少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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075-06

 

 ある日、私は千穂と美琴の二人から肝試しに誘われた。

 

 そして現在、私達は夜の墓地に居る。

 

 「中々雰囲気あるわね……」

 

 「そ、そうだね……」

 

 二人はそれなりに怖がっているようだが、私にはただの散歩だ。

 

 人類の間では霊や呪いなどの話が広がっているが、今まで私はそういった類の物に出会った事は無い。

 

 大勢の死者や恨みだけでそのような事があるのなら、今頃世界は悪霊が溢れ、呪いに塗れていると思う。

 

 魂は存在しているが、存在する場所が違う。

 

 説明は恐らく不可能だが、私のような存在が手を貸すのならともかく、自然にこちら側に出て来る事など滅多に無いはずだ。

 

 しかし、私は霊や呪いが絶対に存在しないと考えている訳でも無い。

 

 私はついさっき、自然にこちらに出て来る事など滅多に無いと言った。

 

 それはつまり、「滅多に無いだけで出て来ない訳では無い」という事でもある。

 

 地球にもまだ私の知らない何かが存在している可能性が残っているし、様々な世界の中にはそういった存在が当然のように居る世界もあるかもしれない。

 

 ただ、今の所この辺りから異常は感じない。

 

 「この墓地を回って、戻ってきたら終わりにしようか?」

 

 「それでいいと思うわ。クレリアちゃんをあまり夜遅くまで連れまわす訳に行かないし」

 

 私を挟んで手をつないで歩く二人。

 

 いつもより握る力が多少強いのはこの場所のせいだろう。

 

 「クレリアちゃん大丈夫?怖くない?」

 

 何でもない様に美琴が言うが、私には明らかに怖がっている事が分かる。

 

 「平気だ」

 

 「そ、そう……クレリアちゃん凄いわね……」

 

 美琴は私が本当に動じていないと分かったのか、驚いている様だ。

 

 ……私は、二人が恐怖を感じているという事は分かる。

 

 分かるのだが、実際に恐怖という物を感じた事が無い私では、恐らく本当の意味で彼女達の気持ちを知る事は出来ないだろう。

 

 「早く回って終わろう?」

 

 千穂はそう言って少し早足になる。

 

 二人は何故肝試しをしようと思ったのだろうか。

 

 少し進んだ時、少し離れた所で物音がした。

 

 その音で二人は動きを止める。

 

 「ひっ!?な、なに……?」

 

 「ね……猫かなんかでしょ……」

 

 千穂と美琴がそう言いながら手を握り締めて来る。

 

 私だから良いが、力を入れすぎだ。

 

 音の原因は美琴の言う通り猫だ、私達の接近に気がついて逃げて行った。

 

 「猫が私達を警戒して逃げただけだな」

 

 「クレリアちゃん見えたの?」

 

 「見えた、奥に走って行ったぞ」

 

 「なーんだ、猫かぁ……」

 

 美琴の問いに私が答えると千穂がほっとしたように言い、私達は再び歩きだした。

 

 「安心しろ、今の所この辺りに二人が考えているような存在はいない」

 

 「え……?」

 

 二人の声が重なる。

 

 どうしたんだ?

 

 ……そうか。この言い方だとテレビでよく見る霊能詐欺師のように聞こえるな。

 

 「私は普通の人間より夜目が利くから今もそれなりに周囲が見えている。目視で周りに何もいないのが分かるだけだ、別に霊能力がある訳じゃない」

 

 「そうなんだ……見えてるならそんなに怖くないかもね」

 

 「クレリアちゃん全然怖がらないなぁ……」

 

 美琴の言葉の後に、千穂が呟いた。

 

 「千穂、私を怖がらせたくて肝試しをしたのか?」

 

 「……違うよ?」

 

 千穂は下から見上げる私から目をそらす。

 

 「結局私達が怖い思いしただけじゃない……全く……」

 

 分かりやすい千穂の反応と美琴の言葉、これだけで感情を読むまでも無く分かるな。

 

 千穂は私を怖がらせたかったのか。

 

 子供らしい悪戯だ。

 

 私達はその後も何事も無く墓地を回り、ほっとしている二人と共に墓地を後にした。

 

 

 

 

 

 

 肝試しから二日後。

 

 現在、私は月に居る。

 

 世界樹の枝に座り人類の作り出した本を読んでいる所だ。

 

 人類が本を作るようになってから新しい本を再び多く読めるようになったのは嬉しい事だな。

 

 二人との次の予定は既に決まっていて、祭りに行く事になっている。

 

 当日は二人とも浴衣を着て来るらしく、私も着て欲しいと言われたので当日は浴衣を着て行こうと思う。

 

 「ねえねえお母さん、今度は何しに行くの?」

 

 私の隣に座っているミツハが私に聞いてくる。

 

 今日は母と呼びたい気分らしい。

 

 「次は夏祭りに行く事になっている」

 

 私は本からミツハへ視線を移して答える。

 

 「夏祭りかー、私達も皆と色々行ったよね。世界中でお祭りは毎年一杯やってるもん」

 

 「お前達が人類の生活に想像以上に馴染んだからな。そうでなければ私一人で行っていただろう」

 

 「お母さんとだったらどこでも一緒に行くよ?」

 

 不思議そうな表情で私を見て言うミツハ、私はそんなミツハの頭を撫でる。

 

 「私が人類の世界で過ごしているのは趣味のような物だが、お前達も楽しんでいるようだな」

 

 「うん!情報集めるついでに遊んでるんだー!」

 

 嬉しそうに話すミツハ。

 

 人類の世界で騒ぎになっていないという事は、娘達も上手くやっているようだ。

 

 ミツハ達四姉妹は勿論、侍女隊の者は全員訓練しているため地球の生物より遥かに強い。

 

 彼女達が今の人類相手に危機を迎える事は恐らく無いだろう。

 

 何か彼女達の手に負えない事があれば私に話が来る筈だが、今の所はそのような事も無い。

 

 「また一緒にどこか行こうね?」

 

 「そうだな。全員同時には無理だろうが、いずれまた順番に何処かに行くか」

 

 「やった!」

 

 そう言ってミツハは私に抱き着いてくる。

 

 時と場所を選んではいるが、今では侍女隊の者達も侍女としてでは無く、娘として甘える様になって来た。

 

 人間や他の生物の家族を見続けた事で、何か変化があったのではないかと私は考えている。

 

 彼女達に確認をしていないので本当の所は分からないが、それで良い。

 

 人類の文明などに対して私達が与えた影響は多くあるが、私達も影響を受けていると思う。

 

 実際に、私は千穂の言葉で興味が無い事でも、嫌でないのなら場合によってはやってみようと考えを改めた。

 

 彼女達とは長い付き合いになるかもしれないな。

 

 千穂と美琴は私を本気で心配していて、私と過ごす事を好んでいる。

 

 特に千穂は私に違和感を感じているはずなのだが、それでも態度や感情に変化が無い。

 

 美琴は今の所は何も感じていないようだが、これ以上長く共に居ると成長しない私に疑問を持つ事になるだろう。

 

 そうなったら正体を伝えるつもりでいる。

 

 友人のままでいるのか、友人では無くなるのか。

 

 どうなるだろうな。

 

 もし受け入れられなかった場合、他の元友人達と同じように私の事を忘れて残りの人生を生きて貰おう。

 

 この事で娘達に「魔法で違和感を感じない様にしたらどうか」と提案された事があったが、私がやりたくないという理由で却下した。

 

 何となくではあるが、人類の進化と発展が進むにしたがって受け入れられない者が増えている気がする。

 

 以前は精霊などの類と思われ、簡単に受け入れられていたとカミラも言っていた。

 

 人類は程度の差はあっても想像や空想をしているはずなのだが、いつからか理解出来ない存在や現象を目にしても認めようとしなくなった。

 

 科学が全てだと考えているからだろうか?

 

 人類はまだ魔素や魔力を見つけていないからな。

 

 そんな事を考えていると、ミツハは私の太ももに頭を乗せて目を瞑っていた。

 

 彼女達は寝る事は無い。

 

 しかし、こうやって甘える時は目を瞑り、寝ているように大人しくなる事がある。

 

 こうすると落ち着くらしい。

 

 私は大人しくなったミツハの頭を撫でながら、本へと目を移した。

 

 

 

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