アメリカの大統領からお礼が届いているわよ」

 

 月の屋敷の談話室で本を読んでいると、カミラから箱を手渡された。

 

 アメリカの大統領?

 

 ……ああ、あの男か。

 

 察しが良いな、私が手を出した事に気が付いたか。

 

 彼はなかなか物分かりのいい男だ。

 

 私が良いと言えば必要以上に気を使わず対応する。

 

 他の国は良いと言っても「そのような事をする訳には……」などと言って余計な事をする時があるからな。

 

 私は彼が謁見に来た時に堅苦しい事が嫌いだという事を話していた。

 

 だからこその対応だろう。

 

 各国の代表の中で一番気を使ってくれているのは彼かも知れない。

 

 「古書か」

 

 「お母様の好みに合わせたのね」

 

 彼がくれたのは古書だった。私が読書好きだという事を覚えていたようだ。

 

 私は読んでいた本をしまうと、贈られた本を読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 カミラと信長による世界への手回しはほぼ形になり、月の皆も地球で問題無く活動出来るようになったある日。

 

 月の屋敷の談話室で雑談していた私は、カミラに相談を持ち掛けられた。

 

 「金が余っていると?」

 

 「ええ、人類の通貨が集まりすぎているの。人類の社会で色々出来るように集めたのだけど、溜まりすぎちゃって……使わないと色々と不味いわ」

 

 「好きに使えばいいだろう、なぜ私に言う?」

 

 「お母様のお金だからよ?他の皆には既に人類の通貨は持たせているわ。お母様はお金を使わないから溜まる一方なのよ」

 

 なるほど。

 

 私は人間の世界で金を使うような事はしていないし、大抵自分でどうにか出来る。

 

 「それで、私の分の金は全部でいくらあるんだ?」

 

 「お母様は日本がお気に入りのようだから円で言うわね?約一京五千兆円よ」

 

 「それは多いのか?」

 

 「多いわよ?出来れば何かに使って欲しいわ」

 

 「使い道などそう無いぞ。ばら撒く訳にもいかないだろう?」

 

 「……やめてよ?」

 

 「分かっている。しかし……地球で人類の繁栄と四季を楽しんでいるが、金の使い道を考えなければな」

 

 カミラがわざわざ私に使えと言ったのだ、使わなければ問題があるのだろう。

 

 こんな事で考え込む事になるとは思っていなかったな。

 

 「主様、孤児院などを経営されてはいかがですか?」

 

 傍に控えていたジャンヌがそう提案して来た。

 

 「孤児院か、子供を援助する施設だったか?」

 

 「はい。主様は子供にお優しいので……それに私達の為にもなります」

 

 「どう言う事だ?」

 

 私が問うと、ジャンヌは微笑んで答える。

 

 「孤児院の子供達を教育し、その中で見つけた優秀な者達を私達のグループへと就職させるのです。もちろん他の子供達も見捨てる訳では無く、しっかりと教育を施し自立させます」

 

 「なるほど。いい案だと思います」

 

 ヒトハがそう言いながら歩いてくる。

 

 「そう思うか?」

 

 「はい。使い道に困っていらっしゃるのでしたら、こういった意見を取り入れてみてはいかがでしょうか?」

 

 ヒトハは話しながら私の隣に控える。

 

 「主様だ!何話してるの!?」

 

 「御主人様、今日はこちらにいらっしゃったのですね」

 

 「あー、訓練はやっぱ楽しいな。……主様!おはようございます!」

 

 私が金の使い道を考えている事を話すと、皆で考えようという話になった。

 

 「世界中の強者を集めた大会を開きたいです」

 

 ヨツバがそんな事を言う。

 

 「またそっち系じゃん!……私は兵器の実演販売会とかしたい!」

 

 ミツハは人類の機械や兵器が好きだからな。

 

 「ミツハちゃん。今の人類社会ではそれは難しいわよ?……御主人様、私は料理大会を開きたいです」

 

 フタバは料理か、良いな。

 

 世界の何処かに腕の良い者が埋もれているかも知れない。

 

 「私は勿論、孤児院です。子供達を救う事が出来て、更に私達の為にもなります」

 

 ジャンヌは孤児院、全く問題無いな。

 

 「私は学校を作る事を提案いたします。そして、優秀であるにもかかわらず貧困などで見合った教育を受けられない者達を受け入れます。これはジャンヌが提案した孤児院との連携も考えております」

 

 「孤児院の子供達が成長した時にその学校に入学させるという事?」

 

 「はい」

 

 カミラの質問に答えるヒトハ。

 

 なるほどな。

 

 ジャンヌがヒトハと握手してお礼を言っている。

 

 「皆ありがとう。いずれいくつかを、場合によっては全てやろうと思う」

 

 私は皆に礼を言い、やがて話は他の話題へと移った。

 

 

 

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