少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 075は15まであります。


075-09

 

 夏休みは後半に入り、二人を島に招待する日が訪れた。

 

 現在、私達は電車で空港へと向かっている。

 

 事前に必要な荷物は島へと送ってあるので、持って行く物は移動する間に必要な物だけで良い。

 

 その為、私達はかなり身軽な状態で電車に乗っている。

 

 「綺麗な海!楽しみだなー!」

 

 「私も楽しみ、透明度の高い海なんてテレビでしか見た事無いし」

 

 「一週間の内の二日はキャンプをして過ごし、残りの五日は家に泊まる。分かっているな?」

 

 楽しそうにしている二人に、念の為に確認をしておく。

 

 「うん!キャンプも海水浴も出来るなんて幸せ!」

 

 「千穂、今からはしゃぐと島で遊ぶ体力が無くなるわよ?」

 

 千穂は落ち着かない様子で体を揺らし、美琴も落ち着いているように見えるが内心は高揚しているようだ。

 

 そんな二人と会話しながら、移動時間を過ごす。

 

 

 

 

 

 

 空港へ着いた私達は、待機していたメイドに旅客機へと案内された。

 

 「クレリアちゃん、搭乗カウンターに行かないの?」

 

 美琴が疑問を口にする。

 

 「島へは私の旅客機で直接行く」

 

 「昔、石油王が同じような事してるのテレビで見たわ……」

 

 私が美琴の疑問に答えると落ち着いた声で返事が返って来た、すっかり慣れたようだな。

 

 やがて準備を終えている旅客機が私達の視界に入り、タラップの隣に侍女が控えているのが見えた。

 

 「内装は過ごしやすいように変えてあるから快適だと思う」

 

 「ねえ、クレリアちゃん……私達三人だけであれに乗るの?」

 

 千穂が私の方を向いて尋ねて来る。

 

 「そうだ」

 

 用意されているのは人類が使っている一般的な大型ジェット旅客機だ。

 

 内装は変更してあるが、魔法的には手を加えていない。

 

 

 

 

 

 

 「はー、疲れが取れる……」

 

 「お金持ちの家のリビングみたいな機内ね……」

 

 ソファに座りだらける千穂と、座ったまま周囲を見回している美琴。

 

 「主様、何かお飲み物をお持ちいたしましょうか?」

 

 「牛乳を頼む」

 

 「かしこまりました」

 

 この旅客機に居るのは私達と侍女隊の者のみだ。

 

 「倉森様、篠崎様。何かお飲み物をお持ちしましょうか?」

 

 二人に侍女が聞く。

 

 「えっと……じゃ、じゃあコーラをお願いします!」

 

 「私は……レモンティーをお願いします」

 

 「かしこまりました」

 

 そう言うと侍女達一礼し去って行く。

 

 「みんな凄い美人だね……」

 

 「彼女達はクレリアちゃんの侍女さんなのよね?」

 

 千穂と美琴が言う。

 

 「そうだ」

 

 「以前ヨツバさんには会った事あるけど、何人位いるの?」

 

 「六十五人だな」

 

 私が答えると、二人が顔を見合わせた。

 

 「多いのかな?少ないのかな?」

 

 千穂はそう言って首をかしげる。

 

 一人一人の能力が高いので、私は十分な数だと思っている。

 

 「いや、多いでしょ……クレリアちゃん一人に対して六十五人居るのよ?」

 

 美琴は呆れたように千穂に言う。

 

 「そうだよね……なんかよく分からなくなってたよ」

 

 地球上にある私の家で雇っているメイドなどを合わせると、そこそこの数になるだろうな。

 

 島に着くまでの約二時間半、私達はのんびりと機内で過ごした。

 

 

 

 

 

 

 島へと到着した私達は旅客機から下り、車に乗り換えて森の中の広場にやって来た。

 

 川も近く、キャンプをするのに丁度良い場所だ。

 

 必要な物は事前に用意されているが、テントの組み立てや火起こし、食事の用意などは私達で行う。

 

 「これからどうする?私としては早い内にテントを設営したいと思うけど……」

 

 美琴が私達に尋ねる。

 

 「そうだね、先に設営しようよ!」

 

 二人の意見は同じ様だな。

 

 「分かった」

 

 問題は無いので私も了承し、協力してテントの設営をする事にした。

 

 

 

 

 

 

 それ程時間はかからず、広場に大きなテントと大きめのタープが完成した。

 

 「出来た!」

 

 「大きい割に設営が簡単だったわね。やった事の無い私達でもなんとかなったわ」

 

 二人は完成したテントとタープを見て言う。

 

 「簡単な物を用意させたからな」

 

 「あ、そうなんだ。クレリアちゃんありがと!」

 

 「ホント助かったわ」

 

 「用意したのは侍女だ。礼は彼女達に言ってくれ」

 

 今回の為に色々と用意してくれたからな。

 

 「次はどうする?」

 

 私が次の行動を二人に任せると、美琴が答える。

 

 「次は食事の用意をしましょう、手分けしてカレーを作るわよ」

 

 「よーし!やるぞー!」

 

 妙に気合の入っている千穂を横目に、私は調理器具と材料を取り出して準備を始めた。

 

 「千穂……皮を剥いて切る位は出来るわよね?」

 

 「失礼な!最近料理の勉強を始めたから、それ位出来るもんね!」

 

 千穂は料理の勉強を始めたのか。

 

 「へえ……彼の為?」

 

 「そうだけど……美琴だってしてるでしょ?」

 

 千穂は恥ずかしそうにしながら美琴に言う。

 

 「まあ、私もしてるけど……」

 

 目をそらしながら答える美琴。

 

 「考える事は一緒だね!」

 

 「……そうね」

 

 笑ってそう言う千穂に、美琴は少し照れたように答える。

 

 「二人には、私と同じ位になって欲しい所だな」

 

 私がそう言うと、二人は困ったような顔をする。

 

 「分かって無いみたいだけど……クレリアちゃんはかなり料理上手いからね?」

 

 「それは無理です!」

 

 呆れたように言う美琴と何故か敬語で言い切る千穂。

 

 「侍女達の中には、私を超える者もいるぞ?」

 

 「え……?クレリアちゃんよりも上が居るの……?」

 

 「侍女さん達、凄いね……」

 

 私の言葉に、驚いたように呟く二人。

 

 二人は騒ぎながらも料理を続けたが、カレーは無事に完成した。

 

 

 

 

 

 

 「あー、美味しかったー」

 

 「クレリアちゃんおかげで美味しかったわね」

 

 食事を終え、キャンプファイヤーを囲んで話す私達。

 

 周囲はすっかり暗くなっている。

 

 「材料もそれなりにいい物だからな」

 

 「クレリアちゃん家のそれなりに良い物って……聞くのが怖いんだけど」

 

 「確かに……」

 

 千穂と美琴はそう言っているが、微笑みを浮かべている。

 

 「詳しく言うのはやめておこう」

 

 「その方が精神的にいいかも知れないわね」

 

 そう言って美琴は目の前の炎を見る。

 

 私が虫や動物の鳴き声、火が燃える音を聞きながら空を見上げると、空には三つの月が輝いていた。

 

 「美琴はさ……進路はどうするの?」

 

 突然千穂が呟く。

 

 進路か、彼女達にとっては大きな選択だな。

 

 「私は小学校の教師を目指そうと思ってる……だから大学はそれを前提に考えてるわ」

 

 厳しくも優しく千穂を見守っている美琴なら向いているかも知れないな。

 

 「そっか……私は保育士になりたいと思ってるんだ。大学もそっち方面で選ぶつもり」

 

 「なるほど……まあ、千穂には向いてるかもしれないわね」

 

 私に対する今までの反応からも分かる様に、千穂は優しさと行動力がある。

 

 叱らなければならない時は叱る事も出来るし、向いているかも知れない。

 

 「クレリアちゃんは将来どうなりたいとか……ある?」

 

 千穂が私に聞いてくる。

 

 「どうなりたいかは分からない。ただ……嫌でない事ならば場合によっては経験してみるのも良いかも知れない、とは思っている」

 

 これは、千穂の言葉を聞いて少し考えを改めたからこそ思った事だ。

 

 結局その時の気分次第だが、全く気にしていなかった今までとは違う。

 

 「いいんじゃない?クレリアちゃんはまだこれからだし、焦る事無いわよ」

 

 「そうだね。色々とやってみれば良いよ」

 

 美琴と千穂はそう言って笑う。

 

 「……クレリアちゃんは、月下グループは継がないのよね?」

 

 突然、美琴が私にそう尋ねて来る。

 

 「そうだな。以前話した通り、月下グループは別の者が継ぐ事になっている。元々私はグループを継ぐ気が無いし、血縁がなければ継げないという訳でも無いからな」

 

 私が答えるとしばらく二人は沈黙する。

 

 「私達も夏が終わったら本格的に勉強を始めるつもりだからきっと今迄の様には遊べないと思う……」

 

 千穂は暗い暗い表情になる。

 

 「そうね、大学に行き始めたらあまりクレリアちゃんとも会えないわね……」

 

 美琴も気にしているのだろう、千穂ほどではないがその表情は暗い。

 

 「会う事が無くても友人である事には変わりは無い、気にするな」

 

 その気持ちは嬉しいが、私の事を心配して自分の事を疎かにするのは問題だ。

 

 「千穂。電話だって出来るし、一生に離れ離れになる訳じゃないのよ?」

 

 「うん、そうだね。……ごめんね?ちょっと暗くなっちゃった」

 

 「まあ……私も考えてはいたから」

 

 「大学に入って落ち着くまでは自分の事を優先しろ」

 

 私は二人にそう言っておく。

 

 それから二人が眠くなるまで私達は話をして過ごした。

 

 

 

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