これ以降時間の流れが遅くなり、だらだらと長くなります。
内容が好みに合わなくなる方もいると思いますが、この様な物も書きたかったので。
主人公には現代のような世界で出来るだけ色々な事をさせたいですが、場合によってはまた時間の流れが加速するかも知れません。
北寄り島の雪景色を背景にして、私はカミラ、四姉妹と共にテレビを見ている。
娘達も人類の世界を楽しむようになり、私は世界各地に家を買った。
金を使うという理由もあるが、本格的に人の中で暮らそうと考えたからだ。
各地の家には現地の人間を多く雇い入れ、管理させている。
侍女隊が直接管理しているのは北寄り島、中島、南寄り島の三つの島だけだ。
畳の居間で大きな炬燵に入って、テレビを見ながらみかんを食べる。
年末はこうして私と過ごす事が定着した。
来年は他の娘達と年末を過ごす事になるだろう。
「もうすぐ今年も終わりだねー」
ミツハが炬燵に首まで入りながら言う。
彼女達も寒さなど全く関係無い体だが、人のように潜り込んでいる。
「そうですね……ヒトハお姉様、おみかんを一つ下さいませんか?」
「良いですよ」
「ありがとうございます」
フタバにみかんを渡すヒトハ、フタバは受け取ったみかんを剥いて食べ始めた。
「カミラ様、今度総合格闘技を一緒に見に行きましょう。特別席を用意するので」
「良いわね。ヨツバがお勧めする試合を見に行きましょうか」
「カミラ様ならそう言うと思ってた!後でじっくり考えとく」
格闘技を見に行く話をするカミラとヨツバ。
皆、私の予想以上に人類の世界に馴染んだ。
信長は世界を歩いて回っていて、たまに帰って来ては皆から微妙な扱いを受ける土産を置いて行く。
本人が言うには、他の地域を回っている内に以前行った所が変化するから飽きないらしい。
ジャンヌは今も私の侍女のまま満足そうに月で過ごしている。
一度私を主神とした神話を作り宗教を起こそうとした事があったが、それはやめさせた。
世界樹は相変わらず念話で誰かとよく話しているが、ただ静かに過ごしている事もある様だ。
《西暦1999年も後僅か!記念すべき西暦2000年が訪れます!》
テレビでは西暦二千年を待つ大勢の人々が映されている。未だに情勢が不安定な地域もあるが、全体的に見れば世界は大体平和だと言える。
現在、私は日本に一番よく滞在するようになっている。他の国にも四季はあるが、日本が一番良いと感じるからだ。
人類が西暦2000年を迎えた後、私は日本の首都である東京に用意した屋敷に住み始めた。
表向きは、私は月下グループ最高経営責任者の一人娘、という事になっている。
時間の流れによって変わる事の無い私達は、時の流れによって違和感が出て来る。
雇っている人類には、私達の姿が変わらない事や、住んでいる者達が入れ替わっても違和感を感じない様にだけ手を加えさせて貰った。
他に害は無いし、給料と待遇は良くしている。
簡単に言うと、敷地内に無料で自宅を用意し家族と共に住む事が出来たり、通常よりもかなり多い給金を貰えたりする。
福利厚生の充実も万全だ。
その反面、求める能力は非常に高い物になっているが。
以前、ミツハに「家の庭に住宅地があるみたい」と言われたが、敷地もそれなりに広い。
侍女隊の者なら広くても少人数で問題無い。
しかし人間の手で維持するのなら相応の人数が必要なため、屋敷には常に一定数の人手が滞在している。
移動は自家用車や自家用ヘリ、自家用ジェットを使う。
人の世界で過ごすなら転移は必要な時だけにしてみたらどうか、とカミラに提案され、それも良いと感じた私は必要な時以外は人類の移動手段を使っている。
雇ってみると、人間のメイドなども中々便利だ。
何かを頼んだ時に、人間の感覚の範囲で決めて用意してくれる。
私は今日、初めてゲームを買いに行く。
カードゲームやボードゲームではなく、ビデオゲームやテレビゲームと呼ばれる家庭用ゲーム機で遊ぶゲームだ。
私が興味を持ったのはごく最近の事で、カミラが私でも楽しめる筈だ、と薦めて来た事がきっかけだった。
目的のゲームはファーストパーソン・シューターだ。
FPSとも呼ばれる物で、一人称視点でゲームの世界を任意で移動して戦うゲームらしい。
カミラが言うにはゲームの視界に映らない物は知る事が出来ず、視界外から気が付かない内に攻撃されたりするらしい。
私は、現実ではどこから何をされようと分かる。それが不可能なゲームなら、いい勝負が出来るのではないか、という事だ。
やってみようと決めた私は、自分で選んで購入するために現在秋葉原に向かっている。
運転手が車を走らせている中、冷蔵庫から牛乳を取り出して飲む。
この牛乳は、新しい人類が飼育している牛と言う動物の乳だ。
モー乳よりさっぱりとしているが、私のお気に入りの一つとなった。
「お嬢様。間もなく秋葉原に到着いたしますが……歩行者天国になっているため侵入は出来ません」
「入り口で降ろしてくれ。お前は何処か近場で駐車して待機していろ、違法駐車などするなよ?帰る時は連絡する」
「かしこまりました、お嬢様」
やがて車が止まりドアが自動で開く。
「到着いたしました」
「行ってくる」
「いってらっしゃいませ、お嬢様」
私は運転手に声をかけ、外に出た。
建物が立ち並び、多くの人々が行き交う街は騒がしい。
周囲の者達が私を見てざわついているが、いつもの様に見た目に反応しているだけだろう。
この付近にゲームを多く取り扱っている店がある、場所は調べて来たのですぐに向かおう。
「ねえ、少しこの辺りを紹介するよ。俺詳しいからさ!」
「目的地は決まっているし場所も知っている、必要無い」
「美味しい店知ってるんだ、おごるよ!一緒にどう?」
「食事をする気分ではないし金もある、他を当たってくれ」
店に行くまで男達のナンパを断りながら移動する。
見た目は子供だというのに、なぜこんなに集まって来るんだ?
ただ、意外と強引な者はおらず、断ると落ち込んではいたが素直に去って行った。
人が多く、何か問題を起こせばすぐに誰かが通報する可能性が高い事が理由だろう。
目的の店を発見した私は、家庭用ゲーム機が置いてある場所へと向かう。
どれが面白いだろうか。
私はゲームが並ぶ棚を見る。
FPSとしか考えていなかった私は、ここで考える事になった。
ゲーム機自体の種類と、それぞれのゲーム機のFPSに分類されるゲームの多さにどれが面白いのか全く分からない。
誰かに聞いて一番人気の物と、後いくつか……いっその事全部買うか?
「あのー、お嬢さん?」
私がそんな事を考えていると隣から女の声がする。
振り向くと黒髪をポニーテールにした若そうな女が私を見ていた。
「何か用か?」
「えっ?あ……えっと……ずっと悩んでいるみたいだからどうしたのかなって思って……」
私は意外と長い間悩んでいたのか?彼女はずっとゲームの前で悩んでいる私を心配して声をかけてくれたようだ。
ついでだ、この子に聞いてみよう。
「最近FPSと言うゲームに興味を持ったのでゲーム機と一緒に買うつもりなのだが。どれが良いのか分からなくてな、考えていたんだ」
「FPSが気になってるの!?」
私の言葉に声を大きくする彼女。
「嬉しい!女の子でFPSする子ってあんまりいないんだよね……私で良ければお勧めを教えるよ?」
それなりにやっているなら何も知らない私が選ぶより良いだろう。
「では頼む」
「任せといて!」
「お勧めするならコールオブフューリーかバトルグラウンドかな」
彼女はそれぞれのソフトを持って来て言う。
「何か違うのか?」
「こっちのコールオブフューリーはどちらかと言うと個人の技術が重要なゲームだね。対戦も色々ルールはあるけど敵を倒さないと貢献した事にならない事が多いかな」
そう言ってからもう一つのソフトを見せて来る。
「バトルグラウンドはチームでの戦いを楽しめるゲームだね。こっちは敵を倒せなくても索敵、回復、補給、占領と言った事で経験値やポイントを貰えるよ。私は初心者ならこちらをお勧めするかな」
「なるほど、役割がある訳だな」
「そう言う事。どちらもオンライン対応でボイスチャットも出来るから、マイクも買うと快適だよ?」
ボイスチャット、会話しながらプレイできる訳か。
「マイクも種類があるのか?」
「あるね。安くても使えるけど、ある程度良い物を選んだ方が快適かな」
ふむ……。
「バトルグラウンドを買おうと思う、マイクも頼んでいいか?」
「任せて!」
「値段は気にせず、一番良いと思う物を紹介してくれ」
「え?良いのは結構するよ?大丈夫?」
「大丈夫だ」
「んー……じゃあ……これかなぁ。私も欲しかったけど手がでなかった奴、三万円だけど……」
「ではそれにしよう」
「ホントに買うんだ。あ、ちょっと待って!?ヘッドセットもあるんだ!」
「ヘッドセット?」
「ヘッドホンとマイクが一緒の奴で、周囲に音が漏れないんだ」
なるほど。だが、私はスピーカーを使っているからな。
「うるさくても問題無い環境だし、スピーカーを使っているから必要無いな」
「意外とお金持ち?」
「それなりにはな」
「あのさ……良かったら一緒にゲームしない?私の周りは一緒にやってくれる人居なくて……あっ!お金持ちそうだからとかじゃなくて……!」
慌てて言い訳する彼女に、私は携帯電話を取り出して差し出した。
「では携帯の番号を交換しよう。やる時には連絡をするし、そちらから連絡してくれてもいい。私はいつでも問題無いから好きな時に連絡してくれ」
「良いの?やった!……えっと、クレリア・アーティアちゃん?……ハーフなのかな?」
「生まれが海外なだけだ……お前は倉森 千穂(くらもり ちほ)と言うのか。よろしくな、千穂」
「よろしくね、クレリアちゃん!」
「そうだ。色々と手伝ってくれた礼に、もしも何かあれば力になろう。覚えておいてくれ」
「あはは……別に気にしなくていいのに。それより、一緒にご飯食べない?」
彼女は笑って答え、一緒に食事を食べに行かないかと誘って来た。
私はその誘いに乗り、彼女と食事をしてから別れ、帰路についた。
「帰ったらゲームが出来るように準備をするか……私だ、ゲームをするための環境を整えて欲しい。……ああ、それはもう買ってある。……それで構わない、頼んだぞ」
帰りの車で家へと電話をして準備を頼んだ、千穂と一緒にやってみるか。