少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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079-04

 

 2016年3月のある日。

 

 現在、私の家には葛城夫妻と鈴原夫妻が訪れていた。

 

 「それで、私に報告したい事とは何だ?」

 

 「直接言いたくて遅れちゃったけど……私と美琴、妊娠したんだ。今は三か月だよ」

 

 私の言葉に千穂が答える。

 

 そう言えば以前、子供を作りたいと言っていたな。

 

 「欲しいと話していたのは数年前だったと記憶しているが」

 

 「いざ作ろうと思うと色々とあってね、結局三年程経ってしまったよ」

 

 私の言葉に良平が苦笑いして言う。

 

 「美琴も千穂も同じ時期に妊娠してるんだよな……なあ、良平?」

 

 太一がそう言って笑い、良平を見る。

 

 その視線を受けた良平は恥ずかしそうに頬をかいた。

 

 「千穂、美琴、妊娠おめでとう」

 

 「ありがとう」

 

 私の言葉に微笑み、声を揃えて答える二人。

 

 この二人も母になるのか。

 

 「二人は予定通り専業主婦になるのか?」

 

 「うん。妊娠が分かった時に話はしてあるから、やる事をやったら退職だね。美琴もそうでしょ?」

 

 「そうね、私も近い内に退職するわ。復帰は今の所考えてないわね」

 

 ……ふむ、今の所二人の体調は悪くない。

 

 胎児も問題無い様だ。

 

 私は会話しながら二人の状態を確認する。 

 

 妊娠中は色々とあるからな、この子達は問題無く生まれるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 二人の妊娠報告を受けてから約四ヶ月。

 

 7月20日に私が出演しているゲーム、スカイレゾナンスが発売された。

 

 最初の予定ではテレビコマーシャルだけだったのだが、私の人気が上昇するにつれてゲームに対する注目が高まった。

 

 ゲーム制作側はこれを受けて大手動画サイト向けにもプロモーションビデオを作る事を決定し、私はその話を受けた。

 

 作られたプロモーションビデオも十分に作品をアピール出来たようで、近年稀に見る初回販売数を記録したそうだ。

 

 歴代の名作には及ばない物の、現在では十分過ぎる販売本数らしい。

 

 制作側が「初回生産本数をもっと増やすべきだった」と嘆く程には売れてるようだな。

 

 その中には私の娘達も居る、ヒトハ、フタバ、ミツハ、ヨツバの四姉妹が予約をして発売当日に手に入れていた。

 

 同じ場所に住んでいて四つも同じ物を買ってどうするのかと思ったが、一つでは全員がプレイするのに時間がかかると言われ納得した。

 

 現在は月の拠点で四つのグループに分かれて遊び、情報交換をしているらしい。

 

 

 

 

 

 

 【スカイレゾナンス】クレリア様を応援する【発売!】

 

 1:名無しのアイドル好き

 

 スカイレゾナンスおもしれー!流石クレリア様だ!

 

 

 2:名無しのアイドル好き

 

 詳しく

 

 

 3:名無しのアイドル好き

 

 まず普通にゲームとして面白い

 

 かなり作り込まれてて、戦闘機が好きな人も喜ぶと思う。更にそこに歌姫という要素が加わってる

 

 

 4:名無しのアイドル好き

 

 俺もやってるけどこれ良いな

 

 歌が邪魔なんじゃないかと思ったけど気分が高まる

 

 例えると……あれだ、映画とかアニメのクライマックスでたまにある、歌が流れている中で戦う感じ。

 

 

 5:名無しのアイドル好き

 

 常に歌うんじゃなくて、ここぞと言う時に歌って貰って強化を得るのがいい。

 

 

 6:名無しのアイドル好き

 

 機体の購入、改造とか、歌姫育成とか、中々ボリュームがあるな

 

 

 7:名無しのアイドル好き

 

 ゲーム内のクレリア様のモデルより実際のクレリア様の方がお美しいんだけど、不具合ですかね?

 

 

 8:名無しのアイドル好き

 

 不具合な訳無いだろ

 

 

 9:名無しのアイドル好き

 

 実際、二次元のキャラより可愛い三次元女性って初めて見たんだけど、彼女どうなってんの?

 

 

 10:名無しのアイドル好き

 

 美しさが次元を突破してるんだろ

 

 

 11:名無しのアイドル好き

 

 ゲームの面白さはクレリア様じゃなくて製作側の努力なんじゃないですかね

 

 

 

 

 

 

 249:名無しのアイドル好き

 

 なるほど、駆け引きの要素もあるのか

 

 

 250:名無しのアイドル好き

 

 ある。普段はそれぞれ自分の歌姫の歌が流れるんだけど、歌でも戦いを仕掛ける事が出来て、勝っている歌が大きく流れて効果が高く、負けている方の歌が小さくなって効果が低くなる。この部分は歌姫の育成次第な

 

 

 251:名無しのアイドル好き

 

 スルーしてたけど買ってみるかな

 

 

 252:名無しのアイドル好き

 

 戦闘機での戦闘が好きな人、アニメの様な戦いが好きな人には間違いなくお勧め

 

 

 253:名無しのアイドル好き

 

 ゲーム用にアレンジされたクレリア様の曲も良い

 

 

 254:名無しのアイドル好き

 

 それもだけど、他勢力の歌も良いの多いよな。歌の上手い声優使ってるだけある。

 

 

 255:名無しのアイドル好き

 

 クレリア様の曲のアレンジとオープニング曲とゲーム内の新曲はゲームのサウンドトラックとセカンドアルバムのどっちに収録されるんだろう

 

 

 256:名無しのアイドル好き

 

 アレンジとオープニングはサウンドトラックじゃね?んで、新曲はアルバム

 

 

 257:名無しのアイドル好き

 

 どっちも買えばいいんやで

 

 

 258:名無しのアイドル好き

 

 せやな

 

 

 

 

 

 

 523:名無しのアイドル好き

 

 今更だけど、みんなどの勢力最初にやってる?

 

 

 534:名無しのアイドル好き

 

 お前、ここが何処だか忘れているのか?

 

 

 535:名無しのアイドル好き

 

 ゲームのクレリア様のセリフ来たー!

 

 

 536:名無しのアイドル好き

 

 クレリア様ルートに決まってるだろ!

 

 

 537:名無しのアイドル好き

 

 だよな

 

 

 538:名無しのアイドル好き

 

 ごめん俺他のルートやってるわ

 

 

 539:名無しのアイドル好き

 

 まあ他にも魅力のあるキャラは居るし……(震え声)

 

 

 540:名無しのアイドル好き

 

 俺、クレリア様に敵は確実に殺せって言われてるんだ

 

 

 541:名無しのアイドル好き

 

 あのさ、俺は迷ってクレリア様ルートと別のルート同時にやってるんだけど……クレリア様のルートだけ何か違わない?

 

 他だと恋人っぽくなるのにクレリア様ルートだと皇帝と下僕っぽいんだけど

 

 

 542:名無しのアイドル好き

 

 マジで?俺クレリア様ルートしかしてないからこのゲームマゾ向けなんだと思ってた

 

 

 543:名無しのアイドル好き

 

 クレリア様は恋人相手でも対応変わらなそう……って言うか恋人作る気あんのかね?

 

 

 

 

 

 

 私がくつろいでいる前で娘達がスカイレゾナンスをプレイしている。

 

 娘達は私のルートをクリアし、他のルートを進めているようだ。

 

 「何か主様のルートと全然違うね?」

 

 ミツハがプレイしながら言う。

 

 「恋人になるのかよ、興味無いんだよな……」

 

 その言葉に隣で見ていたヨツバがどうでも良さそうに答えた。

 

 私には存在しない男女間の恋愛感情だが、娘達には自然と生まれるかも知れない。

 

 そう期待しているのだが……この様子ではまだ無理なようだ。

 

 「これ、他のルート全部こんな感じなのかな?」

 

 ゲームを一時停止したミツハがヨツバを見て言う。

 

 製作側から聞いている話では私だけが特殊らしいからな。

 

 「そうだったら私はもう止める、主様のルートだけで満足だし」

 

 ヨツバはそう言いながら飲み物を飲んでいる。

 

 「私は取り合えず全部やるー」

 

 そう言ってミツハはプレイに戻った。

 

 私もプレイしてみたが、ゲームとしては中々面白いと思う。

 

 戦闘機での戦闘だが、レーダーに映っていない相手の位置が把握しにくいのはFPSに近い物を感じた。

 

 ルートは自分以外を選んだが、歌姫との恋愛は全く興味が湧かなかったな。

 

 友人ルートがあればよかったのだが、聞いた所によるとゲームのプレイ人口が大分男に偏っているらしく、どうしてもこういった方向になるらしい。

 

 

 

 

 

 

 ある日、東京の自宅でくつろいでいると千穂から電話が来た。

 

 「クレリアちゃん、ゲームやったよ!スカイレゾナンス!」

 

 少し興奮した千穂の声が聞こえて来る。

 

 「そうか」

 

 「面白いゲームだね、続編に期待しちゃう」

 

 「かなり売れた様だから本当に作るかも知れないな」

 

 「クレリアちゃんのルートのクレリアちゃんは……クレリアちゃんだったね」

 

 「そのままで良いと言われたからな」

 

 「続編が出たらクレリアちゃんもまた出るかも?」

 

 「続編に同じキャラクターとして登場する事などあるのか?」

 

 「結構あるよ?続編で前作キャラが登場して、主人公に手を貸したりするゲームも結構あるし。クレリアちゃんが遊んだゲームの中には無かった?」

 

 プレイしたゲームの中にそんな描写があっただろうか?

 

 「覚えていないな。しかし、そういう事ならば再び声がかかる可能性もある訳か」

 

 「特にクレリアちゃんは表向きには年を取っても見た目が変わらない病気、みたいな設定だったよね?それなら続編にそのままの姿で登場しても平気そうな気がしない?」

 

 「なるほど」

 

 ゲーム内の私が現実の私と同じ様な設定なら、また出て来ても問題無い訳だ。

 

 「まあ、ゲーム自体が面白かったからクレリアちゃんが出なくても私は買うけど」

 

 「面白いなら当然だな」

 

 「美琴はクレリアちゃんが出てるから気にはしてたみたいだけど、元々あまりゲームしないからね」

 

 「無理に薦めるなよ?」

 

 「分かってるよー、私ももうお母さんになるんだしね」

 

 彼女は穏やかな声で言う。

 

 私は娘達に声をかけられるまで、しばらく電話で千穂と雑談をした。

 

 

 


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