少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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071-01

 

 千穂が泊まりに来た日から時は経ち、7月末。

 

 もうすぐバトルグラウンドコンシューマー世界大会が開催される。

 

 私は明日、アメリカに行く予定になっている。

 

 日本には台風が近づいて来ていたが、飛行機が飛ばないと困るので少し遅れて貰った。

 

 千穂は夏休みだが、それ程頻繁には遊んでいない。

 

 彼女は今、課題や家族との旅行、友人との遊びに大忙しのようだ。

 

 ただ、電話だけはたまにしていて、今も彼女からの電話に出て話している。

 

 「クレリアちゃん、明日出発だよね?」

 

 「ああ、向こうには一週間程滞在する事になる」

 

 「気を付けてね?日本よりずっと危ないから」

 

 「引率者もいるから平気だ」

 

 設定上、私は十三歳の未成年であるため、保護者がついて来る事になっている。

 

 保護者役はカミラにして貰う事にした。

 

 「ご両親の都合がついたの?」

 

 「いや、よく世話になっている親戚だ」

 

 「そっか、ついて来てくれる大人の人がいてくれて良かった。子供が一人で行く訳にはいかないから、行けなくなる所だったね」

 

 「私は平気だが、そうすると向こうの会社が何か言われるだろうな」

 

 人類の法律に引っかかるはずだからな。

 

 「帰ったら教えてね?行ってらっしゃい」

 

 「分かった、行ってくる」

 

 そう言って電話を切る。

 

 「お母様、あの子……倉森千穂さんだったかしら?」

 

 「そうだが、どうかしたか?」

 

 隣にいるカミラが聞いてくる。

 

 「あの子、恐らくお母様が普通じゃないと薄々気がついているわよ」

 

 気がついている?

 

 何故だ?

 

 「……お母様、ゴールデンウイークのお泊りで彼女とずっと一緒に居たでしょ?」

 

 「居たな」

 

 「スポーツもしたわよね?」

 

 「した」

 

 「恐らくだけど、彼女はお母様が全くトイレに行かない事と、彼女が疲れて倒れる程に運動をしても平然としているお母様に疑問を持ったんだと思うわ。彼女から聞いた訳じゃないけど……疑問を持たれるとしたらその二つが思い浮かぶもの」

 

 「なるほどな……それは確かに普通の人間とは言い難い」

 

 「家にいる使用人達は違和感を感じない様にしているけど……彼女にはしていなかったでしょう?」

 

 「していないな」

 

 「トイレは離れている時間を多少作ればその間に行っていると勝手に思ってくれるかもしれないけれど、スポーツは明らかに違和感を感じると思うわよ?……今度からは疲れた演技でもする?」

 

 「わざわざトイレに行く振りをしたり、疲れた振りなどをする気は無い」

 

 「……いいの?」

 

 「やりたくない事をしてまで隠す気は無いぞ?」

 

 「私達も色々と出来る事はするけど、どうしてもばれたくない時はお母様が自分で何とかしてね?」

 

 「ああ、その時は私が自分で何とかする」

 

 「それなら安心だわ。明日はアメリカよね?泊まるホテルはこっちで良い所に変えておいたから」

 

 「そうか、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 飛行機でアメリカにやってき来た私達は、そのままホテルへと直行した。

 

 宿泊先は高級ホテルの最上階か、落ち着けそうな良い所だな。

 

 「明日の九時に出発するから、忘れないでね?」

 

 カミラは私にそう言って冷蔵庫から酒を取り出した。

 

 「分かった」

 

 「この辺りは色々とあるみたいだから、気が向いたら行って見たらどう?」

 

 グラスに酒を注ぎながら言うカミラ。

 

 「そうか、考えておこう」

 

 観光用の地図などが欲しい所だな。

 

 そんな事を考えていると、カミラが本を取り出していた。

 

 「この本のここから……ここまでがこの辺りの店の案内と地図よ」

 

 カミラはその本を私に見せながら説明した後、渡してくれる。

 

 観光用の本を用意してくれていた様だ、カミラは気が利くな。

 

 「ありがとう。これを参考にして行ってみる」

 

 本を受け取り部屋の外へ向かう。

 

 「気を付けてね。それと、あまり都市の中心から離れるとタクシーが捕まらないかもしれないわよ」

 

 「分かった」

 

 

 

 

 

 

 ホテルでタクシーを頼んだ私はまずは本に載っていたケーキ屋に行く事にした。

 

 「ルーズローズに行ってくれ」

 

 「ルーズローズですね」

 

 運転手は目的地を確認し車を出す、流れる景色を窓から見ていると国の違いが感じられるな。

 

 やがて目的の店の前に着き、私は多めに金を払いタクシーを降りた。

 

 店に入りメニューを見ると、日本と大差無いケーキが並んでいる。

 

 ……普通だな。

 

 千穂は海外のデザートは派手な色であまり食べる気にならないと言っていたが、ここでは扱っていないのか?

 

 私が店員に聞いてみると、最近はそういった色合いの物を出す店は減っているらしい。

 

 注文したお勧めのケーキの味は悪く無かった、対応してくれた者にチップを渡し店を出る。

 

 私はタクシーを拾い、今度は本屋へと向かう。

 

 ホテルのタクシーを一日貸し切りにしておくべきだったな。

 

 目的地に着いた私は店を眺めた。

 

 中々大きい店だ、広い上に三階建てらしい。

 

 面白そうな本はあるだろうか。

 

 私はそう思いながら時間をかけて本を見て行く。日本の本もそれなりの数がおいてあるな、言語は英語だが。

 

 千穂の影響で漫画も最近は読み始めているが、そういった本はここで買わず日本で買おう。

 

 一階を見て回り気になった本を買い、二階へ移動中に買った本をマジックボックスへ入れておく。

 

 二階でも同じように見て回り本を購入し、三階へ行くとカフェがあった。

 

 

 

 

 

 

 カフェでミルクティーを飲んでいる間にそれなりの人数に声をかけられた、大体が子供に見える私の事を心配した者だったが。

 

 私は彼らの対応をしながら飲み物を飲み終えると、店の外に出て町を歩いて見て回る。

 

 こうして町を歩き、人類と人類の築いた文明の姿を見る事も中々楽しい物だ。

 

 もし私が一人であったなら、ずっと人の世界を巡りながら興味を持った事に首を突っ込んで回っていたかもしれない。

 

 娘や友人達と共に過ごす時間も気に入っている私は今の所そんな事をする気は無いが、過去には長い間放っておいた事もあった様な気がする。

 

 こうして過去を思い出すと、記憶が薄れている事を感じるな。

 

 長く記憶に残っている者達もいるが、それもやがて忘れて行くのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 そんな事を考えながら街と人類を見ながら歩いて回り、裏路地に入ると私の前にパーカーを着た男が一人現れた。

 

 「かね!カネ!」

 

 その男は下手な日本語で私に叫ぶ。

 

 「下手過ぎて聞き取りにくい日本語だ、もう少し練習しておいた方が良いと思う」

 

 「……んだよ、英語話せんのか。話が早くていい、ガキ……金出せ」

 

 そう言って銃を向けて来る。

 

 オートマチックハンドガンか。人類の武器の一つだが、驚くほど威力が無かったので覚えている。

 

 「人類の武器で私に傷をつけるのは無理だと思うぞ?」

 

 「何だこのガキ……イカれてんのか?……しかしお前、スゲェ美人だな……殺しちまうのは勿体ねぇ」

 

 そう話す男に私は尋ねる。

 

 「一つ聞きたいんだが」

 

 「あ?なんだよ?」

 

 聞いてくれるのか。

 

 「お前の様な者達は皆同じような事を言うが、何かを参考にしているのか?」

 

 魔法人類の頃から大抵こういった男達はまず武器や立場を突き付けて脅し、それから私達の事を手に入れようとしていた。

 

 あまりにも行動が似ている、何か関係があるのかもしれない。

 

 「あ?この方法が楽だからやってんだよ。で……男なら美人を犯したいと思うもんだろうが……」

 

 彼は私の質問に困惑しながら答えてくれた。

 

 つまり、人類も他者から奪う事を考えたのか。

 

 魔法人類と人類は姿だけではなく、こういった所も似ている様だ。

 

 そして、私を捕らえようとしているのは雄の生物的な本能のような物か。

 

 私のこの外見が男の本能を刺激している……という事だろう。

 

 「ありがとう、何となく分かった。礼として見逃そう、どこにでも行くと良い」

 

 「は……?」

 

 私がそう言って彼を避けて歩き出すと、射撃音と共に私の頭へ弾丸が飛んで来た。

 

 「ははっ!なめた口ききやがってガキが!!次は脅しじゃなく当てるぞ?殺しやしねぇよ、連れて帰って楽しまないとな……」

 

 この男、言っている事とやっている事が違うな。

 

 私が人類だったら死んでいたぞ。

 

 「脅しだったんじゃないのか?」

 

 私は弾丸を彼の足元に投げる。

 

 「へ……?どう……なってんだ?」

 

 足元の弾丸が目に入ったのだろう。

 

 男は戸惑ったような声を出しながら足元の弾丸と私を交互に見ている。

 

 「脅しと言いながら私の頭に弾丸が向かって来たが……どういう事だ?」

 

 「な……何なんだお前……!」

 

 震える声でそう叫びながら後ずさる男。

 

 「見逃すと言ったのに、わざわざ攻撃して来るとは」

 

 「ひぃ……」

 

 彼は怯えた表情を浮かべ、小さな悲鳴を残し消滅した。

 

 持ち主の居なくなった銃が地面に落ち始めるが、地面につく前にその銃も消す。

 

 今の私達は死体を残す様な殺し方をしていない。

 

 残しておくと人類の間でそれなりに大きな事件になるからだ。

 

 完全に消えてしまった方が、行方不明として扱われ都合がいい様だからな。

 

 私達が行った解決出来ない殺人事件に余計な人員を使わなくて済むとも聞いている。

 

 そろそろ帰るか。

 

 何気なくここにやって来たが、この辺りはあまり治安が良い訳では無いようだ。

 

 ゴミが多く散乱しているし、さっきの男のような人間も生息している。

 

 処分する事になったが、私が処分した事でこれから被害を受ける者がいなくなったとも言えるな。

 

 私は表通りへ出ると、タクシーでホテルへ戻った。

 

 

 

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