少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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087-01

 

 転移すると、景色が見覚えの無い樹々が生い茂る場所に切り替わった。

 

 地球では感じる事が無くなった濃い魔力を感じる。

 

 私はすぐに知覚を広げた。

 

 ……特に脅威になる様な物は無さそうだ。

 

 様々な植物が生え、生物も居るが……こちらには気が付いていない。

 

 大気は……地球と大差無い様に感じる。

 

 気温もあまり変わらないが、この世界の気候がまだ分からないのでこの辺りだけかも知れないし、これから変化があるかも知れないな。

 

 取り敢えず今は問題無いと判断し、周囲を見渡す。

 

 周囲は深い森に覆われていて薄暗い。

 

 時々獣の声や虫の音が聞こえ、風によって樹々の葉が僅かに揺れている。

 

 この世界には知的生命体がいるはずだ、その辺りから情報を得てみよう。

 

 私はそう考え、行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 この世界に居るであろう知的生命体から情報を得ようと決めた私は現在、知覚をある程度広げたまま適当な方角へと徒歩で移動している。

 

 認識阻害は使っているが通用するかが分からないからな、ある程度慎重に動いておいた方が良いだろう。

 

 周囲を調べている内に感じた事だが、この辺りは森の規模に対して動物や虫が少ない気がする。

 

 私の感覚なので、この世界ではこれが普通なのかもしれない。

 

 こうして周囲を調べながらひたすら一方向に歩いていると、森の切れ目から光が差し込んでいる。

 

 今は日中なのだろう。

 

 しかし、思い込みは良くないな。

 

 この世界が地球と同じような法則だとは限らない。

 

 少なくとも現時点では地球と大きな差異は感じないが、その事は念頭に置いておこう。

 

 そう思いながら森の切れ目で足を止め、空を見てみる。

 

 これだけ空が明るいのなら、この世界も太陽の様な恒星の影響を受けているのかも知れない。

 

 今の所、太陽の様な物を森の切れ目から確認する事は出来ないが、代わりに月の様な惑星が見えている。

 

 地球にある月と比べるとかなり小さいが、とても滑らかで何処か人工的な印象を感じる惑星だ。

 

 そんな事を考えながら再び歩き始めると切れ目は樹々に覆われ、再び周囲が薄暗くなる。

 

 娘達と友人達には既に十分な対策をしているので急ぐ必要は無い。

 

 場合によっては即座に動くが、今の所はこのまま慎重に進む事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 私が歩きながら感知範囲を少しずつ広げ続けていると多くの知的生命体らしき反応を見つけた。

 

 話している事は理解出来るな。

 

 言語が理解出来るなら話し合いも可能かも知れない。

 

 そう思いつつ観察する。

 

 ……武装し、かなり統率のとれた動きをしている。

 

 恐らく兵士だろう。

 

 姿も人類に近い、髪の色や目の色、肌の色も大きく違わない。

 

 ただ、一目で分かる大きな違いがある。

 

 それは彼らの額だ。

 

 彼らの額には小さな宝石のような物が埋まっていて、見た目は地球の宝石の様に見える。

 

 更に個体ごとに色、形、大きさが違う様だ。

 

 それさえなければ地球人だと言われても分からないだろうな。

 

 精々「髪は染めているのか?」と聞かれる程度だろう。

 

 しかし、彼らの種族が強制転移魔法を使ったのだろうか?

 

 彼らから感じる魔力から推測すると、それだけの魔法を行使出来るとは思えないのだが……。

 

 取り敢えず、ここから会話を聞いているだけでもある程度の情報は得られた。

 

 彼らには「聖朱族(せいしゅぞく)」という敵対している種族がいる様だ、そして魔神と呼ばれる信仰対象がある事も判明した。

 

 更に、彼らは統率が取れているにもかかわらず、お互いに明確な上下関係が存在しない様だった。

 

 現在の関係は「兵として行動している間の関係」で、本来はあまり上下関係を気にしないのかも知れない。

 

 このままある程度情報を集めて離れても良いが……どちらにしても最後には話し合う事になるだろうからな。

 

 丁度良い人数が居る事だし、彼らが私に対してどの様な反応を示すのか確認する為に、一度姿を見せてみよう。

 

 私はそう考え、彼らの進行ルートに先回りして待つ事にした。

 

 

 

 

 

 

 移動を続ける俺は、戦場を思い口元を引き締めた。

 

 ……憎き聖朱族に後れを取る訳にはいかない。

 

 今も各地で大規模な戦争が行われている。

 

 今回の作戦は戦況を少しでも有利にする為の物だ。

 

 必ず成功させる……!

 

 実戦を経験した事で、俺は自分の実力不足を痛感した。

 

 戦闘技術、身体能力の向上……二重詠唱の練度もまだまだ上げたいが……もう時間は取れないな。

 

 そう思いながら視線を動かすと、周囲には隊列を組んでいる仲間がいる。

 

 普段は上下関係など無い俺達だが……戦闘時は別だ。

 

 バラバラに挑んでも聖朱族に勝つ事は出来ない。

 

 我らの神を否定し、滅ぼそうとする奴等を皆殺しにするまで俺達に安寧は訪れない。

 

 それは一族の総意だ、その為にわざわざ他の世界から使える道具達を集めている。

 

 あれはかなり良い。

 

 強力な上に逆らわず、戦えなくなっても使い道がある。

 

 俺達は仲間を犠牲にしたくない……出来る事なら全て集めた道具で戦争を行いたい所だが、現実はそう上手くいかない。

 

 更に大きな問題もある。

 

 それは奴らも同様に道具を集めているという事だ。

 

 この状況だと……多分、俺の代でも戦争は終わらないだろう。

 

 俺は道具を呼び出す詳しい方法を知らないが……もっと大量に道具を集められたら、犠牲を出さずに奴らに勝てるかも知れないのにな。

 

 「全体!止まれ!」

 

 その時、突然停止命令が下り、俺達は動きを止めた。

 

 ……まだ目的地じゃない筈だ、何かあったのか?

 

 俺はそう思いながら、再び移動の命令が出るのを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 「全体!止まれ!」

 

 集団から声が聞こえた。

 

 斥候が私を発見したのだろう。

 

 かなり距離を取り、集団は停止している。

 

 私がしばらく相手の反応を待っていると、集団からの敵意と殺意が増していく。

 

 ……何故だ?

 

 そして、集団の周囲の魔力が僅かに濃くなり、黒い輝きが見えた。

 

 これは……彼らが魔力を黒い光として周囲に放射しているのか?

 

 状況を確認し、そう考えた直後……集団から複数の鋭利な氷塊が放たれた。

 

 召喚魔法を使うのだから、攻撃にも使うのは当然か。

 

 しかし、一言も言葉を交わさず攻撃に移るとは。

 

 それが悪いとは思わないが、どうするか。

 

 そう考えながら私は転移で彼らの間近に移動し、言葉をかける。

 

 「話を聞いて欲しい」

 

 私が声をかけると、彼らは殺気を放ちながらそれぞれに行動し始めた。

 

 近接、遠距離 援護、それぞれ役割が決まっている様だ。

 

 近接攻撃を仕掛けて来る者を素手で捌きながら観察していると、彼らが口を小さく動かしているのが見えた。

 

 音を拾って見ると、どうやら小声で言葉を呟いている。

 

 独特の発声だ。

 

 すると、私の死角を狙うかの様に炎の矢が発生した。

 

 なるほど、これが彼らの魔法詠唱なのか。

 

 詠唱は独特だが……威力はそれほどでも無いな。

 

 私に放たれた魔法を掻き消し、彼らの力量を計る。

 

 一般的な魔法人類よりは威力も出ているし構成も悪くないが……ん?

 

 私は周囲からの攻撃を全て無効化しながら、彼らの魔法に注目する。

 

 ……時々魔法構成が二重になっているな。

 

 中々面白い事をする。

 

 元々ある程度の情報を得るつもりだったが、この事も聞いてみよう。

 

 その時、離れていた者達が準備していた魔法が発動した様だ。

 

 先程まで私を牽制していた者達が少し距離を取った。

 

 すると上空から私に一筋の雷撃が落ちて来る。

 

 私はその威力を確認してから無効化した。

 

 中々の威力だ。

 

 少なくとも今までの魔法攻撃に比べれば格段に良い。

 

 格段に良いが、この程度では私には届かない。

 

 彼等が私に殺意を持って攻撃しているので戦っているが、本来は気にする程の物では無いからな。

 

 せめて惑星を破壊する程度の威力があれば、多少は気にするのだが。

 

 もしくは……地球の創作物に出て来る者達の様に、特殊な能力があれば戦闘らしい戦闘になるかも知れない。

 

 その後、彼らは周囲を気にしない戦闘に切り替えたらしく、周囲が更地になって行った。

 

 

 

 

 

 

 カミラから「お母様は相手の実力を測る時に自分を基準にしない方がいいわよ」と言われてから、私は魔法人類を基準に考える事が増えた。

 

 彼女が言うには、他者と私を比べる事は「一センチメートルの距離を一光年の物差しで測っているような物」らしい。

 

 私は「流石にそこまでの差はないだろう」と言ったが、彼女は微笑みながら「どうかしらね?」と答えるだけだった。

 

 彼らの魔法戦闘能力は魔法人類と比べるとかなり高い。

 

 魔法構成は二種類。

 

 通常の構成と二重構成の物だ。

 

 更に、二重の魔法は単発だが、通常の魔法は詠唱を挟まず二回発動している事も分かった。

 

 私の推測だが、彼らはあの独特な詠唱によって魔法の「増幅」と「連続発動」を使い分けられるのではないだろうか。

 

 戦闘の影響で荒れた大地で考えながら佇む私に、彼らからの強い敵意が向けられ続ける。

 

 「もう良いのか?」

 

 私は彼らに声をかけるが、誰も口を開かない。

 

 実戦でどの程度の実力があるのかを確認する為に様子を見ていたのだが……これ以上は何も無いのか?

 

 彼らが召喚魔法を使うのなら、切り札や奥の手があるのではないかと考えていたのだが……。

 

 これ以上は無駄かも知れないな。

 

 私は全員の手足を拘束し、魔法を封じた。

 

 すると地上に居る者達は身動きが出来ず転倒し、飛行していた者達は墜落する。

 

 こうして彼等は全員大地に転がる事になった。

 

 

 

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