少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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075-05

 魔法人類の都市と遜色ない人の群れが行き交い、喧騒が街を飛び交う。

 

 今は夏なので殆どの者が薄着で、日焼けした者も多くいる。

 

 装飾品を大量に身に着け、動きにくそうな服装をしている者も多い、何かの訓練かも知れないな。

 

 「まず水着を選んで買っちゃう?」

 

 「そうしましょ」

 

 私は頭上で会話している千穂と美琴の言葉を聞きながら歩く。

 

 現在、私達は街へ水着を買いに来ている。

 

 千穂は半袖シャツに短めのスカート、美琴はタンクトップにデニムのショートパンツ姿だ。

 

 この気温は人間達には辛いのだろう。

 

 二人も他の人類も皆、汗を流している。

 

 私は汗一つかかぬまま白のワンピースを身に纏い、麦わら帽子を被って歩いていた。

 

 「大きい店だから見て回るだけで今日は終わるかもね」

 

 「先に水着を買ってから、他を見て行きましょうか」

 

 私は二人に手を引かれて進む。

 

 そろそろナンパされるな。

 

 「君達可愛いね、どこ行くの?」

 

 「良かったら一緒に行かない?」

 

 予想通り二人連れの男に声をかけられる千穂と美琴。

 

 私はこの男達がこちらに意識を向けていたのを感じていたからな、こうなるだろうと思っていた。

 

 「小さい子が居るので……ごめんなさい」

 

 美琴がそう言って断る。

 

 「小さい子の面倒も得意だから任せといてよ、こう見えて妹がいるんだ」

 

 どう見えようと居る者には居るだろうな。

 

 確認させてもらおうか。

 

 ……嘘だな。

 

 この男に妹などいない。

 

 「二人とも、この男達はやめておけ。妹がいるなどと嘘をつく人間だ」

 

 「なっ……!?」

 

 男が声を上げた。

 

 男本人も知らないような、生き別れた妹でも居ない限り嘘だろう。

 

 例え本当だとしても、千穂と美琴がついて行くとは思えないが。

 

 「おいおい……お嬢ちゃん。何で嘘だと決めつけるんだ?……勘弁してくれよ」

 

 妹が居ると言った男が私に言う。

 

 「用事があるので私達行きますね、ごめんなさい」

 

 「え、ちょっと……」

 

 千穂がそう言って美琴と共に私を連れて歩き出す。

 

 男達は戸惑った声を上げたが、千穂は無視して進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 「……もう少ししつこく追いかけて来るかと思って身構えていたけど……来なかったわね……」

 

 「そうだね……その方が助かるけど」

 

 私達は目的の店の前までやって来た。

 

 入り口の傍で美琴と千穂がそんな事を話している。

 

 彼らは私達を追いかけられない状態になって貰った。

 

 とは言え、そこまで酷い事はしていない。

 

 短時間だけ腹の調子を悪くしただけだ、もう回復している頃だろう。

 

 「水着を見るのはこのビルの中の店だろう?」

 

 「そうよ、気を取り直して行きましょうか」

 

 私が尋ねると、美琴がそう言って入って行く。

 

 「このビルにある店は十代後半から二十代前半の女の子向けだけど、クレリアちゃんが着れる水着が置いてある店もそれなりにある筈だから平気だと思うよ」

 

 ビル内を移動しながら千穂が私に話す。

 

 私は水着にこだわりなど無い。

 

 もしなければ、自分で作ろう。

 

 「ねえ。今更だけど……ここで買わなくてもクレリアちゃんはもっといい水着が家にあるんじゃない?」

 

 「あっ……」

 

 美琴の言葉に千穂は歩みを止める。

 

 「その反応……お前、気がついていなかったのか?」

 

 私は千穂に尋ねた。

 

 「そうだった……。でも一緒に買いに来たかったから……いいよね?」

 

 「私はお前達が選んだ水着を着ようと思ってついて来たんだ。何度も言っているが、私は余程の理由が無い限り嫌な事はしない」

 

 私がそう言うと千穂は笑顔になり、美琴も微笑んだ。

 

 「私達が可愛いの選ぶからね!じゃあこの店から見て行こう!」

 

 そう言って千穂が店へ私を引っ張って行く、元気な子だ。

 

 それから二人と共に水着を見て回った。

 

 二人はまず私の水着を選び始めたのだが、何故か私の水着を巡って千穂と美琴が対立した。

 

 それなりの時間をかけて二人の意見がまとまった結果、私はフリルのついたピンク色のワンピースの水着を購入した。

 

 そしてその後、二人は自分達の水着選びでも長時間悩み、千穂はオレンジ、美琴はブルーのビキニを購入する。

 

 ……正直、水着を選ぶだけで午後までかかるとは思っていなかったな。

 

 「うわ!千穂、もうお昼過ぎてるよ!?」

 

 「ほんとだ……クレリアちゃんもお腹空いたよね?ご飯食べに行こう?」

 

 近場で食事を済ませ再び店を見て回った私達は夕方には帰宅する事にし、道中も雑談しながら家へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 水着を買いに行った日から三日後。

 

 私は買い物に行った日に、予定は好きなように決めて構わないという事を二人に伝えておいた。

 

 現在の私は、東京の家でカミラとテレビを見ている。

 

 簡単な情報取集だが、時々興味深い事が放送されている事もある。

 

 《八月十五日は終戦記念日です、当日は毎年様々な催しが行われ……》

 

 テレビでは終戦記念日の事を話している。

 

 そう言えばCMで、当日に戦争を考える特番を放送すると宣伝していた。

 

 「第二次世界大戦か、原子爆弾は人類の兵器としては中々の威力だったな」

 

 「あの程度でも今の人類の身に余る威力だと思うけれどね」

 

 私の言葉にカミラが答える。

 

 確かに攻撃の威力に対して、防御が追いついていないかも知れない。

 

 魔法人類も同じ様な状態だったと思いながら考える。

 

 人類が第二次世界大戦と呼ぶ戦争が終わって五十年以上が過ぎている。

 

 当時、私達は関わる事は無く見ていただけだったが、その時に原子爆弾が使われた。

 

 初めて知った時は、人類もあの程度の威力ならば出せるようになったのだと、その進化を喜んだ。

 

 そして人類は原子爆弾、水素爆弾、中性子爆弾など、様々な爆弾を作り出した。

 

 威力は人類の兵器の中では強力だが、放射能と呼ばれる地球の生物に影響を与える物も発生させる。

 

 当時は警戒し、私達に影響を及ぼすかどうか慎重に確認した。

 

 すぐに私達には何の影響も無い事が判明したが。

 

 魔法人類の魔道戦略兵器を思い出させるこれらの爆弾だが、あちらは魔力を大量に使用するが、放射能を生まないので中々使える兵器だった様だ。

 

 放射能は生物にとって危険だが、魔力も魔素も条件によっては危険な事が判明している。

 

 ただ、現在も地球に魔力はほとんど存在しない。

 

 魔素については、地球の生物が現在の魔素濃度で普通に生きているという事実から、恐らく問題無い。

 

 時が経ち、更に濃度が上がる様な事があれば分からない。

 

 だが、近い内に魔力や魔素の量が大きく変わる事は無い、というのが現在の私の予想だ。

 

 何らかの理由で魔力や魔素が大きく変動した時、地球上の生物や植物がどうなるのかは分からない。

 

 今までの実験から考えれば全て死ぬと考えてしまうが……以前の生物と今の生物は違う物だからな。

 

 実験しようと思えば出来なくは無いのだが、今の所はこのまま世界を楽しもうと思っている。

 

 現在、以前よりも地球の魔力は増えてはいる。

 

 増えてはいるが、かなりの時間をかけて僅かしか増えていない。

 

 このままであれば、地球全体の魔力がイシリス時代の様になるのは遥か未来の事になるだろう。

 

 勿論、それまで地球が存在している事が前提の話だが。

 

 「お母様、今の人類がこの爆弾で戦争を始めたらどうする?」

 

 色々と考えていると、カミラが急に尋ねて来る。

 

 「どうするとは?」

 

 「止めたりする?」

 

 止めるか止めないかを聞きたいのか。

 

 「止める事は無い。自分達で作り出した兵器で滅ぶのなら、それまでの種だったのだろう」

 

 「んー……じゃあ地球が壊れるような大きさの隕石が衝突しそうな時は?」

 

 「今までもそれはして来たが……私がまだ地球を必要としていれば、人類を見ていたいと思っている内は助けるだろうな」

 

 私も不注意で地球を消さない様に気を付けなければならない、流石に不注意で消してしまったら元に戻すつもりでいるが……。

 

 「それじゃあ……他の惑星の知的生命体とかが侵略しに来たら?」 

 

 そう言えば、以前知的生命体がやって来た事があった。

 

 あれから全く現れないな。

 

 「実際に起こらないと何とも言えないが……もしも今起きたのなら、親しい友人は助けるが人類を救う事は無いだろうな」

 

 「観察する対象が滅ぼされてしまってもいいの?」

 

 「規模が多少大きくなっただけで、国同士の戦争と大して変わらないからな。勝った方の知的生命体の観察に変わるだけだ」

 

 相手が知的生命体では無く、ただ惑星を破壊するだけの何かであった場合は考え直すかもしれないが。

 

 私の言葉にカミラは少し考えて言う。

 

 「……惑星を一つの国と考えるという事?隣国……と言う感じでは無くなるけれど」

 

 「以前私達と出会った知的生命体がいただろう?彼らは恐らく惑星間で争っていたはずだ。規模によっては惑星一つが国の地域の一つ程度、という場合もあるだろう」

 

 どちらにしても、まともに宇宙に出られない現在の人類では勝ち目は無いだろうな。

 

 そういえば、死体を一つ保存していた様な気がする。

 

 「今の人類だと……滅ばされるか飼われる未来が見えるわね」

 

 カミラが憐れむような声色で言う。

 

 「人類の持つ力によって未来が変わるな」

 

 「その時はきっと私達の所にも来るわよね?」

 

 確かに、地球に来たのなら月にも興味を持ち、やって来る可能性はあるだろう。

 

 「友好的なら何の問題も無い」

 

 「ふふ……地球に訪れた知的生命体が人類に手を出す前にお母様と敵対したら……人類は助かるかもしれないわね?」

 

 カミラが笑いながら言う。

 

 確かに私や眷属達に手を出すのなら話は別だ。

 

 そうなった場合、私が返り討ちにならなければ人類は助かるかもしれない。

 

 

 

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