魔法は万能。
この作品の注意事項
・作者の自己満足
・素人の作品
・主人公最強
・ご都合主義
・辻褄が合わないかもしれない設定
・注意事項が増える可能性
等が含まれます。
以上をご理解したうえでお読みください。
読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。
それから私は年若い者達をウルグラーデの神殿に送り、残った巫女達に家を割り当てた。
すぐに村を魔法で保護してリンガイルへ戻り、町長を辞める事をランドレイを始めとした運営者達に伝えた。
全員に引き留められたが私が意見を変える気が無いと分かると渋々諦めてくれた。
そして作物の種、農耕関係の本、いずれ必要になる家畜等をマジックボックスに入れる。
家畜達は必要になるまで私のマジックボックスに保存しておく事になる、こうして思いつく限り色々な物を買い集めた。
そしてモー乳とモー乳製品は各店舗を回って全て買い占めた。無くなる度に買いに行くのは面倒だ、足りなくなったらまた来るつもりではいる。
後は、何か……そうだ。
『ケイン今いいか?』
『はい、構いませんよ』
ケインからすぐに返事が来る。
『ルセリア王国に管理されるのは嫌だと巫女達が答えたからウルグラーデ以外の巫女は全て人類の勢力圏外で暮らす事になった』
『……それはまた……巫女が一斉に消えたら王国も困るでしょうね。適当な偽物が巫女になると思いますよ?』
巫女が偽物ならもう助ける事も無いな。
『それは勝手にすれば良い』
『しかし……ウルグラーデの巫女達も共に行きたかったと思いますよ?』
『む?しかしそこは安全だろう』
ケインと学校があれば平気だろう。
『そういった問題では無いのです師よ』
『……そうなのか?』
私には分からないが人間としては仲間外れは寂しいのかも知れない。
『はい。そうですね……彼女達に会って「正統な巫女の血を地上に残す為にお前達は選ばれた」とでも言ってあげて下さい』
『それでいいのか?分かった。言って来よう』
確かに私が集めた巫女達は子を作らずに死ぬだろう。
そうなると巫女の血はウルグラーデの巫女達が最後になるかもしれない。
今までに他の道を選んだ者は居なかったのだろうか?
こうしてウルグラーデの巫女達の元に再び向かい言葉を伝え、私は巫女達の村に戻った。
こうして私は巫女達と村で暮らし始め、生きる為の技術と知識を巫女達と共に身に付けながら生活が始まった。
数日後、私は気が付いた事を彼女達に聞いた。
「少しいいか?」
「クレリア様!どうぞ何なりと」
まだ巫女達は対応が硬い、その内普通に話せると良いが。
「お前達。夫や友人と離れる事に抵抗は無かったのか?」
気が付いた事を聞いた。
「問題ありません。私達は代々夫になる者や友人に、神に出会う事があるなら神を優先すると伝えております。それに納得出来ない者は巫女と結婚する事が出来ません」
昔から彼女達はこうだったな……更に彼女は続ける。
「子は神のお力によって娘しか生まれませんので離れる事はありません。皆も同様です」
そう言って微笑む。娘しか生まれないのは恐らく私のせいだろうな。
百何十年以上も女しか生まれないんだ……何かあるとしか思えない。
村の事が落ち着いたら調べてみようか、私は彼女達に礼を言ってその場を離れた。
「上手く出来ましたクレリア様!」
村に住んで約四か月が過ぎた。少しずつ色々な事を吸収する巫女達は今獲物の解体を行っている。
「良いぞ。もうこの獲物の解体は完璧か」
嬉しそうに笑う巫女。
最初は大変だった……戦闘力があっても解体は初心者。
肉をバラバラにしたり内臓を傷つけて臭いに悶えたりしていた、その後臭いは消してやったが。
最初は練習する分野を分けて出来る作業が偏らないようにした。
「確か皮の処理の工程を覚えた者が居たはずだな」
隣にいるエレジアに問う。
「はい、では次から貴女は皮の処理の方へ行ってください」
「分かりましたエレジアさん」
そう言って後かたづけを始める巫女。
「これで取り敢えず暮らして行ける様になりましたね」
エレジアが私を見る。
「そうだな。後は覚えた者が他の巫女に教えれば良いだろう」
「次は農耕でしょうか?」
「ああ、私も楽しみだ」
農業に取り掛かり約一年、ようやく作物が取れる状態になった。
「ようやく形になったな」
私は出来上がった畑を見る。
「そうですね……自然の力だけで食料を作るのは大変だと言う事が分かりました」
エレジアも嬉しそうだ。
最初は自然に作ろうとしたのだが全く上手く行かず、結局魔法に頼った。
魔法で土の状態を良くし、作物に回復魔法をかけ、魔法で水を与え……何から何まで最終的には魔法に頼った、使える物は使う事にしたとも言えるかもしれない。
「魔法を使った途端に上手く行ったな」
「クレリア様が私達にも使える様にしてくれたからです」
私は農業用の魔法を作り巫女達に教えた。上手く行かない者には詠唱を組み上げ使えるようにした。
こうして生活しているうちに巫女達はそれぞれ得意な事、やりたい事などを行うようになり自然と役割が固定されていった。
村に住み始めて二年。役割も完全に決まり生活が安定した為、私は彼女達が女しか生まない原因を調べる事にした。
実際に娘を生んだ巫女達に協力を頼み彼女達の身の安全に注意しながらひたすらに調べ続けた。
あれから七年、村に住んでから九年が過ぎた。
森の魔物の襲撃や作物を狙った空からの魔物や鳥の被害を防ぎながら巫女達と暮らしていたが、遂に巫女達が女しか生まなかった原因が分かった。
……分かっていた事だがやはり私が関係していた。
昔ンミナに行った治療が原因だ。
あの頃の私は肉体だけを見ていたが彼女の魂にも影響を与えていた。
その魂の傷とも言える状態は子から孫へと残り、一族の娘の魂を縛り続けた。
妊娠したンミナが心配で魂に干渉できる様になったが、あの時見えていた魂は表層にしか過ぎなかった。
より深く知った今なら分かるが……これは言葉で説明出来る気がしない。
しかし知ってしまうと色々とやってみたくなる……出来る可能性があるならやってみたくなる事もある。
ウルグラーデの巫女達を含めた彼女達一族に打ち明けて謝罪し、治せる事を伝えたのだが……なぜか喜びこのままで良いと言われた。
村に住んで十一年。
村の近くの海辺で椅子にもたれてのんびりとしている私はふと思う……この辺りには大きな気候の変化が無い、暑すぎず寒すぎず、かなり安定している。
気が向いたら以前のように雪の降る地域などにも行くかな。
そう考えながら波の音と海風に包まれ一日を過ごした。
「喜んだ理由ですか?」
村に住んで十五年、家の庭に生えていた野生の花の世話をしているエレジアに私は問いかけた。
「疑問に思っていたが今まで聞くのを忘れていた。魂の異常を治せるのに何故断った?」
今更だが思い出したからな。
「私達では到底知る事が出来ない部分に、神である貴女が付けた印がある事が幸せだからです」
「よく分からん、どういう事だ?」
「私達が神の巫女である証が存在する事が嬉しいと言う事ですよ」
更に言う彼女。
「証?」
私が言うと彼女は私のそばに近寄り、私を見る。
「はい。その魂の印は子孫に引き継がれる……つまり神である貴女であれば魂を見る事で初代様の子孫である事が分かり、それこそが神の巫女の血統の証となるのです」
エレジアは頬を紅潮させて言う、その声はとても嬉しそうだ。
……神の巫女である証か。確かにずっと残るなら見分ける事が出来る。
いや待て……巫女が生むのは女のみ……その娘が生むのも女のみ……そうなるといずれ世界中が巫女の子孫になって女しか生まれなくなるんじゃないか?
一人しか生まないのなら問題無いか?それでも双子であったり、数人生む者も居るだろう。
それが繰り返されればいずれ……考えすぎかもしれないが遠い未来人類が滅ぶ気かも知れない。
「エレジア、話しておきたい事がある」
私は自分の考えをエレジアに話した、するとエレジアはしばし考え込み答える。
「つまり増えすぎないように上手くやると言う事か?」
「はい。人数を管理して増えすぎた場合は、子を作る人数を制限します」
頷くエレジア。
「増えすぎた場合は結婚は出来ますが子を作りません。減りすぎた場合は子が欲しい巫女の夫婦に作ってもらいます、勿論子供達は一族で助け合って育てますよ」
「男は必ず一族以外の者だから問題は無いか?」
「結婚する夫にもこの事は納得した上で結婚してもらいます」
そう言って彼女は地面の花を見る。
「恐らく結婚しない娘達も居るでしょうし、本当に管理が必要になる事は少ないと思います。少ない分にはすでに結婚している巫女の夫婦に二人目以降を生んで貰えば良いだけですので」
「駄目そうならやめればいいか」
そう言うと彼女は私を見る。
「よろしくお願いします。結果が出るのは私が死んだ後ですから」
その後この事をウルグラーデの巫女達に伝えた所、厳守すると答えた。
村に住み三十年が経ち、老衰で巫女達が死に始めた。
みんな満足そうに逝ったな。
魂の研究を続けている私は複数の魔法と私でも集中を要する魔法技術、そして莫大な魔力か魔素を使用して死者の蘇生や若返り、不老不死化、更に魂の選別召喚と送還などが出来るようになったが……彼女達にそれらを使う事は無かった。
いつだったか「それらの魔法を使う時は良く考えて下さい」とエレジアが言っていた。
これらの魔法は軽々しく使えば世界を壊す事になるかもしれないと。
どんな弊害があるかもわからないが、我慢出来ずに習得してしまった。
不老不死にした後でも私なら殺せるが……どちらにしてもいつかは使ってしまうだろうな、我慢出来る気がしない。
そしてもう一つ。
この事が魔法の完成に大きく貢献したのだが……これらの研究中に私と魔素の関係が見えた。
実験段階でも相応の魔力や魔素を使う、例えば魔力を一気に使うと周囲の魔力が一時的に薄くなる訳だが……。
自身のミスで私は周囲の魔素が少ない時に魔素を使う実験をしてしまった、勿論周囲の薄かった魔素は一瞬で消費され魔素が足りずに発動しない筈だったのだが……。
発動したのだ、問題無く。
私は困惑した……恐らく今までで一番。
実験後確認しても魔素は周囲から完全に無くなっていたのだが、その時気が付いた……魔素が私から漏れていた。
魔素は自然界に存在し植物や魔物に吸収されて魔力を生み出す物だと思っていたのだが……その魔素が自分から漏れ出している事に僅かに混乱した。
思えば魔素が全く無い場所に居た事など無かった。周囲の魔素が私から漏れている魔素を隠していたのか?
何よりそんな可能性を全く考えていなかった私は気にもしていなかった。
私は改めて自分の体を確かめた。周囲の魔素が無いまま魔素を使って魔法を使い続けた、使用量を少しずつ増やしながら。
その結果……大量の魔素を消費する研究中の魔法すらも発動してしまったのだ。
今思えば無茶をしたと思う……魔素が私を構成する何かであった場合、死ぬ可能性があったかもしれないのだ。
更に確かめると私の体と魔素は別物である事は分かった、次に自分の一部を分け実験をした。
そしていくつか分かった事がある。
私の体は魔力でも魔素でもない何かで出来ている事と……体から漏れている魔素は私の体である何かから放射されている副産物の様な物だと言う事。
普段は漏れ出ている程度だが停止する事も一瞬で莫大な量を発生させる事も出来る事。
そして……恐らくその総量が無限に近い事。
こうして私は魔素を気にせず実験を行う事が出来るようになり、一気に研究は進んだ訳だ。
私の実験する場所には危険なので誰も入れないよう魔法がかかっているのだが、最初の一年程で外からエレジアが呼んでいる事に気が付いた。
そして一年も周囲を気にせず籠っていた事を叱られ、それから私は適度に休憩を取りながら実験をした。
自分の事が分かるかと思えばもっと訳が分からない何かだった。
それでも一歩前進だ、何より魔素を使用する物なら使いたい放題だ。
もしも限界があったとしてもそれならそれで構わない。
「クレリア様」
家のソファに座った私に大分年を取ったエレジアがやってきた。
「ん?どうした?」
「ご一緒にお茶でもどうですか?」
そう言って二つのカップを見せた。
「貰おう、モー乳を入れてくれ」
「分かりました」
微笑むエレジア。
紅茶を入れる音を聞きながら本を読む、冒険記だが間違いなく実話では無いな。
「お待たせしました」
エレジアがカップを私の前に置く。
「何の本を読んでいるんです?」
「冒険記だ……しかし実話ではないな」
紅茶を一杯飲み、本を渡す。
「何故実話では無いと?」
「読めばわかる……ここだ」
彼女は私が示した場所を読むと納得した顔になった。
「なるほど……『自由の神は彼を認めて神の力の一部を与えた』……ですか」
「私はそんな事をした覚えは無い」
魔法や技術を数人に教えた事はあるがあれは神の力では無いしな。
「……クレリア様の名前は無くなってしまったのですね」
こっそりと町で買った冒険記、すでに私の名は世界から消えて無くなっていた。
「私は嬉しいが……」
彼女は苦笑いする。
「貴女は名前が出る事を嫌がっていましたからね」
エレジアは紅茶に口を付ける。
「お前は自分の名前が広がる面倒さを知らないんだよ」
「そうですが、それでしたら大人しくしていると言うのは……」
「私はやりたい事はするぞ?世界に影響を与えすぎないようにだがな」
彼女の言葉を遮って言う。
「何故世界に対する影響を気にするのです?」
「私が思い切り好き勝手したら世界が私の思い通りになるかもしれないだろう?」
私は紅茶を飲む。
「それの何が悪いのでしょうか?」
カップをテーブルに置く。
「私は、私が思いつかないような事を人間が……何者かがしてくれる事を期待している。この世界がどう変わっていくのか見たいんだ。手を出す時は出すが私の思い通りになどしたくは無い」
彼女を見る。
「一人が嫌いな訳では無い、だがやはり誰かといるのは楽しい物だ……それが心を許せる者ならなおさらな」
「そうですね」
エレジアは微笑む、ほんのり頬が赤い。
「私は変わる世界を眺め、紛れ込んで楽しみたいんだ。人が……生物が滅びるまで」
私は彼女に薄く微笑みかける。
「滅びるでしょうか?」
少し寂しそうな表情をする
「このままなら大丈夫じゃないか?」
「そうですか……」
「いや……これからどうなるのか私だってわからない。そしてそれが良い……もし分かる力を得ても私はきっと出来るだけ使わないだろう」
私は彼女を見つめて言う。
「先程聞いた話からすれば使わないでしょうね、貴女は」
「より大事な事の為なら使うだろうが、それ以外ならば恐らく使わないな」
語りながら二人で紅茶を楽しんだ。
村に住み四十年、住んでいる巫女は一人になった。
そして今、彼女も逝こうとしている。
エレジアは一年前、私に「良い人生でした」と言い残し眠る様に逝った。
「クレリア様」
もう彼女は目を開けない。
「……何だ?」
「今まで……ありがとうございます」
「私が共に居たかったから居ただけだ」
「そうですね……申し訳ありません……何か飲み物を……」
心から申し訳なさそうに言う、謝る必要は無い。
「分かった、待っていろ」
私は席を立ち、体に良い薬湯を用意する。
「持ってきたぞ……おい?」
飲み物を用意し戻って来た時、彼女は既に逝っていた。
その顔は微笑みを浮かべている。
今回の話はかなり問題がありそうです、一応設定はあるんですが、主人公を色々出来る最強にしたくてサラッと考えた物なので公開しません。
恐らく主人公が自分の正体に気付く事は無いでしょう。
子孫で人類が滅ぶ辺りは実際は分かりませんが主人公がそう思っていると言う事で。
何話か書き溜めしておくと何かあった時修正出来ていいですね。