少女(仮)の生活   作:YUKIもと

17 / 260

 この小説に不具合があった場合仕様です。

 不具合をなくせる様にはします。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。



015-03

 

 道中は特に何かある事も無く馬車に揺られていた、そうして十日程の旅を終えて私はリンガイルに到着した。

 

 何というか……発展している途中と言った感じの町だな。

 

 そのまま町に入ると冒険者達が多く目に付く、袋にもマジックボックスにも入れずに血抜きをした魔物の死体を引きずって歩く者も居る。

 

 私は近場の店で宿のおすすめを聞いて向かう事にした。

 

 「らっしぇい!」

 

 宿の親父の野太い声が迎えた。私はとりあえず一か月程部屋を取る事にし、宿の親父に町の事を聞いてみた。

 

 「この町の事だぁ?……聞きたいなら……分かるだろ?」

 

 指をすり合わせる親父、なんだ?

 

 困惑していると親父がしびれを切らした様に言う。

 

 「金だよ金……情報はただじゃねぇんだ」

 

 そう言う事か……私は黙って小銀貨をカウンターに置く。

 

 「へっへ、ありがとよ」

 

 そう言うとこの町の事を教えてくれた、危険度7の魔物が多く生息する荒野と森に隣接している事、その魔物の商品の輸出で町が成り立っている事など。

 

 「所で……ホレス・コルマノンを知っているか」

 

 「サービスで教えてやるよ……知っているも何も、この町のホレス商会の主だよ、町一番の商会で、実質この町の統治者みたいなもんさ」

 

 私は宿の親父に礼を言って鍵を受け取り二階の部屋に向かった、特に言う事もない普通の部屋だったな。

 

 

 

 

 

 

 次の日、私は宿の親父にギルドの場所を聞いて向かった。

 

 送って来たのはギルドのはずだ、ギルドが関わっているのなら少し大事になりそうだな。

 

 「まだチビだが良いなあの女」

 

 「ちっ、若けりゃいいってもんじゃないよ」

 

 ギルドに入って聞こえて来たのがこれだった、確かにウルグラーデに比べるとだいぶ柄が悪い、力で解決するならその方が楽かもしれないが。

 

 「ランク6の試験を受けに来た。これがウルグラーデギルドの紹介状だ」

 

 ギルド職員男性に手紙を渡す。

 

 「見せてもらうよ……確かに受け取った」

 

 そう言うとランク試験の準備らしき書類を書き始める。

 

 「所でギルド長に会う事は出来るか?」

 

 「いきなりは無理だよ」

 

 こちらを見る事無く言う。

 

 「前にウルグラーデに討伐応援で来て死んだ冒険者の事を話したいのだが」

 

 そう言うと、動きを止めこちらを見る。

 

 「関係者の方で?」

 

 そう言う彼に答える。

 

 「ああ、私は彼らの友人なんだ」

 

 実際は違うが。

 

 「お待ちください」

 

 そう言って席を立ち二階へ上がって行った、しばらくするとこちらへ戻り、応接室に案内された。

 

 

 

 

 

 

 応接室で待っていると、屈強な強面の中年男が入ってきた。

 

 「よく来てくれた」

 

 私が立ち上がると中年男が言う。

 

 「時間を作ってくれてありがとう。私はクレリア・アーティアと言う」

 

 「リンガイル冒険者ギルド商会ギルド長、ランドレイ・ラムタスだ……よろしくな」

 

 握手をしながら言葉を交わす、手の大きさがだいぶ違う。

 

 お互い席に座った所で質問をする。

 

 「早速だが、ロミオとそのパーティーメンバーの事なんだが」

 

 「……ああ、惜しい奴を無くした、これからもっと上に行ける奴だと思っていたんだ」

 

 辛そうに言うランドレイ、確かに実力はあった方か?

 

 「私は彼のこっちでの活動をよく知らないんだ、どんな感じだったんだ?」

 

 「そうだな……荒くれ者が多いこのギルドで丁寧な言葉を使い、困っている冒険者に手を貸していた良い奴だった」

 

 そう言って目を閉じる彼……おかしい、私が知っている奴と全く違うぞ。

 

 「……他のメンバーはどうだ?」

 

 私の言葉に目を開けると腕を組みながら話す。

 

 「メンバー同士仲が良く、ロミオが人助けに走ってもお前らしいと笑ってついて行く良いメンバーだったよ」

 

 違和感が凄いな、これは同一人物の話か?仕方ない……彼が知っているのかが分からないと困るからな。

 

 私は軽く自白誘導魔法を彼にかける。

 

 「何か彼等の事で知っている事は?」

 

 彼は考えるようなしぐさをして話す。

 

 「そうだな……事故などに関わる事が多少多かった気はするな、後ホレスさんとはだいぶ懇意にしていてよく呼び出されていた事くらいか?」

 

 ほう……後は何か無いか?……そうだ、奴らの一人が応援にはよく行くとかそんな事を言っていたような。

 

 「……そうだ。救援依頼があるとホレスさんからもロミオ達を送る様に言われるな、彼の人柄を考えれば向いているからそのまま頼む事が多い」

 

 その事を聞くと答えてくれた。

 

 「ではホレスの周りでは何かあったか知っているか」

 

 「……関係ないだろうが最近だとホレスさんの商会が妙に警備を強化した事か」

 

 警備を強化した……何故だ?

 

 「最後に……ロミオがしていた事を知っているか?」

 

 「していた事?よく人助けをしていたが……」

 

 「そうか、ありがとう」

 

 そう言って魔法を解除する。

 

 「彼らの事が聞けてうれしかった、ありがとう」

 

 そう言って軽く頭を下げる。

 

 「いや、構わない……彼らの分まで生きてくれ」

 

 そして私は応接室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 私は宿に戻り、部屋で聞いた事を整理する。

 

 ロミオはホレスと繋がり誘拐をしていた……これは彼らのやっていた事と証言でホレスの名前が出た時点で予想出来る。

 

 更に場合によっては町の周囲の事故などのいくつかも彼らの仕業の可能性もある……と。

 

 そして、ギルド長のランドレイはかなりの確率で彼らの裏の顔を知らない。

 

 ギルドが関わっていなくて良かったな、ギルドごと潰す事になる所だった。

 

 となると、ホレスの所で証拠を見つけるのが一番早いか?

 

 

 

 

 

 

 翌日、取り敢えずホレスの商会を見てみようと道を聞いてやって来た。

 

 広い敷地に屋敷が見える。確か敷地内に一部の者しか入れない場所があると言っていたな。

 

 普段を知らないからいまいち分からないが、確かに警備の人数が多いと言えなくもない……気がする。 

 

 

 

 

 

 

 商会周辺を少し回った後、ギルドに行くと職員に呼び止められた。

 

 「なんだ?」

 

 「クレリアさんですね?……ランク試験の手続きが途中なんですが」

 

 忘れていた……途中でギルド長に話を聞いてそのまま帰ってしまったんだ。

 

 「悪かった、すぐに行く」

 

 私は謝ってカウンターに向かった。

 

 

 

 

 

 

 その後私はランク6になった。試験は特定の魔物の討伐、手早く始末してランクを上げた、あまりの速さに職員が驚いていたが。

 

 早速今夜にでもホレスの所に忍び込んで証拠を探そう。

 

 そう考えギルドを出ようとすると、三人の男が行く手を遮ったので、避けて通ろうとすると私の前に出てくる。

 

 「邪魔だ、どけ。それとも何か用か?」

 

 「ちょっと付き合ってくれよ」

 

 「悪いようにはしねぇぜ」

 

 「こんな美人見た事ねえ……楽しみだ」

 

 三人が言う、最後の奴は何を考えているのか目が怪しい。

 

 「断る」

 

 人気の無い所ならともかくこんな所で来るとは周りが見えていないのか。

 

 「そう言うなよ」

 

 手を伸ばす男をかわすと、男達の後ろから声がかかる。

 

 「……何をやっている貴様ら」

 

 何処かに行っていたのか入り口から入ってきたランドレイだった。

 

 「ぎ、ギルド長!?ちょっとこいつが生意気な態度を取ったもんで」

 

 男の一人が言う。

 

 「人の行く手を無言で遮って無理やり連れて行こうとするのは良いのか?」

 

 そう言うとランドレイが眉間に皺を寄せる。

 

 「貴様ら、むやみに絡むのはやめろ!」

 

 そう言うと私に聞いてくる。

 

 「ランク6になったのか?」

 

 「つい先ほど」

 

 そう言うとランドレイは皆に言った。

 

 「彼女もランク6の冒険者だ。ランクが下だと思って手を出せばお前達でも怪我するぞ」

 

 「ランドレイ、絡まれないようにするにはどうすればいい?」 

 

 そう聞くと、彼は言った。

 

 「実力を見せる事だな」

 

 「分かった。何処かに訓練場は無いか?こいつらをこ……倒せば皆認めてくれるだろう?」

 

 そう言うと、彼は悩みながら言う。

 

 「手っ取り早くはあるが……大丈夫なんだろうな?」

 

 私はこちらを見ながら言う彼に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 それから訓練場に行き、戦う事になったのだが他の冒険者もかなり見物に来た。

 

 ギルド長も居る、来たばかりの私が気になるのか?

 

 「五人に増えてるな」

 

 私の前に居る男達は三人から五人に増えていた。

 

 周りからは、一人に五人か弱虫が、とか、きたねぇまねすんな、などと声がしている、本当に実力が基準なんだな。

 

 「ちっ、仕方ねぇ……一人ずつにしてやるよ」

 

 あまりにも周りからうるさく言われるのが嫌になったのかそう言ってくる男の一人、私はわざと大きな声で言った。

 

 「全員で来い。お前達程度は問題無い……ハンデとして武器も使わないでおいてやろう」

 

 そう言って武器をマジックボックスにしまうと周囲が一瞬静かになり、その直後周囲が歓声に沸いた……こいつら何なんだ。

 

 「あの世で後悔しろやぁ!」

 

 明らかに怒り心頭の男達が剣を抜いて掛かってくる。

 

 微妙な戦いでは絡んで来る者が居るだろうからそこそこ力を見せておけばいいか。

 

 切りかかってくる五人の剣を躱し、受け流し、弾く。

 

 手で、膝で、足で……歓声に沸く周囲の中、ただひたすらに躱し受け流し続ける。

 

 

 

 

 

 

 一時間後。周囲の歓声は無くなり静まり返る中、私は疲れ切っている男達の攻撃を避け続けていた。

 

 「な……何なんだ……このガキ……」

 

 「くそっ……当たらねぇ……」

 

 一時間攻撃していられるこいつ等も弱くは無いんだろうな。

 

 「そろそろ気が済んだか?」

 

 戦いが始まる前と全く変わらない私が言う。

 

 「ぐっ……」

 

 汗をかき疲労が限界に近い男達は言葉に詰まる。

 

 「降参しろ、私の力は分かっただろう?」

 

 そう言うと男の一人が私を睨んで言う。

 

 「ふざけんな!このまま降参して終われるか!俺達はこのギルドの冒険者だ!……来いよ!やってみやがれ!」

 

 他の男達もよろめきながらも構える、そうか……。

 

 「分かった」

 

 そう言いながら魔法で適度な空気の塊を五人に同時に打ち出し吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされ、気絶したまま地面に転がる男達、私はそれを見て周りに言う。

 

 「誰かあいつらを見てやれ、死なないように加減はしたが万が一があるからな」 

 

 誰も動かずに静まり返った中、私はギルドを出て宿に帰った。

 

 

 

 

 

 

 翌朝、私は少しやりすぎたのではないかと考えていた。

 

 あれぐらいならちょうど良い感じだったと私は思っているが……奴らも一時間以上戦っていられた訳だしな。

 

 しかし帰り際が静かだったのが気になる。まだこの町には用があるのに何かあったら面倒すぎるな。

 

 どうなるかと思いながらギルドに入る、すると周囲から声がかけられる。

 

 「お嬢、依頼見に来たんすか?」

 

 「お嬢!狩り行きましょう!」

 

 「お嬢、今度アタイに戦闘教えてよ」

 

 周囲からかかるお嬢の声……昔何処かで似たような事があった気がする。

 

 こうして多少やりすぎたような気がした思い付きの絡まれない為の作戦は、思った以上に効果を発揮し冒険者の皆に受け入れられた。

 

 

 

 

 

 

 「お嬢、どこ行くんです?」

 

 「食事に行くだけだ」

 

 「もしよければお供しますぜ?」

 

 「必要無い」

 

 それから数日後、受け入れられたのは良かったが……道を歩くだけで冒険者達が話しかけてくる、なつかれるのは良いが少し面倒だ。

 

 私は食事に行くために道を歩く、商会に侵入するつもりだったのにダラダラと伸ばしてしまっている。

 

 店に着き注文した料理を食べていると一人の女性冒険者が私を見た。

 

 「あ、お嬢居た」

 

 冒険者の女性が食事をしている私に近づいてきた。

 

 「ギルド長が来て欲しいってさ」

 

 「分かった。食べ終わったら行くよ」

 

 そう言うと彼女は帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 「さて、わざわざ呼び出してすまないな」

 

 「構わない、用は何だ?」

 

 食事を終えた後ギルドにやってきた私は応接室に案内された。

 

 「少し気が付いた事があってな……」

 

 「気が付いた事?」

 

 そう言うと正面に座るランドレイは私に聞いた。

 

 「今更気が付いたんだが……紹介状にはウルグラーデからランク6試験を受けに来たと書いてあった」 

 

 「そうだな」

 

 そう言うと彼は念を押すように聞いてくる。

 

 「君はウルグラーデの冒険者で間違いないんだな?」

 

 「ああ、そうだ」

 

 そう言うと彼は厳しい顔をして言った。

 

 「ウルグラーデにハンドスネイクが現れて応援が呼ばれた……先日あれだけの戦いが出来る君が居たのに」

 

 思わず顔が反応するのを抑える……失敗した。

 

 そうだ……あれだけ出来てハンドスネイクが倒せない訳がない。

 

 「あの時は既に応援に彼らが向かっていたので私が倒してしまうと彼らが無駄足になってしまうと思ったんだ」

 

 そう言うと彼は椅子に座り直し話す。

 

 「君は彼の友人だと言った、ならば彼らの性格も知っていたはずだ。彼なら倒してしまっても早く安全になったのならそれでいいと笑って答えるはずだ」

 

 私は彼らのここでの生活態度を知らなかったからな……。

 

 「所で……彼らが救った冒険者の男は元気にしているか?」

 

 突然聞いてくるギルド長。

 

 「ウルグラーデで今も元気にしているよ。彼らの分まで生きると言っていた」

 

 そう言うと彼は座ったまま身構えて言う。

 

 「すまないがお前をこのまま返す訳にはいかなくなった」

 

 彼の様子がおかしい。

 

 「……なぜだ?」

 

 何も言わず彼は一つの書類を私の前に投げ渡した。

 

 「それはウルグラーデギルドからリンガイルギルドに来た報告の手紙の写しだ」

 

 私はそれを読む。そこにはあの討伐の細かい経緯が書かれていた読み進めると一つの文が目に入った。

 

 ロミオ・シングとパーティーメンバーと思われる名前が並び……その後に、以上五名は案内を頼んだ冒険者の少女を守り魔物と相打ちになり死亡とある。

 

 これは、もう駄目か?私はさっき男と言われて普通に答えてしまった。

 

 報告書に書かれている事を完全に忘れていた。

 

 「今のは勘違いだ」

 

 自分でも信じない言い訳だな。

 

 「そうか。では止めを刺してやろう」

 

 無理な言い訳を言う私にかれはもう一枚手紙を出した。

 

 「これはウルグラーデのギルド職員が個人的に私宛に出した手紙だ。二日前に届いた」

 

 手紙を読んだ私は諦めた。そこにはクレリア・アーティアと言う少女がランク6試験を受けに行く事、先の討伐の生き残りである事が書かれ、どうか配慮してあげて欲しいと書かれていた。

 

 「くっくっく……」

 

 思わず笑う私、まさか止めが人の良心による物だとは……。

 

 「さて、これでお前が嘘をついている事が分かった訳だが……」

 

 気にしていなかったが彼は完全装備だ、殺す事も考えていた訳だ。

 

 「ああ、私は逃げたりしないぞ」

 

 「俺を殺すか?ただでは負けんし下にも冒険者はたくさんいる、いくらお前でも逃げられんぞ」

 

 腰を浮かせ剣の柄を握る彼に私は椅子にもたれてリラックスしながら言う。

 

 「いや、そのつもりは無い。嘘をついていたのは私だ、済まなかった」

 

 素直に謝ると、彼は構えは解かなかったが毒気を抜かれた様になる。

 

 「なぜこんなことをした?彼らを殺したのはお前なのか?魔物もお前が連れて来たのか?」

 

 一気に聞かれてもな。

 

 「聞いてくれるのなら話すが……私の言葉を信じられるのか?」 

 

 そう言うと私を見つめる彼、しばらくするとため息をつきながら言う。

 

 「……聞くだけは聞く」

 

 「そうか、お前には信じたくない事だろうが」

 

 そう前置きして話す。

 

 「まず簡単な事を答えておこう。魔物は自然に現れたものだ、犠牲者が出るまで私も居る事は知らなかった」

 

 「……そうか」

 

 疑っているのか信じているのか。

 

 「どうしてこうなったかだが。彼らが私と私の知人を誘拐し玩具にした上で金持ちに売ろうとした事が原因だな」

 

 「……何を言ってる?」

 

 理解出来ていない表情だな。

 

 「彼らはこの町のホレス商会と繋がり裏で美しい女性を死んだ事にして誘拐し、金持ち連中に売っていた」

 

 まあ私の予想だが。

 

 「待て待て……」

 

 彼は私の言葉を信じてはいないだろうな。

 

 「彼らに聞いた所、ホレス商会の敷地内に売買専用の場所があると聞いてここに来た」

 

 彼は黙って聞いている。

 

 「以前お前から聞いた、奴らが事故に多く関わっている事、恐らくあれのいくつかもその為だと思っている」

 

 「……信じられんな」

 

 そう答えるランドレイ。信じて貰えなければホレス商会の屋敷に強行突入して証拠を持ってこようか。

 

 「では聞くが、その事故……美しいと評判の女性が犠牲になっている事が多くは無かったか?」

 

 詳しくは知らないが私の予想が間違っていないのなら……。

 

 私の言葉を聞いてピクリと体を震わせるランドレイ。

 

 「心当たりがあるんじゃないか?」

 

 何も言わないランドレイ。

 

 「私は証拠を見つけようと思っている」

 

 彼は黙って聞いている。

 

 「……私はお前も奴らの仲間では無いかと疑っているが」

 

 「ふざけるな!そんな事してたまるか!」

 

 黙っていた彼はそう怒鳴る。

 

 「お前は仲間では無いのか?」

 

 「当然だ!」

 

 心外だと言いたげなランドレイ。

 

 「あんな奴らを送ってきたギルドの長を信用しろと?」

 

 「ぐっ……」

 

 痛い所を突かれた彼が呻く。

 

 「……お前の言っている事だって本当か分からない」

 

 「お互いに信用出来ない訳か」

 

 そう言ってお互いを見る……しかし。

 

 「私はお前が関わっていないのは知っているけどな」

 

 「……どういう事だ?」

 

 彼が疑いの表情で私を見る。

 

 「初めてあった時ちょっとな」

 

 「……何をした?」

 

 咎めるような表情で彼は私を見る。

 

 「悪いとは思っている。ただお前も関わっていたらギルド事潰す事になるだろう?だからハッキリさせておきたかった、害は無い」

 

 彼は溜息を吐いて構えを解いた。

 

 「ん?信用してくれたか?」

 

 「完全には信用していない……ただお前が嘘を言っているようは見えない」

 

 そう言って座る彼。

 

 「良かった、私もお前を殺したくは無いからな」

 

 彼は好感が持てる。必要で無いなら殺したくは無いよな。

 

 「……出来るとでも?」

 

 「出来るぞ?」

 

 私を睨みながら言うランドレイに思わず返してしまった。

 

 「まあそれはどうでも良いんだ、それよりも証拠を見つけないとな」

 

 睨んでいた彼が表情を戻し顎に手を当てて言う。

 

 「証拠か、そうだな……それさえあればすべて解決するが」

 

 「話は簡単だ。私が忍び込み証拠を探してお前に渡す、そしてお前が公開する」 

 

 「俺がか?」

 

 疑問の表情を浮かべる彼だが、私の目的はそれじゃないからな。

 

 「私はあの連中を送り込んできた奴を殺せれば良いんだ、証拠は……そうだな……ついでだ」

 

 何とも言えない表情のランドレイ。

 

 「あの強さといい言動といい、多少おかしな娘だと思っていたが……思った以上に危ない奴だなお前は」

 

 頭を押さえながら言う。

 

 「何を言う。私に不利益をもたらさなければ何もしないぞ」

 

 「……自分に都合が悪い時はやるって事じゃねぇか」 

 

 そう言って彼はソファーにもたれる。

 

 「当たり前だ、お前は自分の大事な物が壊されるのをただ見ているのか?」

 

 「抵抗するに決まってんだろうが」

 

 私の言葉に体を起こし彼は言う。

 

 「そう言う事だよ」

 

 彼は私の言葉に僅かに笑った。

 

 「お前はまだ十五だよな?いつからこうなったんだ?」

 

 苦笑いしながら聞いてくる。

 

 「私は生まれた時から私だよ、たとえ時間が私を変化させても」

 

 「生まれた時からそんなだったら親も苦労しただろうな」

 

 そう冗談めかして言う。

 

 「彼女はいつも笑って傍に居てくれたよ」

 

 そう……彼女は私の母親でもあったからな。

 

 「居てくれた……か」

 

 彼は呟くように言うと話を変え、そのまましばらく二人で語り合った。

 

 

 

 

 

 

 数日後、私はホレス商会の敷地に侵入していた。

 

 ランドレイとはそれなりに仲良くなった。

 

 あの話の後彼は私が話した事が本当だった時のために準備をすると言い、侵入を待って欲しいと頼んできた。

 

 私は彼の頼みを受け準備の終了を待ち、今日侵入する事になった。

 

 正直透明化、不可視の魔法などがあればぶつかったりしなければまず見つかる事は無いと思う。

 

 鍵など私の前では何の意味も無い。

 

 スムーズに屋敷に侵入した私は何か書類の様な物を残していないかを調べ始める。

 

 そして豪勢な扉の前を通った時、私の聴覚が声を拾う。

 

 「ホレスさんいつまで警備を強化しておくんです?」

 

 「……そうだの、念の為あと一か月はこのままにしておく」

 

 「仕事ですから構いませんがね。聞いていいなら聞きたいんですが……どうして急に?」

 

 ……いた、証拠を見つけてからと思ったが見つけたのなら殺そう。

 

 色々と聞き出してからな。

 

 「……ロミオ達の事だ」

 

 「あいつらがどうしたんです?」

 

 「死んだ。ウルグラーデに討伐応援に行ってハンドスネイクに殺された」

 

 「は?ハンドスネイク一匹に?」

 

 「案内をした冒険者の少女を守って名誉の戦死をしたと報告があった」

 

 「名誉の戦死ぃ?あいつらが?表じゃ上手くやってるがその状況で誰かを助けて死ぬような奴らじゃないでしょう?」

 

 「ワシは奴らは魔物にではなく何者かに殺されたと思うておる……例えば守られた少女とかの」

 

 「あの五人を殺れる奴……いや、それより誰が……ギルドは考えられない……ですかね?」

 

 「まずありえんだろうの、ウルグラーデギルドにそのような事をする連中が居るとは思えん」

 

 「誰かに殺されたのなら奴らが俺達の事を洩らしているかもって事ですか……」

 

 「そうだ、ずっと気にしている訳にもいかんがその何者かが来る可能性もある」

 

 そういう事だったのか。なぜ警備が強化されたのか理由が分からなかったからすっきりした……こいつらはもういらないな。

 

 私は部屋に防音と物理的な結界を施して部屋の中に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 「こんばんは」

 

 男……恐らく傭兵の槍を持った男が構えてホレスのそばに移動した。

 

 ホレスと思われる太った男はオロオロしているだけだ。

 

 「……何処に居やがる」

 

 そう呟く男。姿を消したままだったな、私は魔法を解除して姿を現す。

 

 「ホレス・コルマノンだな?」

 

 「ち、違う……」

 

 ん?私はホレスと思われる太った男に自白誘導をかける。

 

 「ホレス・コルマノンだな?」

 

 「……そうだ」

 

 先程と同じ質問に答えるホレス、私は魔法を解除した。

 

 「俺を無視するたぁふざけたガキだ!」

 

 私に接近し槍を突こうとする男……こいつは必要ない。

 

 「不法侵入だ!死んでもらっ……」

 

 私が髪の一本を振ると、彼は言葉を言い終わる前に頭を地面に落とした。

 

 「っあ…ひいっ」

 

 ホレスは腰を抜かして座り込み、床を濡らしている。

 

 「……色々話そうと思ったがもういいか」

 

 ホレスのその姿を見た私は一気に冷めてしまった。太った親父の失禁などこれ以上見たくない。

 

 それでも聞く事は聞いておく。

 

 彼に自白誘導魔法をかけなおし、証拠や現在の女性の居場所を聞き出してから首を斬り落とした。

 

 

 

 

 

 

 事の顛末としては……ホレスを始末した後、証拠の一部と捕まっていた女性達をギルドへ私だとばれないように渡し、ランドレイが向かって残りの証拠を回収した。

 

 その際のランドレイの顔はそこそこ酷かったと思う。

 

 ホレス商会は解体され、証拠の書類によって各町の女性を購入していた者達と誘拐に手を染めていた冒険者や傭兵が罰せられた。

 

 販売され生きていた女性達と死んだとされて捕まっていた女性達は解放され関係者と共に喜びの涙を流した。

 

 各町は突然の事件に暫く荒れ、冒険者が関わっていた事でギルドは立場を悪くした。

 

 冒険者は正義の集団だと思っている者が多かったのは意外だったな、何処にだって犯罪者くらい居るだろうに。

 

 創立が英雄と呼ばれたルランド・カリスなのが原因か?

 

 

 

 

 

 

 「あー……」

 

 私が事件を公にしてから半年。色々な処理や対応に追われたランドレイが応接室でうなだれて声を上げる。

 

 私はソファに座ってその姿を見ていた。

 

 「疲れているようだな」

 

 「……ああ」

 

 彼の場合、体力的な物よりも今まで気が付かず犯罪者の好きにされていた事実の方が効いたらしい。

 

 その事実を忘れる様に奮闘し、ようやく事件が落ち着いたのだ。

 

 ギルド職員もかなりきつかったに違いない。

 

 「丁度良かったクレリア、頼みたい事がある」 

 

 彼がうなだれながらも言ってくる。

 

 「なんだ?」

 

 「この町の責任者になって欲しい」

 

 サラッというランドレイ。

 

 「はぁ?」

 

 おっと、いきなりの事で思わず声が出た。

 

 うなだれているが彼の目は真剣だ、なぜ私が?

 

 「子供がそんな物になれるか」

 

 「なれる」

 

 そう言った私にはっきりと断言するランドレイ。

 

 「言ってみろ」

 

 そう言うと彼は話し始めた。

 

 「この事件を解決したのがお前だとばらす。ギルドの連中もお前の言う事ならかなり素直に聞く、これだけの功績があれば町の住人も受け入れるはずだ」

 

 「何を言っているんだお前は」

 

 私のした事をばらすと言った彼に言う。

 

 「頼む、まとめられる象徴が要るんだ」

 

 「事件を解決した功労者として祭り上げられろと?」

 

 この町はギルドと商会が繋がり犯罪に手を染めていた中心地だ。

 

 そのせいで他のギルドより立場が深刻だ、ランドレイが知らなかった事など関係無い。

 

 「頼む!俺では駄目なんだ!経営は周りの者がやる、ただ町の長として就任してくれるだけで良い!」

 

 思い切り頭を下げるランドレイ。

 

 町の経営……長か。

 

 この辺りで趣向を変えるのも良いか?今なら簡単になれるみたいだしな。

 

 「分かった、なるよ。面白いかも知れないしな」

 

 「本当か!?ありがとう!細かい事は任せておいてくれ!」

 

 彼は頭を上げ礼を言ってくる。

 

 「しかしこれだけの事が出来る力といい考え方といい……十五歳とは思えないな」

 

 苦笑いしながら彼が言ってくる。

 

 「まあ、十五じゃ無いからな」

 

 「はっ?」

 

 その後、本当は十五では無い事を話すと彼は頭を抱えて唸ってしまったが、聞かなかった事にして十五と言う事になった。

 

 その後もウルグラーデのギルドと私の事で多少騒がしくなったが、こうして私はリンガイルの長になった。

 

 

 





 町長になる辺りは特に無理があったような気がします。

 ギルドの話は続きませんでした、またやるかもしれませんが。







▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。