少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 2004年の秋。

 

 私は千穂、美琴、良平、太一の四人と久しぶりに会う事になり、共に動物園に来ていた。

 

 四人は現在二十一歳……だった筈だ、人類社会ではもう大人という扱いだな。

 

 世界各地で様々な生物を見ている私だが、動物園には始めて来た。

 

 ここに居る生物達は私にどんな反応を示すだろうか。 

 

 「順路があるからその通りにまわりましょ、その方が見落とさなくて済むし」

 

 「オッケー」

 

 美琴の言葉に太一が答え、遅れて千穂と良平も了承の返事を返している。

 

 「分かった」

 

 私も返事を返し、順路へと進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 それからいくつかの生物を見て回ったが、どの生物も私に意識は向けるが大きな反応は示さなかった。

 

 ここの生物はサバンナやアマゾンなどにいる生物よりもかなり警戒心が低い気がする。

 

 「クマだー!」

 

 千穂がクマを見て声を上げる。

 

 「なんていうクマなのかな?」

 

 良平の疑問に表示を見た太一が答えた。

 

 「えーっと……エゾヒグマって言うらしいぜ」

 

 「野生で出会ったら死を覚悟するけど、こうして見る分には可愛いわよね」

 

 美琴はそう言ってクマを見ている。

 

 見られているエゾヒグマは、私から意識を外さないようにしている。

 

 歩き回って視線を合わせないが、かなり緊張している事が分かるな。

 

 私達はしばらくエゾヒグマを見ていたが、やがて次の生物へと移動する。

 

 その時、エゾヒグマの緊張が和らぐのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 順路を回り生物を見て回ったが、一部の草食生物や小型の生物はかなり怯えていた。

 

 姿を現さなかったり角に集まって動かなくなったりしていたため、美琴達を含め周囲の客は不思議そうにしていたが、千穂だけが私を見て苦笑いしていた。

 

 そして次はライオンだ。

 

 大きい猫の様な生物だが、触り心地は猫の方が良いと思う。

 

 「寝てるねぇ……」

 

 「寝てるね」

 

 千穂と良平が話している。

 

 二人が言う通りライオン達は寝ていた、私が見ていても寝たままだ。

 

 私は少しだけ寝ているライオン達に意識を向ける。

 

 すると寝ていたライオン達が突然飛び起きて腹を見せた。

 

 「な……何?」

 

 「どういう事……?」

 

 美琴達と周りの客がざわめきだす。

 

 私はライオン達を落ち着かせてから次の生物へと移動した。

 

 その途中、千穂からこっそりと「あまりいじめないであげてね?」と言われた。

 

 警戒心が低い様だったので少し試してみたが、意識を少し向けただけでああなるとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 その後も残りの生物達を見たが、私を意識はする物の特に目立った行動は起こさなかった。

 

 そんな中、ゴリラは明確に私に意思を示した。

 

 ギリギリまで私に近寄ると、食べる前のリンゴを投げ渡して来たのだ。

 

 彼の気配から察するに、恐らく私へ捧げ物をするような意味合いの行動だろう。

 

 私は受け取ったリンゴを彼の前でかじった、美琴が驚いてやめるように言ったが気にせずに食べ続けた。

 

 それを見ると彼は安心した様に離れて行った、きっと彼の中では大事な事だったのだろう。

 

 千穂はそんな私の事を苦笑いして見ていただけだったが、私は三人から……特に美琴から「何で食べたの!?汚いでしょ!?」と叱られる事になった。

 

 途中で千穂が間に入り説教は終わったが、美琴は全く反省の色が見えない私を見て呆れていたな。

 

 動物園から出た後は早めの夕食を皆で食べ、千穂と良平、美琴と太一はそれぞれ自宅へと帰って行った。

 

 食べたリンゴは大分酸味が強かったな。

 

 

 

 

 

 

 特に大きな出来事も無く三年程が経ち、私達は西暦2007年の春を迎えた。

 

 千穂と美琴はそれぞれ保育士と小学校教諭に、良平と太一はそれぞれ雑誌編集者と俳優になっている。

 

 太一は本来別の仕事をしようと考えていたようだが、町でスカウトされた事をきっかけに俳優の道を考えた。

 

 そして彼がその事を美琴に相談した所、美琴が「やってみたいのなら止めない」と答えたため決心したようだ。

 

 千穂と良平はかなり驚いていたな、美琴も「相談された時は驚いた」と言って笑っていた。

 

 そして太一は本名のまま俳優として活動を始めた。

 

 本名での活動は珍しいらしいが、全くいない訳でも無い様だ。

 

 こうして友人達の環境が変化する中、私達の方にもそろそろ変化が訪れる。

 

 来年の春に月下グループによる各国の児童養護施設と学校が始まる予定になっているからだ。

 

 ヒトハとジャンヌの報告では、建物は簡単に作れても良い人材は中々集まらないらしい。

 

 その為時間をかけて少しずつ進める方針に変更したそうだ。

 

 

 

 

 

 

 ある日、私は東京の家で四人を待っていた。

 

 事前に私は四人に全員で集まって欲しいと頼んでおいた。

 

 それから全員が時間を調整して今日に決まり、これから集まる事になっている。 

 

 集めた理由は私の正体を三人に話すためだ。

 

 話すきっかけになったのは千穂から言われた「皆がクレリアちゃんに疑問を持ち始めたよ」という言葉だ。

 

 そろそろだとは思っていた。

 

 人間で言えば育ち盛りであろう小さい子供が、何年経っても全く変わらなければ疑問の一つも感じて当然だろう。

 

 その事を千穂に話すと彼女は「むしろ今まで平気だった事が凄いかも?」と言っていたな。

 

 とにかく、これ以上長く付き合うのならば話しておいた方が良いだろう。

 

 もちろん魔法で気にしないようにする事も出来るのだが、私は出来るだけ友人にそんな事はしないつもりでいる。

 

 正体を知った上で友人で居て欲しいという私の我が儘なのだが、今の所は変える気は無い。

 

 駄目なら私の事は忘れて貰うとしよう。

 

 

 

 

 

 

 私は四人が眠りに着いた後、リビングでくつろいでいる。

 

 結論から言うと皆は私を受け入れてくれた。

 

 正体を話し証拠を見せた後、千穂が既に知っている事を知った三人は私に恐怖を感じながらも千穂の心配をしていた。

 

 取り乱す事は無かったが、私を見る目は明らかに変わっていたな。

 

 そんな中、千穂が今まで一緒に過ごした時間は何だったのかと話す。

 

 気まずそうな表情をした皆に、千穂はある事を伝える。

 

 それは美琴を救った事だ。

 

 だが、彼らはその事を覚えていない。

 

 信じられないというような様子の三人に、千穂は「あの時の写真を一枚でも撮っておくんだった」と言ってうなだれた。

 

 自殺するまで追い詰められていたあの時の千穂に、そんな事を考える余裕があったとは思えないが。

 

 私は四人にその時の様子を見たいのなら見る事は出来ると伝えた。

 

 千穂は「撮影してたの!?」と驚いていたが、撮影などしていない。

 

 時間操作と遠視魔法を使って過去を見せるだけだ。

 

 一度は三人から消した記憶だが、それで私を受け入れる可能性があるのなら見せてみようと考え、提案した。

 

 すると三人は「証拠があると言うなら見たい」と了承してくれた。

 

 そして私は美琴を救うまでの全てを見せた。

 

 私と千穂は少し離れて座り、三人には並んでソファに座って映像を見て貰う。

 

 手足を失い植物状態になった美琴、その隣で悲しむ酷い顔をした太一と良平、自殺しようとした千穂の様子……それらを会話も含めて全てを見せる。

 

 三人は映像の中の自分達が間違いなく自分達であると感じたようだった。

 

 見終わった後で、三人は美琴の見舞いに来た時の千穂の様子を思い出し、千穂にあの時の事を問いかけた。

 

 そしてその問いの答えを聞いた三人は、千穂がこの事を知っていたからあのような反応をしたのだと理解した。

 

 その時、既に三人から私への恐怖は跡形もなく消えていた。

 

 見せたのは正解だったな。

 

 それから美琴は泣きながら私をきつく抱きしめて離さなくなり、その状態のまま良平と太一から泣きながら何度も感謝され、更に千穂からも改めて感謝された。

 

 それから落ち着いた三人と色々と話をし、ある程度三人の疑問にも答える事にした。

 

 皆が質問をしては私の答えに驚くという事を繰り返して時が過ぎた為、泊って貰う事にした。

 

 三人は眠る前に「色々と価値観が変わりそう」と言って苦笑いしていたな。

 

 隣でその言葉を聞いた千穂も頷いていた。

 

 私は今日の出来事を思い返しながらメイドが用意してくれた飲み物を一口飲む。

 

 どうやら現在の人類の常識の中で生きている者が私の事を知ると、多少の影響がある様だ。

 

 今までの友人達の中にも私の事を知った後、色々と価値観が変わっていた者が居たのだろうか。

 

 会話をしている内に人でなくとも私は今までと何も変わらないのだと理解してくれた様だし、私の正体を知っても友人でいてくれる貴重な友人が増えた事は嬉しいと感じている。

 

 今後、彼女達が敵対するような事が無い限り私から関係を切る事は恐らく無いだろう。

 

 さて……今日は皆が起きるまでこのまま本を読みながら過ごそうか。

 

 私はマグカップに残った牛乳を飲み干すと、本を取り出した。

 

 

 

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