少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 私のアイドル活動は特に大きな問題も無く進んでいる。

 

 京介と綾子が仕事を選び、人間のこなせる範囲に収めてくれているので、周囲に違和感も与えていないだろう。

 

 複数の言語で歌を歌い始めた私は、日本でのライブだけでは無く海外でのライブなども頻繁に行い始めた。

 

 新曲のリリースは複数言語での収録である事と、他の仕事が増えた事で数か月に一曲となった。

 

 これは私の問題では無く、周囲の仕事が追い付かないからだ。

 

 こうしてリリースした曲は全て、世界中でランキングのトップを独占している。

 

 人気は上がり続け、世界中にファンが増え続けた。

 

 行ける所まで行くつもりでいたが、一体どこまで行くのだろうな。

 

 私は魔法人類が居た頃から容姿を褒められる事が多かったが、特に気にしてはいなかった。

 

 しかし、こうして多くの人類が私の容姿に夢中になっている事実を確認すると、私の容姿がこれだけの影響を与えているという事実に多少の驚きを感じる。

 

 今まで気にしていなかった私の容姿の影響の大きさを、ある程度知る事が出来たのは良い事だと思う。

 

 ただし、多くの人類に私の容姿が好ましく見えても、美的感覚が大きく違う種族には嫌われる事もあるだろう。

 

 実際に人類の原住民の中には私の容姿を好まない者達がいたからな。

 

 リリースした曲がランキングトップになっている事から分かる様に、私の歌う感情の薄い、一部の感情が抜け落ちている歌も世界で高い評価を得ている。

 

 感想は色々とあるが、大体「歌によって変わる声質と驚異的な声域、苦痛や悲しみなどの負の感情を感じさせない歌声が良い」というような事を言われている。

 

 ある関係者の話では、一般的には負の感情をテーマにした曲は感情を込めて歌う物らしい。

 

 全く方向が違う私の歌が受けたのは、そういった事に負けずに生きて行くという意思を感じる所なのでは無いか、と話していた。

 

 私はその話を聞いた時に、その様な意図は全く無いと答えた。

 

 しかし、その答えを聞いた関係者は「例えクレリアさんにその様な意図が無くても、聞き手側がどう感じるかが問題なんですよ」と言っていたな。

 

 収録する際、聞き手側がそう感じるように私に要望を出していたのなら、見事としか言えないな。

 

 様々な事が出来る私だがこの件に関して「同じ事が出来るか」と言われれば「難しい」と答えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 海外でも人気が出た後は日本を始めとした世界各国のテレビ出演の依頼も以前より遥かに多く来ているし、映画の話も来ている。

 

 ますます仕事が増える中、私は京介と綾子の事を考えていた。

 

 私の魔法で体調は維持していたが、それでも二人は人間だ。

 

 仕事が多すぎる事で流石に手が回らなくなるのではないかと思い、対処しようかと考え始めていたのだが、私が動く前にプロダクション側が動いた。

 

 プロダクションから京介と綾子にサポートが用意される事になり、今後はサポートが様々な雑務をこなして二人を支える事になった。

 

 それが間接的に私の仕事のサポートをする事になるという訳だ。

 

 友人達は皆、私の人気を喜んでくれている。

 

 千穂は満足げな表情で頷き、美琴は「正直ここまで行くとは思って無かった」と言っていた。

 

 良平は喜びながらも「無理をしない様に」と言い、太一は「あっという間に俺より有名になったな」と苦笑いしていた。

 

 千穂と美琴は妊娠中の為、最近は私が夫婦の自宅に行き、会話をしつつ母子の様子を見ている。 

 

 忙しいのに来ていて平気なのかと心配されたが、私が「時間など作ろうと思えば作れる」と答えると納得してくれた。

 

 私がアイドルとして有名になり始めた頃、友人達にも一時期だが影響が及んでいた。

 

 私の写真を持っている元クラスメイト達や同級生などが、次々と四人に連絡を取って来たからだ。

 

 現在はもうそのような事は無いが、当時の四人は苦笑いしながら「自分達も皆の立場だったら同じような事をしてたかも知れない」と話していたな。

 

 そう言えば、以前バトルグラウンド関係でも何かあったと耳にしたが、それ以降何も聞かないな。

 

 

 

 

 

 

 私は現在、フラワープロダクションでの会議を終え、休憩室でくつろいでいる。

 

 「クレリアさん!?お疲れ様です!」

 

 「お疲れ様です!」

 

 すると、通りかかった新人のアイドル達が私に挨拶をして来る。

 

 「お前達か」

 

 「あの、少しお話しても良いですか?」

 

 「良いぞ」

 

 私がそう答えると彼女達も椅子に座る。

 

 フラワープロダクションに所属した初期はその外見と話し方で遠巻きに見られ、人気が出てからは不穏な噂で遠巻きに見られていた私だが、今では慣れたのか良く話しかけられる。

 

 新人達も必ず挨拶に来るし、こうして話をしたいと言って来る者達も増えた。

 

 どういう事かと思っていたのだが……どうやら今まで私に余計な事をしてくる者達を退けた事で、他のアイドル達も結果的に救っていたようだ。

 

 確かに京介と綾子から相談され、気まぐれに多少手を貸した事もあったな。

 

 それがいつの間にか広がり、私は他のアイドル達から「業界の魔の手から守ってくれる心強い先輩」と思われるようになっていた様だ。

 

 基本的にアイドルは若い者達が多い。

 

 その中に見た目は幼くとも、実年齢が30近い大人のアイドルがいれば頼りたくなる物らしい。

 

 私は誰でも助けるという訳ではないのだが、悪意無く純粋に先輩として慕って来る新人達に多少甘くなっている、という自覚はある。

 

 「クレリアさんはもう食レポとかはやらないんですか?」

 

 彼女達の一人がそう聞いて来た。

 

 「難しいだろうな。今は歌関係の仕事が多く、海外に行く事が多い。食事は嫌いでは無いのだが、そういったテレビ関連の仕事は優先度が低くなっている」

 

 「そうなんですか……好きだったんですけどね、クレリアさんの食レポ」

 

 「私も!絶対に素直に美味しいと言わないのが面白くて!」

 

 「クレリアさんが「悪くない」って言った料理は美味しいって評判になってるもんね!」

 

 そう口々に言う彼女達。

 

 「クレリアさん、テレビで言ってましたもんね?」

 

 「何の話だ?」

 

 私は質問に心当たりがないので聞き返した。

 

 「ほら、どうして美味しいって言わないか聞かれた時に「今の所、美味しいと言えるのは家族の料理だけだ」って言ったじゃないですか」

 

 確かにそんな事を言った覚えがある。

 

 「それは間違いない。私は今も家族の料理が今まで食べて来た中で一番美味しいと思っている」

 

 あくまでも私の感想だが。

 

 「やっぱりそうなんですね。私……クレリアさんの事、正直ちょっと苦手だったんですけど……あの放送で好きになりました」

 

 彼女はそう言いながら微笑んで私を見た。

 

 他の者達も微笑みを浮かべて私を見ている。

 

 何となく年下を見る様な視線と気配を感じるな。

 

 彼女達は私の年齢を知っている筈なのだが……それでもこの見た目ではこうなるのか。

 

 家族の料理の発言に関してだが、恐らく彼女達は私の言葉の意味を誤解している。

 

 私が家族の料理を美味しいと評価しているのは、家族が作っている事が理由では無い。

 

 未だに、迷う事無く美味しいと言える料理を作れる者が娘達以外に居ないだけだ。

 

 誰が作ろうと美味い物は美味く、不味い物は不味い。

 

 様々な要因である程度感じ方が変化したとしても、それが評価に入る事は無い。

 

 「お前達、一応聞いておくが何か予定は無いのか?私と話をしていて遅刻した、などと言う様な事にはなるなよ?」

 

 新人が意味も無くここにいるという事は無いだろう。

 

 私は念の為、彼女達に聞く。

 

 「あ……そうですね。そろそろ行きます」

 

 「お話し出来て嬉しかったです」

 

 「またよろしくお願いします」

 

 私の言葉に、全員が次々と挨拶をして去って行く。

 

 あの位の年の人類はとてもにぎやかだな。

 

 私はそう思いながら彼女達を見送った。

 

 ふと、今でも騒がしい娘達の事を思い出すが、彼女達は人類では無いからまた別だろう。

 

 

 

 

 

 

 「少し遅れるから待ってて欲しいって」

 

 会議室にいる少女達の一人が電話を切って言う。

 

 「そっか、じゃあしばらくゆっくりしてようよ」

 

 少女達は雑談をし始める。

 

 「今日はクレリアさんと会えるなんて思わなかったから驚いちゃった」

 

 「そうだね、ちょっと前まで海外に行ってたから無理だと思ってた」

 

 プロダクションの会議室で少女達が雑談を始める。

 

 「ホント可愛いわよね。あれで三十手前って……」

 

 「真似しようと思って出来る事じゃないね……」

 

 「始めは見た目と話し方のギャップが凄いから驚いたし、笑わないからちょっと怖く感じたけど……実際は優しいよね」

 

 俯き気味の少女が言う。

 

 「それに色々と悪い人達をやっつけてるって聞いたし……嫌ってる人はただの嫉妬なんじゃないかなぁ?」

 

 別の少女が椅子に寄りかかりながら話す。

 

 「歌もダンスも容姿も最高だからね……嫉妬もするでしょ。でも、私達を始めとした新人アイドルが増えた原因は間違い無くクレリアさんだと思うよ?」

 

 そう言った少女を他の少女達が見る。

 

 「それはそうかも……私はアイドルになるか迷ってたんだけど、決断したきっかけはテレビで見たクレリアさんだったし」

 

 「私はクレリアさんのファーストライブにも行ってるけどね」

 

 「えー!?」

 

 しばらく黙って聞いていた少女がそう言うと、全員が声を上げた。

 

 「伝説の始まりって言われてる、あのファーストライブ!?」

 

 「そうよ、クレリアさんの最初のファンは私よ」

 

 得意げにそう語る少女。

 

 「最初ってどういう事なの?」

 

 「私はクレリアさんがデビューする前からファンなのよ」

 

 「事前PVの時って事?それだったら最初とは言えないんじゃない?」

 

 そう一人の少女が言うが、彼女は首を横に振る。

 

 「違うわ、私がクレリアさんのファンになったのは2010年よ」

 

 「2010年……?クレリアさんはプロダクションに入って無い頃だよね?」

 

 そう尋ねられた彼女は語り始める。

 

 「今でもはっきり覚えてるわ。2010年にパパが大学から帰って来た時、構内で凄い美少女に会ったと話をしたの」

 

 「あ!もしかして!」

 

 察しの良い一人が声を上げる。

 

 「まあ分かるわよね……。その時パパはその人を撮影していて、見せて貰った写真が……当時23歳のクレリアさんだったのよ」

 

 「そんな事、本当にあるんだ……!」

 

 皆、驚いた表情をしている。

 

 「……パパさん隠し撮りしたの?」

 

 「する訳無いでしょ!?……パパが頼んだら嫌がる事無く撮影させてくれたらしいわ。そして……それを見た私は衝撃を受けた、あんなに綺麗な女の子が居るんだって」

 

 「その時にファンになったのね?」

 

 「そうよ。聞いた当時は23歳だって知らなかったから、少し後にパパから年齢を聞いて混乱したけど」

 

 「混乱する気持ちは分かるわ」

 

 「PVを見た時、すぐに彼女だと気づいたわ。だって、見た目が全く変わってないんだもの」

 

 「……本当に昔から姿が変わってないのね、クレリアさん」

 

 「当時の写真をパパに頼み込んで貰っているんだけど、今と見比べても違いが分からないわよ?それに……」

 

 彼女はクレリアの事を嬉しそうに語り始める。

 

 「これは……本当に最初のファンかも知れないわね」

 

 一人がそう呟くと、周囲の少女達が頷いた。

 

 

 

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