少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 私のファーストライブブルーレイは無事に発売された。

 

 発売直後から驚異的な売り上げを出し、今も更新されていると報告を受けている。

 

 プロダクション側は今の人気からある程度予想していたようだがそれを上回ったらしく、今後塗り替える事が出来るか分からない様な記録が出ていると言っていた。

 

 そして、私がアイドルとして活動している間も世界の時は進み続ける。

 

 

 

 

 

 

 現在、私は病院の分娩室に居る。

 

 目の前では美琴が出産の真っ最中だ。

 

 2017年9月9日の早朝に「美琴に陣痛が始まった」と侍女から連絡があった。

 

 太一はどうしても外せない仕事で不在だったため、私は念の為に侍女の一人を付けておいた。

 

 本人は少しの間くらい平気だと言っていたが、どうやら間違っていなかった様だ。

 

 「呼吸を整えて!」

 

 「うぅう……ぁぁああ!」

 

 看護師の言葉に叫び声で答える美琴。

 

 「旦那さんに連絡は?」

 

 「しました。向かっているそうですが、到着前に生まれそうですね」

 

 冷静な医師と看護師が会話している。

 

 私は姿を消して分娩室で様子を見ているが、美琴から大きな不安を感じている事が分かる。

 

 太一がいない事が影響しているのかもしれない。

 

 私は姿を消したまま、そっと美琴の手を握る。

 

 すると彼女は一瞬、痛みを忘れた様な表情で握られた手を見た。 

 

 実際に痛みが無くなった訳では無い。

 

 痛みを無くす事自体は出来るが、以前友人に「出産の痛みは出来るだけ消さないように!」と叱られてから行っていない。

 

 私は耳元で囁く。

 

 「太一はこちらへ向かっているから安心しろ」

 

 「あ……りがと……うぅ……」

 

 彼女はかすれた声で呟く、叫び過ぎたのだろうな。

 

 どうやら不安は消えた様だ。

 

 私は生物の出産には多少の思い入れがある、私が生命と魂を知る切っ掛けとも言える出来事だからな。

 

 美琴は私の手を握り締めながら出産した。

 

 その後、太一が息を切らしながら到着し二人共喜びを爆発させていた。

 

 私はそんな二人に言葉をかけてから家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 美琴が出産を終えてから七日後の9月16日の夜。

 

 今度は千穂が陣痛に襲われた。

 

 陣痛が起きた際、千穂の元には良平がいたので病院へ連絡し、共に病院へ向かった様だ。

 

 私は美琴の時と同様に、分娩室で姿を隠して様子を見ている。

 

 「痛い!痛い……!良平!」

 

 「旦那さんは声をかけてあげて下さい」

 

 「千穂!傍に居るから!頑張って!」

 

 叫ぶ千穂に声をかけるように看護師に促され、必死に声をかける良平。

 

 「千穂、お前も赤子も健康状態は良好だ、安心して生むと良い。良平、お前が折れれば千穂は拠り所を無くす、心を強く保て」

 

 「はっ……はっ……クレリア……ちゃん?」

 

 「傍に居てくれたみたいだね……」

 

 「うん……」

 

 私が周囲に聞こえないように不安そうな二人へ声をかけると、二人は見つめ合って表情を緩めた。

 

 千穂の方は痛みで辛そうだが、それでも二人に在った不安は消えた。

 

 それから千穂も問題無く出産を終えたが、生んだ時には日を跨ぎ17日になっていた。

 

 

 

 

 

 

 その後特に何かが起こる事は無く、二人と赤子達は無事に退院した。

 

 千穂と良平の子は女、美琴と太一の子は男だった。

 

 子供は葉子、健太と名付けられ、大切にされている。

 

 

 

 

 

 

 2017年12月16日には学園幻想怪奇譚が発売された。

 

 ある程度の時が経った今も、売り上げは悪くない様だ。

 

 娘達は私の関わっている物は手に入れていて、このゲームも予約購入していた。

 

 ゲーム業界では私が出るゲームは売れると言われ始めているようだが、それは関係無いと思う。

 

 

 

 

 

 

 学園幻想怪奇譚について語る

 

 

 1:名無しのゲーム好き

 

 発売からそれなりに経ったし語ろうぜ

 

 

 2:名無しのゲーム好き

 

 面白い、仲間も個性があるし、ストーリーも良かった。

 

 

 3:名無しのゲーム好き

 

 クレリアはクレリアのままだったな。

 

 

 4:名無しのゲーム好き

 

 演技が出来なくてそのまま登場してるってマジ?

 

 

 5:名無しのゲーム好き

 

 あの性格と反応が素なのは間違い無い筈だから……演技が出来ないのか、そのままで出て欲しいと言われたのか……その辺はよく分からんね。

 

 

 6:名無しのゲーム好き

 

 他の仲間キャラが色々と起こる出来事に対して驚いてるのに、一人だけずっと反応変わらなくてワロタ

 

 

 7:名無しのゲーム好き

 

 彼女らしいって言えばらしいけど、これで良いのか?

 

 

 8:名無しのゲーム好き

 

 素晴らしい売り上げ成績が全てを語ってる

 

 

 9:名無しのゲーム好き

 

 まあ売れればいいよな。今までこんなキャラ居なかったし、それが良かったんじゃね?

 

 

 10:名無しのゲーム好き

 

 世界の破滅を目の前にしても大して気にしないクレリア様……流石です

 

 

 

 

 

 

 329:名無しのゲーム好き

 

 ずっと思ってたんだけど、クレリアが歌で強化とかするのは分かるけどさ。ダメージ与えるって事はめっちゃ音痴に歌ってんのかな?

 

 

 331:名無しのゲーム好き

 

 音波的な物じゃね?それか不思議パワー

 

 

 332:名無しのゲーム好き

 

 不思議パワーとは一体……

 

 

 333:名無しのゲーム好き

 

 クレリアなら不思議パワー使っても驚かんな

 

 

 334:名無しのゲーム好き

 

 せやな

 

 

 335:名無しのゲーム好き

 

 ネタばれになるけど、クレリアは予想通り恋愛系のエンドは無かったな。

 

 

 336:名無しのゲーム好き

 

 徹底して恋愛要素を排除してるよな

 

 

 337:名無しのゲーム好き

 

 俺的には全然かまわないけどな。アイドルなんだから無い方が良いのは間違い無いだろうし

 

 

 338:名無しのゲーム好き

 

 女主人公だと若干百合っぽいエンドあったな

 

 

 339:名無しのゲーム好き

 

 もしかしてクレリアは同性愛者? 

 

 

 340:名無しのゲーム好き

 

 それはそれでいい

 

 

 

 

 

 

 ある冬の日の午後。

 

 私は静かな公園を千穂、美琴と共に散歩している。

 

 二人が押すベビーカーで寝ている葉子と健太は、問題無く成長している様だ。

 

 出産後、初めて私が二人の家に行った時は出産時の事を感謝された。

 

 電話で既に感謝はされていると伝えたが「直接感謝の言葉を伝えたかった」と言われたのでそれ以上は何も言わない事にした。

 

 「赤ちゃんを育てるのは想像以上に大変だわ……太一も協力してくれてるから何とかなってるけど」

 

 「私も良平がいなかったらと思うと……でも、可愛いよね」

 

 「まあね……」

 

 二人は初めての育児で大分疲れているようだな。

 

 「限界を迎える前に相談しろ、多少ならば手を貸そう」

 

 「クレリアちゃんは赤ちゃんの面倒見れるの?」

 

 そう尋ねる千穂に私は答える。

 

 「私がどれだけの赤子を見て来たと思っている。実際に生んだ事は無くても、子守りの経験だけならどの人類よりもあるぞ」

 

 「あー……なるほど」

 

 私の言葉を聞いて美琴が声を上げる。

 

 「クレリアちゃんは人間なんか相手にならないベテランさんだった……?」

 

 千穂は驚きの表情で私を見た。

 

 「そういう事だ。どんな事でも助けるという訳では無いが、最低でも助言はしよう」

 

 「ありがとう、心強い相談相手がいると気が楽になるわ」

 

 そう言って美琴が微笑む。

 

 その雰囲気と表情は、これまで見て来た母親達と良く似ていた。

 

 

 

 

 

 

 私は公園内のベンチに座り、授乳する二人を見ていた。

 

 今は授乳服と言う専用の服が販売されている。

 

 二人もこの授乳服を着ているが、見た目は普通の服にしか見えない。

 

 それが良いらしいが、私は今もファッションにあまり興味が無いので特に言う事は無い。

 

 私は装飾過多な服が好みでは無いため、アイドルとして着ている衣装は一般的なアイドルと比べ大人しい。

 

 それでもまだ装飾が多いと感じてはいるが、その辺りはアイドルをするのなら避けては通れない様だ。

 

 「大人気のクレリアちゃんがこうして公園を歩いていても全く騒がれないなんて、魔法って便利だよね」

 

 千穂が授乳しながら美琴に話しかける。

 

 「そうね、もし見つかったら大騒ぎだわ」

 

 私が外でも問題無く過ごす事が出来ているのは魔法を使っているからだな。

 

 そのせいか、世間からはプライベートが全く不明なアイドルと言われている。

 

 世界の大半が私の事を知っているにもかかわらず、目撃情報が全く無いのだから当然かもしれないが。

 

 「友人と過ごす時間を邪魔されたくはないからな」

 

 私の言葉に、二人は乳を飲む我が子を見ながら答えた。

 

 「健太がいる時に騒がれると困るから助かるわ」

 

 「そうだね。うるさいと葉子も泣いちゃうと思うし」

 

 現在の二人の中心は我が子のようだ。

 

 今まで見て来た母親達も大体そうだったな。

 

 授乳を終えると、私達は帰宅する事にした。

 

 赤子に無理をさせないためだ。

 

 二人と別れた後、私は彼女達が問題無く自宅に到着したのを確認し、遠視を切った。

 

 





 友人にはそれなりに過保護な主人公ですが、この二人をかなり気に入っているという理由もあります。


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