少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 いつまでもこの作品を続けたいですが、気を付けなければ既に書いた話と似た様な内容や、他作品に似た物が出来てしまいそうです。





086-05

 2032年10月。

 

 私は葛城、鈴原の両家から誘われてキャンプへとやって来た。

 

 「中々良い所だね」

 

 「そうね」 

 

 千穂と美琴がそう話しながらロッジへと入って行く。

 

 良平と太一は色々な道具を借りに行っているので、今は居ない。

 

 この様に必要な物を全てキャンプ場側が用意してくれる事を「手ぶらキャンプ」と言うらしいな。

 

 「葉子!周りを見に行こうぜ!」

 

 「元気ねアンタは……行くのはいいけど何か手伝わなくて良いの?」

 

 ロッジ前の人場で話す二人に私は声をかける。

 

 「気にせずに行って来い。ただし、2時間程で戻って来ないと昼食が無くなると思う」

 

 私の言葉に健太が振り向く。

 

 「それは嫌だな……じゃあ、姉貴は行かないのか?」

 

 「私はここでのんびりするつもりだ」

 

 「そっか、行こうぜ葉子!」

 

 「はいはい……じゃあ行ってくるね、お姉ちゃん」

 

 葉子は呆れたように健太に返事を返すと、私を見て言う。

 

 「行って来い」

 

 走り出す健太とそれを追う葉子を見送り、私は庭の椅子に座って本を読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 しばらくすると良平と太一が戻って来る。

 

 「あれ、クレリアちゃん一人?皆は?」

 

 太一が声をかけて来る。

 

 「お前達の妻はロッジの中だ、子供達は周囲を見に行った」

 

 私がそう答えると、良平が苦笑いして言う。

 

 「あの子達、昼までに戻って来るかな……」

 

 「戻ってこなければ昼食は抜きだと言ってある」

 

 「あはは!なら安心だな!」

 

 太一はそう言って昼食に使う道具を用意し始めた。

 

 「太一、食材はロッジの冷蔵庫に入っているんだったよね?」

 

 良平が太一に確認するように言う。

 

 「そういう事になってる。多分二人が下準備してると思うぜ?」

 

 「じゃあ僕達はこっちの準備に集中しようか」

 

 

 

 

 

 

 その後、食材の下処理を終えた千穂と美琴が合流し、大人組はそのまま庭で話を始めた。

 

 「ロッジのあるキャンプ場は始めて来たよ、太一は来た事はあるの?」

 

 「いや?俺も初めてだぜ?どうしようか迷ったんだけどさ……若い時ならテントでも平気だろうけど、今は皆ゆっくり寝たいだろ?」

 

 太一はそう言って笑う。

 

 「キャンプかー。思い返すと学生の頃にクレリアちゃんとした後、一度もしてないかも」

 

 「そうね……私もあの時以来だわ。健太が小学生の時に一度くらいは行けばよかったかしら」

 

 千穂と美琴の会話も聞いていたのだろう、良平と会話していた太一が千穂に尋ねた。

 

 「二人が学生の時に行ったのって、俺達も前に行ったあの島だよな?」

 

 「うん、そうだよ。あの時は子供達が小さかったからキャンプはしなかったけど、あの島の森の中でしたんだよ」

 

 私は友人達に子供が生まれた後に、全員を島に招待している。

 

 当時、子供達は3歳か4歳だった筈だ。

 

 私が居たので特に問題は無かったと思うが、あの時は彼女達の判断に任せ、キャンプをせずに島の屋敷で寝泊まりした。

 

 「もう少し子供達が大きくなっていれば色々と出来たと思うけどね」

 

 良平が微笑みながら言う。

 

 「ではもう一度行くか?」

 

 私は皆に尋ねた。

 

 「そうね……あの子達が行く気になってくれれば行きたいわね」

 

 「大丈夫じゃないか?クレリアちゃんの島だし、あいつらが行きたがらないって事は無いだろ」

 

 美琴の返事に対して太一が口を挟む。

 

 長い間、遠慮したり感謝の言葉を頻繁に言っていた友人達だが、今ではすぐ話に乗るようになっていた。

 

 皆、私が向けられている感情を感じ取れる事を知っている為「必要以上の感謝の言葉は意味が無い」という事を理解してくれている。

 

 「時期はお前達に任せる、決まったら連絡しろ」

 

 「大分先になりそうだな、ドラマの撮影があるし」

 

 「その辺りはまた話し合って調整するとして、今日は楽しみましょうよ」

 

 私は会話をしながら、子供達がこちらに向かって来ている事を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 昼食を終えた私達は外で遊んで過ごし、夕食はロッジ内で食べた。

 

 現在はロッジのリビングで全員が集まり、ボードゲームをしている。

 

 「えーと……小学校に入学、全員から祝い金500ドルを貰う……だって!ハイハイ、皆500出してー」

 

 私達がやっているのは「人生バトル」という人生を体験するボードゲームだ。

 

 「まあ、まだ先は長いからね」

 

 「そうだな」

 

 皆、口々に反応を返しながら500ドルを千穂に渡す。

 

 「次はクレリアちゃんの番だよ」

 

 「では回すぞ」

 

 私はゲームに付属しているルーレットを回す。

 

 ……6か。

 

 6マス進み、私は書いてある内容を読む。

 

 「スマホの充電が切れそう、充電の為一回休み……か」

 

 「姉貴、ここで一回休みかよ。運悪いなー」

 

 健太がそう言って笑う。

 

 「小学校に入学する前の子供にスマートフォンを持たせて、使いこなせるのだろうか」

 

 「あはは!確かにそうかもね!」

 

 私の言葉を聞いた千穂が笑う。

 

 「あ……でも、私が幼稚園の頃に持ってる子いたような……?」

 

 葉子が思い出したように言う。

 

 「そういう親も居るみたいね、うちは中学校に入ってからだったけど」

 

 「アプリで居場所が分かる物とかもあるし、持っているだけでも意味はあるんじゃねぇか?」

 

 ゲームを進めながら、美琴と太一はそんな事を話していた。

 

 

 

 

 

 

 色々と話をしながらゲームは進み、そろそろ誰かがゴールするだろうと思い始めた時、私は魔力の動きを感じて上を向いた。

 

 「お姉ちゃんどうしたの?」

 

 突然上を見た私に違和感を感じたのか葉子が声をかけ、皆の視線が私に集中する。

 

 「何で上見てんだ?」

 

 全員不思議そうにしながら上を見ている。

 

 「クレリアちゃん?」

 

 千穂が上を見ながらそう声をかけた瞬間に、突然天井近くに見覚えのない赤い魔法陣の様な物が現れた。

 

 同時に、私はこの魔法陣の様な物を停止させる。

 

 「何だ!?」

 

 「こっちに来なさい!」

 

 全員が身構え、千穂と美琴は慌てて子供達を引き寄せる。

 

 しかし、私が止めているので何も起こる事は無い。

 

 「く、クレリアちゃん……これは……」

 

 何も起きない事を理解したのか、戸惑いながらも良平が声をかけて来る。

 

 この間も私はこの魔法陣の様な物を解析し調べていたが、随分単純な作りだな。

 

 「落ち着け、もうこの魔法は発動しない」

 

 「魔法……?どうなってるの?」

 

 千穂が聞いてくる。

 

 彼女達には伝えておくべきだろうな。

 

 「分かった事は教える、取り敢えず落ち着け」

 

 私はそう言って停止させていた魔法陣を消し、皆に話をする事にした。

 

 「消えた……。クレリアちゃん、さっきのは魔法なのよね?」

 

 美琴が私に尋ねて来る。

 

 「魔法だな。しかし、私達が使用している物と差異がある」

 

 「別の魔法って事?」

 

 「そうだ、基礎の構成が違う物……つまりこの世界で私が使っている魔法ではなく、別世界の魔法という事だ」

 

 「姉貴!ちょっと待ってくれ!」

 

 健太が焦ったように声を上げた。

 

 「どうした?」

 

 「姉貴が魔法使いなのは分かってるけどさ……その、別世界が本当にあるって事か?」

 

 「ある。人類の間で空想だと言われるような存在が実在し、様々な法則を持った多数の世界がある事は私が確認している」

 

 私が答えると、健太は黙ってしまった。

 

 「ねぇ、お姉ちゃん……」

 

 今度は葉子が口を開いた。

 

 「何だ?」

 

 「その……その世界のどれかに、世界を行き来が出来る様な力があったらさ……私達の世界に攻め込まれるような事も……あるって事……?」

 

 よく気が付く子だ。

 

 「葉子の考えは正しいだろうな。世界が数多く存在している為に今まで選ばれる事が無く、何も起きていなかったのだと思うが……今この瞬間に別の世界から侵攻される可能性も無いとは言えない」

 

 「そんな……」

 

 葉子は泣きそうな声で呟く。

 

 「今、実際に手を出されただろう」

 

 そう言うと、親である四人が表情を歪めた。

 

 「あの魔法陣は対象を強制的に指定の位置に移動させる物だ」

 

 「それって……誘拐じゃないか!?」

 

 私の言葉に良平が反応する。

 

 「その通りだ。更に言えば、あの魔法は召喚された対象に制限をかける効果があった」

 

 「制限?」

 

 「召喚者の命に逆らえなくなる効果だ。お前達に分かりやすく言うと、召喚した相手を奴隷化する物だ」

 

 「なっ!?」

 

 奴隷と聞いて、全員が驚いた様だ。

 

 「じゃああれか!?この魔法を使った奴は俺達を無理矢理呼び寄せて奴隷にするつもりだったって事か!?」

 

 太一が叫んだ。

 

 「お前達では無い、狙われていたのは健太だけだ」

 

 「俺!?」

 

 自分が狙われていたと聞いて、健太が声を上げた。

 

 「詳しくは省くが、あの魔法は様々な世界から一定の条件を満たした者を無作為に選んで召喚するように構成されていた。それに健太が引っかかったという事だ」

 

 説明を聞いて太一と美琴は勿論、全員が怒りを表している。

 

 「クレリアちゃんが居なかったら健太は別の世界に誘拐されて奴隷にされてたって事か……」

 

 怒りを滲ませて言う太一。

 

 「許せないけど……そんな相手にどうやって対抗すれば……」

 

 美琴が眉をひそめながら呟く。

 

 「強制的な召喚を無効化するようにしておくか?」

 

 「え!?」

 

 「そんな事出来……るのよね……クレリアちゃんがそう言うのなら」

 

 「そうだね、クレリアちゃんは出来ない事は出来ないって言うし……」

 

 私が彼女達に強制的な転移を無効化する様にするかを聞くと一瞬驚き、すぐに落ち着いた。

 

 「子供達だけでもお願い……私達じゃ何をしても抵抗出来無いと思うから」

 

 美琴はそう言って、悔しそうにしている。

 

 確かに魔力を使用出来ない彼女達に抵抗する術は無いな。

 

 「分かった」

 

 私は彼女の言葉を聞き、転移無効化を全員に施した。

 

 

 




 少し現代から離れて寄り道しますが、あまり長く続かずに解決する予定です。



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