掲示板を書くのが楽しくなってきましたが、やり過ぎないようにします。
ジャンヌがアプリゲームで遊ぼうと誘って来た日から時は過ぎる。
2018年12月28日には「剛拳」が発売され、話題となった。
その話題の中心となったのは、剛拳に登場した私がモデルのキャラクターだったらしい。
どうやら、背が低いため一部の攻撃が当たらない上にキャラ性能も高い、という事で「ゲームバランスが悪い」、「贔屓」といった意見が寄せられ、インターネット上でも批判が起きたという。
それに対して剛拳の開発元は「クレリアさんご本人の能力を考えると、あれ以上弱くは出来ない」と発表したという。
その発表によって更に騒ぎは大きくなった様だ。
しかし、初回特典映像である私のモーションキャプチャー体験映像の一部がニューチューブに投稿された事で、騒ぎは終わったという。
これらは全て後から聞いた事で、当時の私はまったく気にせず過ごしていた。
剛拳について語る
1:名無しのゲーム好き
皆で剛拳について語ろうぜ。
2:名無しのゲーム好き
毎回、登場する度に話題を作る今世紀最高のアイドルさんについて言いたい。
今世紀どころか人類史上最高だよ。
3:名無しのゲーム好き
初回特典映像見た時合成だと思ったわ
4:名無しのゲーム好き
公式が加工して無いって断言したからな
5:名無しのゲーム好き
アイドルってあんな無茶苦茶な動きするもんだっけ……?
6:名無しのゲーム好き
彼女はアイドルじゃなくて超人だから……(震え声)
7:名無しのゲーム好き
何なのあれ?所々CG使ってるような動きしてたけど……重力どこ行った?
8:名無しのゲーム好き
クレリア様にとって重力など飾りよ
9:名無しのゲーム好き
実際の所どうなの?
10:名無しのゲーム好き
体操で一応良い所まで行った俺の意見だと、理論上人類にも出来る動きだと思う
11:名無しのゲーム好き
理論上?
12:名無しのゲーム好き
普通はまず出来ない
13:名無しのゲーム好き
彼女はやってるけど
14:名無しのゲーム好き
あんまり詳しくない人は凄いで終わると思うけど、詳しければ詳しいほど彼女がどれだけおかしい動きをしているか分かると思う
15:名無しのゲーム好き
へぇー、でも普通に出来る動きなんでしょ?
439:名無しのゲーム好き
何度見ても凄いなこれ、アスリートより凄いんじゃね?
440:名無しのゲーム好き
今更だけど「クレリアさんご本人の能力を考えると、あれ以上弱くは出来ない」っていう公式の言葉は本当だったんだなって
441:名無しのゲーム好き
剛拳自体がリアル系の格闘ゲームだからな、特典映像みたいな動きされたら困るだろ
442:名無しのゲーム好き
あのまま使ったら一人だけゲームが違う状態になるな
443:名無しのゲーム好き
あれを見る限り、本人も相当強いんじゃないか?それこそ並の格闘家じゃ勝てない程
444:名無しのゲーム好き
プロの格闘家を舐めるな、動けるだけの素人じゃ無理だよ
445:名無しのゲーム好き
いつもの表情でサクッとプロを倒す彼女が想像出来て怖い
446:名無しのゲーム好き
雰囲気だけならラスボスだからな
447:名無しのゲーム好き
特典映像見てないのかよ。あれ見て雰囲気だけって言うならお前おかしいぞ
448:名無しのゲーム好き
彼女は裏ボスだから
449:名無しのゲーム好き
可愛くて男らしい上に強いとか最高かよ……結婚したい
450:名無しのゲーム好き
なお本人は恋愛に欠片も興味が無い模様
2018年の年末も私はいつもの様に娘達と過ごした。
2019年に入った後、1月はライブで世界各地を回っているだけで過ぎ、既に2月に入っていた。
そして現在。
私はプロダクションの会議室にいた。
「これで音楽関係の事は終わりです、次はゲームの仕事の話をしましょうか」
京介がそう言いながら資料の一部を片付ける。
「今度は何だ?」
「以前出演したスカイレゾナンスの続編です」
京介がそう言うと、彼の隣にいる綾子が説明を始める。
「タイトルは「スカイレゾナンス・インフィニットブルー」と言います。制作は既に発表されていますが、詳しい情報はまだ公表されていません」
「本当に続編に呼ばれたな」
「今回、再びクレリアさんに声がかかったのは、人気投票で一位だったからですね」
「そうか」
「……クレリアさん、人気投票の結果は見ましたよね?」
そう言えば見た様な気がするな。
「今、思い出した」
私がそう言うと、綾子が少し怒った様な、呆れた様な表情で言う。
「もう……アイドルなんですからその辺りは気にして下さいよ……」
「気にしない私だったからこそ、ここまでになったのではないか?」
「う……それは、まあ……そうかも知れませんけど」
私の言葉に口ごもる綾子。
「人気の事など気にしない自由な態度と言動がファンの心を掴んだのでしょうね」
私達の会話を聞いていた京介が言い、更に付け加える。
「後は、第一印象が良かった事が大きいと思います」
「第一印象か……」
「クレリアさんは文字通り、人外の美しさですからね」
微笑みながら語る京介。
「私も今ならばどういう事か分かる」
「残念な事ですが……同じ事をやっても、見た目によって大きく効果や受け取り方が変わります」
「そうだな」
私も長い間理解出来なかったのだが、今では人類が外見の影響を大きく受ける事に気が付いている。
「外見が好みであれば好意的に受け取られ、好みでなければ反感を買う、という事だろう?」
「そうです。外見だけが全てだと言う気はありませんが……クレリアさんがここまで美しくなければ、これ程に支持される事は無かったでしょう」
「この姿は私が目を覚ました時から全く変わっていないし、今ではすっかり定着している。この姿が原因で巻き込まれる事もあるが、今更多少の弊害がある程度で姿を変える気にはならないな」
「……え?……姿を変えられるんですか!?」
私の言葉を聞いていた綾子が声を上げた。
「変えられる」
「何で言ってくれなかったんですかぁ!?」
何やら悲しそうな表情だが、興奮し始めている事が分かる。
「特に理由は無いな」
「早く言って下さいよ!それが可能なら誰にでもなれるって事ですよね!?どんなキャラにでも!」
私の答えに、綾子は興奮したまま言う。
大体何を言いたいか分かる辺り、私も知識がついて来たな。
「綾子が言いたいのは、私がいれば二次元のキャラクターを現実で見る事が出来る……という事だな?」
「その通りです!クレリアさんお願いします!なって欲しいキャラクターがいまして……!」
「断る」
「そんな!?」
「僕も驚きましたが……クレリアさんですからね」
私に頼み込む綾子を見ながら、京介が呟いた。
私は京介と共に興奮する綾子を落ち着かせ、仕事の話を再開した。
「スカイレゾナンス・インフィニットブルーは、前作から数十年後の物語です。クレリアさんは「加齢で姿が変わらない特殊な病気」という設定で、前大戦を戦い抜いた元歌姫として登場します」
落ち着いた綾子が説明をしてくれる。
「詳しい話は別の日に制作側の方を交えて行いますが、今回は今作の主人公達の手助けですので、新曲などはありません」
「声を入れるだけで良い訳か」
「はい。今回も台本は確認して貰い、クレリアさんの意見をもとに違和感が無いように調整するそうです」
綾子の説明の合間に、京介が口を開く。
「本来はこちらが合わせる事だと思いますが……クレリアさんの場合は例外ですね」
「向こうが苦労している事は私も何となく分かるが、それでも良いと言ったのは向こうだからな」
「まあ、そうなんですけどね。そこまでするのは珍しいという話です」
私の言葉を聞いた京介が、やや苦笑い気味に言う。
「恐らく、クレリアさんの人気がこの先もっと上がると踏んで、多少無理をしてもつながりを持ちたかったのでしょう」
そう話す綾子に、私は尋ねる。
「綾子はまだ人気が上がると思うか?」
現時点でもかなり知られていると思うが。
「もちろんですよ。実際にクレリアさんに持って行く仕事は少ないですが、依頼は凄まじい量ですからね?時間が取れない事と、演技が出来ないので映画などの出演は全て断っていますが、今までどれだけ話があった事か……」
溜息を吐く綾子、そんな綾子を見て京介が話しかける。
「お互い大変ですね」
「人気がある事は嬉しいですけどね」
そう言って、二人は笑った。