少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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073-03

 

 フリーパスを買い腕に巻きつけ、リズリーランドの入り口に並ぶ。

 

 次々と入って行く人間達を見ながら待っているが、多くの者達はこの場所の雰囲気に当てられて気分が高揚しているようだ。

 

 それは私と共に来ている二人も例外では無く、千穂ははっきりと期待を表し、美琴も落ち着いているように見えてソワソワしているのが分かった。

 

 「園内の所々に更衣室があるから、そこでクレリアちゃんは着替えてね?」

 

 「私達もちゃんとついて行くから安心して、私達は更衣室は要らないからもう準備しちゃうけど」

 

 そう言って荷物から魔女のような帽子を取り出す美琴。

 

 千穂も丈の短い赤いフードマントを出して着ている。

 

 「ぷっ!千穂、怪しい宗教団体みたいだよ?」

 

 「赤ずきんですー!」

 

 私は年相応に楽しそうにしている彼女達を眺める。

 

 人類も魔法人類も、子供達はあまり変わらないな。

 

 騒ぐ二人と共に、私は園内に入る。

 

 「クレリアちゃん、入り口のすぐ傍に更衣室があるみたい……行こ!」

 

 貰った園内の地図を見て千穂が私を呼ぶ、私はそのまま彼女について行った。

 

 

 

 

 

 

 更衣室内で私は仮装衣装を取り出すと、着ていた薄手のセーターとフレアスカートを脱いでバッグに仕舞う。

 

 耳と尻尾を出し入れする所を見せると騒ぎになりそうだから、出しっぱなしにしておこう。

 

 衣装を着て魔道具を起動し、狐面を被る。

 

 「大丈夫?手伝おうか?」

 

 外から千穂の声がする。

 

 「終わった、今出る」

 

 私は外に出る、すると千穂と美琴の驚く声が響く。

 

 「うわー!なにこれ可愛い!お狐様だー!」

 

 「本当に凄いねこれ……きゃ!?耳と尻尾は動くの!?ふわふわだし……やればここまで出来るんだね……」

 

 騒ぐ二人に引かれ、周囲の客も騒ぎ始めた。

 

 「うお!?なんだあれ!?」

 

 「可愛いー!」

 

 「凄い完成度……あんなの見た事無い……」

 

 周囲が騒がしくなったので、私達は移動する事にした。

 

 

 

 

 

 

 「二人とも、平気か?」

 

 邪魔な荷物を預け三人で歩いている私達を、目にした人が立ち止まって眺めたり、写真を撮ったりしている。

 

 「平気だよ?それよりも……写真撮らせて?」

 

 「勿論だ」

 

 千穂は通りすがりのカップルの女性に写真を頼み、三人一緒の写真を何枚か撮って貰った。

 

 「俺、こんな凄い仮装初めて見たよ」

 

 「本当に可愛いわ……私とも撮ってくれる?」

 

 カップルは私達を撮影しながら感想を言い、女性が私と写真を撮りたがったので撮らせた。

 

 「後は二人で撮ろう!」

 

 千穂はそう言うと撮影役を美琴に任せ、抱っこしたり後ろから抱きしめたりと言った写真を撮った。

 

 「クレリアちゃん……私もいいかな?」

 

 美琴がそう頼んでくる、断る理由は無いな。

 

 「良いぞ」

 

 「はい、こっち見て!」

 

 千穂は笑いながら私と美琴のツーショット写真を撮影した。

 

 

 

 

 

 

 私達は注目を集めつつも園内の店を見たり、仮装したまま楽しめる乗り物に乗っていた。

 

 次の乗り物へ向かうと、複数の若者同士が争っているのを見つける。

 

 「こっちが先に並んでたんだ!無理矢理入ってくるな!」

 

 「私達はこの子に並んどいて貰ってたんだー。……ねぇ?」

 

 「どう見ても知り合いには見えないだろ!」

 

 列の割り込みか?

 

 「すまない……あの争いの経緯は分かるか?」

 

 近くで見ていた女性に聞いてみる。

 

 「え?ええ、あの男性のグループが並んでいる前に別の女性グループが割って入って来たの。それで先に並んでいた彼らは文句を言ったのよ、そしたら彼女達が彼らの前にいたあの女性が自分達の為に並んでくれていたって言い出して……」

 

 視線の先には、どう見ても怯えているようにしか見えない女性が居る……本当に友人か?

 

 「あ、クレリアちゃん!?」

 

 やがてリズリーランド側に連絡が行くだろうが、彼女達が居たら私達が乗るのに邪魔だ。

 

 私はそのまま若者達に近づいていく。

 

 「うわー!?何この子!?」

 

 「仮装?すごいわこれ」

 

 私を見た女達は声を上げるが私はそれを無視して言う。

 

 「お前達、喧嘩ならよそでやれ、お前達がいると私達が乗るのに邪魔だ」

 

 「何よこの子……私達は友達なのよ?」

 

 「お嬢ちゃんの出番は無いわよー?」

 

 そう女達は言い、離れる気配を見せない。

 

 「そこの女」

 

 「は、はい……」

 

 私は彼女達に囲まれている女に声をかける。

 

 「お前は本当に彼女達の友人か?」

 

 「ほんとだよねー?」

 

 「アタシら親友じゃーん?」

 

 女達はみんなそれぞれに何かを言っているが……。

 

 違うな。

 

 「お前達は少し静かにしろ」

 

 「……っ!?」

 

 突然女達が静かになる、周囲は急に黙った女達を不思議そうに見ていた。

 

 「正直に答えろ。お前はこの女達と友人か?」

 

 「ちっちち……違いますぅ!」

 

 「そうか、ではこの女達はお前を利用して早く乗ろうとしたんだな?おい女共」

 

 私が振り向いて言うと、彼女達は声が出せないまま身を震わせている。

 

 「乗りたいのなら後ろに並べ、その気が無いのなら何処かへ行け」

 

 私がそう言うと、彼女達は声を上げずに全員走り去って行った。

 

 こんな所で子供の教育をする事になるとは。

 

 「いきなり行っちゃうから心配したよ……」

 

 絡まれた女性と、割り込まれた若者達に礼を言われて戻った私に、美琴がそう言って来る。

 

 「問題無いが、また注目されているな」

 

 「堂々とあんな事したらそうなるに決まってるでしょ……私も心配したんだからね?」

 

 向けられる視線は、感心した様な物と奇妙な物を見るような物が混ざっている。

 

 私のような外見の者が行う事では無かったから、だろうな。

 

 「取り敢えず、並んでこれに乗ろう」

 

 私達は周囲の注目を浴びながら列に並び、乗り物に乗った。

 

 

 

 

 

 

 すっかり辺りが暗くなるとパレードが始まる。

 

 一般の者も飛び入りで参加出来るらしい。

 

 「行くよ!美琴、クレリアちゃん!」

 

 参加出来ると知っていて、千穂が黙っている訳がなかった。

 

 「流石にこんな適当な仮装で混じるのは恥ずかしいんだけど……」

 

 「そんなの関係ないよ!ほら、行こう!」

 

 私と恥ずかしがる美琴は千穂に引っ張られてパレードに参加した。

 

 結局、私達はそのまま長い間パレードに参加し続け、周囲の客も大いに盛り上がった。

 

 その後、夜になり人が減った園内の更衣室で服を着替え、すぐに退園した。

 

 

 

 

 

 

 「あー!楽しかった!」

 

 「ちゃんと休むのよ?明日も行くんだから」

 

 千穂はホテルの部屋に帰るなりソファ倒れ込み、美琴は荷物をいじっている。

 

 「土産を買うつもりなら忘れないようにな」

 

 「大丈夫ー」

 

 買い物は明日の帰る直前にする事になっている。

 

 「食事の前にお風呂入ろうかな……」

 

 「美琴、ここのお風呂三人でも余裕の大きさだからみんなで入ろうよ」

 

 「えぇ?わざわざみんなで入らなくてもいいでしょ……」

 

 「せっかくだし入ろうよー。嫌なの?」

 

 「嫌って訳じゃないけど」

 

 「よし!クレリアちゃんお風呂入ろー?」

 

 「分かった」

 

 ソファに座り二人の会話を聞いていた私は、風呂に入る準備を始める。

 

 

 

 

 

 

 「うわ……凄い白いし……スベスベでプニプニだ……」

 

 美琴が私の体を触って驚いたように呟く。

 

 私の体は、外見は人間の子供だし、肌触りなどにも気を遣っているが、中身は謎の何かだ。

 

 「凄いでしょ?」

 

 「いや……ほんと凄いわ。可愛くて令嬢で体もこんな綺麗って……この先どうなるんだろうね?」

 

 残念ながら、私がその気にならなければどれだけ時間が経とうと変わらない。

 

 「そうだね。悪いけど、これはどんなアイドルでも相手にならないよね……」

 

 「千穂、人には好みと言う物がある。私のような容姿がどうしても駄目だという者だっているはずだ」

 

 そう言った私に、美琴が苦笑いして言う。

 

 「あー、確かにそうなんだけどね……それでも大半の男はクレリアちゃんみたいな子が好みだと思うわよ?」

 

 私の様な者が好きだと?それは何と言ったか……。

 

 「そうか、ロリコンと言う奴だな?美琴は人間の大半がロリコンだと言うのか?」

 

 「ぶほっ!?」

 

 顔まで湯舟に沈めていた千穂から噴くような音が聞こえた。

 

 「いや!?そうじゃなくて!?可愛くて肌が綺麗でスタイルが良い子が大抵好きな物なのよ!」

 

 慌てたように言う美琴だが、この体に対してスタイルと言われてもな。

 

 「美琴はクレリアちゃんの将来を見てるんだよ。将来、私達と同じ位の歳になった時はきっとモテモテだよ?」

 

 「そうね、アイドルとか女優とかモデルとか……そういった物に絶対誘われるよ」

 

 「アイドルと女優とモデルか。もし本当に誘われる事があったなら条件次第ではやってみてもいいな」

 

 「え!?ほんとに!?」

 

 「……クレリアちゃんはそんな事に興味無いと思ってたけど」

 

 私の言葉に千穂は驚き、美琴は意外そうに言う。

 

 「千穂が言っただろう?興味が無くても新しい発見や楽しさが見つかるかもしれない、やれる時にやるべきだと。確かに今の文明と文化は基本的には今だけの物だ。それならば、嫌で無いのなら気分次第でやってみるのも良いと思ってな」

 

 「おお……私の言葉が将来の大スターを生んだかもしれない……」

 

 「言い過ぎよ……と言いたい所だけど。この子だからね……」

 

 「とんでもない化け物を起こしてしまったかもしれない!」

 

 「うるさい!」

 

 化け物は当たっているな。

 

 私はそう思いながらじゃれ合う二人を見ていた。

 

 

 

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